
本日は、ロシアによるウクライナ侵略、原油高、新型コロナなど、直面する内外の主要課題への対応について、御説明をいたします。
まず、ロシアによるウクライナ侵略についてです。
ロシアによるウクライナ侵略は、力による一方的な現状変更の試みであり、欧州のみならず、アジアを含む、国際秩序の根幹を揺るがす行為です。明白な国際法違反の暴挙であり、改めて厳しく非難をいたします。
今回のような力による一方的な現状変更を決して許すことはできません。国際秩序の根幹であるこの原則を守り抜くことは、東アジアの安全保障環境が急速に厳しさを増す中、我が国の今後の外交・安全保障の観点からも極めて重要です。我が国は、国際社会と結束して、毅然と行動してまいります。
ロシアの核抑止力部隊が警戒態勢を引き上げたことは言語道断です。唯一の戦争被爆国であり、また、被爆地広島出身の総理大臣として、核兵器による威嚇も、ましてや、使用も、万が一にも許されるものではないことを、首脳外交や、国際会議の場で、強く訴えているところです。
我が国は、主権と領土、そして祖国と家族を守ろうと懸命に行動するウクライナの国民と共にあります。国難に直面するウクライナの皆さんを支えるため、ポーランドなど周辺国に避難された方々や子供への支援を含め、UNHCR(国連難民高等弁務官事務所)やUNICEF(国連児童基金)などの国際機関と協力し、1億ドルの緊急人道支援を行っていきます。
ウクライナの人々との連帯を更に示すべく、ウクライナからポーランドなど第三国に避難された方々の我が国への受入れも進めてまいります。
我が国は、G7各国、国際社会と共にロシアに対して強い制裁措置を採っていきます。その観点から、プーチン大統領を含むロシア関係者等の資産凍結に加え、本日、ロシアの財閥であるオリガルヒなどの資産凍結についても決定いたしました。
金融面では、欧米と共にロシアを国際金融システムや世界経済から隔離するため、ロシア中央銀行との取引を制限する措置に加え、本日、SWIFT(国際銀行間通信協会)からロシアの7つの銀行を排除するために必要な国内措置を採りました。あわせて、国際合意リスト品目や半導体など、汎用品の輸出管理強化といった制裁も講じています。
さらに、今回の侵略に対するベラルーシの明白な関与に鑑み、ルカシェンコ大統領を始めとする個人、団体への制裁措置や、輸出管理措置など、ベラルーシに対する制裁も本日決定をいたしました。
邦人保護に全力を尽くしてまいります。私自身、昨日、ポーランドのモラヴィエツキ首相との電話会談で、ウクライナ在留邦人のポーランドへの円滑な入国等に協力を要請し、先方からは、最大限の支援を提供する旨、発言がありました。ポーランドから他の国へ移動するためのチャーター機も手配済みです。引き続きウクライナのリヴィウ市及びウクライナ国境に近いポーランドのジェシュフ市に開設した臨時連絡事務所を中心に、在留邦人の安全確保や出国支援に取り組んでいきます。
私自身、首脳外交を積極的に展開していきます。今週もウクライナ、フランス、ドイツ、ポーランド、ラオスの首脳と電話会談を行い、バイデン大統領主催のG7、NATO(北大西洋条約機構)などとの首脳電話会議にも出席をいたしました。この後、23時からは、日米豪印の首脳テレビ会議に出席し、ウクライナ情勢への対応について意見交換を行う予定です。
情勢は日々変化しています。制裁などでは、G7各国との緊密な連携を図りつつ、アジア各国に働き掛けるなど、我が国として事態打開に向けた貢献をしていきます。
今回の事態を受けて原油価格が高騰を続けています。原油価格の代表的な指標であるWTIの原油先物価格は、先週末に1バレル91ドル台でしたが、今朝の時点で1バレル110ドルまで急騰しています。この事態に対し、国民生活や企業活動への悪影響を最小化する観点から、緊急対策を取りまとめ、明日、公表いたします。一般予備費を3600億円強活用し、今、お困りの方に対して迅速に支援が行き届くよう対応していきます。
