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月刊誌「りぶる」特集 8月号より

産業と雇用、国民の暮らしを守り抜く

小野寺政務調査会長
小野寺五典
政務調査会長/自由民主党米国の関税措置に関する
総合対策本部長

自由民主党は、「米国の関税措置に関する第一次提言~我が国産業と雇用、国民の暮らしを守り抜く~」を取りまとめ、令和7(2025)年4月22日に党米国の関税措置に関する総合対策本部長を務める小野寺五典政務調査会長が石破茂総理へ申し入れました。小野寺政務調査会長に、米国の関税措置や提言の概要などを伺いました。

取材日:令和7(2025)年6月18日

米国のトランプ政権による関税措置とは
自動車と主要な自動車部品等に追加関税を発動

資料1:米国政府が発表した57ヵ国・地域に対する相互関税率

―米国の関税措置について、『りぶる』読者に分かりやすく教えてください。

小野寺五典政務調査会長/党米国の関税措置に関する総合対策本部長(以下、敬称略)今年4月3日、米国のトランプ大統領は、日本を含む57カ国・地域に「相互関税」を課すと発表しました。相互関税とは、貿易相手国の関税率や非関税障壁を踏まえて、自国の関税を引き上げることです。 米国は相互関税の一環として、4月5日から輸入されるほぼ全ての品目に一律10パーセントの関税を課しました。当初は、そこからさらに国・地域ごとに設定した相互関税率(資料1参照)まで引き上げる予定でしたが、トランプ大統領はこの措置を7月9日まで停止することを表明しました。
 また、米国に輸入される自動車は、4月3日から関税が上乗せされています。

―自動車の追加関税は、何パーセントですか。

小野寺25パーセントです。従前は2.5パーセントだったので、上乗せ分と合わせて27.5パーセントの自動車関税が課せられています。例えば、米国に200万円で輸入された日本車は、米国が追加関税を発動する前は販売価格が205万円でした。それが4月3日から、255万円に上昇したのです。さらに5月3日からは、米国に輸入されるエンジン等の主要な自動車部品にも25パーセントの追加関税が課せられています。
 追加関税分を販売価格に転嫁すれば、米国での競争力が低下します。一方、販売価格に転嫁しなければ日本国内の企業が、不利益を被ることになります。このことを私は、一番心配しています。

小野寺政務調査会長

―なぜ米国は、このような関税措置をとるのでしょう。

小野寺米国は特に製造業における生産が落ち込んでいます。おそらくトランプ大統領は、それをしっかりと支えたいのだと思います。関税を高くすることによって米国内の製造業を復活させたいという思いが強いのではないでしょうか。
 これまで国際社会は、より多くの人が豊かに暮らせるよう、関税を下げる努力をしてきました。例えば、品質の高い日本車を他国に輸出する際、関税が低ければ、輸入された国の人たちは安く購入することができます。日本は、ものづくりが得意な一方で、小麦や大豆等の自給率が低いです。それらを自給率の高い国から輸入することで、小麦や大豆等を原料にした食品を日本の消費者は安く手に入れることができます。このように、お互いの国が‟Win-Win”になるようにやってきたのが、世界の自由貿易体制です。

米国の関税措置から日本の産業と雇用、
国民の暮らしを守り抜くための提言を取りまとめ

―米国の関税措置によって、どのようなことが起こっていますか。

小野寺これまでのルールと違うことを世界に大きな影響力を持つ米国が始めたわけですから、各国がその対応に迫られています。
 日本経済のみならず、世界経済へ広範な影響を及ぼす可能性が高いことから、自民党は「米国の関税措置に関する総合対策本部(以下、総合対策本部)」を立ち上げました。その本部長を、私が務めています。
 わが国はこれまで日米同盟を基軸に、貿易や経済交流、安全保障など、幅広い分野で連携してきました。米国が急に方針を変えたことで、私は‟米国離れ”が始まることを懸念しています。それを防ぐため、関税措置によって影響を受ける関係団体や企業、そして国民の皆さまの声にしっかりと耳を傾け、日米関係のさらなる深化と、日本の将来につながる対策を総合的に検討していきたいと思います。

―米国の関税措置が日本経済に与える影響について教えてください。

小野寺すでに25パーセントの追加関税が課せられている自動車は、米国での販売が落ち込み、国内の生産体制や設備投資、経営等に影響が大きく及ぶ恐れがあります。
 また、雇用が失われる可能性も高いと考えます。自動車は日本経済の中核をなす産業であり、国内の就業者は関連サービスなどを含めると約550万人といわれています。仮に自動車の輸出をストップしたり、あるいは自動車メーカーごと米国に移転したりすると、国内の雇用情勢の悪化につながります。

小野寺政務調査会長

さらに懸念されるのは、さまざまな産業への影響です。部品や素材などをメーカーに納入している自動車関連企業だけでなく、工場に仕出し弁当等を提供している店、周辺の商店街なども収益が減り、にぎわいも失われるでしょう。
 先行きを不安視する声は、海外市場をターゲットにしている飲食関連産業からも挙がっています。米国では日本食に対するニーズが高く、新鮮な魚介類やのり、日本酒などをたくさん輸出しています。これらに高い関税が課せられると売れ行きが鈍り、米国への輸出を断念せざるを得ない状況に陥る可能性があるからです。
 米国の一方的な関税措置に何も対策を講じなければ、日本経済の活力が低下し、社会全体に不安が増大することは明らかです。政務調査会は提言を取りまとめ、4月22日に「米国の関税措置に関する第一次提言~我が国産業と雇用、国民の暮らしを守り抜く~」を石破茂総理に申し入れました。
 この提言は、相互関税率の引き上げが停止している現段階で、想定される対応を整理しました。企業や国民の暮らしに影響が出るのを未然に防ぐための具体的な方策を示すとともに、「仮に影響が出ても、すぐに対策や支援策を講じますので、ご安心ください」という自民党からのメッセージが込められています。

インタビューの続きはりぶる本誌でご覧ください

りぶる8月号

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