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月刊誌「りぶる」特集 7月号より

文化庁が京都で本格始動

(右)簗 和生 文部科学副大臣(左)勝目 康 衆議院議員
(右)簗 和生 文部科学副大臣
(左)勝目 康 衆議院議員

文化を守り、日本の芸術文化を世界に、そして次世代に伝えていく役割を担う文化庁。
本庁機能が京都に移転し、5月15日から新体制が本格始動しました。
文化庁を所管する文部科学省の簗 和生副大臣と、京都1区選出の勝目 康衆議院議員が、京都移転の意義、食文化や文化観光、日本博などについて語り合いました。

取材日:令和5(2023)年5月18日

さまざまな伝統文化が息づく京都に本庁機能が移転
東京一極集中を是正し、地方創生を推進

京都市上京区にある文化庁京都庁舎。耐震改修した旧京都府警察本部本館(写真左)と新築した新行政棟(写真右)はブリッジでつながっている
京都市上京区にある文化庁京都庁舎。
耐震改修した旧京都府警察本部本館(写真左)と新築した新行政棟(写真右)はブリッジでつながっている

―文化庁の京都移転について教えてください。

簗副大臣(以下、敬称略)明治時代以降で初となる、中央省庁の移転です。東京一極集中を是正するとともに、文化庁の取り組みを強化し、地方創生等を推し進めるのが狙いです。
 いつ京都に移ることが決まったのか。始めに移転の経緯についてご説明しましょう。
 政府は、京都府、京都市、京都商工会議所からの要望を受けて議論を重ね、平成28(2016)年3月の「政府関係機関移転基本方針」において文化庁の京都移転を正式決定しました。
 翌年4月、文化庁移転の第一歩として、京都市東山区に「地域文化創生本部」を開設。平成30(2018)年には、移転を見据えた抜本的な組織改編を行いました。その後、一部の職員が地域文化創生本部で業務を行い、移転に伴う課題の洗い出しと、それを改善するための具体的な方策等を検討してきました。
 こうした入念な準備を経て、今年の3月27日から京都市上京区で業務の一部を開始。ゴールデンウイーク明けの5月15日から新体制が本格稼働しています。

勝目衆議院議員(以下、敬称略)文化庁が京都に来てくださったことに、地元選出国会議員として感謝申し上げます。
 文化庁の地方移転について、国と京都側の協議に深く関わってきたのは、伊吹文明元衆議院議長です。その地盤を引き継いだ私は、伊吹先生から「多くの人は“文化”と聞くと、神社仏閣や絵画、音楽などを思い浮かべるけれど、それらは表現としての文化財に過ぎない。その背景や根底にある心根や価値観こそが文化であり、日本が大切にしてきたものだよ」と教わりました。
 例えば、京都では朝になると門掃きをしたり、打ち水をしたりします。伊吹先生はこうした古くからの習慣や、行事が残っている京都から発信する文化政策は、安倍晋三総理(当時)が唱える“美しい国”の象徴になるのではないか、とも語っておられました。
 日本の近代化は、西洋に追い付き、追い越すことが大きなテーマでした。しかし、明治維新から150年以上がたち、人々の働き方や暮らし方に対する意識が大きく変容してきている今こそ、原点に立ち返るべきだと考えています。
 私は、さまざまな伝統文化が今も息づく京都に文化庁がやってきたことで、京都以外の地域でも“古来、大切にしてきたもの”にスポットライトが当たることを期待しています。

世界的な文化観光都市として海外からの認知度が高い京都から、日本各地で大切に守り伝えられてきた多様な文化を発信する意義は大きいと感じています。
 また、社会のDX(デジタルトランスフォーメーション)が急速に進む中、デジタル化の強みを生かして文化に触れられる環境を整備する必要性を感じています。京都移転を契機に、例えば博物館資料などのデジタルアーカイブ化も推進していきたいと思います。

