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政策国会国会演説代表質問

第203回臨時国会における世耕弘成参議院自民党幹事長代表質問

第203回臨時国会における世耕弘成参議院自民党幹事長代表質問

自由民主党の世耕弘成です。
私は、自由民主党・国民の声を代表して、菅総理大臣の所信表明演説について質問いたします。

まず冒頭、新型コロナウイルス感染症でお亡くなりになった方々に衷心よりお悔やみを申し上げます。また現在も闘病中の皆さんには心からのお見舞いを申し上げます。
医療や介護等に従事する皆さんやエッセンシャルワーカーの皆さん、皆さんのご尽力のお陰でコロナ禍においても我々の日常生活は維持されています。心から感謝を申し上げたいと思います。
菅総理、総理は今大変な重圧の中で毎日を過ごしておられるのではないでしょうか?安倍前総理は通算・連続在職日数が憲政史上最長を記録し、経済再生や外交等で数多の実績を残されました。このような総理の跡を継ぐというのは大変なことです。しかも今は人類が新型コロナウイルス感染症という未曾有の危機に直面している最中です。菅総理が日々感じておられるリーダーとしての重圧は、我々の想像を遥かに超えるものだと思います。
一方で菅総理は強烈な自負心を持って総理の仕事に臨まれているのではないでしょうか。所信表明演説では、前総理が多用された故事来歴に基づくエピソード紹介や、議場への賛同呼びかけという手法は敢えて取られませんでした。盛り上がりに欠けるとの批判もあるようですが、私は逆に「自分らしくやる」、「仕事の結果で見てほしい」という総理の強烈な意思の表れではないかと思っています。
「菅総理ならやれる」、私は確信しています。
私は3年7か月の間、官房副長官として、当時の菅長官をお支えしました。私から見た総理は前例主義を極端に嫌う政治家です。徹底して国民の声に耳を傾け、国民感覚からかけ離れたことは、躊躇せず見直しを求める。そういう方です。
私には総理の姿勢を目の当たりにした強烈な体験があります。2013年1月のアルジェリア人質事件の際、犠牲者のご遺体と生存者をどうやって日本に連れ帰るかということで、官房長官室で関係省庁と侃侃諤諤の議論が行われました。「異国の地で真面目に仕事をしていてテロの犠牲になった方々を政府の飛行機で日本にお連れすることは当然だ」と政府専用機の派遣を主張する菅長官に対して、関係省庁は「テスト飛行なしで飛んだ前例はない」など出来ない理由を並べて専用機の派遣に抵抗しました。最後は菅長官が眦を決して「これは政治判断だ。飛ばしてくれ」と強く指示。犠牲者、生存者の皆さんを日の丸を背負った政府専用機で日本までお連れすることが出来ました。その後、海外で災害やテロに遭遇した日本人を自衛隊が陸路も含めて輸送するという政策にも繋がっていきました。
この時以来、常に国民の目線に立つ。前例は気にしない。それが政治家菅義偉の真髄だと私は思っています。
官房長官時代、地震やミサイル発射事案等の突発事態が発生した際に、真夜中であれ、明け方であれ、真っ先に官邸に駆けつけるのは菅長官でした。私も副長官として上司より先に駆けつけたいと努力しましたが、いつも菅長官の方が先でした。菅長官はスーツを着て寝ているのではないか?という話が官邸の中で囁かれるほど、菅長官の危機対応はいつも迅速でした。国民の命を守ることについて強い決意と覚悟で仕事に臨んでおられることを痛感させられました。
「国民の命と健康を守り抜きます」という所信表明演説での総理の言葉に通り一遍ではない迫力を感じるのは、こういう総理の姿勢を知っているからです。
総理はご自身の著書で、マキャベリの言葉を引かれています。「弱体な国家は常に優柔不断である。そして決断に手間取ることは、これまた常に有害である」。就任直後から総理の迅速な決断が続いています。「デジタル庁創設」、「行政・規制改革」、「携帯料金引き下げ」、「不妊治療保険適用」、「地銀再編」など矢継ぎ早に政策を打ち出し、具体化に向け進みはじめています。「前例に囚われず仕事を前に進める」という総理の強い思いが改革を前進させていることを評価し、我々もその取り組みを後押ししていく所存です。
こういう菅総理に対して、「個別政策は分かりやすいが、国家ビジョンや哲学が見えにくい」という指摘があります。これまでは「自助、公助、共助、そして絆」という言葉で説明されてきましたが、是非総理の内政、外交に渡る国家ビジョンと哲学を、改めてご自身の言葉でもう少し詳しく国民に発信していただきたいと思います。

