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政策国会国会演説代表質問

第211回国会における大家敏志政策審議会長代理 代表質問

第211回国会における大家敏志政策審議会長代理 代表質問

自由民主党の大家敏志です。
会派を代表して、岸田総理の施政方針演説等政府四演説について質問いたします。
世界は、予想を上回るスピードで変化しており、「歴史の転換点」という言葉が毎日使われるように、国際秩序や経済は激動の中にあります。
我が国の舵取りを国民から負託された国会は、今こそ確固たる信念とビジョンをもって、国民とともに「歴史」をつくらなければなりません。
子孫に堂々と受け継げる「歴史」をつくり続ける覚悟が、いま求められています。
私は、ゼレンスキー大統領による昨年の国会演説を今でもはっきりと思い出します。「人々は子供時代を過ごしたふるさとに、住み慣れたふるさとに、戻らなければならない」
こうした決意の下、ウクライナは、ロシアによる不当な侵略と断固、戦い続けています。
祖国を守り抜き、子供たちにしっかりと引き継いでいく。自由や民主主義といった基本的価値を守るために自らの力で自らの国を守り抜いていく。このことの尊さを教えてくれています。
ウクライナの確固たる決意と行動に敬意を表するとともに、私たち日本人も、「歴史の転換点」を迎える中で、日本を守り抜く断固たる覚悟を持たなければなりません。
「日本はもっと良くなる」、「日本の底力を引き出す」―これが、私自身が政治を志してからの一貫した思いです。「歴史の転換点」に果敢に向き合う。そして日本自身も変わり続けていく。悲観論からは、何も生まれません。日本には、とてつもない力があります。
この代表質問では、こうした強い意志を持って、まず経済の「稼ぐ力」を取り戻すため、地方における「ものづくり」、サプライチェーン、GX・グリーントランスフォーメーション、農林水産品輸出などについて伺います。さらに「人」を大事にする観点から、こども・子育て政策や、高齢者施策、感染症対策の根本的なアプローチ「ワンヘルス」などについてお伺いします。

「かつてない難局であれば、それは同時にかつてない発展の基礎になる。」
この松下幸之助氏の言葉は、国家運営にもあてはまります。
我が国はこれまで何度も、ピンチをチャンスに、危機を次なる発展の基礎に転換してきました。
たとえば私のふるさと北九州、八幡の製鉄所は、明治期、アジアへの侵略を謀る帝政ロシアの脅威が迫る中、国が経費を工面し、開業にこぎつけました。最初は外国人技師の手を借りましたが、操業が軌道に乗らず、日本人の知恵で乗り切り、急増する鉄鋼需要に対応しました。近代日本工業の背骨となる製鉄の歴史が始まり、我が国の「ものづくり」の土台が築かれました。
そして、ここ東京から遥か遠いわがふるさと八幡の鉄骨が、国会議事堂に使われていることからいえば、我が国の政治の発展をも支えたと言ってよいと思います。
当時、日本の発展に不可欠な力が、地方に息づいていました。
私は、3期11年間の福岡県議会議員としての経験から、日本の力の源泉は、「地方の底力」にあると信じています。
岸田総理が推進する「デジタル田園都市国家構想」のもととなった、大平正芳元総理の「田園都市国家構想」では「都市に田園のゆとりを、田園に都市の活力を」と謳い、当時から、東京一極集中の是正がいわれていました。
しかし、昨年から続く物価高や原料高もあって地方の生活は豊かなものとはいえません。
今こそ「地方の底力」を信じ、日本各地の皆さんが必ずや難局を克服し、明るい未来を築いていくことに違いない。こうした思いを胸に、地方活性化に向けた政策を果敢に決断・実行していくことが大切だと考えますが、岸田総理の地方にかける思いや、政策実行に対する決意をお聞かせください。

