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記者会見経済財務金融

原油価格・物価高騰等総合緊急対策等についての岸田内閣総理大臣記者会見(全文)

岸田内閣総理大臣

まず、会見に先立ち、23日に北海道知床沖で発生した観光船の事故で亡くなられた方々に対し、心より哀悼の意を表するとともに、御家族の方々にお悔やみを申し上げます。
依然15名の方の行方が分かっていないことから、引き続き関係省庁において、全力を挙げて捜索救助活動に取り組んでまいります。
また、今回事故を起こした事業者への特別監査に加え、昨日より、全国の運輸局において、旅客船事業者に対する緊急安全点検を一斉に実施しており、安全・安心の確保に努めてまいります。

そして、先ほど原油価格・物価高騰等総合緊急対策を決定いたしました。本日は、この対策を中心に、現下の状況を踏まえた経済財政運営についてお話いたします。
新型コロナによる国民生活や経済への影響が続く中、ロシアによるウクライナ侵略などの影響により、世界規模で不確実性が高まり、原油や穀物の国際価格の上昇、一部の水産物や原材料等の安定供給の滞りなど、国民生活に不安が生じています。
先月、豊洲でお話を伺った食品関連産業の皆さん、今月訪問した新潟県燕三条の中小ものづくり企業の皆さん、また、石川県でお会いした農家や主婦の方々、皆さん、原油価格や食材価格の上昇に苦しみながらも、どうにかこの局面を打開しようと必死に取り組んでおられました。
原油価格や物価の高騰が、コロナ禍からの社会経済活動の回復の妨げになることは何としても防がなければなりません。これまでも、昨年11月の経済対策においてエネルギー高騰対策、3月には原油価格高騰に対する緊急対策を取りまとめ、迅速に実施してきました。
他方、ウクライナ情勢や、これに伴う原油、原材料、穀物等の価格の高騰、物流の不安定化は予断を許さず、引き続き中長期的視野を持ちつつ、先手先手で対応を進めていく必要があります。

こうした考えの下、私は、2段階のアプローチで万全の経済財政運営を行ってまいります。
第1段階は、本日決定した事業規模13兆円の総合緊急対策です。ウクライナ情勢に伴う原油価格や物価の高騰による国民生活や経済活動への影響に、緊急かつ機動的に対応し、コロナ禍からの経済社会活動の回復を確かなものとするため、今月中に一般予備費、コロナ予備費の使用を閣議決定し、速やかに実施に移し、皆様のお手元に各種支援策をお届けしてまいります。
その上で第2段階として、6月までに新しい資本主義のビジョンと実行計画、骨太方針2022を取りまとめます。今年の夏の参議院選挙後に、これらを前に進めるための総合的な方策を具体化し、エネルギー分野も含め、経済社会の構造変化を日本がリードしてまいります。
さらに、第2段階までの間、新型コロナウイルス感染症の再拡大や、ウクライナ情勢の長期化に伴う原油価格、物価の更なる高騰等の可能性など、状況は予断を許しません。
こうした不透明な情勢に伴う予期せぬ財政需要にも迅速に対応し、国民の安心を確保していく必要があります。このため、今回の総合緊急対策の一環として、5兆円の新型コロナウイルス感染症及び原油価格・物価高騰対策予備費等の確保や、6月以降の燃料油価格の激変緩和事業を内容とする補正予算を今国会に提出、成立を図り、いかなる事態が生じても国民生活を守り抜けるよう、万全の備えをとります。

それでは、本日決定した総合緊急対策について御説明いたします。
対策の柱は4つです。

第1に、原油価格の高騰への対応です。燃料油の価格対策については、4月までの間、1リットル当たり25円の範囲で補填をして、レギュラーガソリン価格を172円程度に抑えてきました。今般、3党の検討チームの結論を踏まえ、これまでの激変緩和措置を強化して、5か月分で約1.5兆円規模の新たな補助制度を設けます。
新制度では、基準価格を当面168円に引き下げるとともに、燃料油価格の更なる高騰にも対応できるよう、補填の上限を35円に引き上げます。これによって、仮にガソリン価格が200円を超える事態になっても、市中のガソリンスタンドでの価格は、当面168円程度の水準に抑制します。
さらに、万一、国際原油市場価格が、例えば1バレル150ドルといった前例のない水準まで高騰し、35円を超えて補填が必要になった場合にも、価格上昇分の2分の1を支援して、国内価格の上昇を抑制いたします。
そして対象油種は、ガソリン、軽油、重油、灯油に加えて、航空機燃料も対象といたします。さらには、タクシー用LPガスにも同様に支援いたします。このほか、運輸、農林漁業、生活衛生関係営業など、影響が大きい業種への支援を進めます。

