東日本大震災から12年を迎えて

令和5年3月11日

一、はじめに

東日本大震災から、今年で13年目に入ろうとしています。発災当初に亡くなられた方は13回忌を迎えることとなります。
改めて亡くなられた方々のご冥福をお祈りし、ご遺族の皆様にお見舞いを申し上げます。
今もなお、3万人近い方が避難生活を余儀なくされており、多くの方がふるさとに帰ることができない状況が続いています。その中で、被災地の皆様方に寄り添いながら、原子力事故災害被災地域の復興についても、着実に進めています。

昨年12月の税制改正の議論において、復興特別所得税を巡り、被災地はじめ国民の皆様方にご心配をおかけしましたが、令和5年度与党税制改正大綱にもあるように、今回の措置は、あくまでも復興財源の総額を確保することを大前提としたものです。したがって、今後の原子力事故災害被災地域における中長期的な取組みに必要な財源は、政府・与党が責任を持って確保いたします。

また、新型コロナウイルス感染症の拡大に加え、ウクライナ危機や想定以上の円安によりエネルギー価格、原材料価格の高騰など物価高が続き、全国民の暮らしに大きな影響が出ています。
しかし、私たちは復興に向けての歩みを止めることはありません。今後の被災地、福島の復興・再生、東北の発展、停滞している日本経済の成長力を取り戻す「創造的復興の中核拠点」として、念願の福島国際研究教育機構が発足します。

さらに、ALPS処理水の処分、特定復興再生拠点区域外における対応等といった重点課題についても、累次にわたり政府に対する政策提言をしてまいりましたが、これらの取組みはこれからいよいよ具体化していくこととなります。責任ある与党の一員として、引き続き全力でこれらの課題に取り組んでまいります。

一、福島国際研究教育機構

いよいよ、4月から福島国際研究教育機構(F-REI)がスタートします。F-REIは、山崎光悦理事長の明確なビジョンと強いリーダーシップの下、福島の優位性を発揮しながら、日本や世界の抱える課題の解決に資するような研究開発とその産業化・社会実装、そして人材育成・確保等に取り組んでいくこととなっています。

こうしたF-REIの取組みが、被災者の皆様の夢や希望となり、福島をはじめ東北の復興や日本再生に結びつくよう、私たちは、政府や経済界、研究者の方々等と鋭意意見交換をしながら準備に取り組んでまいりました。その結果、政府においてはF-REIの関係府省庁で緊密な連携が可能となるよう関係閣僚会議が立ち上げられたほか、経済界との意見交換等を通じた産学官連携による研究体制の構築が進みつつあります。

また、F-REIは、第1期中期計画期間となる2029年度までの7年間に、施設整備を除く事業規模として1000億円程度を想定しているほか、直接雇用やクロスアポイントメントにより、50程度の研究グループによる数百人規模の国内外の優秀な研究者等が研究開発等の活動に参画する姿を目指します。なお、F-REIが着実に業務を本格実施できるよう、F-REIの当初の施設整備は国が行います。

一方で、F-REIは新たな取組みであり、設立当初は様々な課題に直面すると思われます。岸田総理のリーダーシップの下で、政府やF-REIが一丸となってそうした課題を克服し、福島、東北、ひいては日本全体の創生に向けた科学技術力・産業競争力を強化し、国民生活、日本経済、そして世界経済の発展に貢献していくことを期待したいと思います。

