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月刊誌「りぶる」特集 7月号より

Special鼎談
女性の健康的な人生100年を
実現するために

(左)女性の生涯の健康に関する小委員会 松川るい 事務局長、(中央)女性の生涯の健康に関する小委員会 高階恵美子 委員長、(右)女性の生涯の健康に関する小委員会 和田義明 幹事長
(左)女性の生涯の健康に関する小委員会 松川るい 事務局長
(中央)女性の生涯の健康に関する小委員会 高階恵美子 委員長
(右)女性の生涯の健康に関する小委員会 和田義明 幹事長

女性特有の心身の変化について、ライフステージごとに的確な健康支援をするため、人生100年時代戦略本部に「女性の生涯の健康に関する小委員会」が新設されました。同委員会の和田義明幹事長がコーディネーターを務め、高階恵美子委員長、松川るい事務局長と、女性特有の健康リスクや、包括的支援の必要性、委員会の取り組みなどについて語り合いました。

取材日:令和4(2022)年5月20日
※マスクは撮影時のみ外しています

女性が直面する体調の変化
なぜ包括的支援が必要か

和田義明 幹事長

和田近年、日本人の寿命は着実に延び続けています。平均寿命と健康寿命との差は、男性8.73年に対し、女性は12.06年と、日常生活に介護などを必要とする期間が約1.4倍長くなっています※1
 また、日本人女性の平均睡眠時間は経済協力開発機構(OECD)諸国の中で最も短く、抑うつ傾向が強いことも明らかとなっています。健康で活力ある社会づくりを進めるために、女性のQOL※2向上は欠かせない政策課題です。
 女性の健康を考えていく上で、大切なことは何だとお考えですか。

高階一つは、女性を取り巻く環境の変化に目を向けることだと思います。寿命が延びるとともに高学歴の働く女性が増え、晩婚・晩産化、合計特殊出生率の低下が進むなど、女性のライフスタイルが多様化しています。
 もう一つは、各ライフステージで著しく変化する女性ホルモンを考慮することです。女性ホルモンは、安定期には代謝をアップさせたり肌の潤いを保ったり、妊娠の準備をしたりするなどの大事な働きを担います。一方で更年期には不定愁訴を助長、枯渇期には抑うつ・精神疲労状態になりやすく、さまざまな体調不良につながります。
 このように、一生のうちに心身が大きく変化するのは女性特有の現象。各ライフステージで、個々の特性に応じた健康支援が求められています。

※1:令和元(2019)年
※2:クオリティー・オブ・ライフの略。生活の質

松川るい 事務局長

松川特に更年期は、心身の変化が急激に起こります。女性ホルモンの低下をきっかけに、自律神経のバランスが崩れたり、免疫システムが不調になったり、さまざまな全身症状が現れることがあります。
 40代後半から50代という更年期が始まるこの世代は、ちょうど会社では管理職となってさらなる活躍が期待されるなど社会的にも責任ある立場に置かれている女性が多いですが、体調を崩し、支援などもなく孤立して、離職を選ぶ人もいます。有能な女性たちの離職は、企業にとっても、人口減少している日本社会全体にとっても大きな損失です。調査結果によっては、該当年齢層の7割もの女性が更年期障害のために昇進を諦めたり、離職したりしているそうです。

和田他の世代でも、女性特有の健康リスクがありますか。

高階月経も女性の健康に大きな影響を及ぼしています。例えば、かつて一人の女性がたくさんの子供を産んだ時代は、妊娠と授乳を繰り返し、月経のない期間が長く続きました。一方現代はライフスタイルが変わり、女性が生涯で経験する月経はおよそ450~500回。約10倍にも増えたと考えられています。それに伴い、月経前症候群(PMS)や月経困難症などのトラブルが増えて日常生活に支障をきたすこともあります。

松川月経の回数が増えたことで子宮内膜症のリスクも上がっています。近年、子宮内膜症は女性の妊娠する力を低下させることが分かってきていて、不妊症につながる可能性が懸念されています。
 その他、骨粗しょう症や骨折、関節・筋肉の変形、認知症など、女性ホルモンの低下で起こりやすい病気やけがは多くあります。QOLが落ちた状態で過ごす老後の長さは、改善していかなければなりません。