第2の柱は、エネルギー、原材料、食料等の安定供給対策です。省エネ住宅の支援など、省エネ・クリーンエネルギー利用を一層推進し、極力、輸入資源に頼らないエネルギー構造に転換いたします。
事態の長期化を見据え、ロシアやウクライナに輸入の多くを頼っていた半導体原料や、パラジウムなどの産業用原材料の調達の多様化を進めます。
産油国への原油増産の働き掛け、エネルギー調達の多角化に加え、エネルギー源の多様化に向けて、再エネの最大限の導入と、原子力の活用を進めていくこともエネルギー市場の安定化、低廉かつ安定的なエネルギー供給確保のために極めて大切です。関係諸国とも連携しながら、全力を尽くします。
食料などの価格上昇は家計にとって重大な問題です。
輸入小麦については、政府が買い付け、国内の製粉会社に売り渡しています。ウクライナ情勢で国際価格は1割以上、足元で上昇していますが、9月までの間、政府の販売価格を急騰する前の水準に据え置きます。あわせて、輸入小麦から国産の米や米粉、国産小麦への切り換えを支援いたします。
農業については、肥料原料の安定的な調達を支援するほか、配合飼料のセーフティネット基金の積み増しなどにより、輸入価格高騰の経営への影響を緩和していきます。
漁業については、水産加工業に対し、カニ、ウニ、そしてイクラ等のロシア産水産物等に代わる原材料の調達を支援するほか、ロシアとの間の漁業協定に基づく操業に不確実性が高まっていることを踏まえ、関係漁業者への支援を機動的に行います。
さらに、木材についてロシアからの輸入を一部禁止したことを踏まえ、国産材の活用を支援いたします。

第3の柱は、中小企業支援です。引き続きエネルギーコスト、原材料費、労務費等の上昇分を適切に価格に転嫁できるよう、取引の適正化を進めます。公共調達や補助金における優遇措置を設け、賃上げを推進します。
政府系金融機関によるセーフティネット貸付の金利を更に引き下げるとともに、実質無利子・無担保融資を9月末まで延長し、資金繰りに万全を期します。
また、事業再構築補助金に特別枠を創設し、原油価格や物価高騰の中で新規事業に挑戦する企業を後押ししてまいります。

第4の柱は、コロナ禍において、物価高騰等に直面する生活困窮者等への支援です。緊急小口資金等の特例貸付など、生活困窮者支援策の申請期限を延長するとともに、低所得の子育て世帯に対し、子供1人当たり5万円の給付金をプッシュ型で支給し、生活を守るセーフティネットを強化いたします。
コロナ禍の影響の長期化に伴い、孤独・孤立に悩む方々をNPO等の活動を通じて、きめ細やかに支援いたします。
地方創生臨時交付金を大胆に拡充し、1兆円の原油価格・物価高騰に対応した枠を新設します。これにより、国が行う支援策に加え、地方公共団体において、地域の実情に応じて生活困窮者の方々の生活支援や、農林水産業者や中小企業者の支援を始め、電気、ガス料金などの物価高騰を受けた生活者や事業者の負担の軽減をきめ細かく行えるようにします。
また、学校給食費の負担軽減に向けた自治体、教育委員会の判断、取組をしっかり後押しいたします。

そして最後に、ゴールデンウイークを迎えるに当たって、新型コロナ対策への御協力をお願いいたします。
国民の皆様の御協力のおかげで、3年ぶりにまん延防止等重点措置や緊急事態宣言のないゴールデンウイークとなります。しかし、油断は禁物です。感染の再拡大を防ぎながら、徐々に社会経済活動を回復させていくことができるよう、国民の皆様に次の3点の御協力をお願いいたします。

第1に、ワクチン接種の促進です。日頃、仕事や学校で忙しくされている方も、連休の機会にワクチンの接種をお願いいたします。3回目の接種は感染防止に効果があり、特に重症化を防ぐことができます。御自身や親しい方々を守るため、是非接種をお願いいたします。

第2に、積極的な検査の活用です。帰省される方は、帰省される前に3回目の接種又は検査を受けていただくようお願いいたします。お近くの無料検査の拠点で検査を受けていただけるほか、連休中は主要な駅や空港等で臨時の無料検査拠点を拡充いたします。

そして第3に、基本的な感染対策の徹底です。改めて、マスクの着用、手指消毒、そして換気、3密の回避といった対策の徹底をお願いいたします。引き続き平時への移行期間として最大限の警戒感を維持しながら、徐々に社会経済活動を回復させてまいります。

国民の皆様の御理解と御協力をよろしくお願いいたします。