高まる安全保障の脅威に対応するサプライチェーンの再構築や、「ものづくり」の国内回帰においても、「地方の底力」を大いに引き出すことが重要です。
今、デジタル社会を支える重要な基盤である半導体を巡る世界的な競争が激化していますが、日本はもともとこの分野では強みを持っていました。特に、九州は、ICを製造する過程で必要な純水のもととなる地下水が豊富だったため、1960年代から半導体製造が盛んだったこともあり、半導体関連の人材育成に強みがあります。世界最先端の半導体製造技術を持つ台湾TSMCの熊本工場の建設決定も、この地方の底力に着目したからこそです。その設備投資は1兆円、新たに1700人の雇用を生み出し、今後10年間の経済波及効果は4.3兆円とも言われています。国内への製造拠点回帰の動きの広がりも受けて、日本の半導体関連企業の九州への投資が相次いでおり、私の地元福岡へも工場が増設されました。
また、博多名物の辛子めんたいこを製造・販売する老舗企業も、およそ40年、アジアで行ってきた生産の一部の工程を、国内に移管することを決めました。
安全保障上のリスクをきちんと分析し、今後の施策に反映していくことが国家の経営のみならず、企業の経営にも求められています。
外国企業にとっても、日本の、自由で、安全な資本主義環境は、再評価されると確信します。
国内投資の流れを全国各地に引き入れて、我が国の「稼ぐ力」として、きちんと定着させる戦略と政策が必要です。
新たな国際秩序におけるサプライチェーンリスクといったピンチも、地方にとって国内投資を拡大するチャンスです。生産拠点の国内回帰や、外国企業による投資を促し、特に「地方の底力」を引き出して、やる気のある地方が奮起することで、我が国全体の「稼ぐ力」を取り戻す政策に全力で取り組むべきだ、と考えますが、総理の考えをお伺いします。

我が国はGX・グリーントランスフォーメーションに関しては、「可能性しかない国」であります。
思い返せば、高度経済成長に伴う激しい公害を、我が国は乗り越えてきました。当時、新たに「環境庁」を設立し、日本の環境技術は世界で先頭を走るまでになりました。
GXに向けて、我が国は一切躊躇する必要はありません。
「2050年カーボンニュートラル」は、世界平均気温を産業革命前と比べて1.5℃以内の上昇に抑えないと、異常気象のさらなる増加、経済コストの激増などが確実視されていることから、世界がともに目指す「1.5℃目標」を実現するための約束です。もしこれが達成できなければ、そもそも私たちの経済活動、産業活動の基盤が崩れ、多大な経済コストを支払う事態になります。
日本各地の取組みを結集し、何としてもこれを達成しなければなりません。
北九州市では、響灘沖において、税金ではなく、民間資金1750億円による国内最大級9.6メガワットの洋上風車25基の設置工事が始まります。加えて、陸地側では、製造・組み立て、取り付け、メンテナンス等の関連産業を立地集積させることにより、新しい「ものづくり産業」の発展を目指しています。
さらに、充実した港湾インフラ、大規模な水素需要、水素利活用の推進実績、再エネ導入の加速化などの長所を活かし、水素を製造・貯蔵する大規模供給拠点の整備に向けて産学官の準備が始まっています。この北九州市の取り組みは、多くの産業におけるカーボンニュートラルの実現につながるものです。
かつて公害を乗り越え、世界最先端の環境技術を持つに至った日本は、さらなるイノベーションにより、世界のカーボンニュートラルをリードし、アジアのカーボンニュートラルを支援すべきであります。
日本各地におけるGXの取組みを強力に支援して、エネルギー安全保障を確立するとともに、我が国の産業競争力を高め、世界で再び「ものづくり大国」として羽ばたくことを目指すべきと考えますが、地方におけるGX支援についての総理のお考えをお伺いします。
また、年末のGX実行会議で示された「成長志向型カーボンプライシング」における国による「20兆円規模の先行投資の枠組み」においては、やる気があり、新しい取り組みに意欲的に挑戦する地方をどう評価し、投資を振り向けていくのか、お考えをお聞かせください。

私は、参議院議員に初当選した当時から、「稼ぐ農業」を大きな政策課題の一つと位置づけてまいりました。
日本の農林水産物・食品は海外から高い評価を受けています。
コロナ禍にかかわらず、令和4年の輸出額は、11月の時点で1兆2千4百億円を超え、その時点で前年1年間の額を上回りました。10年連続の更新です。
政府は、輸出額目標として2025年に2兆円、2030年に5兆円を掲げていますが、このペースでいけば、その達成は十分可能です。
新型コロナに伴う水際対策の緩和に伴い、日本を訪れた外国人による購入や外食につながることも期待できます。
農林水産物・食品の輸出は、地方経済にも直接効果を与えます。
質は良く安全で、これだけ好調な日本の農林水産物や食品ですが、課題は、価格が高いということでした。
ただ、国内において、大手居酒屋チェーンが業態転換した焼肉店では、安定した仕入れの実現で、牛肉を米国やオーストラリアより国内で調達した方が有利になりつつあると経営者が判断し、和牛の仕入れを拡大する方向で動いていると聞きます。和牛は、「旨いが高い」から、「旨いし競争力もある」に変わりつつあります。
海外市場を見ても、円安によって、我が国の質の高い農林水産物や食品を、これまでよりも海外の方々が求めやすい価格となっています。
急速な円安は、足元では収まりつつありますが、円安はピンチではなく、まさに、国際的にも高く評価されている日本の美味しい農林水産物や食品を世界に高く売り込む、またとないチャンスとなります。この好機をしっかりととらえて、我が国の稼ぐ力の中核として、集中的に育てるタイミングだと思いますが、総理のお考えをお聞かせください。