高階人生100年時代を迎え、『りぶる』読者の皆さまには、生涯を通じて元気に生き生きと過ごしていただきたいと思います。体調の変化とうまく付き合いながら、家庭や職場、地域社会で輝けるよう、社会全体で包括的に支援していかなければなりませんね。

健康的な人生100年を実現するため
生涯を通じた女性特有の課題と向き合う

和田昨年末、人生100年時代戦略本部の下に「女性の生涯の健康に関する小委員会」が設立されました。

高階先進諸国では女性の健康科学に基づいた健康支援が社会基盤の一つとしてすでに定着している国もありますが、日本にはそういった取り組みを担う部局がありませんでした。私は平成25(2013)年秋、党に発足した「女性の健康の包括的支援に関するプロジェクトチーム」の座長を務め、翌年春に提言を国に申し入れました。その内容は、女性の健康について科学的に明らかにする必要があること、その結果に基づく総合政策を作るべきだということ、そのためには基盤となる法律を作らなければならないことなどでした。
 その提言を踏まえ、平成27(2015)年、厚生労働省に「女性の健康推進室」が設置され、包括的支援の「政策研究」と「実用化研究」の二つの事業が立ち上がりました。しかし、さまざまな理由から法律の整備はいまだ実現していません。
 今回「女性の生涯の健康に関する小委員会」が設置されたことは、時代の変遷の中で非常に大きな意味があると思います。

高階恵美子 委員長

和田委員会では発足以来、女性の生涯の健康に関する包括的支援の在り方をさらに深く議論してきました。そして今年3月、高市早苗政務調査会長に、健康活力社会を牽引する女性の健康の包括的支援についての中間とりまとめを申し入れました。

高階議論を重ねながら私自身も「女性の生涯の健康を考えることの意義」について、改めて自問自答しました。そして「人間としての尊厳を考えることである」との結論に行き着きました。
 少子化が進み人口が減少する中で、近年は出産・子育て世代を支援する環境整備にずいぶん注力してきました。それは図らずも女性を支援することでした。妊娠、出産、育児は女性が持つ大きな特性であり、社会全体で女性を支援しなければ、少子化はなかなか改善しないとの問題意識があったからだと思います。そして人生100年時代を視野に入れた今、出産・子育て世代のみならず、生涯を通じた女性特有の課題に向き合わない限り、社会全体の活性化にはつなげられないと考えています。
 女性は命を育む、とても大きなパワーを秘めているからこそ、生涯を通じて大きな変動があり、自らの心身や社会的な活動が制約されるという現実を、男女共にしっかりと認識した上で、必要な政策を整えていかなければなりません。この精神をベースとして、今回の中間とりまとめを申し入れました。

松川女性は生物学的に“産む”性。生理から出産、更年期障害まで、健康面で翻弄されるというか、人生の中での健康変化が予定されている性なのです。ですから、社会全体がそれを認めて尊重し、女性がもっと生きやすくなるような支援を行うべきだと、委員会での議論を通して気付かされました。生理・出産くらいまでは社会的認知が進みましたが、更年期障害は女性自身でさえ、自分で抱え込むのが当たり前だと思わされているように思います。

和田委員会では8回にわたり、有識者の方々から意見を伺いました。その中で印象的だったのは、更年期障害に苦しむ多くの女性がどのように相談すればよいのか分からず、受診をためらっていたこと。また、受診しても1カ所で症状が改善しなければ諦めてしまうという話でした。婦人科や内科、精神科などを含めたワンストップの相談窓口があればよいのですが、日本では女性総合診療科がある病院は限られていますし、まだ制度も浸透していません。これらの整備の必要性も中間とりまとめに盛り込んでいます。

令和4(2022)年3月31日、「女性の生涯の健康に関する小委員会」は、人生100年時代を見据えた女性の健康に関する包括的支援の在り方についての中間とりまとめを高市早苗政務調査会長に申し入れた
令和4(2022)年3月31日、「女性の生涯の健康に関する小委員会」は、
人生100年時代を見据えた女性の健康に関する包括的支援の在り方についての中間とりまとめを高市早苗政務調査会長に申し入れた

インタビューの続きはりぶる本誌でご覧ください

りぶる7月号

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発行日 毎月15日発行
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定価1部 320円 (税込)

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