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こども未来戦略方針について岸田内閣総理大臣記者会見(全文)

こども未来戦略方針について岸田内閣総理大臣記者会見(全文)

本日、こども未来戦略方針を閣議決定いたしましたので、そのポイントと、皆様にお届けする支援策の内容を中心にお話いたします。

私は、少子化は我が国の社会経済全体に関わる問題であり、先送りのできない、待ったなしの課題であるとの思いから、不退転の決意で取り組んでまいりました。

2022年の出生数は過去最少の77万人。今の50歳前後に当たる第2次ベビーブーム世代と比べて4割以下となりました。急速に進む少子化、人口減少に歯止めをかけなければ、我が国の経済社会は縮小し、地域社会、年金、医療、介護などの社会保障制度を維持することは難しくなります。若年人口が急減する2030年代に入るまでが、少子化傾向を反転できるかどうかのラストチャンスです。

未婚率の上昇、出生率低下の大きな要因は、若い世代の所得の問題です。若者・子育て世代の所得を伸ばし、若い世代の誰もが、結婚や、子供を産み育てたいとの希望がかなえられるよう、将来に明るい希望を持てる社会をつくらない限り、少子化トレンドを反転することはかないません。

また、社会全体の構造や意識を変えて、家庭内において育児負担が女性に集中している実態を改め、子育て世帯を職場が応援し、地域社会全体で支援する社会をつくらなければなりません。

今回、次元の異なる少子化対策を実現するに当たって、私は、3つのポイントを重視し、この戦略方針を決定いたしました。

第1のポイントは、経済成長実現と少子化対策を車の両輪とした大きなパッケージをお示しし、実行することです。
新しい資本主義の下、30年ぶりとなる高い水準の賃上げが実現し、企業部門には高い投資意欲が醸成されています。30年間続いたデフレ経済、コストカット経済の悪循環を断ち切る挑戦が、確実に動き始めています。こうした流れを確実なものとし、持続的で構造的な賃上げと人への投資、民間投資増加の流れを加速化することで、安定的な経済成長の実現に先行して取り組んでまいります。

あわせて、少子化対策の強化に当たっても、経済的支援の充実を第1の柱に据え、児童手当の大幅な拡充、高等教育費の負担軽減、出産費用の保険適用、「106万円・130万円の壁」の見直しなど、これまで長年指摘されながら実現できなかった経済的な支援策の拡充を思い切って実現いたします。
このように、経済成長の実現と少子化対策の強化、この両輪を通じて、若者・子育て世代の所得を伸ばすことに全力を傾注していきます。

財源確保に当たっても、経済成長を阻害し、若者・子育て世代の所得を減らすことがないよう、言わばアクセルとブレーキを同時に踏むことがないよう、まずは徹底した歳出改革等によって確保することを原則とします。このため、全世代型社会保障を構築する観点から、歳出改革の取組を徹底するほか、既存予算を最大限活用いたします。

経済を成長させ、国民の所得が向上することで、経済基盤及び財政基盤を確固たるものとするとともに、歳出改革等によって得られる公費の節減等の効果と社会保険負担軽減等の効果を活用する中で、国民の実質的な追加負担を求めることなく、新たな支援金の枠組みを構築し、少子化対策を進めてまいります。

第2のポイントは、2030年代までがラストチャンスであることを踏まえた規模の確保です。

まず、加速化プランの規模は、3兆円半ばといたします。これにより、我が国のこども・子育て予算は、子供1人当たりの家族関係支出で見て、OECD(経済協力開発機構)トップのスウェーデンに達する水準となり、画期的に前進することとなります。また、今回の措置で、こども家庭庁予算は5割以上増加することとなり、こども予算倍増が現実のものとして視野に入ってきます。今後、加速化プランの効果も見極めながら、更に検討を進め、2030年代初頭までに、こども家庭庁予算の倍増を目指していきます。

第3のポイントは、同じく2030年代がラストチャンスであることを踏まえたスピード感の重視です。先ほど申し上げたとおり、財源は徹底した歳出改革等を複数年にわたって積み上げて確保する一方、2030年の節目に遅れることがないよう、加速化プランの大宗は、今後3年間で着実に実施に移します。出産育児一時金の引上げや0歳から2歳の伴走型支援は今年度から、児童手当や「こども誰でも通園制度」の取組を始め、必要な政策は来年度から速やかに実施していきます。

