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第210回臨時国会における世耕弘成参議院自民党幹事長代表質問

第210回臨時国会における世耕弘成参議院自民党幹事長代表質問

自由民主党の世耕 弘成です。私は自由民主党を代表して、岸田総理大臣の所信表明演説について質問をいたします。

冒頭、10月4日、弾道ミサイルを発射させ、わが国上空を通過、過去最長の飛行距離で、太平洋に落下させるという暴挙に出た北朝鮮に強く抗議します。日本国民に危害を及ぼしかねない極めて危険な行為であり、決して許されるものではありません。国連安保理決議に違反していることも明らかです。今朝も弾道ミサイル発射という更なる暴挙に出ています。

岸田総理は、所信表明演説で「日本を守る」「アジアと世界の平和と安定を断固守り抜く」と表明していますが、この北朝鮮の暴挙に対し、国際社会と連携し、どう毅然と対処していくのか。伺います。

コロナ禍やウクライナ問題等想像を超える事態が多発する中で、V・U・C・A 「変動」、「不確実」、「複雑」、「曖昧」の英語の頭文字をつなげた「VUCA」という言葉がよく聞かれるようになりました。しかし、かつて人類の歴史で先が明瞭に見通せたことなど一度もありません。わざわざVUCAという言葉を使わずとも、人類は常に不確実な状況に向き合ってきたのです。
私が懸念するのは、その不確実な時代に連帯して対応すべき時に、国際舞台で、あるいは各国国内で分断が発生していることです。東日本大震災の際に絆の強さで世界を驚嘆させた日本も、もはや例外ではありません。
岸田総理は以前から「分断から協調へ」と訴えてこられました。現在の社会の分断について、どう考え、どう向き合おうとされているのか?お考えを伺います。

就任後1年。国民は、そろそろ岸田総理に対して「聞く力」に加えて、「語る力」も熱烈に求めているように思えます。
国民の声に耳を傾け、政策として形にしたら、それを力強く国民に語っていく。難局においてリーダーシップの役割はそういうものだと思います。
危機の時代における「語る力」について、総理のお考えをお伺いします。

去る9月27日に安倍晋三元総理の国葬儀がしめやかに執り行われました。滞りなく執り行っていただき、心のこもった弔辞を述べていただいた岸田総理に深く感謝申し上げます。
しかし、この国葬儀にあたってもはからずも社会の分断が露呈してしまいました。
安倍総理は憲政史上最も長く内閣総理大臣を務められました。憲法上で規定された内閣総理大臣という地位に対する敬意として国葬を行うことは適切だったと考えますし、国際的に見ても常識の範疇です。しかしそれゆえに国葬を行うにあたっては、党派を超えたコンセンサス形成の努力が必要であったと思います。
我々は国葬前後の世論調査で半数を超える反対があったことを忘れてはなりません。一方で反対した皆さんにも、当日2万5千人を超える国民が長時間の行列をものともせずに献花を手向けてくれたことを受けとめていただきたいと思います。
吉田、佐藤元首相の葬儀の際にも国葬基準について議論がなされましたが、残念ながら一過性に終わりました。総理は弔辞の最後で「包摂的な日本を、地域を、世界をつくる」と誓われました。今後二度と社会を分断するような議論を起こさないためにも国葬の基準を丁寧に議論をして作るべきだと考えますが、お考えはいかがでしょうか?

