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政策国会国会演説代表質問

第205回臨時国会における世耕弘成参議院自民党幹事長代表質問

第205回臨時国会における世耕弘成参議院自民党幹事長代表質問

自由民主党の世耕弘成です。
私は、自由民主党・国民の声を代表して、岸田総理大臣の所信表明演説について質問いたします。まず冒頭、新型コロナウイルス感染症でお亡くなりになられた方々、そして、御家族の皆様に心よりお悔やみを申し上げるとともに、現在も闘病中の皆様には心からのお見舞いを申し上げます。
医療、保健、介護の現場を支えてくださっている皆様、そしてエッセンシャルワーカーの皆様のご尽力でコロナ禍においても我々の日常生活は維持されています。心から感謝申し上げます。

「8番、セカンド、岸田君。」
岸田総理は、高校時代、野球に明け暮れる少年だった、と元同級生でチームメイトだったある経営者の方から伺いました。8番、セカンド。3番でも4番でもピッチャーでもサードでもなく、目立たないけれども、誰かが担わなくてはならないチームワークの要。岸田少年は黙々と練習を重ね、チームに貢献していたと言います。そしてこの話には続きがあります。練習後、岸田少年は最後まで残って、真っ暗になるまでトンボという道具でグラウンド整備に汗を流したそうです。目立たないポジションや仕事を引き受け、みんなが頑張ることができる環境を下支えする。所信表明演説で述べられた「仲間とならもっと遠くへ、はるか遠くへ」という岸田総理の精神は、高校時代から育まれていたのだと感じています。
自民党の総裁選では、人材の宝庫たる自民党らしく、多様性に富んだ候補者が、内政から外交まで、白熱した議論を展開しました。国民の皆様に、自らの信ずる政策をお示しし、支持を訴えていく。総裁選中の切磋琢磨を通じて候補者自身もリーダーとしてさらに成長していく。自民党の政治家と政策はこうやって磨かれていくということを、国民の皆様に堂々とお見せすることができました。開かれた民主的な政党であることを世の中に強く示すことが出来ました。
さて本日は総裁選や所信表明で明らかになった岸田総理の政治姿勢、政策について、踏み込んで具体的に伺っていきたいと思います。
総裁選の中で岸田総理は「聞く力」をご自身の長所としてあげて来られました。所信表明演説も「真摯に耳を傾ける」姿勢に満ちています。
今から2年前、参議院自民党では「不安に寄り添う政治のあり方勉強会」を立ち上げ、計35回、有識者や現場の方々から医師不足等人々が感じている不安の声を聴いてきました。この勉強会は単なる政策勉強ではなく、我々の政治姿勢を、一方的に政策を訴える姿勢から、まずは困っている人の声を聞かせていただく姿勢に変革する政治運動でもあります。まさに「聞く力」を強調される岸田総理の政治姿勢と軌を一にするものです。
しかし、総理大臣として広範にわたる国民の声をしっかり聞くことはなかなか困難です。総理がノートをつけたり、全閣僚がどれだけ車座集会を行っても、あるいはアンケートやメールでの意見の収集にも限界があります。
一方で現在はSNS上で膨大な量の国民の生の声がやりとりされています。そこで提案ですが、SNS上の国民の声をビッグデータとして収集、解析し、総理に届く仕組みを作ってはどうでしょうか?そのためには一定の予算と人材の投入が不可欠ですが、「聞く力」を強調される岸田内閣だからこそ実行すべきと考えますが、いかがでしょうか?

