
経済演説を行う城内内閣府特命担当大臣(経済財政政策)
一.はじめに
経済財政政策担当大臣として、その所信を申し述べます。
二.経済財政運営の基本姿勢(経済財政運営の目的)
高市内閣は、今の暮らしや未来への不安を希望に変える「強い経済」の実現を最大の使命としています。このため、長年続いてきた過度な緊縮志向、未来への投資不足の流れを断ち切り、「責任ある積極財政」への政策転換を進めます。そして、今なすべき取組を見極めながら、大胆かつ戦略的な「危機管理投資」と「成長投資」を行います。これにより、国民の安全・安心を確保するとともに、雇用と所得を増やし、潜在成長率を引き上げてまいります。「責任ある積極財政」とは、将来世代に負担を先送りする財政ではありません。将来世代がこの国で働き、挑戦し、誇りを持って生きていくための基盤を、今の世代が責任を持って築く財政です。投資を怠ることこそが、最も無責任となる時代に、私たちは生きています。
主要先進国の経済政策の潮流も、市場原理に過度に依存する新自由主義的発想、すなわち市場の働きに委ね過ぎる考え方から転換しています。例えるなら、天動説から地動説へと世界観が変わるようなパラダイムシフトであります。近年は、国民の暮らしや経済の基盤を守り、将来の成長力を高める観点から、官民連携の下で戦略分野への投資を進め、戦略的な国内投資の拡大を通じて国力の増大を図る経済財政運営が、各国で本格化しています。世界経済は既に、不可逆的な潮流の中にあるのです。我が国も、こうした時代の要請に応える経済財政運営を力強く進めていかなければなりません。経済財政運営の目的は、国民一人一人の暮らしを豊かにすることにほかなりません。
経済財政運営の手段と目的を取り違えることなく、これまでの発想を躊躇ちゅうちょなく見直し、経済成長の果実を広く国民に届けてまいります。
こうした高市内閣の経済財政運営の考え方、いわゆる「サナエノミクス」について、国内外からの理解と共感を得ることが重要であり、関連施策の機動的・戦略的広報を強化し、私も先頭に立って積極的な情報発信に努めてまいります。
(経済財政運営の基本的考え方)
経済財政運営においては、「責任ある積極財政」の考え方の下、財政の持続可能性に十分配慮しつつ、戦略的に財政出動を行うことにより、我が国の供給構造を強化します。
これにより、暮らしの安全と安心を確保し、雇用と所得を増やし、消費マインドを改善し、事業収益が上がる「強い経済」を構築します。この好循環を実現することで、国民の皆様に、賃金の上昇や雇用の安定、地域経済の活性化といった景気回復の果実を実感していただき、日々の暮らしと未来への不安を「希望」に変えてまいります。
その上で、成長率の範囲内に債務残高の伸び率を抑え、政府債務残高の対GDP比を安定的に引き下げていくことで、財政の持続可能性を実現し、マーケットからの信認を確保してまいります。本年一月の「中長期の経済財政に関する試算」では、財政状況が着実に改善する姿が示されました。
事業者に安心して研究開発や設備投資をしていただけるよう、複数年度予算や長期的な基金による投資促進策を大胆に進めます。特に、投資を上回るリターンを通じてGDPの成長にも資する危機管理投資、成長投資などについては、債務残高の対GDP比引下げにもつながるよう、予算上、多年度で別枠で管理する仕組みを導入します。また、毎年補正予算が組まれることを前提とせず、必要な予算は当初予算で措置するべく、予算の在り方について今年の骨太方針に向けて議論を進めてまいります。
引き続き、「強い経済」の構築と「財政の持続可能性」の実現を両立させ、それを次の世代に引き継いでいく、こうした取組が、今を生きる私たちが、将来世代に対し果たすべき責任と考えます。グローバルな潮流も踏まえ、大胆な経済財政運営を推進してまいります。
こうした基本姿勢の下、当面の経済財政運営と今後の重点課題について申し述べます。
三.当面の経済財政運営
我が国経済は、長く続いた「デフレ・コストカット型経済」から、その先にある新たな「成長型経済」、すなわち、国民の賃金が上がり、企業の投資が増える経済へと移行できるかどうかの分岐点に立っています。足元の景気は緩やかな回復局面にありますが、潜在成長率の伸び悩みといった構造的な課題も残されています。こうした課題に対し、政府は先頭に立って立ち向かい、景気回復の力をもっと強く、そして、地方や中小・小規模事業者の皆様に広げ、日本全国で「景気が良くなってきた」と実感していただけるよう、景気の体感温度を高めていかなければなりません。
こうしたことから、高市内閣は、不安を希望に変える「強い経済」を構築するため、昨年十一月、三本の柱からなる総合経済対策を取りまとめました。
第一の柱は、「生活の安全保障・物価高への対応」です。「重点支援地方交付金」は、多くの地方公共団体で事業が開始され、こども一人当たり二万円の物価高対応子育て応援手当は、ほとんどの市区町村において年度内に支給が予定されています。また、一月から三月までの電気・ガス代の支援等も実施しています。
第二の柱は、「危機管理投資・成長投資による強い経済の実現」です。十七の戦略分野において官民が連携した積極的な投資を実現します。あわせて、先端科学技術の支援など、国民の暮らしと雇用を守り、次の成長を生み出す投資の拡大を進めます。
第三の柱は、「防衛力と外交力の強化」です。防衛力の抜本的強化を進めるとともに、「自由で開かれたインド太平洋」を推進し、米国関税措置への対応については日米戦略的投資イニシアティブに必要な措置を講じます。我が国の平和と安定を守り、経済活動と国民生活の基盤を確かなものとします。
