円形交差点の一種である「ラウンドアバウト(環状交差点)」。車両の流れが一方通行で規則的なため、事故が起きにくく安全性が高いとされるほか、信号待ちがないため円滑な道路の流れを実現できる等、多くのメリットがあります。近年はその有用性が確認されつつあり、普及に向けてニーズが高まっています。

全国で初めて既存の信号機を撤去し導入されたラウンドアバウト(長野県飯田市=写真提供:ラウンドアバウト普及促進協議会)
重大事故の発生率が減少
ラウンドアバウトは環状の道路(環道)に対し各方面からの道路がそれぞれ合流している交差点です。
ラウンドアバウトに進入する車両は必ず左折で進入し、環道内を真上から見て右回りの一方通行で進みます。そして、行き先の道路へも必ず左折で流出する仕組みです。
信号機はなく、環道を走行する車両に優先権があることが最大のポイントです。そのため環道の交通流は赤信号や一時停止等により中断されません。進入する車両も徐行は必要ですが、手前にある横断歩道や環道内に通行車両がなければ一時停止なしで進入できます。
ラウンドアバウトの最大の利点は、交通事故のリスクを減らせる点です。
道路が直角に交わる無信号の交差点と比べ、交差点内における車両同士の交錯点が大幅に少ないためです。わかりやすくいうと、衝突が起こり得る箇所が通常の交差点と比べて少ないということです。
また、環道はその名の通りずっとカーブになっているため、通行や進入する車両の速度が抑制されることも、事故リスクを減らす一因となっています。
警察庁の資料によると、ラウンドアバウトへ改修した全国105カ所(令和3年3月時点)の交差点における、1年間の交通事故件数は、導入前と比べ半分以下となっています。特に、死亡事故や重傷事故といった重大事故は導入後発生していません(表参照)。
導入前・後の事故件数

(「ラウンドアバウトのすすめ」より)
環境にもやさしく、災害時にも強い
ラウンドアバウトの利点は安全性だけではありません。信号待ちの時間がないため円滑な車両の流れを実現でき、道路の渋滞解消も期待できます。
また、信号停止によるアイドリング時間を削減でき環境負荷の軽減にもつながるほか、災害等に伴う停電時でも安全に通行が可能である等、多数の利点が挙げられます。
環道に対して複数の道路を接続できるため、複雑な形状の交差点でもラウンドアバウトは導入可能です。ただし、交通量の多い交差点には適していません。国土交通省によると、一日あたりの総流入交通量が1万台以下の交差点が導入の目安としています。

長野県須坂市にあるラウンドアバウト。中央島の部分に花壇が設置されている(写真提供:ラウンドアバウト普及促進協議会)
普及へ「有用性の発信が重要」
ラウンドアバウトは近年、欧米諸国で安全かつエコな交差点として広く普及し、交通事故の減少等の効果も報告されています。
国内でも年々導入が進んでおり、令和4年3月時点で全国40都道府県の140カ所で整備されています。
ラウンドアバウトの普及促進に取り組む13の自治体によって構成される「ラウンドアバウト普及促進協議会」では、関係省庁にラウンドアバウトに関する技術的支援や整備のための予算措置等について要望活動を行っています。
同協議会の会長を務める髙木典雄氏(福岡県うきは市長)は「国内のラウンドアバウトの取り組みはまだまだ初期段階。技術や予算にかかる情報交換や、有用性の発信が重要」として、こうした取り組みを協議会として積極的に行う方針を示しています。