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政策国会国会演説代表質問

第203回臨時国会における磯崎仁彦参議院自民党政策審議会長代理代表質問

第203回臨時国会における磯崎仁彦参議院自民党政策審議会長代理代表質問

自由民主党の磯崎仁彦です。
私は、自由民主党・国民の声を代表して、菅総理大臣の所信表明演説について質問いたします。

今回の所信表明演説にあたり、頭に浮かんだ二つの言葉があります。

一つは「三つの鏡」です。
1300年間、読み継がれてきた帝王学の教科書「貞観政要」にある言葉です。
一つ目は、自分の顔を映す「銅の鏡」、
二つ目は、歴史に学ぶ「歴史の鏡」、
最後の三つめは、部下の厳しい直言や諫言を受け入れる「人の鏡」です。
この「三つの鏡」は、良い意思決定をする上で必要な心構えとして挙げられています。

もう一つの言葉は、私の地元香川県出身の大平元総理が使っていた「楕円の哲学」です。
楕円には二つの中心点があることになぞらえ、政治にも、ある考えがあれば、それと相対立する考えがある。その二つが均衡を保ちながら緊張した関係にある場合にこそ、立派な政治を行うことができる、といった趣旨の言葉です。

二つの言葉はいずれも、世の中には、必ず異なる意見があるが、それを排除するのではなく、受け止めながら、バランスを取り、合意形成を進めていくことが大切であると教えてくれています。

組織というものは、トップには「いい話」しか上がってまいりませんが、現場に行くと「実はこういうことがある」というのが世の常です。どの組織であろうともトップは、アンテナを高く張り、いろいろな話に直に耳を傾けなければなりません。

「貞観政要」を愛読され、多忙でも、様々な方々からお話を伺うというスタイルを変えない菅総理であるからこそ、「三つの鏡」、それに加えて「楕円の哲学」の姿勢を崩さずに、わが国が直面する様々な課題に対処していくことができると確信し、「国民のために働く内閣」の実現を全力で支えてまいりたいと考えております。

菅総理は、安倍内閣で7年8か月間、内閣官房長官を務められました。官房長官は参謀、側近であり、大規模災害などの際の危機管理から、省庁にまたがる政策調整に至るまで対応を求められる内閣の要です。内閣官房長官のマネジメント力こそ政治の真髄という識者もおります。
その内閣官房長官を歴代一位の在任期間、務め上げた菅総理であるからこそ、内閣官房長官として求められる政治姿勢は何か、またそれは内閣総理大臣のそれとは違っていることを実感されていると思います。
そこで、内閣官房長官と内閣総理大臣の政治姿勢について、どこがどう異なっていると認識した上で、総理の職を全うしていくお考えでしょうか。お聞かせください。

今から10年前、私は平成22年7月、自民党が野党の時、地元の皆様方に国政へと送り出していただきました。その野党時代の平成22年1月24日に定められた自由民主党「平成22年綱領」。
ここには、常に進歩を目指す保守政党であるために、「正しい自由主義と民主制の下に、時代に適さぬものを改め、維持すべきものを護り、秩序のなかに進歩を求める」とあります。
この綱領通り、安倍政権では、時代に合わないものを変えるため、三本の矢などの大胆なデフレ脱却政策、働き方改革など大胆な経済政策を断行してきました。また、日本を取り巻く安全保障環境の激変に対応し、平和安全法制の整備などを進めてきました。
菅総理は、就任後初めての会見で、「安倍政権の取り組みを継承し、前に進めていくことがみずからの使命である」と述べておられますが、真の保守政党たる自由民主党の総裁として、変えるべきところは変え、守るべきところは守るというスタンスで、政権を運営していただきたいと思います。そこで、菅総理は、安倍政権のどういうところを継承し、また、どういうところを変えていきたいとお考えでしょうか。お伺いいたします。