本総合経済対策については、本年度末までに施策の約八割が、国民・事業者等が事業や支援策にアクセス可能な状況となる見込みであるなど、既に多くの施策が進捗しています。引き続き、本総合経済対策の裏付けとなる令和七年度補正予算を速やかに執行し、一刻も早く国民の皆様に支援をお届けしてまいります。
また、令和八年度予算にも、未来を見据えた「大胆な投資」を促進する施策を数多く盛り込みました。こうした取組を通じて、「投資と成長の好循環」を生み出してまいります。
こうした当面の経済財政運営の効果も勘案し、令和八年度の我が国経済は、実質で一・三%程度、名目で三・四%程度の成長を見込みます。
四.日本成長戦略
高市内閣の成長戦略の肝は「危機管理投資」です。様々なリスクや社会課題に対し、先手を打って行う官民連携の戦略的投資を促進し、世界共通の課題解決に資する製品・サービス・インフラを開発し、国内外に提供することによって、我が国経済の更なる成長を実現します。このため、量子、航空・宇宙、コンテンツ、創薬などの十七の戦略分野において、企業の投資の予見可能性を高める複数年度の予算措置など、供給サイドの支援のみならず、官公庁による調達や規制改革など、需要サイドからの支援を合わせた総合支援策を講じます。特に先端技術や成長が期待される分野の官民投資ロードマップについて、来月から提示していきます。これを解決策の検討材料として、分野横断的な課題にも取り組みます。「強い経済」を構築するための基盤的な取組として、新技術立国・競争力強化、人材育成といった八つの横断的課題の解決策を取りまとめます。その八つの横断的課題の解決策や政府支援策を踏まえ、どれだけ民間投資が促進されるか。この夏に取りまとめる「日本成長戦略」で定量的に明らかにすることでGDPの伸びや税収増への寄与についても見通せるようにし、その成果が「中長期の経済財政に関する試算」に適切に反映されるよう取り組んでまいります。私自身も、スタートアップ担当大臣として、世界に伍するスタートアップエコシステムを作り上げるとともに、賃上げ環境整備担当大臣として、物価上昇を上回る継続的な賃上げが実現する環境整備に取り組んでまいります。
五.我が国の発展に向けた取組(CPTPP)
CPTPPについては、新たに加入交渉開始が決定したウルグアイを含め、協定の高い水準を維持しながら、戦略的観点から更なる締約国の拡大に努めるとともに、協定改正交渉やEU、ASEANとの対話などの取組を進めることにより、ルールに基づく自由貿易体制の維持・強化において主導的な役割を果たします。あわせて、関連政策大綱に基づく施策を実施することにより、我が国経済成長への一層の貢献を目指します。自由で開かれた国際秩序の中で、日本が信頼される主導国としての責任を果たしてまいります。
(規制改革)
また、規制・制度改革により、民間投資と技術革新を促進し、企業が将来にわたって挑戦できる環境を整備することは、政府の重要な役割です。人口減少、少子高齢化等の課題を克服し、日本経済の成長と地方の活性化につなげるため、規制改革推進会議での審議を進めてまいります。国民生活に密着し社会・経済的に重要性が高い分野について、時代や環境の変化、テクノロジーの進化に合わせて、規制の緩和・強化・明確化といった適正化も含め、必要となる利用者目線の規制・制度改革を徹底してまいります。安全と利便性を両立させ、誰もが安心して暮らし、挑戦できる社会を実現してまいります。
六.経済社会の持続可能性の確保(全世代型の社会保障の構築)
社会保障は、夢や希望の実現を諦めることなく、安心して働き、暮らしていくための基盤です。人口減少、少子高齢化の中で、改革を進めるためには、国民一人一人の納得感が得られるものとすることが重要です。このため、「国民会議」において、給付と負担の在り方や「給付付き税額控除」、二年間に限り飲食料品に限定して消費税をゼロ税率とすることを含めた、「社会保障と税の一体改革」について、与野党の垣根を超え、有識者の叡智えいちも集めて議論し、その際、決して数の力で結論を急ぐのではなく、声を上げにくい方々を含め、小さな声にも十分配慮しながら、結論を得てまいります。あらゆる世代、誰もが将来に不安を抱くことなく、地域で支え合いながら暮らしていける社会、安心の上に希望が生まれ、次の世代が将来に夢を描ける、そんな温かい社会保障の実現に全力を尽くしてまいります。
(次なる感染症危機への備え)
次の感染症危機への対応に万全を期すため、令和六年七月に改定された「新型インフルエンザ等対策政府行動計画」を踏まえ、取組状況の確実なフォローアップ、より実効性のある訓練の実施など、平時からの備えの充実に努めてまいります。科学的知見と国際協調を基盤に、国民の生命と暮らしを守る体制を不断に強化します。
七.むすび
世界は今、大きな転換期を迎えています。各国が将来への投資を通じて、国民の暮らしと経済の基盤を確かなものにしようとしています。我が国もまた、その潮流の中で、「日本と日本人の底力」を信じ、国民一人一人が希望と誇りに満ちた国を次の世代へと引き継いでまいります。それは決して一時の人気取り、いわゆるポピュリズムではありません。国民の力、ピープルズパワーを日本の成長の原動力に変えていくという姿勢です。政府は先頭に立って、そのための環境を整え、世界の変化を成長の機会として捉えながら、安心して暮らせる経済と社会を築く責任を果たしてまいります。
この国には、必ず明るい未来があります。国民の皆様、議員各位の御理解と御協力をよろしくお願い申し上げます。