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政策国会国会演説代表質問

第204回国会における二階俊博幹事長代表質問

第204回国会における二階俊博幹事長代表質問

(はじめに)

私は、自由民主党・無所属の会を代表して、菅義偉内閣総理大臣に質問をいたします。

まず、昨年来、新型コロナウイルス感染症でお亡くなりになられた方々、また、長引く社会の不安から自ら命を絶ってしまわれた方々の関係者の皆さまに深くお悔みを申し上げます。

今なお、入院・療養中の多くの皆さんの一日も早いご回復を心からお祈り申し上げます。
現在のコロナ禍は、まさに「国難」であり、私たち一人一人が心を一つにして乗り越えていかなければなりません。

政治の真髄は「国民の命を守る」ことだと改めて強く認識し、この難局にあたってまいることをお約束いたします。

(新型コロナウイルス感染症対策について)

わが国では、新型コロナウイルス感染症の対策は危機管理上、極めて重大なものであるとの認識のもと、国民の命を守るため、水際対策や、まん延を防止すること、医療の提供を進めることについて、総力を挙げてまいりました。

国民の命を守るためには、先ず第一に感染者数を抑えることと、医療提供体制を確保すること、そして社会機能を維持することが重要です。

「3つの密」を徹底的に避け、人と人との距離を保ち、マスク着用や手洗いでの感染予防など、基本となることを国民の皆さん一人一人が徹底することが、何より大切です。

その上で、感染拡大が懸念されるようであれば、外出自粛等、社会全体で接触機会の低減を図る措置も必要であり、早め早めに講じておくことも重要です。

現在、医療従事者の皆さんが昼夜を分かたず最前線でご対応いただいていることに、多くの国民の皆さんとともに、心からお礼申し上げるとともに、何よりも国民の皆さんのご協力に、深くの敬意と感謝を申し上げます。

(ワクチンの国民への接種について)

総理は、2月下旬までにはワクチン接種を開始できるよう準備すると表明されております。

ワクチンの安全性や有効性を最優先に、迅速な審査を行い、承認後は速やかに接種出来るよう接種体制の整備など、接種に向けた準備も最大限急ぐべきだと思います。海外では既に実施している国もあり、わが国も一刻も早く、ワクチン接種を開始すべきと考えますが、総理にワクチン接種についての準備状況、そして自ら先頭にたってこれらの事に対処するという決意を伺いたいと思います。

(社会機能の維持)

コロナ禍の中で、必死に歯を食いしばって我々の日常生活を支えて下さっている全ての国民の皆さんに、改めて感謝と敬意を申し上げます。

特に、警察、消防、自衛隊、公共交通、そしてスーパーやコンビニ等で毎日毎日働いておられる方々など、まさに国民生活に必要不可欠な仕事をされている皆さんにも、その仕事が円滑に継続していただけるよう、我々もあらゆる協力、努力を惜しんではなりません。

(ステイホーム等の対策が長期化する中で生じる様々な社会課題への対応)

長期間にわたる外出自粛などで、メンタルヘルスへの影響が懸念され、配偶者への暴力や児童虐待の防止が急務となっております。また、社会的に孤立しがちな高齢者、休業中のひとり親家族、登校できない学生の皆さんなどへの支援も必要です。

とりわけ、日常の生活が奪われた結果、笑顔を失ってしまったような子供たちが、思い切り、スポーツ、文化、自然との触れ合いが出来る環境の整備をしていくことが急務です。

(偏見・差別等への対応)

新型コロナウイルス感染症のり患は誰にでも生じ得るものであり、感染者やその家族、勤務先等に対する不当な扱いや誹謗中傷は、人権侵害になり得るだけでなく、結果として、感染防止策にも支障を生じさせます。

新型コロナウイルス感染症対策に従事する医療関係者が偏見・差別により風評被害を受けることのないよう、国民の理解とリーダーの断固たるメッセージが必要です。
また、海外から帰国した子女の学校への受入れ支援や、いじめ防止等の真剣な取り組みも不可欠です。
特に、新しい生活様式に移行していく中で、インターネットの活用が高まる一方、ネットを通じた誹謗中傷など心無い書き込みが社会問題化されています。

