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第217回国会閉会ををうけて石破内閣総理大臣記者会見

記者会見を行う石破総理大臣

皆様、こんばんは。遅い時間に恐縮であります。

本国会の施政方針演説で引用いたしました、「反省すべき点は十分に反省するが、同時に反対党その他の協力を求め、国会がまっすぐに行くように」したい、そのような石橋湛山元総理の言葉を引用いたしましたが、その言葉を胸に、党派を超えた合意形成、真摯な国会審議に、私なりに努めてまいりました。
その結果として、令和7年度予算は、衆議院では29年ぶり、参議院では初めてとなる国会修正を経て成立をいたしました。政府提出法案は59本中58本、条約は提出をいたしました13本全てが成立をいたしました。

外交につきましても、大阪・関西万博の機会をいかして、今年に入りましてから40近くの国の首脳の皆様方とお会いをいたしました。そして、アメリカ及びASEAN(東南アジア諸国連合)4か国を訪問をいたしました。
先般のカナダ・カナナスキスでのG7におきまして、私から、ウクライナ、中東、東アジア、これらの情勢は相互に密接につながっているものであると、したがって、G7が引き続き結束をして国際社会の対応を主導すべきであるということを強調をいたしました。この点については、参加各国から御賛同を頂いたというふうに認識をいたしております。アメリカのトランプ大統領、そして、就任されたばかりですが、韓国の李在明(イ・ジェミョン)大統領、そのほかの首脳の皆さん方とも首脳会談を行ったところであります。

責任与党として、本当に多くの方々のお力を頂き、一定の成果を残せたと、このように考えておるところでございます。改めて、御尽力を頂きました全ての関係者の皆様方に心より御礼を申し上げます。誠にありがとうございました。

今国会での議論を踏まえまして、「今日より明日はよくなる」と、そのように実感ができる日本の実現に向けて、現在、名目GDP(国内総生産)は600兆円でございますが、これを2040年に1,000兆円に引き上げる。そして、現在、400万円が平均所得でございますが、これを5割以上増加させることを目指してまいります。
そのために、3つのアプローチで取り組んでまいります。

まず、賃上げや物価高対策などの足元の対応を進めることで、「『今日』の悩みを取り除く」ということが第1。次に、アメリカの関税対応、安心・安全の確保、社会保障改革などを通じまして、「『明日』への不安を払拭する」、取り去るということであります。そして、地方創生と投資の促進で、「『希望』ある未来を創る」。御希望される方が安心してお子さんを産み育てられる社会をつくり、出生数が70万人を切った、これは地方創生大臣のときから申し上げていることでございますが、「静かな有事」とも言うべきこの少子化の傾向を、何としても反転させたいと考えております。

まず、「『今日』の悩みを取り除く」についてでございますが、今年の賃上げは2年連続で5パーセントを上回る増加となりました。33年ぶりの高水準であった昨年を更に上回る見込みでございます。法改正により、約50年ぶりの教職調整額の引上げも実現できました。実質賃金が1パーセント程度上昇し続けていくことが、それが当然となる、そういう社会を実現するために、5年間で60兆円の中小企業・小規模事業者の生産性向上投資の促進などの施策のパッケージを強力に実行いたしてまいります。

人手不足、あるいは物価高、そういうようなことに直面しておられる医療・介護・保育・福祉、そのような公定価格を引き上げます。
最低賃金につきましては、2020年代に全国平均1,500円という高い目標の達成に向けて、たゆまぬ努力を継続します。官民で最大限の取組を、5年間、集中的に実施をいたします。予算、税制等の基準値がデフレ期の低い水準のまま長期間据え置かれていないだろうかと、そのようなことに対する総点検、見直しを進めてまいります。
物価上昇を上回る賃上げを実現するまでの間、その対応として、これまで、低所得の世帯当たり3万円に加えまして、お子さんお一人当たり2万円の給付金、子育て世帯向けに、育休関連給付について手取り10割への拡充、いわゆる「103万円の壁」の引上げによる2万円から4万円の所得税減税などを実施しております。