旧統一教会問題について申し上げます。
「日本人は贖罪を続けよ」として多額の献金等を強いてきたこの団体の教義に賛同する我が党議員は一人もいません。
安倍元総理は戦後70年談話で「戦争に関わりのない世代に謝罪を続ける宿命を負わせてはならない」とした政治家です。この教団とは真逆の考え方に立つ政治家でした。
我が党の政策に教団が影響を与えたことはありません。教団等が主張する一部の政策が、たまたま我が党議員の政策と同一だったことはあるかもしれませんが、自民党はもっと大きな団体多数の支援を受けており、そうした団体の意向に反する政策さえも決定することもある政党です。信者数万人と言われる一宗教団体が政策決定に影響を与えることはありえません。
ただ選挙の際に、相手からの申し出でボランティア支援を受けてしまった。その延長で日常の政治活動の中で、メッセージを送った、挨拶をしたということに尽きると思います。
紛らわしい団体名で関係団体とは認識できなかった。認識はしていたが最近は報道されるような問題を起こしていない、と判断した議員がほとんどだと思います。
ただそのことが、社会的に問題のある団体に結果として箔づけをすることになったことを真摯に反省しなくてはなりません。
総理の指示の下、金輪際我々は旧統一教会との関係は一切持つことはありません。
政府においてはカルト宗教等によって経済的に被害を受けた方々の相談対応を丁寧に行い、関連する法律を駆使して救済することに全力を挙げるべきです。総理のご決意を伺います。

さて経済面でも、分断の危機が現実のものとなりつつあります。最近のある調査では、自分が「中流より下の生活をしている」と答えた人が56%にのぼりました。
8月に2.8%の上昇を記録した消費者物価ですが、原材料高、エネルギー高、急激な円安で、10月には6700品目の食品の値上げが予定されています。
物価上昇は所得の低い人々を直撃し、社会の分断を加速させかねません。大胆かつ迅速な対応が必要です。
しかし対応を誤ってはなりません。一部に欧米に習って利上げを求める声がありますが、とんでもありません。需要が加熱している欧米と同じことを、需要が供給力を大きく下回る日本で行えば、一気にデフレ不況に逆戻りです。
特に米国は、コロナ禍で供給した資金の規模が日本とは桁違いです。大量の資金供給を長期間続けたことが原因で、ダブついた資金が需要を加熱させ急激なインフレを引き起こしており、だからこそ大幅な利上げで景気を冷やそうとしているわけですが、日本はそこまでの資金供給は行っていません。
欧米が金利を上げて景気を悪化させないと対処できない需要加熱型インフレであるのに対して、日本が直面するのは、特定の物資の価格急騰による物価上昇であり、適切な財政出動を行って特定の物資、分野の価格上昇をコントロールすれば国民の痛みを抑制出来る物価上昇です。
今日本が行うべきは、利上げではなく、物価上昇の影響をミクロの視点で見極め、ダメージの大きい所得層や業種に確実に届く対策を、財政出動を行って効果的に講ずることです。

こういう考えに立って、参議院自民党政策審議会では、食料品や電気代の値上がりが国民生活や中小小規模事業者にどのような影響を与えているか、精力的にヒアリングを続けています。
また参議院自民党の「不安に寄り添う政治のあり方勉強会」ではコロナ禍での生活困窮世帯の実情やその支援にあたるNPOからのヒアリングを行ってきましたが、さらに物価高が生活困窮世帯に与える影響についても分析しています。

これらの活動の成果として、物価対策について7点提言させていただきます。

まず第一に経済対策の規模とスピードで国家の意思を示すことが重要です。
仁徳天皇の「民のかまど」の逸話は有名ですが、国民の暮らしはどうなっているか、常に目を凝らしながら、必要な政策は断固として実行する。これは政治の責任です。
昨年、岸田総理は、真水で30兆円を上回る補正予算を編成しました。これは、コロナ禍によって大きく傷ついた「民のかまど」を守るという強い決意の表れであったと思います。
直近の日銀の国民の生活意識に関する調査では、「暮らし向き」について「ゆとりがなくなってきた」と答えた人の割合が昨年よりさらに7ポイント上昇しています。
一部では、昨年よりも「経済活動が正常化しつつあるので補正規模は縮小してもいい」といった言説もありますが、それはこうした国民の暮らしへの不安をまったく無視した「永田町・霞が関の論理」に過ぎません。
昨年よりも厳しさを増している「民のかまど」。その現実を直視すれば、今回の経済対策も、昨年と同様かそれ以上の規模、真水で30兆円。それが発射台となるべきです。
世界経済の先行きも、不透明さを一気に増しています。先週発表のOECDの世界経済見通しでは、来年の成長率予測が、軒並み、下方修正となりました。急激なインフレと、それに伴う金利引き上げが、世界の景気を大きく押し下げるとの予測です。例えば、ヨーロッパの成長率は、9ヶ月前の予測と比べて、2%以上引き下げられ、ドイツはマイナス成長、英国もゼロ成長の予測となっています。
年明けの「民のかまど」は、一層厳しくなっているかもしれません。今回の経済対策では、一手先を見通した、十二分の対策が求められています。
岸田総理。今、問われていることは、私たちの危機感です。
経済対策を小さくする理由を探したり、細々と予算査定をするような姿勢に意味はありません。強い危機感のもと、大規模な経済対策を迅速に実施していく。「民のかまど」を守るため、できることはすべてやる。その政治の危機感こそが問われています。
今、私たちが為すべきは、「言い訳」ではありません。国民の暮らしは必ず守り抜くとの「国家意志」を、決然と示すことです。
今般の経済対策の、規模とスピード、そして岸田総理の強い決意を伺います。