このような状況には、スピード感を持って法律を整備するなどの対応が必要と考えますが、武田総務大臣に取り組みについての決意を伺います。

(新型インフルエンザ等対策特別措置法について)

新型インフルエンザ等対策特別措置法に基づき、昨年3月、政府に対策本部が設置されました。そして、同年4月7日には緊急事態宣言を行われ、今年1月7日に再び緊急事態宣言を発令されました。

また先般、菅総理は、感染拡大のリスクをより小さくするために、海外での変異種発生による国民の不安等を考慮し、水際の防疫措置を一層強化するという観点から、ビジネス入国を一時停止する判断をされました。全体の状況やタイミングを見て、果断に対応されたものと思っております。

政府はこれまで特措法に則って、臨機応変に事態に対処してまいりましたが、より全ての国民が危機意識を共有し、感染症のまん延防止にあたれるように、まん延防止等重点措置の創設など、特措法を改正する必要があると考えます。また、感染症法や検疫法についても改正が必要と考えますが、これら3本の法改正について、総理の基本的な考え方をお尋ねいたします。

(経済・雇用対策について)

政府は、令和2年度第1次補正予算を含む「新型コロナウイルス感染症緊急経済対策」及び令和2年度第2次補正予算における各施策を、国と地方を挙げて迅速かつ着実に実行することにより、感染拡大を防止するとともに雇用の維持や事業の継続、生活の下支えに万全を期してまいりました。

今後は、医療提供体制の確保、ワクチン接種体制の整備、そして感染症の厳しい影響から雇用と生活を守っていくための雇用調整助成金、金融機関による実質無利子・無担保融資が柱になっていきます。それがゆえに、第3次補正予算の一日も早い成立を願うものです。

(公衆衛生分野の強靭化について)

昨年12月に閣議決定された「防災・減災、国土強靭化のための5か年加速化対策」は、誠に時宜を得た適切なものと考えております。「公衆衛生インフラ」も、その中の大きな柱です。

私は、もとより妊娠・出産や予防及び予防的検査も医療に含めるべきだと申し続けてまいりました。

そのような中で、不妊治療やPCR検査に対する全国民への支援を総理が決断されたことは誠に勇断であったと思います。

感染症の分野に対しては、戦後、結核がほぼ収束した時以来、人的・財政的資源が十分には配分されていませんでした。コロナ禍の今こそ、この公衆衛生に、もう一度光をあて、これまで以上に尊厳をもって皆さんに働いていただけるような環境を早急に整備しなければならないと考えます。
総理に、公衆衛生分野の強靭化策についてお伺いいたします。

(子供の笑顔について)

観光の語源は、「易経」にある「国の光をみる」から引いたものと言われますが、私はこの光が「子供の笑顔」であるべきだと思います。

コロナ禍の時代、コロナ後の時代に、子供たちの笑顔をどのようにして取り戻すことが出来るか、今、我々に課せられた喫緊にして大きな課題であると考えます。

(東京オリンピック・パラリンピックについて)

東京オリンピック・パラリンピックの開幕まであと1年となった昨年7月、大会組織委員会が国立競技場で開催したイベントで、白血病からの復帰を目指す競泳女子の池江璃花子選手が登場し、世界に向かってメッセージを発せられました。

聖火の入ったランタンを掲げた池江選手は「スポーツが、決してアスリートだけで出来るものではない、ということを学びました」との自身の経験を踏まえながら、「世の中がこんな大変な時期に、スポーツの話をすること自体、否定的な声があることもよくわかります。ただ一方で思うことは、逆境から這い上がっていく時には、どうしても希望の力が必要だということです」「世界中のアスリートと、アスリートから勇気をもらっている全ての人のために。1年後の今日、この場所で希望の炎が輝いていて欲しいと思います」と、池江選手は世界に語りかけられました。

わが国が、オリパラの開催を目指すのは、決して自国のためだけではありません。オリパラの成功が、世界中のアスリートの支援に繋がり、それを観て、次の時代に挑もうとする世界中の子供たちの笑顔と希望に繋がると確信しているからであります。政治が、オリンピック・パラリンピックを開催出来るように努力するのは、当然のことです。

橋本オリンピック・パラリンピック担当大臣に、オリパラ実現に向けた取り組み、自らの経験を踏まえて抱負をお延べいただきたいと思います。

(35人学級)

