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政策国会国会演説

第211回国会における後藤茂之内閣府特命担当大臣(経済財政政策)の経済演説

第211回国会における後藤茂之内閣府特命担当大臣(経済財政政策)の経済演説

一.はじめに

経済財政政策担当大臣として、我が国経済の現状と課題、政策運営の基本的考え方について、所信を申し述べます。

二.経済の現状と経済財政運営

我が国経済は、ウィズコロナの下で緩やかな景気回復が続いています。一方で、国民生活に身近なエネルギーや食料品を中心に物価上昇が継続し、また、欧米各国の金融引締め等が続く中で世界経済が下振れリスクに直面するなど、我が国経済を取り巻く環境は厳しさが増しています。

このような景気の下振れリスクに先手を打ち、我が国経済を民需主導の持続可能な成長経路に乗せていくため、昨年十月に閣議決定した事業規模七十二兆円、財政支出三十九兆円の「物価高克服・経済再生実現のための総合経済対策」について、進捗管理を徹底し、迅速かつ着実に実行します。まずは、電気料金等の負担の上昇を直接的に軽減する前例のない思い切った措置等を講じ、足下の物価高から国民生活と事業活動を守り抜きます。また、物価上昇に負けない継続的な賃上げの実現に向け、賃上げに取り組む中小企業等への支援を大幅に拡充するとともに、価格転嫁対策を強化します。さらに、新しい資本主義を加速させ、人への投資の抜本強化と労働移動の円滑化による「構造的賃上げ」の実現、成長分野への大胆な投資拡大を図ります。

この総合経済対策及びその裏付けとなる令和四年度第二次補正予算等を実行し、令和五年度予算と合わせ、万全の経済財政運営を行います。これらにより、来年度の我が国経済は、実質で一・五%程度、名目で二・一%程度の成長が見込まれます。引き続き、経済状況等を注視し、民需主導の自律的な成長とデフレからの脱却に向け、躊躇ちゅうちょなく機動的なマクロ経済運営を行ってまいります。

経済財政運営の基本は、経済あっての財政であり、順番を間違えてはなりません。必要な政策対応に取り組み、経済をしっかり立て直す。そして、財政健全化に取り組みます。この下で、「新経済・財政再生計画改革工程表」の着実な実行により、効果的・効率的な支出を推進してまいります。

三.新しい資本主義の加速

我々が直面する様々な社会課題を成長のエンジンへと転換する。そして、成長の果実を分配し、更なる成長へとつなげていく。この成長と分配の好循環を実現し、力強く成長する持続可能な経済社会を構築するため、新しい資本主義の実現に向けた取組を加速してまいります。

我が国経済再生の鍵を握るのは構造的な賃上げの実現です。そのために、リスキリングによる能力向上支援、日本型の職務給の確立、成長分野への円滑な労働移動を進め、働く人の立場に立って、三位一体の労働市場改革を加速します。リスキリング、転職、キャリアアップまで一気通貫で支援する仕組みづくりや、成長分野であるデジタルやグリーンについてのリスキリングに主体的に取り組む個人への直接支援など、働く個人一人一人に着目し、その努力を支援する、「人への投資」パッケージを、五年間で一兆円に拡充し、取組を抜本強化します。

また、産業構造の大きな変革に合わせて、失業なき労働移動を進め、構造的な賃上げを実現していくため、「労働移動円滑化のための指針」を本年六月までに取りまとめます。

さらに、「貯蓄から投資」へのシフトを進めることで、家計の賃金所得に加え、金融資産所得の拡大を図ってまいります。新しい資本主義が目指す分厚い中間層を形成するため、「資産所得倍増プラン」の実行を通じて、今後五年間で、NISA口座数やNISA買付額の倍増を目指し、これらにより、長期的な目標としては資産運用収入そのものの倍増を見据えて取り組んでまいります。

人への投資の抜本強化に加え、科学技術・イノベーション、スタートアップ、GX・DXといった成長分野への投資を大胆に拡大することにより、新たな経済構造への変革を進めてまいります。

半導体、GX、次世代の通信技術等の戦略分野への国内投資を七兆円規模の補正予算で支援します。また、スタートアップは、社会的課題を成長のエンジンに転換して、持続可能な経済社会を実現する、新しい資本主義の考え方を体現するものです。スタートアップへの投資額を五年後に十兆円規模と十倍増にすることを目標に、「スタートアップ育成五か年計画」を早急に実行に移し、人材、資金供給、オープンイノベーションを三本柱とする取組を一体として強力に推進してまいります。我が国に起業家精神を取り戻し、第二の創業ブームを実現することによって、将来的には世界に伍するユニコーン企業を百社創出することを目指します。このように、長期的なビジョンの提示や複数年度にわたる支援に官が明確にコミットするなど、民間の予見可能性を高め、計画的・安定的に投資が実行できる環境を整備することにより、官民連携の下、国内投資を大胆に拡大します。

