
エネルギー基本計画
この原稿を書いている今、次期エネルギー基本計画策定がまさに佳境に入っている。言うまでもなくエネルギー問題は国家の最重要課題であり、先の大戦を招いたのはエネルギー供給の道を断たれたからである。半導体工場にしても生成AI(人工知能)にしても莫大な電力を必要とする。電力の安価で安定的な供給は今後のわが国の産業構造を決定づける▼戦後、関西では週に3日の休電日があり、それ以外にもしばしば停電する非常事態に陥っていた。そこで計画されたのが黒四ダムの建設である。171人もの尊い命が失われたが、そうした犠牲の上に生み出された25万8千kWという発電量は、大阪市全体の電力需要の約半分をまかなった。電力が十分供給されるようになったおかげで生産ができた。復興ができた。人々の顔に笑顔が戻った▼だが、それを指揮した関西電力社長太田垣士郎は命を削り果たした末、黒四竣工の9カ月後にこの世を去る。われわれは、こうした先人の覚悟をもう一度噛みしめるべきであろう。