参議院自民党では「不安に寄り添う政治のあり方勉強会」を立ち上げ、個人が抱える不安に対して政治がしっかりと向き合う活動を展開してきました。そして今、新型コロナウイルス感染症への不安が世界と日本を覆っています。「感染症拡大防止と社会経済活動の両立」という前政権以来の政府の方針に異論は出ていないものの、国民の不安を解消するには至っていません。
国民がコロナ禍で抱えている大きな不安を私なりに以下の4つにまとめてみました。
第一に、次の大きな感染の波が来た時に、抑え込むことが出来るのか?
第二に、このまま事態が続けば、経済や雇用はどうなるのか?
第三に、大規模な財政出動が続くが、日本の財政は大丈夫なのか?
第四に、ポストコロナの世界はどうなるのか?自分はついていけるのか?
の4つの不安です。
4点について、総理のお考えを確認させていただきますので、少しでも国民の不安解消に繋がるお答えをお願いしたいと思います。

第一に次の感染の波を抑え込めるのか?という不安です。
日本では感染拡大は続いているものの、今のところ欧米のような爆発的拡大には至っていません。しかしこれで気を緩めるのではなく、今こそ次の波への備えを充実させておく必要があります。
検査体制の抜本拡充、病床の確保、軽症者用宿泊療養施設の確保、保健所体制強化などが次への備えとして喫緊の課題です。8月28日にこれらの拡充方針が決定されましたが、菅政権において、スピード感を持って拡充に取り組んでいただくよう、強く求めます。
また感染症危機管理体制の整備も重要です。これまで政府と自治体の間での権限を巡る混乱や、諸外国が実施した「ロックダウン」を我が国は実施する術を持たないなど日本の感染症対応体制の不備が指摘されています。今後の感染症リスクから確実に国民を守るためには、感染症拡大に対する司令塔機能や組織体制の確立、診療データの共有、国と自治体の権限、役割の整理といった、体制の見直しが必要ではないでしょうか?そのためには法律の見直しが必要との指摘もありますが、菅総理は官房長官時代に、法制の抜本的な見直しはコロナ終息後にとのお考えを表明されておられます。法整備を現在必要と考えない理由と現行法制度の下で具体的にどのような手法で「爆発的な感染を絶対に防ぐ」のか、総理のお考えを伺いたいと思います。
医療従事者の皆さまの献身的なご尽力、国民皆保険や保健所制度といった日本固有の仕組みが、今回のコロナ禍において様々な課題を抱えつつも、医療提供体制を崩壊させることなく国民の命を守っていることは間違いありません。
しかしその医療を支える医療機関の経営は大丈夫でしょうか。
コロナ患者を受け入れる病院には、補正予算によりかなりの支援が実現していますが、受け入れていない病院・診療所などが、コロナ感染拡大の余波による受診控え等の影響で、大きな減収に見舞われています。今後、季節性インフルエンザ流行に備える中で、コロナ患者を受け入れる病院も、そうでない病院も、オール日本の医療提供体制を守り、コロナ再拡大を阻止しなくてはなりません。医療体制を守るための医療機関への支援の必要性について、総理のご見解をお聞きします。

第二に今後の経済や雇用はどうなるのか?という不安です。
今この瞬間は第一次・二次補正予算による緊急避難的な「止血措置」が一定の効果を上げています。総理も主導されてきた持続化給付金、家賃支援、雇用調整助成金の上限引き上げ、「無利子、元本据え置き」の融資制度等が功を奏し、地域の中小小規模事業者からも「厳しい状況は続くが、政府の施策により資金繰りはなんとか踏ん張れている」という声が聞こえてまいります。
しかしコロナ禍は続きます。大企業の大幅な赤字決算の予測が相次いでいます。日本経済はここからが正念場です。特に中小企業からは、今の状況が年明けも続くようであれば、いよいよ雇用調整に走らざるを得ないといった悲鳴が聞こえてきます。第一次・二次補正予算による景気下支え効果が消失する前に、公共事業等の景気対策、雇用対策を盛り込んださらなる大型の経済対策が必要ではないでしょうか。経済対策と第三次補正予算の編成に早急に着手すべきと考えますが、総理のお考えを伺います。