また、スピード感を重視する観点から、3月に小倉大臣がまとめた試案には盛り込まれず、第2弾で行うとしていた高等教育の更なる支援拡充と、貧困、虐待防止、障害児、医療的ケア児に関する支援策を、私の指示で前倒しして実施することにいたしました。

なお、支援策をスピード感を持って実施する一方で、歳出改革等の完了に複数年を要することで生じる財源不足については、「こども特例公債」を活用してまいります。

次に、国民の皆様にお届けする支援強化の内容についてお話いたします。

これまで4回のこども政策対話、6回のこども未来戦略会議の議論などを通じて、子育て当事者の方々、独身の方々、子育てOB・OGの皆様、現場や有識者、専門家の方々から、多くの意見を伺ってきました。

加速化プランは3つの基本理念、すなわち、第1に、若い世代の所得を増やすこと。第2に、社会全体の構造や意識を変えるということ。第3に、全てのこども・子育て世帯をライフステージに応じて切れ目なく支援すること、この3つを柱として、抜本的に政策内容を強化します。

第1に若い世代の所得を増やすについてです。

構造的な賃上げや労働市場改革とセットで、少子化対策の中においても、経済的支援に重点を置いて抜本的に強化いたします。児童手当については所得制限を撤廃するとともに、高校生の年代まで支給期間を3年間延長し、そして第3子以降は3万円に倍増します。これらは来年10月分から実施したいと考えています。これにより、3人のお子さんがいる御家庭では、お子さんたちが高校を卒業するまでの児童手当の総額は、最大で約400万円増の1,100万円となります。

さらに、大学に進んだ場合の高等教育について、授業料減免の対象を年収600万円までの多子世帯等に拡大するとともに、私の指示で、更なる支援拡充を加速化プランに前倒しして実施することといたしました。

このほか、子育て期の家庭の経済的負担に配慮した貸与型奨学金の返済負担の緩和、授業料後払い制度の抜本拡充などに取り組みます。

また、出産費用については先行して、今年度から42万円の出産育児一時金を50万円に大幅に引き上げました。費用の見える化を進め、多様なサービスを皆様が選べる環境を整えながら、第2ステップとして、2026年度からの出産費用の保険適用などを進めます。

働く子育て世帯の収入増を後押しします。「106万円、130万円の壁」による就労制限は、長く指摘されてきた課題でした。共働き世帯を支援するため、「106万円の壁」を超しても手取り収入が逆転しないよう、必要な費用を補助するなどの支援強化パッケージを本年中に決定し、実行に移します。

また、週20時間未満のパートの方々に雇用保険の適用を拡大し、育児休業給付が受け取れるようにするとともに、育児中の自営業やフリーランスの方々に対する国民年金保険料免除措置を創設します。

住宅が課題であるとの指摘も多く頂きました。子育て世帯が優先的に入居できる住宅を今後10年間で計30万戸用意いたします。フラット35の金利を子供の数に応じて優遇することとし、2024年度までのできるだけ早い時期に導入いたします。

次に、第2の基本理念、社会全体の構造や意識を変えることに関して、具体策を申し上げます。

これまでも申し上げているように、少子化には、我が国のこれまでの社会構造や人々の意識に根差した要因が関わっています。個々の政策の強化はもちろんですが、個々の政策をいかすためにも社会を変えることが必要です。

企業においても職場の文化、雰囲気を抜本的に変え、男女ともに希望どおり、気兼ねなく育休が取れるようにしていく必要があります。時間はありません。職場が思い切って変わっていくように育児取得率目標を大幅に引き上げて、2030年には85パーセントの男性が育休を取得することを目標とし、育休が当たり前になるようにいたします。

各企業の取組は、有価証券報告書などを通じて見える化します。中小企業の御負担には十分に配慮し、育休を取った職員に代わる応援手当など助成措置を大幅に拡充し、育休取得に熱心な企業ほど多く支援が行くように傾斜をつけた仕組みにいたします。

こうした職場文化の変革とセットで育児休業制度を抜本的に拡充いたします。利用者の方々の声を踏まえて、キャリア形成との両立を可能にし、多様な働き方に対応した、自由度の高い制度へと強化いたします。