さて、言わずもがなではありますが、新型コロナ対応が、政府に対して国民が期待する最優先事項であります。
10月1日から緊急事態宣言とまん延防止等重点措置が全面解除されたことは、まさに菅前総理が陣頭指揮をとられたワクチン接種推進の賜物と言えます。1日当たり接種回数が150万件を超える日もあり、全国民の2回目接種率は6割を遥かに超えました。もはや世界でトップクラスの接種率です。
その効果もあって新規感染者数が下火になる中ではありますが、またいつ次の波が来ても不思議ではありません。ワクチン接種による効果や発症後の有効な治療法が登場し始めている現状を考えると、次の波の際には感染者を早期に入院させ、適切な治療を行い、重症化させないことが国民の安心という観点から最も重要ではないでしょうか。
和歌山県では無症状者も含む全ての感染者を入院させるという他に例のない対応を取ってきた結果、大都市大阪の隣県という位置にありながら、感染者数を比較的低く抑え、今日まで宣言や重点措置の対象とはなっていません。
感染者への治療を効率的に行うためには、訪問診療では限界があります。医療従事者の数に限りのある中、中等症以下の患者を大規模なスペースに集約し、効率的に治療することが重要です。大阪府では大規模イベント会場を活用して中等症以下の患者用の病床の確保を進めています。このような対応を全国的に行うべきではないでしょうか?

総理は所信表明で「医療資源確保のための法改正」に言及されていますが、次の波は法改正を待ってくれるとは限りません。法改正はいずれ行うとして、まずは総理がリーダーシップを取って、知事、医療関係者等と連携して、今直ちに全国で中等症以下の治療施設を拡充すべきと考えますが、いかがでしょうか?

こういった対策で、国民の命を守り、安心感を与えた上で、経済活動の再開も進めていかなくてはなりません。
世界的に感染者数が減少に転じる中、各国では経済活動の再開が急ピッチで進んでいます。ヨーロッパや米国では国際空港の出発便数が6割まで回復しています。グローバル経済は確実に再起動を始めています。
そういう動きに日本が乗り遅れるわけにはいきません。ワクチンパスポートは、厳しさを増すグローバル化した経済競争を勝ち抜くために戦略的に導入するべき手段です。ワクチン接種済みの日本の企業人が米国に出張した場合に、米国では隔離期間がないのに、帰国した際には10日の隔離が求められる。これではワクチンの接種効果を十分に経済活動に活かしていないことになります。参議院自民党はプロジェクトチームを立ち上げ、接種済証だけではなくマイナンバーカードを活用したスマホアプリによるワクチンパスポートの発行や、入国後の隔離期間の大胆な短縮等の申し入れを政府に行っています。ワクチン接種が進んでいるにもかかわらず、ゼロコロナの状態になるまで経済の動きを再開しないというのであれば、経済が死んでしまいます。
他国に遅れることなく経済・社会活動を回復させるために、岸田総理は、ワクチンパスポートの一日も早い実装と入国後の隔離期間の免除についてどのようなロードマップを持って進めていくおつもりでしょうか。

痛手を負った飲食や観光業といった対面型のサービス産業の営業正常化も積極的に進めていかなくてはなりません。接種証明又は検査での陰性証明を活用して営業制限をできるだけ緩和していく。現在実証実験が行われつつありますが、実験結果を悠長に待ってはおれません。次の波が来た時には接種証明等をフル活用して出来る限り通常の営業を行っていただけるように準備を進めることが重要です。接種証明等を活用した営業制限緩和について、具体的にどのようなスケジュールで進めていかれるのか?お考えを伺います。

また営業制限等で大きな影響を受ける事業者に対する支援も重要です。総理は影響を受ける事業者に対して、地域、業種を限定せず、事業規模に応じた給付金の支給を明言されました。これまでの給付は、スピードを重視すると一律給付となり不公平感が出ました。一方で影響額等を正確に把握しようとすると手続きが煩雑になり、給付までに時間を要します。総理は影響を受ける事業者の規模や影響度合いをどのように把握して、公平で迅速な給付を実現しようとされているのでしょうか?