マイナンバーカードの取得申請数がついに運転免許証を大きく超え、日本で最も普及する本人確認ツールとなったことは大きな前進です。デジタル庁発足以降、様々な取組みが進んでいる事に敬意を表します。
ただ、生活において「何かが変わった」という実感をお持ちの国民は、まだまだ少ないというのが私の感覚です。
「何かが変わった」を実感してもらうには、役所に足を運んでの手続きが、変わる時だと思います。今でも、自治体窓口に行けば溢れんばかりの人がいる光景を目にします。デジタル庁職員が実際に自治体の窓口で測ったところ、転出届には21分、転入届には30分、車庫証明には93分かかった、との記事も目にしました。
行政手続きがいつまでも煩雑で、そのために時間や労力が奪われるようでは、私たちの生産性はいつまでも上がりません。私は、すべての人の生活や仕事に関わる自治体DXが、日本の「稼ぐ力」を上げることになると、強く信じています。
そもそもデジタル庁は、発足当時から、「すべての行政手続きを60秒以内にスマホで完結する」という目標を掲げ、自治体におけるDXをけん引することを謳ってきました。しかし今、よく聞くのは、「スマホで60秒は絶対に無理」という自治体職員の声と、自治体によってDXの進展に大きな格差が生まれている、という現実であります。
「60秒」が厳密な約束ではないとしても、最初から「無理」と考えてしまうのは、なかなか根深いものがあると感じます。またどの自治体で生活するかによって、DXによる恩恵に差が生まれることは、新たな国民格差を生み出しかねません。しかし一方で、これらは、地方の切実で正直な声であることも事実です。
政府として、自治体間のDX格差にどう対応するのか。また、単にデジタルを活用して国民サービスを改善するだけではなく、国民サービス自体を変革し、飛躍的な向上をもたらすという従来とは一線を画したDXを、どのように全国の自治体に広げて、我が国の「稼ぐ力」の向上や、国民生活の活力に繋げていくお考えでしょうか。総理にお伺いいたします。
以上、「稼ぐ力」の観点から総理のお考えを伺ってまいりました。次に、「人」を大事にする観点で、「誰一人取り残すことのない、安心・安全な社会」を実現するための諸課題について伺います。

いよいよ本年4月、こども家庭庁が発足します。
我が国は、これまでも時代の変化に合わせて新たな省庁をつくり、その時直面する重要な課題に対応してきました。
いま、少子化や「子どもの命」に関わる児童虐待・いじめ・自殺など、こどもを取り巻く環境は極めて厳しい状況です。今こそ、国の存続をかけてこども・子育て政策に取り組まなければならない時です。
このため、こども予算の倍増に向けて議論を深めて行く必要があります。その際、財源論を避けて通ることはもちろんできませんが、まずは真に必要な政策は何かということをしっかり検討し、力強く示すことが重要であると考えます。
例えば、3~5歳の保育料はすでに無料となっていますが、0~2歳の保育料は一部の家庭を除き無料ではありません。子育て世代のこども関係支出項目を細かく分析し、親の声も十分聞いた上で、真に求められる子育て世帯への支援メニューを検討することが不可欠だと考えます。
また、子どもたちの命や生活、学習環境等を守るための支援の充実強化の検討も必要です。
参議院自民党では世耕幹事長の下、すでに3年以上、「不安に寄り添う政治のあり方勉強会」で、望まない孤独・孤立状態にある方々や生活困窮に苦しむ方々の声に耳を傾けて、政策への反映に努めてきました。
その中で、コロナ禍で、仕事が減り、子どもたちに一日三食の食事を用意することができない、進学・進級しても制服や体操服を買いそろえられず、子どもの勉強環境を整えることもできない、といった声が聞こえてきます。給食がない夏休み等は、親が自分の食事を我慢して、子どもたちの分を用意したという事例に加えて、ヤングケアラーという問題もあります。
政府として、少子化という国難を克服するとともに、困難な状況にある子どもたちの状況を改善し、明るい未来へとつなげていくために、どう、こども政策、特に、こども家庭庁発足後の運営や、こども予算倍増などに取り組んでいく考えか、総理に伺います。

