月刊誌「りぶる」 4月号より
ヤングケアラーについて、ご存じですか。
その実態や課題、社会で支えていくことの必要性、支援の在り方などについて、ケアラー議員連盟の野中厚事務局長と、日本ケアラー連盟の堀越栄子代表理事が語り合いました。
取材日:令和4(2022)年3月3日
※取材は、感染症対策を十分に実施した上で行っています
―そもそもケアラーとは、どんな人ですか。
野中介護者のことです。ケアを必要とする家族や親族、知人、顔見知りの人などに対して無償で、介護、看護、日常生活上の世話などを行う人をケアラーといいます。わが国では、18歳未満のケアラーを「ヤングケアラー」と呼んでいます。
ヤングケアラーが、どのようなケアをしているのかは、日本ケアラー連盟が作成された資料を参考にしていただければと思います(下図)。イラスト入りで、とても分かりやすいですね。
堀越ありがとうございます。オーストラリアで使われているものを参考に作成したオリジナルです。ヤングケアラーの認知度向上につながれば、うれしいです。
ヤングケアラーの定義や対象年齢は国によって、さまざま。日本ケアラー連盟は児童福祉法になぞらえて18歳未満をヤングケアラー、18歳からおおむね30歳代までを若者ケアラーと呼んでいます。
―家族の世話をしているヤングケアラーの割合は、どのぐらいですか。
堀越令和2(2020)年度に厚生労働省・文部科学省が中学2年生と全日制高校2年生を対象に行った調査では、中学2年生は全体の5.7パーセント(約17人に1人)、全日制高校2年生は4.1パーセント(約24人に1人)でした。おおよそ1クラスに1人か2人は、家族のケアをしている人がいることになります。この割合は、定時制高校生、通信制高校生になると約1割で、さらに高くなります。
野中ケアの内容は、食事の準備や掃除、洗濯などの家事が多く、他にもきょうだいを保育所に送迎したり、祖父母の外出の付き添い・見守りをしたりと、多岐にわたっています。
ケアの頻度は、ほぼ毎日が最も高く、平日一日の平均時間は中学2年生が4時間、全日制高校2年生が3.8時間。一日7時間以上を費やしているヤングケアラーもいます。
また、ヤングケアラーの多くは幼い頃からケアをしているため、自分が家族のケアをしている自覚がなく、「こうした生活が当たり前」だと受け止めていることも分かってきました。
―ヤングケアラーはどのような悩みを抱えていますか。
堀越小学生、中学生、高校生で若干異なりますが「勉強する時間がない」「自分のことを考える時間がない」「寝不足になる」などが多いです。
一方、先生方は「遅刻や欠席」「宿題をしてこない」「部活ができない」といった学校生活への影響や、衛生面・栄養面などを懸念しています。
さらに、たくさんのヤングケアラーが孤独やストレスを感じています。埼玉県が令和2(2020)年に高校2年生を対象に行った「ヤングケアラー実態調査」では、「ケアについて話せる人がいなくて、孤独を感じる」人が19.1パーセント、「ストレスを感じている」人が17.4パーセントいました。
野中『りぶる』読者の皆さまの中には、子供が家族の世話をするのは、ごく普通のことだと思われる人がいるかもしれません。しかし、ケアをしていることで社会的に孤立し、心や体に深刻な影響を与えている可能性もあるのです。
堀越ヤングケアラーの中には、コミュニケーションを取るのが難しい認知症や精神疾患のある家族等をサポートしている人もいます。こうしたケースでは、自分が相手に全部合わせて、笑わせたり、愚痴を聞いたり、励ましたりするので、自分を主張することができなくなり、人格形成にも大きな影響を及ぼすことが懸念されます。
野中高校生活は、大学進学の時期とも重なります。ケアのために学業を犠牲にする人も多く、進路にも関わりますね。
堀越人間関係をつくる大切な時期に友人と遊べなかったり、勉強しなければいけない時に学ぶことができなかったり。子供によるケアは、子供時代に子供らしく過ごせないばかりか、将来にまで影響する大きな問題です。ケアをしていない子供と、人生を豊かにする機会が同じでないのは不公平だなと感じます。
野中本来であれば青春を謳歌する時期に、大人が担うようなケアの責任を一人で背負い、しかも誰にも相談できずに一人で耐えている姿を想像すると胸が締め付けられる思いになります。
全てのケアラーが個人として尊重される社会をつくらなければなりません。
インタビューの続きはりぶる本誌でご覧ください
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