


昨年末、近くの郵便局へ伺った折、知り合いの女性から「昨日栃もちをついたので食べて」と、まだやわらかいそれをいただきました。栃もちは私が生まれ育った根尾(岐阜県本巣市)で昔から食べられている伝統のおもちです。
山深い根尾の地には栃の木が自生しています。秋になるとその実を拾い乾燥させ、大鍋でゆで、一個ずつ実を割って、その後川の冷たい水にさらします。栃の実は渋味が強くそのままでは食べられないことから、木の枝や葉っぱを燃やした灰に実を合わせ、灰汁抜きをします。味の良し悪しはここがポイントです。
食べ方は酒かすと砂糖を合わせたみそをつけたり、焼いた栃もちをおわんに入れて塩をふり、熱い番茶を注いで食すのもお勧めです。
私が子供の頃はどの家でも作り、「うちのも食べてみて」とその出来映えを競ったものです。栃の実の量や灰汁抜きの加減によって味はいろいろで、楽しい食べ比べでした。いつまでも守ってほしい味、根尾伝統の栃もちです。