第二に所得の低い世帯への給付が重要です。
「不安に寄り添う政治のあり方勉強会」で受け止めた声を踏まえ、この春にはコロナ禍の影響で深刻化する生活困窮者への支援策として、子育て世帯への現金給付などを求め、結果政府は児童1人当たり一律5万円の子育て世帯生活支援特別給付金の支給を決定しました。
しかし、コロナ禍で困窮している世帯は、物価高騰の波によってさらに追い詰められています。特別給付金の効果も薄れています。9月には、予備費を活用した追加対策を決定し、住民税非課税世帯に対し、当面の電気・ガス料金、食料品価格等の高騰に伴う影響額を考慮して1世帯当たり5万円が給付されることとなりましたが、子供の数が多ければこれでは足りません。また物価高は住民税が課税されている所得水準の世帯にも深刻な影響を及ぼし始めています。
残念ながら政府のこれまでの物価対策に対しては、国民に直接実感、評価して頂くまでには至っていません。
物価高騰の影響をミクロの視点で精査し、効果的で迅速な給付の方法を真剣に考えるべきだと思いますが、総理のお考えはいかがでしょうか?

第三にエネルギー価格急騰への対応です。
光熱費の高騰は家計や経済全体を直撃します。
大手事業者の電気・ガスの規制料金は、燃料費調整制度により上限が設定されていますが、すでにその上限に達し、事業者の収支は赤字となり、内部留保を取り崩して対応している状況です。
ガソリンについては、政府は毎月3000億円余りを投入して、本来リッター200円を超えかねなかった価格を160円台に抑制することにより、家計への影響を抑えてきました。このことは物流コストを抑えることにもつながり、結果的に様々な品目の小売価格上昇を緩和させる効果がありました。
電力・ガス料金はガソリンよりもさらに生活への影響が深刻です。低所得層にはこれ以上節電しようがないという面もあり、節電ポイントは対策となりません。また、完全に自由化された法人向け料金がすでに4割程度の値上がりとなっている中小小規模事業者向けの対策が必要です。
ここは大胆に直接電気・ガス料金の引き下げにつながる対策を打つことが重要です。既成概念を打ち破り、電力・ガス事業者への資金注入を通じて、生活者や中小小規模事業者の負担を直接軽減できるようにすべきです。これは家計の助けとなるだけでなく、物価全体の抑制効果があります。
電気・ガス料金を値下げすると、冬場の節電意欲が失われるとの指摘もありますが、国民を見くびってはいけません。昨冬の需給逼迫を乗り切った際の行動からも分かるように、必要があれば国民は総力を上げて節電に取り組みます。
電力・ガス料金の高騰について総理は所信表明演説で「前例のない、思い切った対策を講じる」と明言されました。私は価格を抑えるだけでは不十分で、下げることが重要と考えます。しかも出来るだけ早く下げる必要があります。具体的にどういう対策をどのタイミングで講じるのか?総理のお考えを伺います。