岸田総理は施政方針演説において、「構造的な賃上げ」政策の一環として、新たな分野で活躍するための能力・スキルを身につけること、いわゆるリスキリング支援を位置付けておられます。企業経由が中心となっている在職者向け支援を、個人への直接支援中心に見直すことなど、意欲的に取り組んでいくことは極めて重要です。
岸田総理、ぜひともご検討いただきたい新しいリスキリング案を、私からお示しいたします。
子育てのための産休・育休を取りにくい理由の一つが、一定期間仕事を休むことで昇進・昇給で同期から遅れを取ることだと言われてきました。
しかし、この懸念を乗り越えるために、産休・育休の期間にリスキリングによって、一定のスキルを身につけたり、学位を取ったりする方々を支援できれば、子育てをしながらもキャリアの停滞を最小限にしたり、逆にキャリアアップが可能になることも考えられます。
大胆なこども政策を検討する中で、たとえば、このような方々への応援として、リスキリングと産休・育休を結び付けて、産休・育休中の親にリスキリング支援を行う企業に対して、国が一定の支援を行うなど、親が元気と勇気をもらい、子育てにも仕事にも前向きになるという、2重・3重にボトルネックを突破できる政策が考えられるのではないでしょうか。
この政策によって、結婚・育児期に女性の就業率が低下するいわゆる「M字カーブ」や、出産時に退職、または働き方を変えて、育児後は非正規で働くようになる、いわゆる「L字カーブ」の解消にも資するものだと考えます。
今ある仕事が、近い将来、AIに取って代わられることも予想され、私たちのキャリアにとって、リスキリングが「当たり前」になる時代が来る中、私が提案したような、リスキリング支援メニューの拡充が必要になるのではないかと思いますが、総理のお考えをお伺いいたします。

これまで、「女性活躍の推進」の取組みにより、働きたい女性がこれまでよりも働きやすい環境になってきているとしたら、それは一歩前進と言えると思います。
しかし、岸田総理も施政方針演説で言われていた通り、未だ存在する「女性の就労の壁」については、今すぐにでも取り除かなければなりません。税制の面では、女性の就労の壁は解消されてきましたが、社会保険の面では、依然として大きな壁が存在しています。
私の周りでお一人、こういう方がいらっしゃいました。
週2日間のパート勤務で仕事が良くでき、職場にも馴染んでおられました。経営者はその方に更に活躍していただくため、勤務を1日増やし、週3日間の勤務に移行していただいたそうであります。
ご本人は仕事を楽しみ、やり甲斐を持っておられましたが、数か月経って、このままだと「130万円の壁」を超えることが明らかになったために、勤務を週2日に戻したそうです。追加で働いた給料よりも多い額が、そのまま保険料になる現実に驚き、躊躇したのであります。
「130万円の壁」の存在によって、ご本人の意志に反して、勤務時間を減らしたいという気持ちになってしまう。こうした働き方に中立的でない制度は、ご本人から仕事への意欲を奪い、「女性活躍」の趣旨にも反しているように思います。
このように、いまだ存在している「女性の就労の壁」を一刻も早く取り除き、すべての女性が納得感をもって、活き活きと活躍していただく環境をつくることが、包摂的な経済社会づくりのためにも重要であると考えますが、総理のご所見をお伺いします。

