民需主導の自律的な経済成長と財政健全化の両立を
経済政策には二つの側面がある。第一に、国民の暮らしを守る―すなわち、現状を維持する側面である。第二に、30~50年程度先の未来を見据えて、国民に適切な行動変容を促す改革を断行し、将来世代により良い日本を残す側面である。
この二つの側面にバランス良く取り組むことこそが、経済政策の最も本質的なポイントとなる。人間には本能的に「現世利益」を求める短期志向が染み付いているが、将来世代の利益にも配慮した持続可能性(サステナビリティ)の高い政策を講じることが肝要である。そのためには、さまざまな政策をしっかりと優先順位付けして、効率の低い政策は見直し、効率の高い政策には大胆な予算配分を行うことに加えて、財政出動等が経済成長につながっているか否かを検証する「PDCAサイクル」を強化する必要がある。
以上のような観点を踏まえて、自民党には、民需主導の自律的な経済成長と財政健全化の両立を図ってほしい。
次に、各論レベルで特に注力してほしい政策は以下の5点である。
第一に、継続的な賃上げを実現するためには、労働生産性を引き上げることが喫緊の課題だ。そのためには、(1)人的資本を中心とする無形資産投資を促進して、労働者の「エンプロイアビリティ(雇用され得る能力)」を向上、(2)グリーン化、デジタル化、規制改革などを通じて、企業の成長期待を高める、(3)企業の新陳代謝を促すことで、適切な価格転嫁を後押し、(4)「失業なき労働移動」を進めて、経営者が好況期に社員の賃金を安心して引き上げられる環境を整備、(5)外国人高度人材の活用や女性のさらなる活躍を推進して、ダイバーシティ(多様性)を高め、イノベーション(技術革新)を起きやすくする、(6)デジタル化や組織のフラット化などを進めて、企業や政府の業務効率を改善、(7)コーポレート・ガバナンス(企業統治)を強化、といった、わが国の労働生産性引き上げに向けた多面的な施策を同時並行的に講じる必要がある。
第二に、わが国の成長戦略の柱として...