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記者会見経済

総合経済対策についての岸田内閣総理大臣記者会見

岸田内閣総理大臣

本日は、経済対策についてお話をいたします。

3月、4月、7月、そして9月の対策に引き続き、先ほど大型の総合経済対策を閣議決定いたしました。今回の対策は「物価高克服・経済再生実現のための総合経済対策」です。

物価対策と景気対策を一体として行い、国民の暮らし、雇用、事業を守るとともに、未来に向けて経済を強くしていきます。

今回の対策は、財政支出39兆円、事業規模で約72兆円、これによりGDP(国内総生産)を4.6パーセント押し上げます。また、電気代の2割引下げやガソリン価格の抑制などにより、来年にかけて消費者物価を1.2パーセント以上引き下げていきます。

物価対策として重点を置いたのは、エネルギー価格対策です。もろもろの物価高騰の一番の原因となっているガソリン、灯油、電力、ガスに集中的な激変緩和措置を講じることで、欧米のように10パーセントものインフレ状態にならないよう皆さんの生活を守ります。

まず、物価高から生活を守ります。家庭の電気代について、1月から来年度初頭に想定される平均的な料金引上げ額約2割分を国において負担いたします。事業者に対しては、再エネ賦課金に見合う額を国において負担する措置を講じます。ガス料金についても同等の措置を行います。また、現在、1リットル当たり30円引きとなっているガソリン価格の引下げを来年も継続いたします。これらにより、総額6兆円、平均的な一家庭で来年前半に総額4万5,000円の支援となります。

危機的な少子化の流れの中で、子育て世帯を応援するため、妊娠時から出産・子育てまで、一貫した伴走型相談支援と、10万円相当の経済的支援を組み合わせたパッケージを創設します。来年4月から出産育児一時金の大幅な増額を行います。こども食堂やこどもの居場所づくりなど、経済的な困難に直面する子育て世帯への支援も強化します。

園児バス置き去り事故を受け、痛ましい事故が二度と起こらないよう、来年の夏に向け、安全装置を義務化し、国が標準的な装置を全額負担する支援制度を設けます。

コロナ禍で縮んだ旅行、宿泊、エンタメ等の消費を取り戻します。全国旅行支援は、4人家族で1泊当たり4.4万円の割引となり、イベント割で映画館、テーマパークは2割引きとなります。(新型)コロナ(ウイルス)の影響を大きく受けた演劇、コンサートの開催費用を支援します。観光資源を高品質化し、観光収入が上がるよう、客室改装などソフト・ハード両面で強力に支援をいたします。こうした稼ぐ力を強化することで、地方も元気になります。

そして、物価高から中小企業を守ります。下請いじめを撲滅し、適正な価格転嫁を実現してまいります。(新型)コロナ(ウイルス)で傷んだ中小企業に新たな100パーセント保証の借換制度を用意するとともに、新規輸出に挑戦する中小企業1万者を支援いたします。

以上の物価高への総合的対応とともに、最優先すべきは、物価上昇に合わせた賃上げです。来年春闘が成長と分配の好循環に入れるかどうかの天王山です。構造的賃上げの実現に向けた第一歩として、物価上昇に負けない賃上げが行われるよう、経団連、連合を巻き込んだガイドラインづくりなど、労使の機運醸成に全力を挙げてまいります。

政府も賃上げ実施企業に対する補助金や、公共調達の優遇を行うとともに、物価上昇をしっかり組み込む形で最低賃金を引き上げてまいります。

さらに、持続的な賃上げに向けて、賃上げ、労働移動、人への投資の一体改革を進めていきます。このため、新しい資本主義の第1の柱である人への投資を抜本強化し、5年1兆円の大型のパッケージにより、正規化、転職、リスキリング、すなわち、成長分野に移動するための学び直しを支援いたします。

同時に、NISA(少額投資非課税制度)、iDeCo(個人型確定拠出年金)を拡充し、資産運用収入の倍増を目指します。

物価高を抑えながら、円安のメリットも上手にいかしていきます。ウィズコロナの時代に合わせた、質の高いインバウンド需要5兆円を早期に達成します。半導体、蓄電池など、攻めの国内投資を拡大して、最先端製造立国日本を取り戻します。

農産物についても、年間2兆円を目指し、農産物の輸出促進を図ります。

攻めの国内投資の代表例として半導体があります。国内投資の好機と捉えて、サプライチェーンを強靱(きょうじん)化します。熊本のTSMC(台湾積体電路製造)誘致は10年で4兆円、7,000人の雇用増の地元経済効果があるとされます。月給も5万円の上昇になります。さらに、日米共同による次世代半導体開発など、1.3兆円を措置して、半導体の国内投資を全国展開します。

地域と経済を抜本的に強くするために、重点4分野、スタートアップ、イノベーション、デジタル・トランスフォーメーション(DX)、グリーン・トランスフォーメーション(GX)に総額6兆円と前例のない支援措置を講じます。

来年に向けて世界経済が大きく減速する中で、日本の金融環境、ドル建てコストの割安感を逆手にとって、成長のチャンスとしていきます。スタートアップ5か年計画をスタートし、1兆円を投入して、人材育成、資金供給の強化を行います。

特に、次世代分野での攻めの大型民間投資を呼び起こします。今回措置する中で、先端半導体、電池、ロボットなど、民間投資を誘発する次世代分野に約3兆円を投じます。この支援によって、9兆円以上の生産誘発効果、2兆円以上の輸出増効果、約49万人の雇用者増をもたらす次世代大型投資を誘導します。

地域に関連産業、人材育成などを一体化した産業プラットフォームをつくってまいります。

以上、政府・与党で本日決定した総合経済対策のポイントを説明しました。

今回の取りまとめに当たっては、政治主導の大局観を発揮することを重視しました。与党の政策審議プロセスを例年より早く動かし、電気料金の激変緩和措置の大枠は与党党首で決め、詳細を役所に詰めさせました。野党の提案についても、参考とすべきものは、直接お伺いする機会をつくりました。

核兵器の威嚇が行われるなど、ウクライナ情勢は緊迫の度を加えています。世界は、歴史上初めて、真のエネルギー危機に直面している、こう見る専門家もいます。現時点で見通し難い世界規模の経済下振れリスクに備え、トップダウンで万全の対応を図ることといたしました。

今後は、この経済対策をできるだけ早くお手元にお届けするよう、補正予算の編成を急ぎます。また、御用意した政策を国民の皆さんに徹底的に御活用いただけるよう、発信と広報に全力を挙げてまいります。

国民の皆さんの御理解と御協力を心からお願い申し上げます。