「日本の介護は凄い」―これが、私の介護に対する基本的な認識です。
介護が必要になれば、当たり前のように専門職によるケアが受けられる。日本では日常の風景でも、その価値は世界中のどこからも羨まれる「国の宝」であると言えます。
海外から日本の介護を学びに来た方々は、日本の介護の「利用者本位」「自立」「尊厳」といった考えに感銘を受けると聞きます。
要介護状態が進み食事を摂ることが困難になり、胃瘻を造設していた高齢者に、複数の専門職が連携し、少しずつ口から食べるサポートを行ったところ、半年後には三食を口から摂れるまでに回復させることができるようになったという事例がありました。この事例に触れた外国人の介護人材の方は、母国ではややもすれば家政婦的なものとして扱われる「介護」の概念が大きく覆り、感動を胸に、母国へ帰っていったそうであります。
この世界に冠たる高品質な日本の「介護」。これを支え続けているのは、豊富な経験と高い介護技術を持つ介護従事者の存在です。
2040年には、我が国の高齢者人口はピークになりますが、介護業界は、慢性的な人手不足が続いております。介護人口が増えていく中、介護の担い手の確保は必須です。
人手不足を解消するには、二つの要素を改善し、働きたくなる介護現場に変えていかなければなりません。
一つは、月収です。人手不足なのに、全産業の平均月収より低い状態が続いています。昨年2月からも介護職員の処遇改善を目的とした賃上げが実施されましたが、人手不足の解消には至っておりません。しかも石油や食材等の物価高で介護業界の冷暖房や給食等に要する経費は大きく上昇し、施設の経営も苦しくなっています。
もう一つは、介護職員の負担を軽減することです。デジタルにできることはデジタルに任せれば、介護現場の働き方は改善します。日本には、施設入居者の睡眠状況を遠隔確認し、定期的な巡回を減らすことができる「睡眠センサー」や、床板がゆっくり時間をかけて動くことで体圧を分散させ床ずれを予防する「自動体位交換器」などの技術があります。
国の宝である「日本の介護」をさらに磨き上げ、我が国の高齢化社会を支えていくためには、介護現場の処遇の改善や、現場の声を踏まえた介護DXの進展が急務と考えますが、加藤厚労大臣のお考えをお伺いします。

いつまた世界的な規模で広がり、襲ってくるかわからない新たな感染症に対応するためには、新型コロナの経験を生かした対策が必要です。
現在、政府においては、「内閣感染症危機管理統括庁」や厚生労働省「感染症対策部」を設置するとともに、国立の感染症研究所と国際医療研究センターを統合し、科学的知見の基盤となる専門組織を創設することで、これら三者で一体的に対応していく体制構築を図る方針です。
しかし、専門家によれば、「約6割の感染症と、ほぼすべての新興感染症が、動物にも人にも両方に感染する人獣共通感染症」だと言われており、新たな感染症に対応するためには、人の感染症と動物の感染症を分けて対応するのではなく、人を扱う医学と動物を扱う獣医学の分野横断的な連携が必要となります。
感染症対策が必要な動物は、大きく三つに分かれます。一つは家畜・家禽。この感染症は農林水産省の所管です。二つ目は、愛玩動物。三つ目は野生動物です。しかし、愛玩動物と野生動物の感染症については関係法令や国の研究機関はなく、空白領域となっています。
そこで、福岡県は、国に先駆けて、人と動物と環境の健康を一体的に考えて、人獣共通感染症に対応する「ワンヘルス」構想を先行的に進めています。
具体的には、アジア獣医師会連合 藏内 勇夫 会長の就任を機に、FAVA福岡オフィスを設置し、国際的な連携を強めるほか、国の機関としての「アジア新興・人獣共通感染症センター(仮称)」の九州への設置を目指すとともに、家畜保健衛生所の業務について現行の家畜・家禽のほか、愛玩動物や野生動物にも拡大した動物保健衛生所等の「ワンヘルスセンター」の設置を目指しています。
国も、新たな感染症に備えた危機管理として、動物感染症の空白領域を埋め、人獣共通感染症にしっかり対応できるよう、先行的な活動への支援や関係する国の機関の連携強化などを、具体的に進めていただきたいと考えますが、総理のお考えをお伺いいたします。
加えて、昨年末のG7では、共同声明をとりまとめていただきました。本年5月に開催される広島サミットにおいて、この人獣共通感染症を含む国際的な感染症対策の強化・充実について、岸田総理のイニシアチブで、ワンヘルスへの取り組みをさらに前へと押し出すべきと考えますが、総理のご見解をお示しください。
結びに、「朝は希望をもって目覚め、昼は勤勉に働き、夜は感謝をもって眠る。」麻生元総理からの言葉です。悲観論に陥らない前向きな楽天性と勤勉な労働意欲、そして奥ゆかしさ。まさに我々日本人の底力を示しています。
こうした日本の底力を最大限に引き出す政治の実現に、精一杯力を尽くしてまいります。ご静聴ありがとうございました。