政府の最も重要な役割の一つは、危機管理です。
私は、参議院議員となる前、民間企業で、危機管理に関連する役職に就いたことがあります。危機管理は、きちんと対応できて当たり前、やり過ぎるとなぜそこまでやるのかという批判が出る、そして対策が不十分で後手、後手に回るとその不十分さを批判されます。民間企業であっても、危機管理はたいへん厳しいものであることを実感しています。政府においてはそれ以上の厳しさがあります。しかし、それでも、危機管理においては、事前にリスクを認知した上で、前例にとらわれず、先手を打つことが重要です。
7年前、アルジェリアで起きた石油精製プラント襲撃事件では、前例のなかった政府専用機派遣に踏み切り、邦人避難に全力で当たりました。また、本年1月の中国武漢での新型コロナウイルスによる感染拡大では、武漢の空港が事実上閉鎖、現地の公共交通機関がストップし、現地邦人の帰国が困難な状況となる中、世界に先駆けてチャーター機を飛ばし、日本に戻されました。「前例にとらわれず、先手を打つ」の見本ではないかと思います。
そして、自然災害や感染症についても、事前にリスクを把握し、予防的な措置を備えておくことが必要です。そこで、常に緊張感をもって、危機管理に備えてきた菅総理としては、どのように防災・減災・国土強靭化や感染症対策に当たるおつもりでしょうか。お聞かせください。

来週、11月3日に行われるアメリカ大統領選挙の結果で、中国や北朝鮮に対する外交政策、TPPなどの貿易政策、そして地球温暖化政策など米国の政策が大きく変わるかもしれません。
現在、米中関係は、中国外相が「国交樹立以来最悪」と評するまでに冷え込んでいます。感染症危機は、米中対立をさらにエスカレートする方向に働いています。選挙結果次第で、米中の関係は接近し、太平洋分割論を懸念する向きもあります。いずれにしても、日本は、米中の関係で、極めて難しい状況に置かれています。 シンガポール建国の父、リー・クアンユーは、日米中の関係について、「二等辺三角形」の状態が安定の秘訣と語っていました。日米関係の辺が、米中、日中の辺より短く、強く、太い形が最も安定するというものです。
しかし、現在、貿易額は、米中が日米と日中を上回っていますし、米中の関係も難しくなっています。この状況の中、日米中の二等辺三角形の安定感を増すために、日米関係をより強くすることが不可欠です。
その一つは、安全保障上はもちろん、気候変動や自然災害、GPSを活用した自動運転や航空機の航行など、様々な分野で重要性が増している宇宙において日米の関係を強めることです。例えば、先日、小惑星のサンプル採取に成功した探査機「オシリス・レックス」も「はやぶさ」の成果を取りいれて開発されているように、わが国が持つ宇宙開発に関わる技術や経験は米国にとっても貴重であり、この分野での関係強化は両国に極めて重要です。
そこで、米国にとって日本が不可欠な存在であることを、宇宙開発を含め、様々な領域で示す必要があると考えますが、どのようにわが国の「不可欠性」を示して、日米中の二等辺三角形の関係を安定させていくつもりでしょうか。総理にお尋ねします。

英国とEUの間の経済連携協定を巡る交渉に不透明感があるだけに、日英EPAを早期に発効させることは、二か国間のみならず、地球規模で、自由で公平な貿易や投資を守り抜き、拡大させる機運を醸成させる意義深いものです。
自由で公平な貿易や投資は、わが国やわが国と価値観を共有する国々の発展の土台となるものであり、これまでも、TPP、日EU・EPA、日米貿易協定と日本を要とする自由貿易圏の範囲を広げてきました。英国やタイはTPPへの参加意向を示しています。
本年5月末、李克強首相はTPPへの参加意向を問われ、「中国は前向きで開放的な態度を取っている」と初めて公式見解を示しました。中国もTPP参加に関心を表しているとみられています。しかし、この背景には、米国抜きのTPPなら、中国が主導権をにぎりやすいとの思惑があると言われます。
中国加盟の可能性については、米国のTPPへの姿勢など大統領選挙後の米国動向を見極めていく必要がありますが、茂木外務大臣はTPP加盟に対する中国の動向をどのようにお考えでしょうか。お尋ねします。

米国大統領選挙の行方次第で、米国のパリ協定・国連気候変動枠組み条約へのスタンスも大きく動きますが、菅総理は、先んじて、今回の所信表明で、グリーン社会の実現として、温室効果ガスの排出量を2050年までに実質ゼロにすると宣言されました。
EUや中国等の削減目標と並んで高い基準の国際公約を掲げることで、世界から取り残される懸念が払しょくされるという大きな意義があります。いわば、グラフに、現在から積み上げて未来へと、左から右に線を描くのではなく、未来から現在に向けて右から左に線を描くやり方であり、目標達成への強い野心が感じられるものです。
目標が定まれば、わが国は、一丸となって、達成に向けて、産業構造や生活様式の転換に全力を尽くさなければなりません。
自動車産業や交通機関、電力業界だけではなく、IT産業においても対応が求められます。また、AI、ビッグデータなどがもたらす第4次産業革命は、エネルギーの最適化の実現等に不可欠ですが、他方、データを集積し、処理するセンターが消費する膨大なエネルギーに対策を講ずる必要があります。
このように、脱炭素を進める過程では、新たな技術やビジネスによる温室効果ガス排出削減の最大化を図ると同時に、環境と経済の好循環を創り上げる工夫が必要ではないか、と考えますが、菅総理のお考えをお聞かせください。