しかしながら、いまだに物価上昇を上回る賃上げが実現できておりません。これへの対応をどうしてもしていかねばならないと思っております。したがいまして、赤字国債に頼ることなく、いわゆる「ばらまき」ではない、本当に困っておられる方に重点化をする、新たな給付金を公約に掲げて実現をいたしてまいります。
特に、物価上昇が著しい食料品の支出に関して、足元の物価上昇の影響を考えて、お子さん一人当たり4万円、低所得者の大人の方にもお一人4万円、それ以外の方々にお一人2万円の給付金といたします。要は、賃金の上昇というものが物価上昇を上回っていないという事実は、謙虚に、真摯に考えていかねばならない、そういうことでございます。

消費税は、これは何度でも強調いたしますが、医療・年金・介護などの社会保障を支える大切な財源でございます。これは安定財源が必要であります。それなしに減税する、医療・年金・介護の財源である消費税を安定財源なしに減税するというような無責任なことはできません。多くを消費される高所得の方ほどより大きな減税額になります。当然のことでございます。結果として、高所得の方が優遇されることになります。本当にそれでいいのかと。そして、過去の例からも、システム改修などを伴いますために、法改正から実施まで、1年程度の時間を要すると、このように見込んでおります。時間はかかる、高所得の方を優遇することになる、そして何よりも、社会保障の財源を危うくする、その消費税減税は、私には決して適切なものとは思えないのであります。

子育て世帯への更なる支援として、公明党・日本維新の会との合意に基づき、高校無償化や小学校の給食費無償化などを進めてまいります。

就職氷河期世代について、生まれた世代で不公平がない、生まれた世代で不公平があるということがあってはなりませんので、そのような不公平がない国を目指して、リ・スキリング、高齢期を見据えた資産形成の支援、これらを強化をいたしてまいります。

米の価格につきましては、随意契約による50万トンの備蓄米の売渡しを進めてまいります。平均価格が下がり始めるなど、着実に変化は現れております。5キロ3,920円ということになったところであります。
価格高騰の原因と今般の対応の検証を行い、食料安全保障の観点からも、生産性の向上、付加価値の増大、輸出の拡大を促進するために政策を転換をいたします。消費者の皆様方が安心してお米を買えるようにするとともに、意欲ある生産者の方々が不安なく増産に取り組めるような、そのような米政策を実現をいたします。

エネルギーの価格上昇に対する対応も重要であります。リッター当たり10円のガソリン価格の定額引下げを行っておるところであります。
中東情勢の緊迫化により、石油製品価格の急激な上昇が生ずる場合に備えまして、需要の拡大が見込まれます7月から8月にかけて、基金の余剰を活用した予防的な激変緩和措置を、6月26日、この木曜日から開始をいたします。

ガソリンにつきましては、公共交通機関の少ない地方の負担に配慮をして、現在の定額引下げ措置に加え、小売価格がウクライナ危機前後の水準となっている最近の水準から上昇しないように目指す措置を講じます。
暫定税率の廃止につきましては、公明党・国民民主党との合意に基づき、社会インフラの整備・維持管理のための安定財源確保などと併せた結論を得ることといたします。安定財源を確保する、これと併せて結論を得るものでございます。

電気・ガス代につきまして、暑くなる7月から9月にかけて、標準的な御家庭で3,000円程度の負担引下げとなる支援を行います。

次に、「『明日』への不安を払拭する」ということでございますが、米国の追加関税措置につきましては、「関税よりも投資」と、この方針を踏まえまして、我が国の国益を守りつつ、日米双方にとって利益のある合意が実現できますよう、引き続き、全力を尽くしてまいります。

全国1,000か所での特別相談窓口で、相談に本当にきめ細かく対応する。中堅・中小企業の皆様方の資金繰り支援を講じるなど、国内産業への支援に万全を期し、必要に応じて、追加の対策もちゅうちょすることなく講じてまいります。

日本は世界有数の災害大国であります。そうであれば、防災体制は世界一でなくてはなりません。東日本大震災、能登半島地震からの復旧・復興に引き続き取り組むとともに、本国会で法改正を行い、ボランティア団体の皆様方との連携、被災者の方々への福祉サービスの提供、道路・水道などの早期復旧に向けた措置を強化することといたしました。