公立小学校の学級編成基準について、令和3年度から5年間をかけて、35人以下に引き下げるとの政府方針が合意されました。

学級編成基準の計画的な引き下げは実に40年ぶりであります。35人学級が実現すれば、一人一人の先生が児童・生徒と向き合う時間が増え、学校が子供たちの命と笑顔を守る拠点になることが期待されます。

学校現場からは「歴史的な快挙だ」との喜びの声が多く出ておりますが、これで終わるわけではありません。今後は何よりも、新たに必要となる教職員の質の確保、そして将来的な課題として残る中学校での導入などに向けた検討が重要であります。

コロナ禍にあっても、我々は、あらゆる知恵と努力を振り絞り、子供たちの命と笑顔を守らなければなりません。それは、すなわち、この国の未来を築くことになるからでもあります。

35人学級方針のご決断と、今後の教育への想いについて総理に伺いたいと思います。

(はやぶさ2の示す「あきらめないこと」の尊さ)

「はやぶさ2」は、平成26年の打上げから、距離にして約52億キロメートル、6年間という長い航行を経て、昨年末、地球への帰還に成功されました。ミッション全体を通じて、多くの「世界初」の業績を達成することが出来ました。

地球への帰還をあきらめなかった1号機の偉業と、それを踏まえた関係者のさらなるチャレンジ精神が「はやぶさ2」の一層の飛躍を生み、多くの人々に深い感動を与えたわけであります。

コロナ禍に沈む空気の中で、輝かしい偉業を成し遂げた全ての関係者の皆さんに敬意を表したいと思います。「はやぶさプロジェクト」のように、当初は「やや無謀」「不可能」と言われるような課題に、日々挑み続ける科学者の皆さん、研究者方々、国を挙げて支援することは非常に重要であると改めて思います。
総理に科学技術、イノベーションへの想いを伺います。

(2050カーボンニュートラル実現推進について)

2050年の脱炭素社会の実現に向けての総理のご決断に敬意を表します。道のりは、決して楽な事ではありません。しかし、世界に約束したことは必ず実施するという総理の決断は、全ての国民と事業者にその心が伝わりお互いの行動へと繋がるものと信じています。

自由民主党も「2050年カーボンニュートラル実現推進本部」を立ち上げました。既に昨年、政府に提言申し上げたところです。

今年の夏までには、エネルギー基本計画と地球温暖化対策計画を、それぞれ2030年を目標年次に改訂しなければなりません。

成長戦略会議で議論がなされたように、各分野、各業界で一刻の猶予がないどころか、産業革命にも匹敵するイノベーションが必要です。政府は、そのための基金も準備しようとしていますが、何よりも「絶対に実現する!」という、総理ご自身のリーダーシップが最も大事です。今後も力強い指導力を発揮していただきたいと思います。

(農林政策について)

菅総理は、平成30年に官房長官として、70年ぶりとなる「森林改革」及び「森林環境税」の導入に主導的な役割を果たされました。関係者の間では高く評価されています。

今年度末には、「間伐等特別措置法」が期限を迎えますが、森を若返らせる取り組みは、二酸化炭素の森林吸収量を増やし、カーボンニュートラルに抜本的に貢献するものであることは誰もが承知しています。またあわせて、約6万4千の「防災重点ため池」の整備など土地改良を実施することにより農業生産性を向上させ、激甚化する自然災害から農山村地域を守っていくことにも繋がります。

(東日本大震災10年)

本年3月11日に、東日本大震災から10年を迎えます。

震災によって亡くなられた多くの皆様に改めて哀悼の誠を捧げます。また、いまだご不便な生活を強いられている皆様にも、お見舞いを申し上げます。

今年開催される東京オリンピック・パラリンピックは、奇跡のような復旧・復興をなしとげた東北の皆さんのご様子を世界の人々に見ていただく絶好の機会であると捉えています。

東京電力福島第一原発事故で、一時、全町避難を余儀なくされた福島県・浪江町が、2050年までに二酸化炭素排出実質ゼロの目標を掲げ、水素を利用した町づくりを進めています。昨年3月には、世界最大級の水素製造施設である「福島水素エネルギー研究フィールド」が稼働を開始しました。

