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政策国会国会演説

第213回国会における鈴木俊一財務大臣の財政演説

第213回国会における鈴木俊一財務大臣の財政演説

令和六年度予算の御審議に当たり、財政政策の基本的な考え方について所信を申し述べますとともに、予算の大要を御説明申し上げます。まず、元日に発生しました令和六年能登半島地震により亡くなられた方々と御遺族に対し、深く哀悼の意を表しますとともに、被災された全ての方々に、心からお見舞いを申し上げます。政府といたしましては、今日まで被災者の捜索・救助や、生活支援などに全力を挙げて取り組んでまいりました。今後とも、政府の総力を結集し、「被災者の生活と生業支援のためのパッケージ」の着実な実行をはじめ、被災者への支援を含めた被災地域の復旧・復興に万全を期してまいります。

(日本経済の現状と財政政策の基本的な考え方)

日本経済につきましては、昨年三十年ぶりとなった高水準の賃上げや企業の意欲的な投資計画の策定など前向きな動きが見られております。

こうした中、足元の物価高に対応しつつ、持続的で構造的な賃上げや、民需主導の持続的な成長を実現していくことが重要です。そのため、先に成立した令和五年度補正予算を迅速かつ適切に執行するとともに、同補正予算と一体的に編成した令和六年度予算、そして令和六年度税制改正を着実に実行に移していく必要があります。

日本の財政は、これまでの新型コロナウイルス感染症や物価高騰等への対応に係る累次の補正予算の編成等により、より一層厳しさを増しております。財政は国の信頼の礎であり、経済あっての財政という方針の下、財政健全化に取り組むことで中長期的な財政の持続可能性への信認を確保していかなければなりません。引き続き、「経済財政運営と改革の基本方針二〇二三」等における二〇二五年度のプライマリーバランスの黒字化目標等の達成に向けて、歳出・歳入両面の改革を着実に推進し、歳出構造の更なる平時化を進めてまいります。

(令和六年度予算及び税制改正の大要)

続いて、令和六年度予算及び税制改正の大要を御説明申し上げます。

令和六年度予算は、歴史的な転換点の中、時代の変化に応じた先送りできない課題に挑戦し、変化の流れを掴み取るための予算としております。

具体的には、医療・福祉分野の現場で働く方々の処遇改善をはじめとした「物価に負けない賃上げの実現」に向けた取組の推進、「こども未来戦略」に基づく「加速化プラン」の迅速な実施、我が国周辺の厳しい安全保障環境を踏まえた防衛力の着実な強化など、我が国が直面する構造的な課題に的確に対応するものとしております。

また、物価と賃金の好循環に向け、賃上げ促進の環境整備を含め、物価高対策に必要となる経費に予期せぬ不足が生じた際に機動的に対応するため、万全の備えとして、原油価格・物価高騰対策及び賃上げ促進環境整備対応予備費を一兆円措置しております。

加えて、令和六年能登半島地震への対応として、令和六年度においても復旧・復興の段階などに応じた切れ目のない機動的な対応を確保するため、一般予備費について、前年度当初予算に対し、五千億円増額し、一兆円措置しております。

同時に、「経済財政運営と改革の基本方針二〇二三」等に基づき、社会保障関係費について、実質的な伸びを高齢化による増加分におさめるとともに、社会保障関係費以外について、これまでの歳出改革の取組を実質的に継続しております。

一般歳出につきましては、約六十七兆七千八百億円であり、これに地方交付税交付金等約十七兆七千九百億円及び国債費約二十七兆百億円を加えた一般会計総額は、約百十二兆五千七百億円となっており、前年度当初予算に対し、約一兆八千百億円の減額となっております。

一方、歳入につきましては、租税等の収入は、約六十九兆六千百億円、その他収入は、約七兆五千百億円を見込んでおります。また、公債金は、約三十五兆四千五百億円であり、前年度当初予算に対し、約千七百億円の減額となっております。