総理は所信表明演説の中で「新自由主義的な政策」の弊害を指摘され、「分配なくして、次の成長なし」との考えにより、「新しい資本主義」の実現を目指すことを表明されました。そして「成長と分配の好循環」がコンセプトだとされ、成長戦略と分配戦略にそれぞれ4つの柱を立てられました。
「成長と分配の好循環」というのは決して新しい概念ではありません。この言葉が最初に使われたのは、記録で確認できる限りでは、平成27年11月26日に開催された一億総活躍国民会議において当時の安倍総理の「アベノミクス第2ステージとして成長と分配の好循環を構築していく。成長か分配かどちらを重視するのかという議論に終止符を打つ」という趣旨の発言です。その後、政権の中で、分配の観点から賃上げの重要性や厚生年金の適用拡大、低所得者対策等について議論が進んでいきました。
「成長と分配の好循環」をコンセプトとする岸田総理の「新しい資本主義」とアベノミクスの関係をどう位置づけるのか?アベノミクスの発展的承継なのか?修正なのか?全く新しい概念なのか?総理のお考えを率直にお聞かせください。

確かに安倍政権時と比べて「格差やそれがもたらす分断」が深刻化しているのも事実です。特にコロナ禍で分断がさらに加速している状況です。
そういった中で岸田総理が「分配戦略」を打ち出して、分配にやや軸足を置いていこうという姿勢を取っておられることを支持します。
しかし分配は単なるバラマキであってはなりません。分配が社会経済の活力の糧となり、成長につながる投資とならなくてはなりません。
総理が所信表明で述べられた「分配戦略」4つの柱がもう一方の「成長戦略」4つの柱にどう関わってくるのか。紐解いていきたいと思います。
分配戦略第一の柱の中で、総理は下請け取引を是正し、大企業と中小小規模事業者の共存共栄を目指すことを宣言されました。中小小規模事業者は日本の雇用全体の現に7割を占めています。この中小小規模事業者の経営基盤を強化せずして、「働く人への分配機能の強化」「令和の所得倍増」が実現することはありません。
最低賃金の引き上げを強制すれば、中小小規模事業者の経営改善が進み、生産性が上がるという乱暴な考え方をする有識者がいますが、中小小規模事業者の労働分配率は7割を超えており、経営者は我が身を削って従業員の給料を支払っている状況です。まずは多くの中小企業が依存する大企業との下請け取引の条件を改善し、中小小規模事業者の収益力を上げることが先決です。私は経産大臣時代にコストカットの一方的押付けの禁止や金型保管コスト負担の適正化などに取り組みましたが、まだ道半ばです。
中小小規模事業者の多くは地方に立地しています。中小小規模事業者の活性化は成長戦略第二の柱である「地方の活性化」に直結します。またものづくりを担う中小小規模事業者には、日本の戦略上重要な技術者や素材を抱えている企業が少なくありません。ものづくり中小企業への支援は、成長戦略第三の柱である「経済安全保障」にも直結する重要な問題です。
岸田総理におかれては、経済団体代表や業界団体、大企業の経営者と膝詰めで談判するなど、下請け取引条件の改善に先頭に立って取り組んでいただきたいと考えますが、御覚悟はいかがですか?

総理は分配戦略の第二の柱の中で、「教育費支援、子育て世帯への支援」に言及されました。私は教育における格差是正とそのための分配が日本の将来の成長のために、何よりも重要だと考えます。
最近、とても嫌な言葉を耳にすることがあります。
「親ガチャ」。 自分の親は選べない。自販機から出てくるカプセル式おもちゃのように、自分の境遇は、努力よりもどの親の元に生まれるかの運任せで決まることを示す言葉です。
この言葉の裏には、世帯年収や親の学歴が一生を決めてしまうとの諦めの気持ちが込められています。複数の学習塾やスポーツ教室に通い、私立名門一貫校に入学し、幼少期から海外での生活を経験出来るような子供と、生活困窮世帯の子どもとの間には努力ではカバーできない大きな機会の格差が人生のスタートラインに立った時点から発生します。
しかし子どもや若者が最初から努力を諦めてしまうような社会に成長の活力は期待できません。どんな環境に育っても、努力が報われる社会であってこそ、真に優秀な人材が育ち、総理が成長戦略の第一の柱に挙げておられる科学技術立国の担い手も生まれてくるというものです。
教育機会の格差を是正する手段はいくつか考えられます。学習塾等に使用できるクーポン券の配布や、学習支援に取り組むNPO等への支援、どこにいても一流講師の授業が受けられるオンラインシステムやアプリの活用といった対策が考えられます。岸田総理は文部科学副大臣当時「子どもたちが自ら何かをしようという意欲や興味を大切にしていく」と発言されていました。
是非とも教育の機会均等に向けた分配に重点を置いていただき、「親ガチャ」という言葉が聞かれなくなるような社会をつくっていただきたいと思いますが、いかがでしょうか?