今回のロシアのウクライナ侵略や円安を受け、化石燃料の高騰が光熱費に直結することが改めて認識されました。電力需給の逼迫も度々発生し、ギリギリ乗り切っている状況です。化石燃料の使用は必然的にCO2排出により、カーボンニュートラル達成も遅らせることになります。
岸田総理は今回の所信表明で、既設原発の再稼働と、新たな安全メカニズムを組み込んだ次世代革新炉については開発だけでなく、建設にまで言及されました。私も強く支持します。特に次世代炉は開発・建設に向けては官民あげて具体的なロードマップが必要となります。
具体的な取組みや支援策を加速すべきだと思いますが、総理のお考えを伺います。

第四に、物価高騰期にこそ賃上げが重要です。
岸田内閣では昨年より「新しい資本主義」の下で、賃上げを促してきましたが、今度は物価高騰対策としての大胆な賃上げを後押しすべきです。
賃上げの余地はあります。これまでのコロナ対策の財政出動の効果、円安による輸出企業の好業績、生産拠点を海外に移した企業の円安下での連結ベースの好決算といったことを受けて、日本企業の現預金残高は280兆円に達しています。これらを人への投資として賃上げに向かわせることが何よりも重要です。人への投資により労働生産性を上げ、更なる賃上げが可能となるサイクルを生み出していくこと、大胆な「賃上げ」や「投資」によって好循環を生み、家計の可処分所得を物価高騰以上に増やしていければ、物価上昇も恐るるに足りません。
企業の現預金活用促進によって、物価高騰以上の賃上げを何としても実現すべきと考えますが、岸田総理のお考えを伺います。

賃上げに向けては、稼げる産業育成の観点から成長戦略が極めて重要です。「新しい資本主義」の下、日本の成長戦略を加速すべきです。スタートアップ支援や、投資促進、人への投資により、国際的に売れる新たなモノやサービスの創出を図るべきです。日本発の新たなモノ・サービスの創出について明確な目標のもとでテコ入れを図るべきです。「新しい資本主義」における強力な成長戦略のビジョンについて、岸田総理のお考えを伺います。

第五に中小小規模事業者も賃上げできる環境の整備が重要です。
多くの中小企業は大企業の下請けの立場です。帝国データバンクの試算によると、現在の物価上昇局面において、原材料費100円の値上がりに対して、価格転嫁はなんと36.6円に留まっています。つまり63円分は、下請け企業が被っているということになります。
これでは中小企業の賃上げなど不可能です。中小企業の賃上げを実現するためにも、コスト上昇分の適切な価格転嫁を促すべきです。
私は経産大臣時代、発注元大企業に行動指針を策定してもらうなど下請け取引条件改善に取り組んできました。しかしまだ道半ばです。それどころか、コロナ禍、物価高で負担を中小企業に押し付ける動きが再発しています。
物価上昇分は転嫁するのが当たり前だということを、中小企業に物価高の負担を押し付けるのは社会的に問題のある行為であるということを浸透させていく必要があります。総理が先頭に立って強く呼びかけていくべきと考えますが、ご所見を伺います。

第六に中小小規模事業者の持続可能性の観点から、いわゆるゼロゼロ融資の取り扱いが重要です、
コロナ禍が始まった2020年3月以来続けてきた「実質無利子・無担保融資」、いわゆる「ゼロゼロ融資」ですが、誰もが予想しなかったコロナ禍が直撃した中小小規模事業者や個人事業主の資金繰りやコロナ禍対応の設備投資等に、政府系金融機関からは18兆円以上、民間金融機関からは37兆円以上活用され、この「ゼロゼロ融資」によって救われた事業者はかなりの数に上りました。
そして、いよいよその返済が本格化し始めます。「ゼロゼロ融資」の出口戦略が極めて重要な時期となります。
個々の事業者の状況を詳細に見れば、コロナによる先行き不透明な中でとりあえず手元のキャッシュを積み上げたものの結果として使わなかった企業も少なくないようですが、本当に困窮して、融資を使い切ってしまって、これから始まる返済に不安を抱えている業種も少なくありません。特に打撃の大きかった飲食、観光、交通、冠婚葬祭などの業種では大企業も含めて厳しい経営状態にあります。
ゼロゼロ融資を使い切った事業者にどう対応するのか。モラルハザードを起こさずに、どう対応するのか。そもそもコロナ禍は、経営者には責任がない災害のようなものです。パンデミックの特性も考えながら、真に必要な業種、業態、そして事業者に対して、効果的なチェック体制を構築した上で、債務圧縮のような対応が必要になってくるのではないでしょうか。
中小小規模事業者や個人事業主にとって極めて影響が大きい「ゼロゼロ融資」の出口戦略について、岸田総理の考えを伺います。