第三に財政は持つのか?という不安です。
IMFは、今年の世界全体の政府債務残高がGDP比で98.7%に達し、その規模は約90兆ドルに達すると予測しています。各国のコロナ対策としての経済対策が財政状況を急速に悪化させているのです。日本も新型コロナウイルス対策のために99.8兆円もの国債を増発してきています。
コロナ禍はウイルスとの戦いであり、「有事」です。戦いに勝って国民の命と生活を守るためには、当然積極果敢な財政政策が取られるべきです。
しかし世界各国がここまで国債を増発している状況下で、世界的な信用不安が起きないのか?日本は大丈夫なのか?積極財政派である私でさえ不安を感じざるを得ません。一方でコロナ禍が終息した直後から増税等によって急激な債務削減に走れば、病み上がりの日本経済は大打撃を受けることになるでしょう。
ここからは極めて高度に戦略的な財政政策が求められます。
そこで総理に伺います。世界的な債務残高の急増についてどう考えるのか?その中で日本の財政は大丈夫なのか?なぜ大丈夫なのか?ポストコロナの時代に、コロナ禍で痛んだ経済の再生と債務が膨らんだ財政の健全化という2つの課題に対してどのような戦略で臨むのか?ご自身のお考えをお聞かせください。

第四に、ポストコロナの世界に対する不安です。
今回の新型コロナウイルス感染症が終息しても、コロナ前の社会にそのまま戻ることはありません。不可逆な変化がコロナ禍を契機に加速しています。
ポストコロナの社会とはいかなる社会か。これまで必要とされながら改革が中々進まなかった官民のデジタル・トランスフォーメーション、テレワーク、オンライン教育・診療、東京一極集中是正などの改革が一気に進む可能性があります。
リーマン・ショック前後に、アメリカではAirbnb、Uberといった現在世界を席巻する革新的サービスを提供する企業が多く生まれました。先行きが見えない中で、リスクをとり、知恵を絞ったものこそが、数年後の世界で優位なポジションに立つ良い例です。日本としてもこの機会に日本の改革を官民あげて一気に進めていくことが重要です。我が国は、今度こそ、ピンチをチャンスに変える戦略を立案し実行すべきです。
一方で、こういった変化に自分が取り残されるのではないかとの不安を持つ国民は少なくありません。今こそ政府はポストコロナの社会経済のあり方と日本の戦略を明確にし、国民に方向性を示すとともに、それらに対応したリカレント教育等の機会を提供すべきです。
次期経済対策は景気対策に加えて、ポストコロナの社会に必要な構造改革を推進し、国民の対応を支援する要素も持つ経済対策でなければなりません。
そこで総理にお伺いします。ポストコロナ社会に向けての構造改革についてどうお考えですか?それら改革に国民が対応できるようどのような支援を提供しますか?次期経済対策にはそれらの内容がしっかりと盛り込まれるべきと考えますが、いかがですか?総理のお考えを伺います。

さてこれら新型コロナウイルス感染症が誘因となった様々な不安は人々の心をも侵食しています。
感染者への偏見・差別が社会問題化しています。感染者が引越しせざるをえない事例も耳にします。
また8月に民間が行った全国の医師を対象に実施した調査では、コロナ禍による生活環境の変化で、患者が増えたり、症状が悪化した疾患を尋ねたところ、「不安障害、鬱病などの精神疾患」が38%でトップでした。警察庁によると、これまで減少が続いていた国内の自殺者数は今年7月以降増加に転じ、全国の自殺者数は9月に1828人と前年同月比10%増という状況です。引きこもりの方の人数も増加しているのではと懸念します。
新型コロナウイルスによって人々の心が蝕まれる状態が「負のニューノーマル」として定着することがないよう、感染者や弱者の不安により添う姿勢を政府としてより鮮明にすべきだということを指摘しておきます。