分配の第三の柱として、総理は、看護、介護、保育などの現場で働く人の収入を増やすと宣言されました。
看護、介護、保育といったサービスは、少子高齢化が進む中で、多くの国民が幸せな日常生活維持のためにお世話になる重要で崇高な職種です。スキルや体力も要求される仕事です。しかしそこで働く人々に支払われている賃金水準はその価値に見合っているとは思えません。しかもサービスの対価としての価格は政府が決定する公定価格であるため、賃金決定にあたって市場メカニズムは働きません。現に介護職の有効求人倍率は直近3倍を超えていますが、賃金が大幅に上がっているわけではありません。だからこそ政治が主導して、看護、介護、保育従事者の賃上げを行うことは非常に意義あることと考えます。 これまで政府は再三にわたって民間企業に賃上げを要請してきましたが、未だ本格的な賃上げは実現していません。看護、介護、保育等の分野で働く人は500万人を超えており、その賃上げには大きなインパクトがあります。これら分野の賃上げを民間企業の賃上げにつなげ、長年続いている賃金デフレからの脱却する令和の所得倍増の起爆剤としてはどうでしょうか?
また重要な公的サービスという観点からは教員や科学技術立国の担い手でありながら薄給で働く若手研究者等も対象にすべきではないでしょうか?
ただこれら公的サービスは公費や保険制度で運営されているわけですが、財源や国民負担との関係はどう整理されるのでしょうか?

分配戦略第四の柱である財政の単年度主義の弊害是正については、成長戦略の第一の柱である科学技術立国等長い目で安定的に取り組まなければならない政策にとって極めて有効な手段になると期待しています。
一方で国庫債務負担行為や基金など、複数年度にわたる予算措置がすでに行われている面もあります。総理は具体的にどのようにして単年度主義の弊害是正に取り組むおつもりですか?

本来、分配戦略に入っていてもおかしくない、「人生100年時代の不安解消」を総理はあえて成長戦略の第四の柱に位置付けられました。「しっかり働けば結婚や持ち家につながるだけの賃金がもらえる」。「今年よりも来年は賃金が上がっていく」。このような安心感を国民に持ってもらうことが、成長の原動力となることは間違いありません。
一方で、医師不足、孤独・孤立、地域の消滅・崩壊、といった不安には、やはり分配戦略のアプローチも重要です。不安に寄り添う政治のあり方勉強会で分かったことは、本当に困っている人ほど声を上げない、悩みが深刻な人は自分が何に悩んでいるかすら分からない、各支援制度がバラバラで一本化されていない、生活維持に必死で申請書類の記入に時間がかけられない、といった現実です。
支援の申請を待つのではなく、行政から積極的に手を差し伸べることの重要性や、行政だけで対応するのではなく、現場で活動するNPOなどとの協働体制を構築する必要性。そして徹底した省庁縦割りの打破とスマホで支援を申し込める仕組みの構築。政府が一刻も早く取り組むべき多くの課題が明らかになりました。 岸田総理は、不安を抱える方々への対応体制を分配戦略の視点からどのようにして創り上げていくおつもりでしょうか。

