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月刊誌「りぶる」 4月号より

国土を守る女性たち

特集1:国土を守る女性たち

佐藤信秋 国土強靱化推進本部本部長代理
佐藤信秋 国土強靱化推進本部本部長代理

東日本大震災の発災から10年。
国土強靱化や“災害に強い、ふるさと”の必要性とともに、国土交通分野で活躍する女性たちについて、国土強靱化推進本部の佐藤信秋本部長代理に伺いました。

取材日:令和3(2021)年2月9日
※感染症対策を十分に実施した上でインタビューを行っています。マスクは撮影時のみ外しています。

“災害に強い、ふるさと”の実現に向け
国土強靱化のさらなる加速を

―佐藤信秋本部長代理は新潟県出身です。今シーズンの記録的な大雪について、お考えを聞かせてください。

佐藤昨年12月、大雪によって新潟県内の関越自動車道で一時2000台超の車が立ち往生したニュースは、皆さまの記憶に新しいのではないでしょうか。3年前に福井県内の北陸自動車道や国道8号で発生した大雪による大規模な立ち往生を教訓に、国や高速道路各社はさまざまな対策を講じてきましたが、想定を超える降雪に再び交通の大動脈が寸断され、物流が滞る事態に陥りました。私は、災害対策特別委員会の委員長代理も務めていますが、事前防災の重要性を改めて感じました。
 わが国は、国土の約51パーセントを豪雪地帯が占め、そこに総人口の約15パーセントの人が生活しています。雪と共に暮らす皆さまの安心・安全に万全を期すため、豪雪対策と社会経済活動の両立を図りながら、しっかりと取り組んでまいります。
 道路は、それぞれの地域の皆さまの暮らしを支える大切なものなので、豪雪地帯で雪が降ると除雪作業等で通行を確保します。しかし、その舞台裏で建設業者の方々に、大変なご苦労があることを『りぶる』読者の皆さまに知っていただければと思います。

新潟県津南町の過去56年間の累計積雪図
新潟県津南町の過去56年間の累計積雪図

 このポスター(上記参照)は、日本有数の豪雪地帯である新潟県津南町の過去56年間の累計積雪図を表したものです。最高積雪量は昭和56年1月30日の417センチメートル。しかし、よく見ると、グラフの縦軸が極端に低い年も。例えば、昭和46~47年や平成18~19年は、最高積雪量が1メートルにも達していません。

 平均で大体3メートルほどの積雪になるため、それに備えて除雪機械や人員をたくさん確保すると、万が一、雪がほとんど積もらなければ建設業者は借金を背負うリスクがあります。一方、少雪を前提に体制を整えていては、大雪の時に交通機能が完全に麻痺してしまいます。この、どちらを選んでも“痛し痒し”を解決するには、どうしたらよいのか…。私は20年ほど前から、たとえ少雪で作業が少なくても、除雪機械の維持管理費や業務委託費などを補償する必要性を訴え続けてきました。それが一歩ずつ浸透してきたことをありがたく感じています。
 そして、忘れてはならないのが女性たちの支えです。除雪等を行う建設業者の奥さまたちは、雪が降り始めたら、それこそ午前1時とか2時に起きて、朝ごはんをつくってご主人を送り出しています。こうした女性たちの活躍もあって、わが国の国土は守られているのです。

佐藤信秋 国土強靱化推進本部本部長代理

―国土強靱化については、いかがお考えですか。

佐藤これまで、わが国は数多くの自然災害に見舞われ、そのたびに尊い命が失われてきました。東日本大震災後、わが党は平成23(2011)年10月に国土強靱化総合調査会(現・国土強靱化推進本部)を発足。二階俊博調査会長(現・推進本部長)らと共に“強く、しなやかな国づくり”を目指して活動してきました。自然災害に耐えて人命を守る“強さ”と、被災時には経済社会システムが迅速に回復する“しなやかさ”。これらを、平時からしっかりと計画を立てて備えておくことが、災害に強い国づくりにつながるのです。
 振り返れば、10年前は“強靱化”という言葉すら、なかなか国民の皆さまにご理解いただけませんでしたが、地道な取り組みが実を結びつつあります。
 昨年12月、政府は「防災・減災、国土強靱化のための5か年加速化対策」を閣議決定しました。この事業規模はおおむね15兆円で、激甚化する風水害や切迫する大規模地震等への対策をはじめ、インフラの老朽化対策、デジタル化推進など、重点的・集中的に取り組む計123項目の対策を定めました。