深刻化する海洋プラスチックごみ問題に対する取組みが進んでいます。本年7月からは全国の小売店で原則、プラスチック製レジ袋が有料義務化されました。
この海洋プラスチックごみ問題については、昨年、日本学術会議が、データに基づく助言の必要性や各国の技術者がアクセスできるデータ管理システムの確立、観測船による調査基盤の強化などを含む声明を出しました。
海洋プラスチックごみ問題のように、世界が直面する課題には、科学的な知見と国際的な協力が不可欠です。各国の科学アカデミーと連携を築き上げてきた学術会議には、その機能を十分に発揮していただかなければなりません。
同時に、学術会議自体、その在り方を不断に検討していくことが求められています。そこで、本年3月に出された外部評価有識者による活動状況に関する評価で指摘された事項、例えば、果たすべき役割と仕組みの構築、人文・社会科学の果たすべき役割の再検討、会員選考等におけるダイバーシティの推進などについて、しっかりと対応していく必要があると考えていますが、総理のお考えをお聞かせください。

北朝鮮による脅威の増大など安全保障環境が大きく変化しています。
固形燃料型のミサイルとなり、事前の動きが察知しにくい、また、軌道が変化するミサイルも開発が進んでいるなどの環境変化の中で、しっかりと抑止力を高めなければなりません。
加えて、今回の感染症による国際的なサプライチェーンの分断により、軍事面だけではない、食料、エネルギー、さらにはマスク等の生産といった経済産業活動もわが国の安全に直結していることが明らかになりました。
同時に、通信分野での覇権主義が広がっています。機密情報を扱う通信回線や機器の導入については、規格が開かれたものか、常に安定的なデータ流通が保障されているか、という点も考慮しなければなりません。
政府では、本年4月1日、国家安全保障局に経済分野を専門とする「経済班」を発足させました。世界的な感染症の拡大による世界経済やパワーバランスへの影響など重要課題への対応が期待されます。しかし、わが国の国家安全保障戦略は、平成25年に初めて閣議決定されたときのままです。安全保障戦略が対象とすべき範囲が広がっていることから、国家安全保障戦略についても、見直しを視野に入れるべきと考えますが、どのようにお考えでしょうか。また、見直しの際には、経済、食料やエネルギー、そして感染症などの分野についても重きを置くべきと考えますが、どのような観点を盛り込むことを検討していくつもりでしょうか。総理にお伺いします。

わが国は、これまで、エネルギー供給国の多様化を求めてきましたが、近年、スエズ運河航路の代替ルートである北極海航路や石油・天然ガス資源開発の活発化から北極政策が注目されています。
北極海航路では、スエズ運河航路に比べて欧州からの航行距離が約三分の二となる上、航路上のリスクも低いと評価されています。北極圏には石油・天然ガス資源が眠っていますが、ガス田・LNGプラント開発や輸出港の建設も進んでいます。
一方、冷戦後、「平和の海」とされてきた北極海でも、経済権益の拡大を目指して中国が探査を進めており、ロシアとの接近も懸念材料です。米国、ノルウェー、デンマーク、カナダなどの関係国を巻き込んで、わが国のエネルギー安全保障環境の改善のために、北極海航路や資源開発など北極政策をどのように進めていくおつもりでしょうか、梶山経済産業大臣にお伺いします。

