来年度予算編成や重要政策の基本的な指針となる「経済財政運営と改革の基本方針2023(骨太の方針)」が6月16日、閣議決定した。岸田政権が進める「新しい資本主義」をさらに加速させ、構造的な賃上げの流れを確かなものとする決意が示されたほか、経済、社会保障、外交・安全保障、防災・減災等、幅広い分野の政策課題と方向性が列挙されている。策定に当たってはわが党の意見が随所に反映された。

骨太の方針原案を討議した6月13日の政調全体会議には多くの議員が議論に参加した
党の提言が随所に反映
骨太の方針策定に向け、わが党は政務調査会の各機関が提言等を取りまとめ政府に対して申し入れを行ってきた。骨太の方針の原案を巡ってわが党は6月8日、13日と2度にわたり政調全体会議を開催し、文案について検討を重ねてきた。
政府与党によるさまざまな政策提言を反映した骨太の方針では、岸田政権が進める「新しい資本主義」により、従来は「コスト」と認識されてきた賃金や設備・研究開発投資等が「未来への投資」と再認識され、人への投資や国内投資を促進する政策を展開されていることに言及。30年ぶりとなる高い水準となる賃上げ、企業部門に醸成されてきた高い投資意欲等、「これまでの悪循環を断ち切る挑戦が確実に動き始めている」として、こうした前向きな動きをさらに加速させる決意が示されている。
「新しい資本主義」を加速し、構造的な賃上げを実現するために、「三位一体の労働市場改革」を行い、構造的に賃金が上昇する仕組みづくりを進める。
また、官民連携による国内投資拡大とサプライチェーンの強靱化、グリン・トランスフォーメーション(GX)、デジタルトランスフォーメーション(DX)等の加速、スタートアップの推進等、新たな分野への投資を拡大し、経済社会改革を実行することも強調されている。
「三位一体」の労働市場改革
骨太の方針では、「成長と分配の好循環」と「賃金と物価の好循環」の実現の鍵を握るのが賃上げと位置付け、労働市場改革により物価高に打ち勝つ構造的な賃上げ実現への施策が重点的に記述された。
具体的には「リ・スキリングによる能力向上支援」「個々の企業の実態に応じた職務給の導入」「成長分野への労働市場の円滑化」を同時並行で進める「三位一体」の労働市場改革を進める。
また、地方、中小・小規模事業者については、三位一体の労働市場改革と並行して、生産性向上を図り、価格転嫁対策を徹底。中小企業の賃上げ原資の確保につなげる。
今年の春闘における賃上げ率は約30年ぶりの高い伸びとなった。骨太の方針では、「この賃上げの流れの維持・拡大を図る」として、中小・小規模事業者の賃上げに向けた環境整備や、最低賃金「全国加重平均1000円の達成を含めた議論」や、地域間格差の是正も盛り込んだ。
少子化対策 実質的な追加負担求めず
6月13日に閣議決定した「こども未来戦略方針」の内容も骨太の方針に反映された。
「若い世代の所得を増やす、社会全体の構造や意識を変える、全てのこども・子育て世帯を切れ目なく支援するという3つの基本理念を踏まえ、抜本的な政策の強化を図る」とし、少子化対策に全力で取り組む決意を改めて強調した。
財源の確保については「歳出改革等によって得られる公費の節減等の効果および社会保険負担軽減の効果を活用することによって、国民に実質的な追加負担を求めることなく『こども・子育て支援加速化プラン』を推進する」とした。
教育政策 3年間の集中改革で公教育再生
「令和型の質の高い公教育の再生」も骨太の方針に盛り込まれた。喫緊の課題である教師不足解消に向けて「真に頑張っている教師が報われるよう、教職調整額の水準や新たな手当の創設を含めた各種手当の見直し」等を通じて、教師の処遇を抜本的に見直す。
令和6年度からの3年間を「集中改革期間」と位置付け、来年度から小学校高学年の教科担任制の強化や教員業務支援員の小中学校への配置拡大を速やかに進め、公立学校の教員の給与の在り方を定めた給特法の改正案についても、来年度中の国会提出を検討することを盛り込んだ。
防衛力財源確保の税制措置 「柔軟な判断可能に」
政府与党は防衛財源確保のための税制措置について、昨年末に「令和6年以降の適切な時期」との方針を示した。わが党はこれについて防衛関係費の財源検討に関する特命委員会(委員長・萩生田光一政調会長)が、開始時期について「令和7年以降のしかるべき時期とする柔軟な判断も可能とするには、税制措置以外の財源をさらに確保することが必要」との提言をまとめ、政府に提出していた。
この提言を受け、骨太の方針には「令和7年以降のしかるべき時期とすることも可能となるよう、5兆円強の確保を目指す税外収入の上積みや、その他の追加収入も含めた取り組み状況を踏まえ、柔軟に判断する」と明記された。