会見を行う石破総理
よろしくお願い申し上げます。
本日、臨時国会が閉会をいたしました。この臨時国会に臨むに当たりまして、所信表明演説をいたしたのでありますが、その冒頭、石橋湛山(たんざん)元総理の言葉を引用させていただきました。すなわち、「国政の大本について、常時率直に意見をかわす慣行を作り、おのおのの立場を明らかにしつつ、力を合せるべきことについては相互に協力を惜しまず、世界の進運に伍(ご)していくようにしなければならない」、このような石橋湛山元総理の言葉を紹介し、私ども比較第一党として、他党の皆様方の御意見、これを丁寧に承り、可能な限り幅広い合意形成を図るように一生懸命努力をいたしてまいりました。
今国会では、与野党が侃侃諤諤(かんかんがくがく)の議論を行いました。正に「熟議の国会」、それにふさわしいものになったのではないかと感じておるところでございます。会期末に当たりまして、与野党の皆様、そして、国民の皆様方に心から厚く御礼を申し上げます。誠にありがとうございました。
先般の選挙で示されました国民の皆様方の厳しいお声、これを踏まえまして、政治改革には特に強い思いを持って取り組んでまいりました。
衆議院選挙が終わりました後に、自由民主党総裁として、政策活動費の廃止、いわゆる旧文通費、調査研究広報滞在費と申しますが、この使途公開と残金の返納、改正政治資金規正法に基づく第三者機関の早期設置と、そのような政治改革につきまして、党派を超えた議論を行い、速やかにその実現を図っていく、このような方針を強い決意の下で申し上げた次第でございます。
党内の政治改革本部におきましては、身内の論理、あるいは身内の理屈、このようなものを排除して、自由民主党としての案をまとめたところでございます。国会の政治改革特別委員会におきましては、各党から9本の法案が提出され、与野党で真摯に御議論をいただきました。結果、本日、政治改革法案が成立をしたところでございます。
我が党としての案が採用されなかった論点もございますが、少数与党でございますので、自分たちの意見がそのまま通るわけではないということもよく承知をいたしております。100パーセントでなくても、一歩でも前に進むことが大事であり、それが政治のあるべき姿だと、このように考えておるところでございます。
企業・団体献金につきましては、私どもは「禁止よりも公開」と、このような方針の下、透明化に向けた取組が何よりも重要であると、このように考えておるところでございます。党によって考え方は様々でございまして、今年度末、すなわち、来年の3月末日までには結論を得てまいるということでございます。
また、旧文書通信費につきましては、国会において、各党各会派の合意の上で、使途公開・残金返納に向けた法改正が、これは全会一致で実現をしたところでございます。
自民党総裁として申し上げました改革メニューは、いずれも年内の法制措置を実現することができました。改めまして、お力を頂きました皆様に心から感謝を申し上げる次第でございます。
令和6年度の補正予算につきましても、審議の過程におきましては、国会修正として28年ぶり、補正予算としては初めてとなります国会による修正が可決をし、一部の野党の皆様方の御賛同を得ると、このような形で成立をいたしました。このような国会は与党も野党も初めての経験ではございましたが、審議に参加をして、言いっ放し、あるいは聞きっ放しではない、本当にお互いに議論をするという意味での熟議になったというふうに私は思っておるところでございます。
我が国経済は、これも国会中、何度も申し上げたことでございますが、長きにわたったデフレマインドを払拭する。そして、「賃上げと投資が牽引(けんいん)する成長型経済」、これに移行できるかどうかの分岐点であるという認識を持っております。今般の経済対策を実行し、「コストカット型経済」から「高付加価値創出型経済」へと移行をいたしてまいります。物価上昇を上回る賃上げを実現するため、円滑かつ迅速な価格転嫁を進めてまいりますとともに、省力化・デジタル化投資の促進などを強力に支援いたしてまいります。最低賃金の引上げに向けた取組を強化いたしてまいります。
人への投資、あるいは官民連携の国内投資によって、賃上げの原資となります企業の稼ぐ力、これを高めますとともに、将来も継続的に所得が増加する手立てを講じてまいります。
国民の皆様方にこれらをお届けしていくため、迅速かつ適切な執行に努めてまいります。
来年度に向けまして、国民の皆様方のための施策を切れ目なく講じていかなければなりません。令和7年度予算案も最後の詰めを行っておるところでございまして、(12月)27日には概算決定を行うと、このような予定でおるところでございます。
政府における政策の進捗についてでありますが、本日、新しい地方創生本部におきまして、「基本的考え方」を決定いたしました。当面は人口・生産年齢人口が減少するという事態を正面から受け止めました上で、人口規模が縮小しても経済が成長し、社会を機能させる適応策を講じていくための基本的な視座を整理いたしたところでございます。