具体的には、時短勤務やテレワークなど多様な働き方を選べる環境を整備して、子供と過ごせる時間をつくれるようにするとともに、育児期間中に完全に休業した場合だけでなく、時短勤務を選んだ場合にも給付をもらえるようにいたします。また、産後の一定期間に男女で育休を取得した場合の給付率を、手取り10割相当に引き上げます。これらにより、夫婦で育児、家事を分担し、キャリア形成や所得の減少への影響を少なくできるようにします。

これらの拡充策によって、育児休業給付に関連する予算額は2倍に増加します。支援策の内容は世界トップレベルです。是非、育児休業給付を取りやすい職場づくり、働き方改革を進め、子供と過ごせる時間をつくっていただきたいと願っています。

3月の記者会見でも申し上げましたが、日本の社会は子育てに必ずしも温かくないと言われます。社会の意識を改革し、社会全体で子育て世帯を応援する社会を皆様と共につくっていきたいと思っています。

その先駆けとして、新宿御苑や科学博物館などの国の施設における専用レーン、公共交通機関等におけるベビーカー使用者のためのフリースペースといった取組から始め、こども・子育てに優しい社会づくりのための意識改革を広げていきます。このように、職場、そして社会全体の意識と構造を変える。これを国民運動として展開していきます。

最後に、第3の基本理念、全てのこども・子育て世帯をライフステージに応じて切れ目なく支援することに関する支援策を御紹介します。

これまでも、保育所の整備、幼児教育・保育の無償化など、こども・子育て政策を強化してきました。しかし、この10年間で取り組むべき政策は更に多様に変化してきています。親の就業形態にかかわらず、どのような家庭状況にあっても分け隔てなく、ライフステージに沿って切れ目なく支援を行うことが必要です。

こうした観点から、これまで支援が比較的手薄だった、妊娠・出産時から0歳から2歳の支援を強化していきます。この時期の子育て家庭に対して、10万円の経済的支援と併せて、様々な困難、悩みに応えられる伴走型支援を強化していきます。

また、これまでの保育所のコンセプトを変え、働いているかどうかを問わず、時間単位で柔軟に利用できる「こども誰でも通園制度」を創設いたします。既に先駆的に取り組まれている松戸市の「ほっとるーむ八柱」を先日訪問しました。父親同士のつながりのきっかけとなった、産後のつらい時期に専門スタッフのサポートが得られたなど、様々な声を聴かせていただきました。速やかに全国的な制度とすべく、来年度から制度化の取組を始めたいと考えています。

そして、保育所については、長年の保育基盤拡大の努力により、待機児童問題については一定の成果が得られました。これからは量の拡大から質の向上へと政策の重点を移し、75年ぶりに保育士の配置基準を改善し、保育士さん1人が見る1歳児を6人から5人にするほか、保育士の処遇改善に取り組んでまいります。

さらに、貧困、虐待防止、障害児や医療的ケア児など、特に支援強化が必要な課題については、多様な支援ニーズにきめ細かい対応をしていくことが重要です。この点については、先日、私からこども大綱の策定過程で具体化を図りながら、前倒しで支援強化を進めることを指示したところです。これらを通じて、全てのこども・子育て世帯について、親の働き方やライフスタイル、子供の年齢に応じて、切れ目なく必要な支援が包括的に提供される、総合的な制度体系を構築してまいります。

以上、少子化対策でのポイントと皆様にお届けする支援策の内容を中心にお話しいたしました。今後、このこども未来戦略方針の具体化を進め、戦略を策定するとともに、必要な制度改革の法案を提出してまいります。

その関連で、財源について年末に先送りとの報道があります。歳出改革等を通じて財源を確保するに当たり、歳出改革の内容は毎年の予算編成を通じて具体化していくこととなりますが、こども未来戦略方針で決定した、全世代型社会保障を構築する観点から、歳出改革等の取組を徹底する、このことによって、実質的に追加負担を生じさせないことを目指すとの方針は揺るぎないものであり、先送りとの指摘は適切ではないということを申し上げておきます。

2030年までがラストチャンスです。不退転の決意を持って、経済成長と少子化対策を車の両輪として、スピード感を持って実行してまいります。

皆様の御理解と御協力を心からお願いいたします。

こども未来戦略方針について岸田内閣総理大臣記者会見(全文)