一、原子力事故災害被災地域について

原子力事故災害被災地域では、復興・再生に向けた取組みが引き続き行われております。
いよいよ、特定復興再生拠点区域外への帰還に向けて、福島復興再生特別措置法の一部を改正する法律案が国会に提出されました。これは、2020年代をかけて、自宅に戻りたい人が戻れるようにする、という目標に向けた第一歩です。まずは、中間貯蔵施設の受入れという苦渋の決断を下した、双葉町、大熊町から取組みを進めていくこととなります。
一方で、重要なことは浜通り地域全体が持続可能な形で再生していくことです。特定復興再生拠点区域は、そのための「要」です。2022年には、葛尾村、大熊町、双葉町の復興拠点の避難指示が解除されました。
そのうち、大熊町では、大熊インキュベーションセンターが2022年7月にオープンしました。町民と町外から来た方々との交流の場となり、町内における起業支援拠点となっていくことが期待されています。また、双葉町では、双葉町診療所が2023年2月に開所したほか、産業団地への企業誘致も進んでいます。
今春には、続けて浪江町、富岡町、飯舘村の復興拠点が避難指示解除される見込みとなっています。復興拠点を中心に、浜通り地域全体で広域的に連携しながら移住・定住の促進を図ることで、若者を惹きつけ、日本を牽引していくような、魅力ある地域づくりを進めていく必要があります。
着実に進めていかなければいけない課題も山積しています。東京電力福島第一原子力発電所の廃炉・汚染水・処理水対策は引き続き政府が前面に立って対応していく必要があります。
ALPS処理水については、春から夏頃に海洋放出することが予定されています。これまで、風評対策について様々な具体策を提案してきましたが、風評被害を発生させないことを第一としつつ、引き続き与党・政府一体となって万全の対策に取り組んでまいります。
また、中間貯蔵施設に保管されている除去土壌の県外最終処分に向けては、可能な限り減容・再生利用も行いつつ、国民の皆様方の理解を得られるよう、丁寧な対応を進めてまいります。

一、地震・津波被災地域について

岩手、宮城など地震・津波被災地域では、ハード面での復興はおおむね完了した一方、引き続き心のケア等のソフト施策はしっかり取り組んでいく必要があります。
また、産業・なりわいの振興に関して、三陸海岸の基幹産業である漁業、水産加工業については、気候変動や魚種の変化等により漁業環境が激変し、厳しい状況が続いています。一方で、岩手県陸前高田市では、高い収益性が期待できる木の実の一種、ピーカンナッツを活用しようと、そのための産業振興施設が昨年7月にオープンしました。このように、被災地の取組みの中には、新たな特産品を作り出すことによって復興を後押ししようとする、意欲的なものが見られます。
人口減少や産業空洞化といった、全国の地域に共通する課題を抱える「課題先進地」である被災地に賑わいを取り戻していくためにも、地方創生施策と連携しながら、被災地の課題への取組みを支援してまいります。

一、復興の姿の発信と震災の記憶・教訓の継承

ALPS処理水の海洋放出を控えるなか、科学的根拠に基づき、分かりやすい情報発信が一層求められています。このような情報発信は、国内だけではなく、国外での発信にも万全を期していくことが重要です。これまでの取組みの成果として、2022年には台湾が規制を緩和し、英国やインドネシアは輸入規制を撤廃しました。特に、今年は日本がG7の議長国を務めることを活かし、残る規制の撤廃に向けて、しっかりと訴えかけていく必要があります。
今年の1月、英国ボリス・ジョンソン元首相が福島の桃ジュースを飲む姿がSNSで話題となりました。被災地の魅力を伝えるような取組みを引き続き与党・政府一体となって、進めてまいります。

災害の多い日本では、東日本大震災の記憶と教訓を今後に活かしていかなければなりません。政府では、これまでの復興政策の評価や課題を取りまとめる取組みが進められています。昨年4月から一般公開されている、宮城県石巻市の震災遺構の門脇小学校では、津波と火災による爪痕だけではなく、迅速な避難により校内にいた児童・教師が助かった、という教訓も伝えています。また、宮城県と東北大学は、次世代の語り部等の震災伝承の担い手を育てるため、小学生、中学生、高校生、大学等にみやぎ東日本大震災津波伝承館の解説員となってもらう取組みを始めました。
多くの人に被災地に足を運んでいただくことも重要です。岩手県の東日本大震災津波伝承館では、昨年9月に来館者数60万人を達成しました。
引き続き、与党・政府としても、現地に足を運び、地域の皆様の声をお聞きし、決して風化させることのないように記憶と教訓の継承を担ってまいります。

一、むすび

2023年度には、これまで進めてきた帰還困難区域への帰還や、F-REIといった、様々な取組みが形になっていきます。このほか、廃炉、ALPS処理水の処分、特定復興再生拠点区域の整備など、息の長い取組みにも、しっかりと対応していきます。これらは、創造的復興に欠かせない取組みであり、与党としてもこうした様々な課題への対応について、政府と緊密に連携し、政治主導のもとに責務を果たしていく覚悟です。
むすびにあたり、かねてから主張している創造的復興に向けて、新たな一歩を踏み出すことをお誓いし、東日本大震災12年のメッセージとしたいと思います。