さて次に、所信表明演説で深く触れられなかった、しかし国民生活にとって極めて重要なエネルギー政策についてお聞きします。
岸田政権下においても「2050年温室効果ガス排出ゼロ」目標を掲げ、「2030年度46%減」の国際公約をしっかりと達成し、ESG投資や排出権取引等で諸外国に遅れることなく、脱炭素を日本の競争力を高めるための成長の機会に繋げる努力が重要です。
しかしエネルギーが24時間365日安定的に供給され続けるということが、その大前提にあることを忘れてはなりません。あまり知られていませんが、昨年12月から今年1月にかけての寒波の中で日本の電力供給はあわや全国的な停電発生寸前の危機的な状況にありました。

暖房用の電力需要が急増しましたが、LNGの在庫は払底。悪天候の日には太陽光は発電出来ず、東北地方の風力も雪と凍結のため稼働できない時がありました。停止していた石炭火力発電所に重油を注入して稼働させることで少しでも必要な電力量を確保しようとする場面もあり、綱渡りの時期がありました。
これから訪れる次の冬の電力需給も楽観できません。脱炭素の流れの中で、日本国内ではこの1年間で原発5機分に相当する合計500万キロワット分程度の古い火力発電が引退しました。二酸化炭素排出量の少ないLNG発電についてはLNGの国際的な争奪戦が激しくなっていて価格高騰が続いている状況です。そもそもLNGは物質としての性質上長期の備蓄が不可能です。次の冬、再び寒波が日本を襲ったらと、背筋が冷たくなります。
再生可能エネルギーの比率を単純に上げるだけでは電力の安定供給はおぼつきません。残念ながら地政学上日本は周辺国と電力融通のためのネットワークを接続することもできません。また電力料金の大幅な高騰を招くことも大きな懸念です。すでに日本の家庭は年1万円の再エネ賦課金を負担していることも忘れてはなりません。
安定的で経済的な電力供給を継続しながらカーボンニュートラルを実現するためにも、再エネ比率の向上とともに、CO2を排出せず安定的に大量の電力を供給できる原子力を、安全を最優先にしながら、ベースロード電源として活用することを車の両輪と位置付けるべきだと考えますが、岸田総理のお考えを伺います。

また、世界には現行の原発よりもさらに安全、低コストで、再生可能エネルギーとの相性も良い、小型モジュール炉等の新技術の導入も進んでいます。日本も新たな技術の研究、導入に進むべきだと考えますがいかがでしょうか?

さて次に、我が国の外交・安全保障についてお尋ねします。
岸田総理は戦後、連続・単独任期としては最長となる約4年7ヶ月にわたり外務大臣を務められました。日米同盟の強化や自由で開かれたインド太平洋、北朝鮮の拉致、核、ミサイル問題、をはじめとする重要な外交課題についてもその内容、経緯を熟知しておられます。国際的知名度も高く、各国首脳にも人となりを知られており、短期での首相交代による日本外交へのダメージは最小限に抑えられると考えます。
とはいえ、課題は山積しています。
先日、退任間際に米国を訪問した菅前総理は、対面では初の日米豪印首脳会合に参加し、「自由で開かれたインド太平洋」の実現に向け結束することを確認しました。基本的価値感を共有し、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序を目指す4カ国が今後毎年首脳会合を開催することに合意したことは画期的成果です。一方で4カ国で微妙な思惑の違いや温度差も感じられます。元々日本が主導してきたこの枠組みを岸田内閣においてどう承継し、深化させるべきか?各国の思惑の違いをどう乗り越えるべきか?お伺いします。

TPPへの中国と台湾の同時期の申請も岸田外交にとって重たい課題です。
中国は国有企業問題を抱えるなどTPPのハイスタンダードなルールに対応するのは困難な一方で、加盟国にとっては非常に魅力的な巨大市場です。
台湾は全てのTPPルールを受け入れる用意があることを表明するなどTPPのスタンダードに対応できるポテンシャルが十分にある一方で、中国が強硬に加入に反対していることなど、中国、台湾の加入申請には難しい手綱捌きが求められます。議長国としてまさに日本外交の手腕が問われます。TPP議長国としてどのような方針で臨んで行かれるのか、現段階の方針をお聞かせください。