第七に、円安にもメリットがあり、そのメリットを最大化していくことも重要です。
メリットを最も享受できるのが、インバウンド観光客の増加です。
11日からは入国規制をG7並みに緩和することとなりました。
コロナ前の2019年には、インバウンドが2012年比で約4倍の3200万人まで急速に伸びた勢いを取り戻すことが重要です。インバウンドは地方の中小小規模事業者の活性化にもつながります。
またインバウンド解禁にあたり重要なのは「マスク問題」です。エリザベス女王の追悼に参集した英国の群衆、大谷翔平選手が活躍する大リーグの客席を見ても分かるように、欧米では日常生活でマスク着用をしている人は見かけません。外国人観光客にマスク着用を要請するのか、世界との乖離はないか、医学的根拠に基づきつつウィズコロナのあり方について冷静に議論すべきです。
入国制限緩和の方針とコロナで打撃を受け続けたインバウンド観光業の振興策、世界と歩調を合わせたウィズコロナ社会の構築について、岸田総理のお考えをお伺いします。

国際社会における分断への対処も重要な課題です。
ロシアのウクライナ侵略、北朝鮮による相次ぐミサイル発射、台湾有事の懸念など、世界秩序が揺らいでいます。国際法違反を是正すべき国連安保理は機能不全に陥っています。
今こそ日本の役割が重要です。特にアジアにおいては、日本は自由・民主主義の旗手として、安全保障でも経済でも毅然たる態度を示し、先頭に立つべきです。
特にASEANとの連携が重要です。米国が主導する経済圏構想IPEFにASEANから7カ国が参加を表明したのは、岸田政権の働きかけの賜物であり、高く評価します。
忘れられない記憶があります。平成25年、第二次政権発足後安倍総理が初めて出席したASEANと日中韓の首脳会合で、南シナ海の埋立を進めていた中国が強気な発言を続ける中、東南アジア各国の首脳は俯いて話を聞いておりました。その中で安倍総理が毅然と「中国は国際法、海洋ルールを遵守すべき」と主張したところ、その発言に勇気づけられた首脳たちは顔を上げ出し、日本の発言に続いて、自国の意見を述べだしたのです。結果として、会議の成果文書に「海洋ルールの遵守」がしっかりと盛り込まれました。いまだに鮮明に思い出せる場面です。
経産大臣としてRCEP交渉に臨んだ際も、米国のTPP離脱後のアジア経済圏の主導を狙う中国が誘導して、安易な条件での交渉妥結をする雰囲気がありました。しかし私が「知的財産やデジタルなどの現代的なルールを含まない貿易協定など、世界に胸を張れる協定と言えようか」と強く主張したところ、他のアジア諸国も賛同してくれ、交渉の流れは変わりました。
日本がしっかりしていれば、アジアの国々は日本と行動を共にしてくれる。そう確信します。
日本がどう主張し、どう行動するかによって今後の世界のあり方が変わります。自由・民主主義、国際法の遵守に関して毅然たる態度を取らなかった場合、そのつけは、我が国自身に跳ね返ってきます。日本が頑張って、アジアの結束を維持していかなくてはなりません。アジアにおいて日本の果たすべき役割、特にASEANとの連携強化について、岸田総理の見解を伺います。