また、公益法人が、成熟した市民社会におけるパブリックの担い手としての役割を高め、多様な社会的課題に柔軟に対応できるよう、法人活動の自由度拡大とこれに伴うガバナンスや説明責任の充実を両輪として、公益法人制度の改革を進めます。

我が国経済を再生し、新しい時代を切り拓いていけるよう、イノベーションや人への投資を進め、生産性や付加価値を向上させるとともに、適切な価格付けを通じてマークアップ率を高め、物価上昇に負けない賃上げやコスト上昇の転嫁のできる適切な支払いをしっかり確保していく。このような連続的に拡大が続く成長と分配の好循環を、皆さんとともに築き上げてまいる所存です。

四.海外活力の取り込みと経済連携の推進

我が国は、世界に開かれた貿易・投資立国であり続けます。本年五月に開催されるG7広島サミットは、これを世界に示し、海外の活力を積極的に取り込んで、我が国の成長力の強化や国民所得の増加につなげる好機です。魅力的な成長市場を拡大し、安定的なサプライチェーンを確保するため、ビジネス環境整備を進め、海外からの人材や資金の呼び込みに取り組みます。また、技術と意欲ある我が国企業の海外ビジネス投資を強力に支援し、海外収益とその国内還流の増加を図ってまいります。

包括的・先進的TPP協定、いわゆるCPTPP等の、経済連携の強化も進めてまいります。我が国はこれまで、CPTPP等の経済連携協定の推進を通じて、自由貿易の旗振り役としてリーダーシップを発揮してきました。我が国は、引き続き本協定を通じた自由貿易の推進や、デジタル化などの新たな課題への対処において、主導的な役割を果たしてまいります。また、国内においては「総合的なTPP等関連政策大綱」に基づく施策を着実に実施してまいります。

現在、CPTPPへの英国の加入手続が進行しています。CPTPPは、自由で公正な二十一世紀型の新たなルールを確立するものであり、市場アクセスの面でも、ルールの面でも高いレベルの内容となっています。我が国は、英国の加入作業部会の議長として、手続が協定の高いレベルを維持し、良い先例となるよう、他の参加国と共にしっかり取り組みます。また、その他の加入要請を提出しているエコノミーについても、協定の高いレベルを満たす用意ができているかどうかについて、引き続き見極めてまいります。

五.全世代型社会保障の構築等

誰もが安心できる全世代型の社会保障を構築してまいります。

昨年末に全世代型社会保障構築会議において報告書を取りまとめました。本報告書に基づき、こども・子育て支援の充実、働き方に中立的な社会保障制度等の構築、医療・介護制度の改革、「地域共生社会」の実現等について、足下の課題とともに、中長期的な課題について、時間軸と地域軸を持ち、全世代で支え合い、人口減少・超高齢社会の課題を克服するための取組を着実に進めます。

特に、未来への投資である「こども・子育て支援の充実」については、その検討を加速し、六月の「骨太方針」までに将来的なこども・子育て予算倍増に向けた大枠を提示いたします。

さらに、包摂社会の実現に向け、女性活躍や孤独・孤立対策、就職氷河期世代支援などの取組を一体的かつ総合的に進めます。

六.新型コロナウイルス感染症への対応

新型コロナウイルス感染症について、政府としては、これまで、感染拡大防止と社会経済活動のバランスを取りつつ、できるだけ平時に近い社会経済活動が可能となるように取り組んでまいりました。本年は、平時の生活を全面的に取り戻せるよう、足下の感染状況に十分注意しながら、更なる取組を進めてまいります。また、次の感染症危機に的確に対応できるよう、政府の司令塔機能を強化するため、内閣感染症危機管理統括庁の設置等のための法案を今国会に提出します。

七.むすび

世界は歴史的な転換期にあり、国内においては、物価高克服と経済の再生、また少子化を始めとする構造的課題に直面しています。こうした課題に一つ一つ正面から取り組み、我が国経済を力強く再生させ、持続的な成長軌道に乗せる。そのための経済社会の改革を皆様とともに進め、新しい時代を切り拓いていくため、全力を尽くしてまいります。

国民の皆様、議員各位の御理解と御協力をよろしくお願い申し上げます。