まず、当面の間の緊急避難的措置として、燃油価格の激変を緩和するために行っている支援を大幅に拡充・強化いたします。現在、5円を上限として激変緩和事業を行い、燃油価格の上昇を抑制していますが、ウクライナ情勢の緊迫化を踏まえ、支給上限を最大25円に大幅拡充し、直近の小売価格からの上昇分を補助することで急激な石油製品の価格上昇を抑制いたします。
加えて、漁業や施設園芸に対する重油価格高騰分の補?を拡充するほか、タクシー事業者に対するLP(液化石油)ガス価格高騰分の補?を激変緩和事業並みに大胆に行うとともに、地方自治体を通じ、灯油購入支援や暖房費支援など、国民生活への影響を緩和するための支援を行います。
さらに、ウクライナ情勢、原油価格上昇の影響を受けている中小企業の資金繰りに万全を期すため、全国1,000か所に融資の特別相談窓口を設け、低利融資により支援していきます。
詳細は明日、関係閣僚会合を開催して決定した後、官房長官から発表いたします。
また、ウクライナ情勢の進捗も踏まえつつ、来年度も引き続き原油価格が上昇し続ける場合については、国民生活や企業活動への悪影響を最小限に抑えることができるよう、何が実効的で有効な措置かという観点から、あらゆる選択肢を排除することなく、政府全体でしっかりと検討し、対応してまいります。
エネルギー問題は1国だけでは対応できない、国際的な課題です。IEA(国際エネルギー機関)を始めとする国際機関や、主要消費国であるG7各国と連携しながら、エネルギー市場の安定化やエネルギー供給構造の在り方、エネルギー資源の偏在などの課題に取り組みます。
私たちは、ロシアのウクライナ侵略という極めて深刻な事態に直面をしています。エネルギー価格高騰による我が国経済への悪影響を少しでも減らすべく、これまで以上の省エネに取り組み、石油やガスの使用を少しでも減らす努力をしていただくことが大切です。国民の皆さんお一人お一人の御理解と御協力をよろしくお願いいたします。
次に、新型コロナ対応についてです。
まず、新型コロナに感染し、苦しんでおられる方にお見舞いを申し上げるとともに、この感染症によりお亡くなりになった方に心から哀悼の意を表したいと思います。
全国的な感染状況については、感染者数の今週先週比が19日連続で1を下回っており、改善傾向が更に確かなものとなっています。他方で、地域によっては感染拡大に後れて重症者が増加したり、クラスターが発生したことなどにより、病床利用率がなお高い水準にある都道府県があります。引き続き、先々週申し上げたとおり、コロナ対策の基本姿勢、慎重さを堅持し、強化した地域医療体制を稼働させながら、同時に、第6波の出口に向かって徐々に歩みを進めてまいります。
3点申し上げたいと思います。
第1に、3月6日に期限を迎える31の都道府県のまん延防止等重点措置については、福島県、新潟県、長野県、三重県、和歌山県、岡山県、広島県、高知県、福岡県、佐賀県、長崎県、宮崎県、鹿児島県、この13県において、延長を行わず、同措置を6日をもって解除することといたします。
一方で、残りの18都道府県においては、連休最終日の21日まで約2週間、まん延防止等重点措置を延長いたします。これらの都道府県においては、オミクロン株の新規感染拡大は落ち着きつつあるものの、病床使用率が引き続き高い水準にあることなどから、自治体の御意見も伺いながら、慎重な判断を行うことといたしました。
以上について、明日、専門家に諮問し、国会に報告の上、正式に決定いたします。今後、第6波の出口がよりはっきり見えてくれば、経済社会活動の回復に向けて更なる取組を進めてまいります。他方で、既存のオミクロン株がBA.2に置き換わることなどにより、再度感染状況が悪化する可能性にも十分に注意をし、悪化の兆しがあった場合には、対応を見直していきます。