ここで作られた水素が、東京オリンピック・パラリンピックの聖火台やリレー用トーチの燃料として使われる予定であります。

一時は、震災によって絶望の淵にありましたが、そこから立ち上がり、日本全体の2050年のカーボンニュートラルを牽引していくことは、多くの国民に勇気を与えるものだと思います。

この勇気と希望あふれる万感の想いが、あらゆる困難を乗り越え、聖火リレーによって全国津々浦々の皆さんにと伝わることを念願します。

平沢復興大臣に、今後の復興のあり方を伺います。

(豪雪対策について)

今年に入り、降り続いた豪雪によって、お亡くなりになられた多くの皆様にお悔やみを申し上げます。また、高速道路や国道で立ち往生になった方や、孤立した集落で不安の中、救出を待っておられた方々、それぞれお見舞いを申し上げると同時に国民の一人して申し訳ないという思いをもっております。

なぜ、同じ事が繰り返されてしまうのか。高速道路や国道で、毎回同じように立ち往生なのか。

気候の予測や降雪の予測、除雪の体制、そして交通規制のタイミング等について遺漏はなかったのか、厳しい言い方ですが、出来る事を怠っていなかったのか、政府は今一度、検証・反省をしていただきたいと思います。

(政治哲学について)

我々に求められているのは、「聞く力」、「見る力」、そして「感じる力」、さらに「共感する力」ではないでしょうか。

どんな困難にあっていても見逃すことがないよう、今後も一人一人全ての国民と絆を結びあわせなければなりません。

「本当に助かりました。仕事がなくなり、お米がなくなってきて、おかゆでふくらませながら、二人の子供に食べさせていたので。年末に給付された『ひとり親世帯臨時特別給付金』は、本当に助かりました」と、昨年末、「ひとり親支援」を行うNPO団体の皆さんが、官邸で菅総理に感謝を述べられました。

「誰一人忘れない、誰一人見捨てない、誰一人ひとりぼっちにさせない」と言う総理の想いが理解された瞬間だと思います。

この給付金は、まさに菅総理の決断によって実行されたものです。

菅総理は国民本位で、国民目線で、「国民のために働く」ということを就任当初から仰ってこられました。

弱い者の側に立った政治を実践するということがライフワークだと常々私たちにも言われており、地方の実情や地方に住む人々の心を十分に理解されている政治家の代表だと思います。
総理、この機会にもう一度、総理の地方の皆さんに対する哲学・想いを語っていただきたいと思います。

(領海警備について)

現在、尖閣諸島をはじめ東シナ海、日本海などにおける領海警備や治安の維持にあたる海上保安官は、常に危険と隣り合わせの厳しい現場で、24時間365日、高い使命感に支えられて、緊張の連続で職務を遂行されておられます。現場の海上保安官には相当な負担がかかっていることを、我々は忘れてはならないのであります。
海上保安庁業務の強化について、総理の見解を伺います。

なお、拉致問題について総理の決意をいま一度伺いたいと思います。

(憲法改正について)

憲法改正についても一言触れておきたいと思います。

コロナ禍にあらためて、危機管理としての国会の意思決定の重要性を認識させられました。

昨年12月、自民党・立憲民主党の幹事長・国対委員長会談において、憲法改正国民投票法改正案について、この通常国会で「何らかの結論」を得ることで合意したところであります。
ぜひ、この国会において、しっかりと結論を出すとともに、憲法改正に向けての活発な議論が行われることを期待しておりますが、総理のご所見をお伺いいたします。

(結びに)

結びに、冒頭申し上げましたように、現在、わが国はコロナ禍という国家的な重大な危機の中にあります。

政治は弱い者のためにある。我々はそう教わってきました。

危機に際して、脅かされる国民の生活を守るため、何よりも、政治が力を発揮しなければなりません。それは今ではありませんか!

私は同僚の皆さんとともに、この「バブル崩壊、金融危機」、そして「東日本大震災」という、こうした重なる危機に際して、与野党がお互いの垣根を越えて、今この時こそ、政治の力を集約することが重要と考えます。

各党は、この危機を乗り越え、国民の命と暮らしを守り、お互いに幅広く、与党も野党もみんなで協力しあって政治の力を結集しようではありませんか!

私どもはそのためのいかなる努力も惜しみません。
以上を申し上げて質問を終わります。