ロシアのウクライナ侵略への対応でも分断を許してはなりません。インドやアフリカ諸国のこの問題への対応は煮え切らず、国際社会の分断にもつながりかねない情勢です。
ロシアはウクライナの主権地域のロシア編入の既成事実化を目論んでいます。日本は欧米等と緊密に連携して、原則を粘り強く訴え、自由・民主主義国の連帯を強化していかなければなりません。
一方、ロシアは核兵器やエネルギーを武器に西側諸国を恫喝しています。特に核兵器使用についてプーチン大統領は「これは、はったりではない」という言葉を使っています。
この脅しは、唯一の戦争被爆国である日本として絶対に認められません。ロシアの核兵器使用を何としても止める上で、世界は日本の主張・行動を注視しています。友好国インドとの連携も含め、価値観を共有する国々との分断回避の観点からロシアにどう対応していくのか?岸田総理の方針を伺います。

日中関係も難しい局面を迎えています。
日中関係はGDP世界2位、3位の大国関係として、世界に与えるインパクトは非常に大きなものがあります。
今や中国は巨大な国内市場や供給力を背景に相手国に圧力をかけて政策変更を迫る「経済の武器化」を進めており、外国企業に対し中核的技術の開示を要求する動きを強めています。政治的に意見の一致しない国に対して、輸入制限をかけたり、資源の輸出を止めるような行動をとっています。また巨額融資を餌にして「債務の罠」を世界中にまき散らしており、中国の行動は今や国際的な分断を促進する要因となっています。
RCEPでは、最終的に高い関税撤廃率とハイレベルのルールを中国に受け入れさせることができました。TPPについても、人権も含むハイレベルなスタンダードを守るのであれば、一緒にやっていく余地はあるでしょう。排除はしないが国際ルールの完全な遵守を求める、というのが日本の譲れない姿勢であるべきです。
現在、中国は明らかに力による現状変更を指向しています。
世界の自由・民主主義国家を分断することなく統合し、牽制と対話により、国際ルールを無視した行動は中国自身の経済発展や生活向上に不利に働くことを理解させるべきです。
そこで、中国の国際ルールから逸脱した数々の行為や力を背景とした現状変更の試みに対して、「自由で開かれたインド太平洋」や「クワッド」での取り組みに加え、より広範な自由主義国家との連携について、どう戦略性を持って進めていくのか、総理のお考えを伺います。

さて、今まで述べてきた経済状況や世界の中での日本の役割を踏まえると、日本社会における分断は何としても回避しなくてはなりません。そもそも歴史的にも日本には分断は似合いません。
第二次世界大戦末期、ルーズベルト大統領が現職のまま逝去した際に、ドイツのヒトラーは「史上最大の戦争犯罪人」と罵声を浴びせました。一方で日本の鈴木貫太郎総理は交戦中であった米国民に次のように弔意を示しました。
「ルーズベルト大統領の指導力は実に効果的なものであって、これが今日における米国の優位な地位をもたらした。大統領の逝去が米国民にとって非常なる損失であることがよく理解できる。ここに私の深甚なる弔意を米国民に表明する」
当時の米国の新聞は、鈴木総理のコメントを驚きをもって報じましたが、当時米国に亡命中だったドイツの文豪、トーマス・マンは日独の指導者を比較してこう語りました。
「あの東洋の国日本には、いまなお騎士道精神と人間の品位に対する感覚が、死と偉大性に対する畏敬がまだ存在する」と。
今、世界は分断に向かっています。しかし、このような時にあって、日本こそが人間の品位をもって国内の分断を乗り越え、世界の分断を回避するつなぎ役になっていくことが求められているのではないでしょうか。
まずは国会が先頭に立って範を示すべきです。この国会においては、与野党が政策内容で角を突き合わせるのは当然のこととしても、分断ではなく、お互いに日本と世界を良くする為の建設的な議論を行うことを提唱して私の質疑を終わります。
ご清聴ありがとうございました。