新行政棟1階、日本文化をPRする映像を流し、出版物、デジタル複製の屛風(びょうぶ)を並べた「文化情報発信室」
新行政棟1階、日本文化をPRする映像を流し、
出版物、デジタル複製の屛風(びょうぶ)を並べた「文化情報発信室」

文化庁長官の下に二つの本部を新設
食文化と文化観光の推進を図る

簗 和生 文部科学副大臣

―3月27日は、新庁舎で看板の除幕式に参加されましたね。

はい。除幕の瞬間は歴史的な重みを感じました。
 当日は、テレビ会議システムを使って、東京の庁舎にいらっしゃる岸田文雄総理から「京都で働く職員は中央省庁の働き方改革の先駆者として、リモート対応を駆使しながら柔軟な働き方を実践してほしい」と訓示をいただきました。会議室には大型のスクリーンが設置され、東京の庁舎にいる人たちがすぐ近くにいるような感覚で一体感がありました。

勝目私も除幕式に参加しましたが、新しい庁舎を見て、古きを知り、新しき価値を創造する舞台には、ぴったりだなと感動しました。
 庁舎は2棟からなり、その1棟が昭和3(1928)年の昭和天皇の「即位の礼」に合わせて建設された旧京都府警察本部本館です。歴史的建造物を保存・活用する視点で耐震改修され、天井飾りや鮮やかなステンドグラスなど古い意匠や重厚感を残しながら、デジタル化に対応した機能的かつデザイン的に優れた建物に生まれ変わりました。

もう1棟は、新行政棟です。旧京都府警察本部の隣に地上6階建ての建物を新築し、1階から3階までを文化庁の庁舎として使用しています。
 文化庁の組織が新体制となったことで、よりスムーズな業務の遂行が求められています。国会対応や国会議員の先生方へのご説明、部署内あるいは他省庁との調整など、テレビ会議システムをはじめとするデジタル技術を積極的に活用することで、業務を効率的かつ円滑に進めてまいります。

勝目 康 衆議院議員

―京都への移転で、文化庁の体制に変化はありましたか。

多様なニーズに応えるため、全体の政策、企画、調整機能をこれまで以上に強化するとともに、文化庁長官の下に「食文化推進本部」と「文化観光推進本部」を新たに設置。各地の伝統的な食文化の継承や、文化施設を核にした観光振興に力を入れています。
 これらの二つの本部は、より戦略的に国内外に発信するための司令塔としての役割を担う他、令和7(2025)年の大阪・関西万博をターゲットにした、さまざまな企画も検討しています。
 食文化は、勝目衆議院議員も熱心に取り組まれているテーマですね。

勝目 はい。10年前に「和食;日本人の伝統的な食文化」がユネスコの無形文化遺産に、さらに昨年11月には「京料理」が国の登録無形文化財に登録されました。
 京料理が評価された理由の一つは、担い手が複数人から成ること。サービス全体を統括する主人、おもてなしを担当する女将や仲居、京料理特有の技術を交えながら調理する料理人がいます。また、料理そのものだけではなく、接客サービス、床の間や庭園の景色などで食空間を演出する“しつらい”が一体となっていることも重要なポイントですね。
 自然の素材を活かした調理法は、京料理に限らず、和食全体に共通する特徴です。バターやソースを多用する欧米の料理とは異なり、和食は素材の持ち味を塩とだしで際立たせています。

―日本の食文化には、長い歴史がありますね。

勝目特に京都は、平安時代から日本の政治、文化、宗教の中心地として栄えてきた背景から、多様な文化を取り込んできました。また、季節ごとの行事では、旬を活かした料理で大切な人の息災を祈り、お祝いをする。自然の恵みや毎日の暮らしを大切にする心、受け継ぎたい知恵や味なども詰まっています。
 四季を彩るさまざまな食材を練り込んだ京料理は五感で楽しむことができるのが魅力です。観光で訪れた人も、食を通じて京都らしさを体感していただきたいと思います。

インタビューの続きはりぶる本誌でご覧ください

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