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月刊誌「りぶる」特集 12月号より

世界に誇る日本の花火芸術

(左)磯谷尚孝 公益社団法人日本煙火協会会長、(右)中曽根弘文 自民党花火芸術文化振興議員連盟会長

人々を魅了する日本の花火。自民党花火芸術文化振興議員連盟の中曽根弘文会長と、公益社団法人日本煙火協会の磯谷尚孝会長が、花火業界の現状と、それを支援する議連の活動、花火の魅力や伝統技術、冬に見られる花火大会などについて語り合いました。

取材日:令和4(2022)年10月20日
※マスクは撮影時のみ外しています。

全国の花火大会の中止が相次ぐ
日本の花火芸術を支援する議連の活動とは

中曽根弘文 自民党花火芸術文化振興議員連盟会長

―自民党花火芸術文化振興議員連盟の設立と、会長就任の経緯を教えてください。

中曽根令和2(2020)年は、新型コロナウイルス感染症の拡大に伴い、全国各地の花火大会の中止が相次ぎました。夏の花火大会に向けて、花火の製造等を進めていた花火事業者の経営は逼迫し、このような危機的な状況が続くと、日本の伝統文化である花火は途絶えてしまうのではないかと危惧していました。
 こうした中、磯谷会長をはじめとする花火関係者が、当時の二階俊博幹事長のもとに支援を要請。二階幹事長から私に「自民党には全国で開催している花火大会に縁の深い国会議員が多いのだから、議員連盟を結成して支援してはどうか」とのお話がありました。
 私の地元の群馬県は花火が盛んで、私自身は長年文部科学行政に携わって文部大臣(現・文部科学大臣)を務めたこともあり、議員連盟設立発起人準備会の会長を引き受けることになりました。そして、令和2年12月10日、「花火芸術文化振興議員連盟(以下、議連)」の設立総会で会長に推挙され、会長に就任しました。

磯谷尚孝 公益社団法人日本煙火協会会長

―日本の花火業界を取り巻く現状について教えてください。

磯谷令和2年の売り上げに関するアンケートを、日本煙火協会の会員326社に実施しました。結果は、新型コロナウイルスの感染が拡大する前の1~2割の売り上げしかなく、翌年も状況は変わりませんでした。
 令和4(2022)年は、3年ぶりに夏の行動制限がなく、花火大会は各地で開催されましたが、それでも売り上げは感染が拡大する前の65パーセントほどです。傍から見ると「いままで10~20パーセントだった売り上げが65パーセントになったのだから、もう大丈夫」と思うかもしれませんが、私たちは令和2年・3年と過去に類を見ない痛手を受けていて、将来の見通しは決して明るくはありません。

中曽根議連の設立総会で、二階幹事長(当時)は、国民の苦しみをしっかりと受け止めて、その対策を具体的な行動で示すのが国民政党としての役割であることを強調され、議連は支援の早期実現等を目指して活動してまいりました。
 そして、昨年夏に磯谷会長や花火関係者の皆さんとともに菅義偉総理(当時)らに支援を要請いたしました。

―要請の具体的な内容を教えてください。

中曽根①雇用調整助成金特例措置の期間延長。②大規模(花火大会等)文化行事支援金の新設。③倒産防止給付金の新設。④花火催事開催に伴う開催経費(不足分)助成。⑤東京五輪・パラリンピックでの花火の活用。⑥特例融資制度の実質無利子期間の延長―の6項目です。これらの要請は、厚生労働省、文部科学省、経済産業省に適切に対応していただいているところです。
 花火は日本の伝統文化の一翼を担うものであり、議連ではさらなる支援の充実に努めてまいります。そして、文化振興につながる取り組みにも注力していく所存です。

磯谷花火は人間が生きていく上で、必ずしも必要なものではありません。しかし、人に勇気や希望を与えるという点では、とても重要なものです。
 東日本大震災の後には、1発の花火で「生きる力をもらった」と涙ながらに話す人もいて、改めて花火が世の中にもたらす影響力の強さを実感しました。

花火は日本人の美意識を体現した芸術作品
世代や国境を超えて人々を魅了する

日本の伝統文化の一つである花火
日本の伝統文化の一つである花火
写真提供:磯谷煙火店

―中曽根会長は、どのようなところに花火の魅力を感じますか。

中曽根日本人にとって花火は、とても身近なものです。例えば、手持ち花火や回転花火といった“おもちゃ花火”は種類も豊富で、誰でも気軽に楽しめるところが良いですね。私も子供の頃は、花火で遊ぶのが好きでした。
 また、光と音の一大イベントの花火大会は、浴衣を着て、うちわを持って、お祭り気分も味わえる夏の風物詩。そこで揚がる花火は、伝統技術と花火師の創意工夫が融合した、世界に誇る日本の芸術文化です。
 球形に開く花火は日本独自のもので、奥深い美しさがあります。私自身は、人々を感動させる花火が、花火師の豊かな創造力と卓越した技術力によって生み出された芸術作品であるところに魅力を感じています。
 花火玉は大きいもので直径1メートルを超え、おなかの底まで響く大音量も醍醐味の一つだと思います。それをライブで体感するのは実に爽快で、現代人のストレス発散にも良いのではないでしょうか。

―磯谷会長は、日本の花火の魅力についていかがお考えですか。

磯谷緻密さですね。日本の花火師は、基礎技術を丹念に身に付け、工夫と研究を重ね、独創性のある花火芸術を生み出してきました。その独創性を特に試されるのが「創造花火」で、花火師たちは各地で開催される花火競技大会に参加し、互いに切磋琢磨しながら腕を磨いてきました。日本の花火の完成度、精度の高さは間違いなく世界一です。
 しかしながら、世界の市場に目を向けると、質よりも量を重視する中国花火がシェアの大部分を占めている現実があります。中国で生産に当たっている人たちにとって、花火はあくまで工業製品の扱いであり、ビジネスの道具にしか過ぎません。

中曽根日本の花火は、日本人の美意識を体現しています。見る人の感性や情緒を刺激するのは、そのためだと思います。
 その高い芸術性は国内だけでなく、海外からも称賛され、世代や国境を超えて人々を魅了しています。

磯谷平成29(2017)年4月、国内外の花火関係者が秋田県大仙市に集まり「国際花火シンポジウム」が開催されました。そこで、外国人の皆さんが日本の花火の素晴らしさを熱く話していたのを鮮明に覚えています。

中曽根令和7(2025)年には大阪市の夢洲で「大阪・関西万博」が開催されます。私は、全世界が注目する万博で日本の花火を打ち揚げて、各国からの人にアピールし、楽しんでいただきたいと考えています。

インタビューの続きはりぶる本誌でご覧ください

りぶる12月号

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発行日 毎月15日発行
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定価1部 320円 (税込)

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