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月刊誌「りぶる」特集 6月号より

新型コロナウイルス感染症
「5類」移行でどうなる!?

山際大志郎 新型コロナウイルス等感染症対策本部長
山際大志郎 新型コロナウイルス等感染症対策本部長

5月8日から新型コロナウイルス感染症の「感染症法※1」上の位置付けが、2類相当の「新型インフルエンザ等感染症」から「5類」に移行。この引き下げで何が変わり、私たちはどのようなことに注意すればよいのでしょうか。
新型コロナウイルス等感染症対策本部の山際大志郎本部長に伺いました。

取材日:令和5(2023)年3月31日
※1:「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律」のこと

5類に移行する新型コロナウイルス感染症
予防と治療ができる感染症に

―そもそも感染症とは何ですか。

山際本部長(以下、敬称略)がんや糖尿病、心臓病などさまざまな病気がある中で、感染症の特徴は“人から人へ”うつること。人からうつされることもあるし、自分が人へうつしてしまうこともあり、自分だけの問題では済まないのが、他の病気と異なるところです。
 全般的に病気は予防や治療をする必要がありますが、感染症の場合はそれらに加えて、社会への影響を最小限にする対策や感染拡大を防ぐルールを作っておく必要があります。
 また、ひと口に“感染症”と言っても、その種類はさまざまです。例えば、エボラ出血熱のように致死率の高い感染症があれば、季節性インフルエンザのように流行しても社会・経済活動を止める必要がないものもあります。それらをきちんと整理し、社会活動を維持できるように法律で定めたのが「感染症法」です。
 感染症法では、感染の広がりやすさや症状の重症度などに応じて分類し、政府や地方自治体が講じる措置をそれぞれに定めています。

―感染症法では、新型コロナウイルス感染症はどこに分類されていますか。

山際わが国においては令和2(2020)年1月に最初の感染者が確認され、当初は感染症法上の「指定感染症」に分類されていました。その後の感染拡大を受け、同年3月に「新型インフルエンザ等対策特別措置法(以下、特措法)」を改正。新型コロナウイルス感染症を暫定的に特措法の適用対象に加え、政府は4月に緊急事態宣言を発出しました。翌年2月には、より実効的な感染症対策を行うため特措法等の一部を改正し、新型コロナウイルス感染症を「新型インフルエンザ等感染症」に位置付けました。
 そして、感染状況を踏まえ、飲食店等への営業時間短縮の要請、感染者の入院勧告、個人の行動制限、医療費とワクチン接種の全額公費負担など、感染症を予防し、流行を抑えるためのさまざまな対策を講じてきました。

―新型コロナウイルス感染症の分類を「5類」に移行するのはなぜですか。

山際発生してから3年余りたち、新型コロナウイルス感染症を取り巻く状況が変化してきたからです。
 発生当初は、感染するとどうなるのか、その症状や重症化リスクなどが全く分かりませんでした。しかし、新型コロナウイルスに関する知見の蓄積と解明に向けた研究が進んだことで、重症化や死亡のリスクが減り、新型コロナウイルス感染症は季節性インフルエンザと同様に“予防と治療ができる感染症”になりました。そこで、5月8日から感染症法上の分類を「新型インフルエンザ等感染症」から「5類」に移行することになりました。

山際大志郎 新型コロナウイルス等感染症対策本部長

―重症化や死亡のリスクが減ってきた要因を教えてください。

山際主に二つの要因が考えられます。一つは、新型コロナウイルスの性質が徐々に明らかになり、ワクチンや治療薬、そして治療法などが確立されてきたことです。これらの基盤があるからこそ、国民の皆さまの安心を確保しながら新たな段階に移行できるのです。
 具体的に説明していきましょう。例えば、新型コロナワクチンは感染症の発症予防だけでなく、重症化を防ぐのに有効なことが確認されています。厚生労働省では、ワクチンの3回目接種を受けた人は、重症化と死亡のリスクが明らかに低いことを示す詳細なデータをまとめています。
 ちなみに、国内で承認されたファイザー社やモデルナ社のワクチンは「メッセンジャーRNA」と呼ばれる新しい仕組みのもので、既存のワクチンの概念を覆す革新的な技術が使われています。これにより従前は、半年から1年ほどかかっていたワクチン開発が1カ月ほどで可能になりました。
 治療薬も目まぐるしく進化しています。現在は「ゾコーバ」や「パキロビッド」などの飲み薬が使えますし、点滴薬も何種類かあります。そして医療現場では、人工呼吸器やECMO(体外式膜型人工肺)などの治療機器の活用が進んでいます。
 また、新型コロナウイルス感染症の発生当初は、突然、免疫細胞が暴れ出して炎症が起きる「サイトカインストーム」という症状が原因で亡くなる事例が多く報告されました。今、日本のスタートアップ企業が、サイトカインストームを抑える薬を開発中です。実用化されると、新型コロナウイルス感染症の致死率がさらに大幅に下がることが期待されています。
 このように新型コロナウイルス感染症の予防と治療に関しては、約3年前には誰も想像できなかったほどの進化を遂げているのです。

―二つ目の要因は何ですか。

山際新型コロナウイルス自体が、変異したことが挙げられます。当初は重篤な症状を引き起こす毒性の強いウイルスでした。しかし、現在主流のオミクロン株は、感染力は強いものの症状は比較的軽度です。つまり、ウイルスそのものが弱毒化したことにより、重症化や死亡のリスクが減ってきました。

インタビューの続きはりぶる本誌でご覧ください

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