本年のノーベル平和賞に決まった国連食糧計画の授与理由は、「飢餓が戦争や紛争の武器として利用されないための努力」です。食料が安全保障にとって極めて重要であることを示しています。
わが国の食料自給率はほかの先進国よりも低く、政府目標値に届いていません。農林水産業に従事する方々の高齢化が進み、人口減少で地域の活力も失われようとしています。
加えて、コロナ禍による消費の落ち込みで農家の経営基盤自体が脅かされています。「国産農産物こそ大切な一番頼れる存在」です。
高収益作物次期作支援交付金の運用に当たっては、農業者の皆さんが、新型コロナウイルスへの不安から営農を断念することなく、次のシーズンにおいても前向きに生産活動を行えるよう支援することを主眼とし、現場の事情をしっかり把握して対応すべきと考えます。
そこで、農林水産業についても安全保障政策としての位置づけを明確にする。その上で、産業としての持続可能性を高め、生産に携わる方々が次のシーズンに向けて前向きになれる施策を講ずる。そうすることで、食料自給率を改善していかなければ、わが国の安全・安心は保てません。野上農林水産大臣は、どのようにこれらの課題に取り組むお考えでしょうか。お伺いします。

長い間、続いてきた地方圏からの人口流出、東京圏への一極集中の流れが、新型コロナウイルスの感染拡大により、在宅勤務の推奨、三密環境からの回避などが進んだことで、変化がみられました。本年5月、7月、8月そして9月は、東京都の人口は転出超過となっています。テレワークやワーケーションなどの新しい働き方で、東京に縛られなくてもよいのであれば、地方に生活の拠点を移そうという動きがますます高まります。
しかし、公共交通機関の本数が少ないなど利便性が悪い、保育施設や学校はあるものの通いづらい、病院がない、あっても産科や小児科がない、といった地域公共交通、保育、学校、病院へのアクセスに不安があるために、地方への移住に踏み出せないという声も聞こえます。また、地方の思いを国政に届けたくても、人口少数県という理由で合区選挙区になっている県では、大都市圏とは異なり、政治へのアクセスも制限されることとなります。
そこで、総理のいう「活力ある地方を創る」ためには、生活や生業にとって不可欠な地域公共交通、保育、学校、病院、政治参加などについて、政府が国民に対して最低限の保障をしていく、いわば公共サービスの「ナショナル・ミニマム」的なアクセスを確保していくべきとの考え方について、菅総理はどのようにお考えでしょうか。お尋ねいたします。

新型コロナウイルスは教育の現場にも大きな影響を与えています。三密回避のため、高等教育のみならず義務教育でも遠隔授業が取り入れられています。しかし、家庭によってはインターネット環境が十分ではない、子ども一人では遠隔授業の受講は難しいなどの課題も明らかになり、習熟度に差が生じているという指摘があります。
また、キャンパスへの立ち入り制限のため、入学後、大学に通えず、友人も作れないという悩みも聞きます。学生を取り巻く経済状況も厳しさを増しています。アルバイト収入や親元の世帯収入が減少したため、経済的な理由で学習を続けることができなくなるのではないかという不安を抱える学生も多くなっています。経済的支援が本当に必要な学生に情報が届いていないという話もあります。
就職活動を巡る状況も大きく変わりました。希望している業界の採用が軒並み中止となった、説明会やインターンシップも行われなくなった、リモート授業だけになった、など不安も広がっています。大卒の内定率は昨年と比較して10%以上低下しているとの報道もありますが、さらに雇用への影響が長引き、就職氷河期への懸念も大きくなっています。
学びの場で自分を磨き、そして社会に巣立っていこうという若い世代が不安に挫けてしまわぬよう、今こそ、政府が、支援の手をしっかりと届けるべきだと考えますが、総理の決意をお聞かせください。

今回の新型コロナウイルス危機は、これまでの不況と異なり、女性就業者が多い産業を直撃し、女性の雇用をより厳しい状況に置いています。第二次安倍政権下では女性就業者は約330万人増加しましたが、本年4月には対前月比で70万人減少しました。これは男性に比べ約2倍の減少です。学校の一時休業や保育園の休園などにより、家事や育児負担が増えたため、仕事を抑えざるをえない女性も増えました。ある支援団体の調査では、シングルマザーの約7割以上が雇用形態の変更や収入減に見舞われたとのことです。5月・6月の二か月間に配偶者暴力相談支援センターに寄せられたDV相談は前年の1.6倍、女性の自殺者は7月は659人、8月は660人と直近5年間で最も多く、7月は前年同月に比べて96人、8月は196人も増えています。また、東京都の性暴力ワンストップ支援センターには、今年の4月から8月までで、去年の同時期に比べて1.5倍の相談が寄せられています。
女性を取り巻く状況が大変厳しいことをどのように認識した上で、どう苦しんでいる方々に支援の手を差し伸べるのか、さらにそこからどう女性活躍に結び付けていくつもりなのか、菅総理にお伺いします。