 ポイントを簡潔に述べますと、一つは、期間が現行(防災・減災、国土強靱化のための3か年緊急対策)の3年から5年に延長されたこと。もう一つは、通常の公共事業費に、国土強靱化に特化した対策費が別枠で上積みされたことです。事業規模は現行のほぼ3割増と強化され、国土強靱化のさらなる加速化につながることを期待しています。

東日本大震災で再認識された“命の道”
全国に広がる女性の“みちづくり”の輪

―今年は、東日本大震災の発災から10年になります。

佐藤不幸にして甚大な被害となりましたが、その中にあって道路が果たした意義は大きいと考えます。‟命の道”としてのさまざまな機能を再認識された方も多いのではないでしょうか。その一つが、救命救急や物資の緊急輸送です。特に被害が深刻であった三陸沿岸部に東京方面から人命救助部隊や医療チームを派遣するため、発災の翌朝から道路上の障害物を除去し、緊急輸送ルートをつくる“くしの歯作戦”が始まりました。まず、南北に延びる東北自動車道や国道4号の通行を確保し、そこから沿岸部に通じる道を“くしの歯”状に切り開いていきました。初日の3月12日は岩手、宮城、福島で11本、同15日までに15本の道路が沿岸部までつながり、救命救急や物資の緊急輸送に大きく貢献しました。これは阪神・淡路大震災を教訓に、橋梁の耐震補強工事等を実施してきた成果です。落橋などによる致命的な被害を未然に防ぎ、早期に道路を復旧することができました。
 また発災当時、三陸沿岸道路(復興道路)は3割ほどしか開通していませんでしたが、道路が防波堤の役割を果たして津波を防いだり、避難場所になったりもしました。今年年内には全長570キロメートルの復興道路と復興支援道路が全線開通する予定です。道路ネットワークがつながることにより、東北がさらに強く、元気になることを期待しています。

佐藤信秋 国土強靱化推進本部本部長代理

―東日本大震災後に復興道路等の整備が進んだ理由を聞かせてください。

佐藤女性の強い意志とパワーがあったからです。
 私は国会議員になる前は、国土交通省に務めていました。道路局長だった平成16(2004)年1月、女性の視点から高速道路の必要性を考える“全国みちづくり女性ネット”が設立されました。しかし、それよりもずっと前から、日本各地には通称“女性の道の会”と呼ばれる会が自然発生的にできていて、道路整備に対する地元の声や要望を国に届けていました。その中でも、いわき、福島、双葉、気仙沼、釜石など三陸沿岸部は、特に活動が活発でした。

平成23(2011)年、女性が語る道づくり・地域づくりフォーラム
平成23(2011)年、女性が語る道づくり・地域づくりフォーラム
佐藤信秋 国土強靱化推進本部本部長代理

 東日本大震災で“命の道”が機能したことは大変にありがたかったのですが、そのことで未開通の地域にお住まいの方からは「いつ、ふたたび自然災害が起こるか分からない。一日も早く、われわれの地元にも高速道路整備を」と切実なご意見をたくさんいただきました。そうした時、“女性の道の会”の方々は「ふるさとを守る。夢はあきらめない。少しでも早く実現させる」と、強い意志を持って活動されてきました。私は、あるお母さんが「高速道路は、子供や孫を育てていくのに必要です。そして将来、ふるさとに帰ってくるのに必要なんです」と訴えていた言葉が脳裏に焼き付いています。
 東日本大震災から10年という節目の年に、復興道路や復興支援道路が全線開通を迎えることになったのは、こうした女性たちの努力の結晶。本当に感謝の気持ちでいっぱいです。

 また、先ほど述べました“全国みちづくり女性ネット”は毎年1月、東北復興への思いを込めて全国交流会議を開催しています。今年は、新型コロナウイルス感染症の影響で開くことができませんでしたが、それぞれの地域で活躍されている皆さまが互いに連携し、次世代の子供や孫たちのために、これからも活動を頑張っていただければと思います。
 東京の一極集中を是正し、安全度も経済度も含めて、ふるさとの足腰を強めるには、インフラ整備が不可欠です。私はインフラ整備の究極の目的を“国民の福祉向上”だと考えています。道路は、国民の皆さまの幸せが増大し、福祉が充実するためにあるのです。

インタビューの続きはりぶる本誌でご覧ください

りぶる4月号

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発行日 毎月15日発行
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定価1部 320円 (税込)

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