次に、主要な経費について申し述べます。

社会保障関係費につきましては、児童手当の抜本的拡充など、「こども未来戦略」に基づく政策をスピード感を持って実行するために必要な経費を確保するとともに、診療報酬、介護報酬、障害福祉サービス等報酬改定において、現場で働く方々の処遇改善を行うこととしております。他方、市場価格を反映した薬価改定など、様々な改革努力を積み重ねた結果、先に申し上げたとおり、実質的な伸びを高齢化による増加分におさめております。

文教及び科学振興費につきましては、小学校高学年における教科担任制の推進等のため必要な措置を行うほか、「科学技術立国」の観点から、AI・量子等の重要分野の研究開発を戦略的に推進するとともに、基礎研究・若手研究者向け支援を充実することとしております。

地方財政につきましては、臨時財政対策債の発行額の縮減を行うなど、地方財政の健全化を図りつつ、地方の一般財源総額を適切に確保することとしております。

防衛関係費につきましては、厳しい安全保障環境の中で、防衛力整備計画に基づき、防衛力の強化を着実に進めるとともに、引き続き、防衛力を安定的に維持するための財源を確保することとしております。

公共事業関係費につきましては、ハード面の整備とソフト面の対策との一体的な取組により、防災・減災、国土強靱化を推進するとともに、持続的な生産性の向上に向けたインフラ整備等についても重点的に取り組んでいくこととしております。

経済協力費につきましては、厳しい国際情勢の中で、「自由で開かれたインド太平洋」をはじめとする取組を戦略的に実現しつつ、ODAは現下の国際情勢に効果的に対応できる予算を確保することとしております。

中小企業対策費につきましては、価格転嫁対策、事業再生・事業承継支援など、中小企業等の経営課題に対応することとしております。

エネルギー対策費につきましては、エネルギー対策特別会計において、GX経済移行債を発行し、カーボンニュートラル目標の達成に必要な民間のGX投資を支援していくこととしております。

農林水産関係予算につきましては、食料安全保障の強化に向け、水田の畑地化支援による畑作物の生産等を推進するほか、農林水産物の輸出先国の多角化のための販路開拓等の推進、林業・水産業の持続的成長に向けた生産基盤の強化、資源管理等に取り組むこととしております。

東日本大震災からの復興につきましては、第二期復興・創生期間において、復興のステージの進行に応じたニーズにきめ細かに対応するとともに、「創造的復興」を成し遂げるため、令和六年度東日本大震災復興特別会計の総額を約六千三百億円としております。

令和六年度財政投融資計画につきましては、成長力強化に向けた重要分野への投資や、国際環境の変化に対応するための海外投融資等に取り組むため、総額約十三兆三千四百億円としております。

国債管理政策につきましては、借換債を含む国債発行総額が約百八十二兆円と、依然として極めて高い水準にある中で、市場動向も踏まえつつ、引き続き市場との緊密な対話に基づき安定的な国債発行に努めてまいります。

令和六年度税制改正につきましては、賃金上昇が物価高に追いついていない国民の負担を緩和し、物価上昇を上回る持続的な賃上げが行われる経済の実現を目指す観点から、所得税の定額減税の実施や、賃上げ促進税制の強化等を行うこととしております。また、資本蓄積の推進や生産性の向上により、供給力を強化するため、戦略分野国内生産促進税制やイノベーションボックス税制を創設し、スタートアップ・エコシステムの抜本的強化のための措置を講ずるほか、グローバル化を踏まえたプラットフォーム課税の導入等を行うこととしております。

(むすび)

以上、財政政策の基本的な考え方と、令和六年度予算及び税制改正の大要について御説明申し上げました。

歴史的転機を迎える今、将来世代の視点に立って、この時代を俯瞰(ふかん)し、日本の進路を見定める必要があります。未来は現在の連続であり我々の現在の選択が未来を切り拓いていきます。先送りできない課題に挑戦していくとともに、日本経済を立て直し、財政健全化に取り組み、希望ある社会を次の世代に引き継いでいかなければなりません。

そのため、本予算及び関連法案の一刻も早い成立が必要であります。

何とぞ御審議の上、速やかに御賛同いただくとともに、財政政策について、国民の皆様及び議員各位の御理解と御協力を切にお願い申し上げます。