「福島の復興なくして東北の復興なし。東北の復興なくして日本の再生なし。」
所信で示されたように、総理の強い思いは揺るぎません。
就任後初の地方視察では、東日本大震災の被災地である福島県を訪問し、東京電力福島第一原子力発電所の廃炉作業などを視察しました。
その際、私自身も、経済産業副大臣時代に取り組んでいた処理水の扱いについて、菅総理は「今後できるだけ早く、政府として責任をもって処分方針を決めたい」と述べました。敷地内の大量のタンクそのものが風評被害やリスクの要因になっているとの懸念もあり、処理水の取扱いは廃炉の円滑な進行のためにも解決されるべき課題であります。
これまで、7回にわたり開いた御意見を伺う場において聴取した関係者の声やパブリックコメントなどを踏まえ、与党の第9次提言にもあるとおり、風評への影響を起こさないための対策を徹底しつつ、早急に処理水の取扱いを決定すべきと考えますが、菅総理のお考えをお聞かせください。

菅総理は、目指すべき社会像は「自助、共助、公助、そして絆」だと述べておられます。
「まずは、自分でできることは自分でやってみる、そして地域や自治体が助け合い、政府が責任を持って対応する。」
防災でも使われる「三助」ですが、江戸時代、出羽国米沢藩の藩主である上杉鷹山は「三助の実践」を唱えています。自助については、それぞれの負担能力に応じて、求められる範囲は異なり、それに応じて共助、公助の守備範囲も変わってくるものです。
同時に、社会構造等の変化により、所得のみを勘案して負担能力を量ることが相応しいのかという議論も必要です。
介護保険では、施設入所者の食費・居住費の自己負担額を決めるにあたっては、金融資産も勘案される制度となっています。高等教育の修学支援でも本人及びその生計維持者の金融資産が認定要件に含まれています。また、医療保険制度でも、金融資産を勘案すべきという議論があります。
併せて、厚生年金の適用対象が拡大され、従業員数が少ない企業の短時間労働者も加入できるようになりましたが、零細な中小企業には雇用者負担は重いものです。負担額を決めるにあたり、事業者側の経営状況が考慮されなければ、給与の切り下げにつながるのではないかと懸念しています。
そこで、全世代型社会保障制度を考えるにあたっては、資産格差や企業格差を是正するという観点からも、自己負担額を決めるにあたっては、所得のみではなく、利益や資産も勘案していくことも含めて考えていくべきと思いますが、総理はどのようにお考えでしょうか。お聞かせください。

「自助、共助、公助、そして絆」を考えるにあたり、自分なりに行き着いたキーワードは「選択肢のある社会」でした。
今や、国民の皆様が持つ価値観の多様化はますます進んでいます。一つの方向性を提示し、その実現のために一つの政策だけを推し進めるやり方では、問題解決に至ることがなかなか難しい時代になっています。子育てについても、できる限り自分の手で育てたいという考えの家庭もあれば、共働きで、保育を必要とする家庭もあります。待機児童対策や育児休業制度の促進はもちろんのこと、三世代同居しやすい環境づくりも求められています。
雇用についても、ニーズが多様化しています。正規労働を希望する人、自由に働く時間を決めたいという人、様々な希望があります。様々な希望がある以上、一つの働き方をあるべき姿とみなして政策を進めることは、社会の実態やニーズに合っていないと感じます。
政治の決断として、政策を一つに決めなければならない場面があるのは事実です。しかし、財源が限られている中で、とりわけ生活に直結した医療、介護、子育て、教育などの分野では、過剰なコストがかからない限り、複数の選択肢を提供し、国民の皆様が、その選択肢の中から自分の判断で、自由に選ぶ仕組みが必要ではないでしょうか。そして選んだ選択肢では対応できないリスクが発生したときに相互に連帯して生活を保障する共助、さらには公的扶助など必要な生活保障を実施する公助がしっかりと機能する。このことが安心感につながるのではないでしょうか。
菅総理は、「自助、共助、公助、そして絆」という国家像を追求していくにあたり、この「選択肢のある社会」の実現について、どのようにお考えかという点をお尋ねして、私の質問を終わります。ありがとうございました。