避難所の生活環境を改善すると、スフィア基準(人道憲章と人道対応に関する最低基準)という言葉を何度か国会でも使いましたが、トイレカーの数を約4倍にすると、そのように、キッチンカー、あるいは段ボールベッド、そういうものも含めて備蓄を進めてまいります。
避難所の方々、一番つらい立場におられる方々、そういう方々の環境を改善するということは当然のことでございます。今年度は、内閣府防災担当の予算・人員を倍増いたしました。来年度は、専任の大臣の下、十分なエキスパートと予算を有する防災庁を設立をいたします。

戦後最も厳しく複雑な安全保障環境に対応するため、防衛力の抜本的強化を着実に進めますとともに、サイバー攻撃を仕掛けてくるサーバーを無害化する制度を設けるなど、抑止力を強化をいたしました。

自衛官の処遇改善は、防衛力強化のためにも喫緊の課題であります。どんなに立派な船や車両や航空機を持っても、自衛官の方々がいなければ、それは動きません。関係閣僚会議で取りまとめました「基本方針」(「自衛官の処遇・勤務環境の改善及び新たな生涯設計の確立に関する基本方針」)に基づく取組により、5割の自衛官の皆さんが「勤務意欲が向上した」とアンケートに回答していただいております。また、中途の退職者の数が減少するなど、効果は現れておると認識をいたしております。更に処遇改善に取り組んでまいりたいと思います。

現下の中東情勢への対応を含め、海外の邦人の安全確保に向けた万全の措置を、引き続き講じます。

年金制度につきましては、「106万円の壁」を撤廃しながら、より手厚い年金を受け取っていただける改革を実現をいたしました。立憲民主党と合意をし、今後、仮に経済が好調に推移しない場合には、基礎年金水準の目減りを防ぐ措置を講ずることといたしました。5年に一度の制度改革を果たし、現在、そして将来の受給者の給付を確保いたしたところでございます。

高額療養費制度につきましては、今回の反省を踏まえて、幅広い御意見を伺いながら、丁寧に対応をいたしてまいります。
公明党・日本維新の会との合意に基づき、病床の適正化など、現役世代の保険料負担を含む国民負担の軽減を図ります。
無痛分娩の環境整備、女性の負担にも配慮した乳がん検診、女性用トイレの整備への対応など、それらを検討いたします。女性の方々が安心できる社会への見直し、これを着実に進めてまいります。

大災害や有事に対応するためには、財政余力がどうしても必要であります。そのためにも、財政健全化に取り組み、2025年度から2026年度を通じて可能な限り早期にプライマリーバランスを黒字化させるとともに、コロナ禍前の水準に向けて債務残高対GDP比を安定的に引き下げることを目指します。

最後に、「希望ある『未来』を創る」についてであります。

コストカット型の経済から高付加価値創出型経済への移行に向けて、各種施策を講じてまいりました結果として、賃金と国内投資には「潮目の変化」が起きています。これを維持・加速させる鍵は、賃上げに加えて、「地方創生2.0」と投資の促進です。

「地方創生2.0」では、AI(人工知能)、ロボット、ドローンなど新たなテクノロジーを最大限活用しつつ、「ふるさと住民登録制度」を創設し、関係人口1,000万人を創出することを通じて、人口減少下でも経済成長を図り、地域社会の活力を維持・向上させてまいります。
「基本構想」(「地方創生2.0基本構想」)に沿って、民の力を最大限にいかす新たな官民連携により、「令和の日本列島改造」を強力に進めてまいります。

GX(グリーン・トランスフォーメーション)・DX(デジタル・トランスフォーメーション)、経済安全保障、コンテンツに加え、ヘルスケア、防災等の有望な分野への官民の投資を加速をし、雇用・輸出を拡大をいたします。対日投資を促進し、産業立国を目指します。戦略的研究開発、優秀な研修者の招へい、スタートアップ支援など、未来に向けたイノベーション創出の取組を強化します。

これら3つのアプローチに沿って、まずは既存の予算、施策、それを総動員して的確な経済財政運営を行ってまいります。
「骨太の方針2025」や新しい資本主義の「実行計画」、「地方創生2.0基本構想」、参議院選挙の公約等について、参議院選後に具体化し、着実に実施に移していきたいと、このように考えておる次第でございます。

私からは冒頭、以上です。ありがとうございました。