1月1日に最大震度7の令和6年能登半島地震が発生しました。まず、お亡くなりになられた方々に心からお悔やみを申し上げますとともに、被災された全ての方々にお見舞いを申し上げます。
例年、伊勢神宮に参拝し、年頭記者会見を行っておりますが、今年は震災対応のため、参拝を延期いたしました。震災対応については、本日午前中を含め、連日会見をさせていただいておりますので、この会見では、震災対応と並んで喫緊の課題である政治への信頼回復を中心に簡潔にお話をさせていただきたいと思います。
我が国が直面する内外の状況に照らせば、政治への信頼回復こそ最大かつ最優先の課題です。
内にあっては、まずは震災対応に万全を期さなければなりません。多数の避難者がおられ、避難の長期化も懸念される中、被災者の生活と生業(なりわい)をしっかりと支えていく息の長い取組が求められます。
外にあっては、世界は緊迫の度を高める1年を迎えます。ウクライナ侵略、イスラエル・パレスチナ情勢に加え、米国大統領選を始め多くの国々で世界の今後を左右する可能性がある重要な国政選挙が予定されています。世界が日本の安定と外交力の発揮を求めています。
日本の将来にとってこの令和6年は極めて重要な1年です。今後の10年を決める分かれ道の年を迎えたと言っても過言ではないと思います。
こうした中でまず求められることは、国民の信頼を回復し、政治を安定させることです。現在、自民党の政策集団の政治資金パーティーに関連して、それぞれの政策集団、ひいては自民党の政治資金の問題に厳しい目が向けられ、国民から疑念を持たれる事態を招いていることに、自民党総裁として、まずは心からおわびを申し上げます。
検察当局による捜査が続いており、引き続き自民党として、その捜査に全面的に協力してまいりますが、同時に、私自身が党の先頭に立って、国民の政治への信頼を回復すべく、自民党の体質を刷新する取組を進めてまいります。
来週、自民党に総裁直属の機関として「政治刷新本部」、仮称でありますが、こうした本部を立ち上げることにいたします。本本部では、今回の問題の原因を踏まえつつ、再発防止を検討することとし、政治資金の透明性の拡大や政策集団の在り方に関するルールづくりなどを進めてまいります。また、こうした検討に際しては、政治改革を求める国民の皆様の声も反映されるよう、外部有識者の参加も得て、透明性の高い形で検討を進めてまいります。1月中に中間的な取りまとめを行い、自民党のガバナンス強化に反映するとともに、必要があれば関連法案を提出することといたします。国民の信頼回復を果たして、政治を安定させ、その上で、重要政策を実行してまいります。
まずは経済です。
我が国経済は、30年余り続いたコストカット型経済から、所得増と成長の好循環による新たな経済へ移行する大きなチャンスを迎えています。このチャンスをつかみ取るための本丸は、物価上昇を上回る賃上げの実現です。
まず、全就業者の14パーセントを占める医療・福祉分野において、幅広い現場で働く方々について、物価に負けない公的賃上げが行われる新しい仕組みをしっかりと動かします。鍵を握る中小企業の賃上げについては、赤字企業を含めた賃上げ税制の拡充や公正取引委員会の労務費転嫁の新しい指針により、全力で後押しいたします。
その上で、今年6月には、総計3兆円半ばの規模で所得税・住民税の定額減税を行い、今年の夏の段階で、賃上げと所得減税を合わせることで、国民所得の伸びが物価上昇を上回る状態を確実につくります。同時に、前例のない思い切った投資減税や中小企業の省人化・省エネ投資の支援など、賃上げの原資となる企業の稼ぐ力を強化していきます。
今年から始まった新NISA(少額投資非課税制度)によって2,000兆円を超える日本の金融資産を国民所得の伸びと稼ぐ力にフルに役立ててまいります。
次に、少子化対策です。
昨年末、こども未来戦略を決定し、子供一人当たりの(家族関係)支出をOECD(経済協力開発機構)トップのスウェーデン並みの手厚いこども・子育て政策へと大幅に拡充することといたしました。社会や職場全体でこども・子育て世帯を応援すべく、社会の意識改革にも取り組みます。来る通常国会において、関連予算や法案を成立させた上で、引き続き今後の日本社会の持続可能性を確かなものとすべく挑戦してまいります。
さらに、外交です。
国賓待遇での訪米を通じて両国の緊密な連携を示していくとともに、日米韓、日米豪印等の枠組みでの首脳外交を通じ、パートナー国との連携を強化してまいります。中国とは、首脳間を始め対話を重ね、建設的で安定的な関係を構築していきます。また、グローバルサウスの動向がますます重みを増す中、本年、我が国が開催する太平洋・島サミットや、ラオスでのASEAN(東南アジア諸国連合)関連首脳会議、またG20(金融・世界経済に関する首脳会合)ブラジル会合など、1年を通じて日本の立ち位置をいかした戦略的かつきめ細かい首脳外交を展開していきます。
加えて、防衛力の強化、エネルギー政策の転換、経済安全保障への取組なども待ったなしです。セキュリティ・クリアランス、サイバーセキュリティ強化にも取り組んでまいります。
憲法改正の実現に向けた最大限の取組も必要です。自民党総裁として申し上げれば、自分の総裁任期中に改正を実現したいとの思いに変わりはなく、議論を前進させるべく最大限努力をしたいと考えています。今年は条文案の具体化を進め、党派を超えた議論を加速してまいります。
政権発足以来2年、先送りできない課題に一つ一つ答えを示してきました。これまで積み重ねてきた成果を形にして国民の皆様に実感していただく、こうした1年とするため、あらゆる手立てを尽くしてまいります。
冒頭、私からは以上です。