私も、生前、随分と御指導を頂いたのでありますが、亡くなられた堺屋太一先生が最後に著されました著書「三度目の日本」という本であります。お読みになった方もおられるかもしれません。この「三度目の日本」という著書において堺屋先生は、明治維新の中央集権国家体制において、「富国強兵」というスローガンの下で「強い日本」というものが目指されたと。戦後、敗戦からの復興や高度経済成長期で目指されたのは、「強い日本」に代わる「豊かな日本」というものでございました。「強い日本」や「豊かな日本」を実現するために、合理的な選択として、あえて国策として一極集中が進められてきたと、このように堺屋先生は論じられておったと記憶をいたしております。それが終わったのが平成という時代であったと。それではこれから先、強いことも豊かなことも、それは価値観として評価すべきではありますが、我々はどういう日本を目指していくのかということであります。堺屋先生はこの本の中で、「楽しい日本」、これを目指すべきだというふうに論じておられます。私はこれを読んだときに、「強い日本」とか「豊かな日本」というのは感覚として分かるのですが、「楽しい日本」というのは何だろうかとずっと考え続けてまいりました。
地方において、人口が増えていません。経済的にも豊かで、それは、国土交通省が出しました、いわゆる所得分布の中央値からプラス・マイナス10パーセント、全体で20パーセントの中間的な御家庭、ここに焦点を絞ってみると、それは、地方も経済的に豊かであるということでございます。もちろん、地方は風光明媚(ふうこうめいび)で、食べ物もおいしくて、人情も豊かで、だけれども、何でそういう地方において人口減少が止まらないのだろうか、ということでございます。問題の本質はそこにあるだろうと私は考えております。特に、人口減少は、若い世代、そして女性の方々、そういう方々が地方から都市へ流出していくと、こういうことが極めて顕著でございます。今の多様性の時代にあって、自己実現の場として地域の魅力を高め、都市と結びついた「楽しい日本」を実現すると、そのような観点から地方創生の検討、そして実現、これを図ってまいりたいと思っております。
防災・減災対策、これを抜本的に強化いたします。今年、元旦に能登半島のあのような地震があり、9月には同じ被災地に豪雨が襲いました。何で自分たちだけがこんな目に遭わねばならんのだと、その悲痛な叫びは多くの人の耳朶(じだ)に残って離れないものだったというふうに思っております。防災対策の抜本的な強化に向けまして、新たに「防災立国推進閣僚会議」を設置し、議論を開始いたしました。国による災害対応の強化、被災地における福祉支援の充実、ボランティアの皆様方との連携促進のための法案を次期通常国会に提出すべく、検討を進めてまいります。「本気の事前防災」、それはもう本当に全身全霊、真剣な、という意味であります。もちろん、今がそうではなかったということを申し上げるつもりはありませんが、全身全霊で、本当に最大限の努力をしてという意味でございます。「本気の事前防災」を推進し、人権というものを基本に置いたスフィア基準(人道憲章と人道対応に関する最低基準)というものがございますが、このスフィア基準を踏まえ、避難所の環境改善を強力に進めるべく、「防災庁」の在り方も具体的に検討を深めてまいります。本格的な冬が、能登半島には訪れております。その被災地に、改めまして、関係省庁の職員を派遣いたしまして、避難所の状況を確認したところでございます。引き続き復旧・復興や被災者の皆様方の御要望の把握に取り組んでまいります。「政府は本当に分かっているんだね」というふうに思っていただくことが、何より重要だと私は考えております。
自衛官の確保にも政府を挙げて取り組んでまいりました。新たに立ち上げました閣僚会議におきまして、基本的な内容を取りまとめたところであり、令和7年度予算案に計上すべきもの、法律・制度の改正が必要なものについて速やかに検討し、可能なものは次期通常国会に提出をいたします。自衛隊員や御家族が、これもまた、「ああ、政府は分かってくれたんだね」というふうに思っていただくこと。そして、「自衛隊にいて、自衛隊に入って本当によかった」と思っていただける、そういう環境を整備することで充足率を向上し、我が国の防衛力の基盤を強化してまいりたいと思っておるところでございます。
厳しく複雑な国際情勢におきまして、この臨時国会中にも首脳外交を展開いたしてまいりました。G7各国との電話協議、あるいは来日されたフィンランド、スウェーデン、北欧各国首脳との会談を通じまして、ウクライナ情勢や中東情勢への対応につき改めて連携と協力を確認いたしました。韓国におきましては、内政上の動きがございましたが、先般、韓悳洙(ハン・ドクス)大統領(権限)代行と電話会談を行い、日韓・日米韓の緊密な連携を維持していくこと、来年の日韓国交正常化60周年に向けた準備を引き続き進めていくということを確認した次第でございます。来年の1月20日には、合衆国におきまして第2期トランプ政権が立ち上がります。トランプ次期アメリカ合衆国大統領とも早期に会談を行い、日米同盟を更なる高みに引き上げていきたいと、このように考えております。
少数与党ではございますが、ハング・パーラメント、日本語に訳せば、宙吊り議会ということになるのでしょうか、ハング・パーラメントの妙味を最大限にいかしながら、多くの方々、様々な方々の御意見を聞いて、目指すべき日本を確立してまいりたいと考えております。
引き続きまして国民の皆様方の御理解と御協力をよろしくお願いを申し上げます。
今国会、お世話になりまして、誠にありがとうございました。厚く御礼申し上げます。