第2に、ワクチン接種については、自治体、自衛隊、医療関係者を始めとする皆様の御協力によって、2月中旬に100万回の接種を実現し、接種ペースが上がってきました。既に、6000万人以上の方々に接種券をお送りし、市町村や職場で接種を受け付けています。引き続き一日も早く希望する方にできるだけ多く接種を受けていただけるよう、全力を尽くしていきます。
第3に、水際対策については、3月1日から骨格を緩和し、観光目的以外の外国人の受入れを再開しました。2月25日から外国人の受入れ申請の受付を開始し、既に16万人を超える入国申請を受け付けています。年度末は、進学や転勤などにより、日本人の帰国需要が高まります。この点を勘案し、3月14日より、入国者総数の上限を5,000人から7,000人に引き上げます。今後、内外の感染状況を見ながら、段階的に国際的な人の往来を増やしていきます。多くの留学生が、4月の新学期を迎え、希望どおり入国できるかどうか、不安に感じておられます。新型コロナにより、この2年間、15万人の留学生が来日を心待ちにしている状況です。我が国の宝とも言える留学生が、国民の安心を保ちつつ円滑に入国できるよう、「留学生円滑入国スキーム」を設け、ビジネス客が比較的少ない平日を中心に、空席を活用して、優先的に入国できるよう支援をいたします。
これから、年度末や新年度を迎えると、卒業式や春休み、入学式、さらには花見など、多くの人が集まる行事が行われるとともに、就職や進学を機会に移動が多くなる季節となります。これまでこのような機会をきっかけに感染が拡大したことから、感染リスクの高い行動を控え、改めて、マスクの着用、手洗い、3密の回避や換気などの基本的感染防止策の徹底を心掛けていただきますようお願いをいたします。
最後に、「中小企業活性化パッケージ」について申し上げます。感染拡大が続く中、年度をまたいだ中小企業の事業継続と新型コロナ後を見据えた事業復活に向けた果敢な挑戦を支援するための「活性化パッケージ」を取りまとめ、展開いたします。
パッケージの1つ目は、資金繰り支援です。融資の条件変更への対応について、担当閣僚から金融機関に要請するなど、年度末の資金需要に対応いたします。加えて、年度をまたいだ事業継続を支援するため、年度末を期限とした実質無利子・無担保での融資を6月末まで延長するとともに、事業者の返済負担を軽減するため、15年の融資期間を20年に延長いたします。あわせて、事業者の財務基盤を強化するため、資本性劣後ローンによる支援についても来年度末まで延長いたします。
パッケージの2つ目は、増大する債務に苦しむ中小企業の収益力改善・事業再生・再チャレンジの総合的支援です。まず、金融機関や税理士など、全国3万以上の認定支援機関の総力を結集することで、中小企業の収益力改善のための伴走支援を徹底いたします。その上で、必要な場合には、金融機関の協力の下で、債務カットなどを行いつつ、収益力の改善の取組が円滑に進むよう、「中小企業の事業再生等のガイドライン」を策定し、経営者の退任を原則としない形での事業再生を推進いたします。全国47都道府県において、収益力改善・事業再生・再チャレンジを一元的に支援するための体制を整備し、地域全体で苦しむ中小企業の支援に取り組んでいきます。詳細は、明日、萩生田経済産業大臣から発表をいたします。
国の内外で、世界を、日本を、経済を、そして私たちの暮らしを大きく変える歴史的な出来事が続いています。大きな流れをしっかりと見据えながら、国民にとってのベストな政策を、前例にこだわらず、機動的に講じていく。現場の声を丁寧にお伺いしながら、こうした岸田内閣の姿勢をしっかりと保ってまいります。
国民の皆さんの御理解と御協力を心からお願いを申し上げます。