さらに日露関係について伺います。
岸田総理は外務大臣時代、ロシアのラブロフ外相とはウォッカの飲み比べで引けを取らない酒豪ぶりを発揮され、良好な個人的信頼関係を築かれてこられたと伺っています。
しかし、東京オリンピック期間中のロシア首相の北方領土上陸、特区の設定、「領土の割譲禁止」明記の改正憲法の発効、国後島周辺海域の射撃訓練など、平和条約締結に向けた努力に冷や水をかける行為が続いています。コロナの影響もあり、先月世界女性議長会議で、山東議長とマトビエンコ連邦院議長が会談した以外は、ハイレベルでの交流もほとんど途絶えている状態です。
2018年のシンガポール合意に基づいて、両国の経済関係強化を進めることが、ひいては平和条約締結がロシアにとって大きな利益だということを粘り強く働きかけ、理解させることが重要です。岸田総理の日露交渉への意気込みを伺います。

さてコロナ禍にあっても、この夏、希望の灯が東京にともりました。オリンピック・パラリンピックの開催です。
「新型コロナウイルス禍を考えると、日本が行ったような大会開催は諸外国ではできなかったと確信している。世界は日本が果たした役割を決して忘れない。」国際パラリンピック委員会のパーソンズ会長が閉会式前の総括記者会見で語った言葉です。
開催にあたっては様々なご意見がありました。しかし躍動するアスリート達の姿を見て、世界は沸きました。感染予防や患者の治療にあたられた医療従事者や、大会運営にご協力いただいたボランティアの皆さんへの心からの敬意と感謝を胸に抱きつつ、私はオリンピック・パラリンピックはやはりやってよかったと考えます。
開催にあたって、参議院自民党は開幕前の3月、4月、所属議員で担当を決めて在京の各国大使館をほとんど全部訪問し、選手団の派遣を呼びかけました。その際大半の国が派遣を明言してくれ、「自国と比べて感染拡大を抑えている日本だからこそ開催できると信じている」「このタイミングでは、日本でしか開催できないのではないか」「今回が東京開催で本当に良かった」と話していただいたことは忘れられません。私たちは開催国としての責任をしっかりと果たしたのです。
SNSを飾った選手村から見える東京の風景。選手村で提供された食事を世界一と褒めたたえる選手たちの投稿。
もし選手たちが自由に外出ができたなら、そして海外からも多くの観客をお迎えして日本中を訪ねていただけたなら、何万倍も日本の魅力を世界中に発信できたであろうと思うと、率直に申し上げて残念でなりません。
しかしまだ大きなチャンスが控えています。
2025年大阪・関西万博の開催です。今度こそ、海外からも多くの方々をお迎えして、日本の魅力を大いに世界に発信したい。コロナ禍でのオリンピック・パラリンピックとなってしまった今、万博を誘致できて本当によかった、その戦略は間違っていなかったと思います。
「いのち輝く未来社会のデザイン」、「いのちを救う」、「いのちに力を与える」、「いのちをつなぐ」という万博のテーマは、まさにポストコロナのテーマにふさわしいものです。コロナ禍で激減したインバウンドをV字回復させ、質が高く、安全・安心な日本の食材、多彩な魅力を持つ地方などを海外に発信できる絶好の機会です。世界が感染症を克服したことを高らかに歌う歴史的な万博、さらにはウィズコロナ、ポストコロナの新しい生活様式と価値観を世界に示す万博ともなります。
コロナ禍におけるオリンピック・パラリンピックの成果と経験を踏まえ、2025大阪・関西万博をどう位置づけていくおつもりか、総理のお考えをお聞かせください。

この1年間で岸田総理は変わった、私は心底そう思います。苦杯をなめられた1年前の総裁選以降も地道に政治活動を継続され、「決断する強いリーダー」を目指し、粘り強く研鑽されてきた気迫を感じます。試練が人間を磨くということを痛感します。総理の粘り強いリーダーシップを発揮していただくことを期待し、我々参議院自民党も共にこの国難に立ち向かっていく決意をお示しし、質問を締め括らせていただきます。