今、菅総理はデジタル庁創設へ向けて動きを早めています。冒頭指摘したように、総理は常に国民目線で政策を考え、役所の論理は受け入れない政治家です。菅政権の目玉政策である「デジタル庁創設」においても菅総理の政治姿勢が貫徹されることを強く期待します。
政府のデジタル化の究極の目的は、国民を煩雑な行政手続きから解放し、役所訪問や手続きにかけていた時間を豊かな生活に当ててもらうことです。
デジタル庁創設を言うだけでは国民には改革の実感が湧きません。菅総理らしく、「手続きはスマホで完結すること」、「一度入力した事項は二度と入力の手間はかけないこと」など国民目線で利便が実感でき、役所が言い訳できないようなシンプルで明確な指示を総理として行うべきだと考えます。
これまで各省庁や自治体は、個別に業務システムを構築してきたため、システム間のデータ互換性が不十分で、省庁間や国と自治体間でデータのやりとりが円滑に行えず、せっかくのマイナンバーも宝の持ち腐れとなり、国民にとって使い勝手の良い電子政府が実現出来ない状況が続いていました。
これを解消するには、デジタル庁に省庁や自治体の業務システムのフォーマットを統一させる強力な権限と、省庁や自治体のシステム更改を後押しするための膨大な予算を持たせる必要があります。
デジタル庁への権限と予算の付与について総理はどのようにお考えでしょうか?ご決意をお聞かせ下さい。
またデジタル庁長官の人事も重要です。デジタル庁のトップになるべき人物の要件と適性と、今後の政府のデジタル政策の進め方について、菅総理にお考えを伺います。

さて、次に我が国の外交・安全保障についてお尋ねをいたします。
初外遊であるベトナムとインドネシア訪問の成功を高く評価いたします。安倍前総理は首脳同士の個人的信頼関係をテコに具体的プロジェクトを動かしながら、各国との関係を前進させるスタイルでしたが、私は菅総理もそのスタイルを継承し、手腕を発揮されると思っています。
私は政治家の能力には内政も外交も区別がないと考えています。内政において同僚議員の信頼を獲得し、経済界等に幅広いネットワークを構築される人間性、そしてここまで官房長官として、数多くの政策を実現した実行力は、外交でも遺憾なく発揮されると確信しています。
外交について総理は、前政権の路線を継承するとされています。具体的にどのように継承されるのか以下いくつか確認させていただきます。
前政権は日米同盟の抜本的強化をはじめ、世界的に保護主義の流れが強まる中でTPP11をはじめとする大型経済連携協定を主導するなど、外交で数多くの取り組みを推進しましたが、中でも日本が提唱した複数の重要なイニシアティブが米国を含む各国からの支持を受け、大きな国際的流れを作ったことは、過去の日本外交には例のない大きな成果だと思います。
その代表例が「自由で開かれたインド太平洋」の実現に向けた取り組みです。菅内閣発足直後からこの取り組みを具現化するための動きを早めておられるように見受けられます。10月6日には日米豪印4カ国外相会談が日本で開催され、「自由で開かれたインド太平洋」の推進について確認が行われました。先日のベトナム、インドネシア訪問でも主要議題は「自由で開かれたインド太平洋」でした。日本が提唱し、米国をはじめ関係国が賛同している「自由で開かれたインド太平洋」を今後どのように具現化し、賛同する国を増やしていくのか?総理の戦略をお聞かせ下さい。

日本が提唱したもう一つの重要なイニシアティブは「データ・フリー・フロー・ウィズ・トラスト」、信頼に基づく自由なデータ流通です。昨年のG20大阪サミットでは自由なデータ流通の国際ルールづくりに関する交渉枠組み「大阪トラック」が創設されました。コロナ禍の影響で社会のデジタル化が世界的に進む中で、「大阪トラック」の重要性は格段に増しています。
デジタル社会ではデータの利活用が前提となりますが、そのデータが政府による強権的国民管理に使われたり、特定の国に囲い込まれることがあってはなりません。個人の自由とプライバシー保護を前提とした自由なデータ流通を推進していく必要があります。ただ米国、EU、中国などの間で、個人情報の取り扱いに関する哲学が異なっており、今後の調整は難航が予想されます。総理として大阪トラックをどのように進めていくのか?お考えをお聞かせ下さい。

前政権が「最重要課題」として取り組みながら、まだ解決していないのが拉致問題です。菅総理も就任直後から拉致被害者家族と面会され、解決への決意を語られました。相次ぐ外国首脳との電話会談でも拉致問題解決への協力を呼びかけています。さらに条件を付けず金正恩朝鮮労働党委員長と向き合う覚悟も示されています。国際的枠組みと圧力を活用しながら、北朝鮮に核・ミサイル開発を断念させることも念頭に置きつつ、もはや一刻の猶予も許されない拉致問題の解決に正面から向き合って頂きたいと思います。総理ご自身の拉致問題解決に向けたご覚悟をお聞かせください。

米国大統領選挙の投開票が迫ってきました。 選挙結果がどうあれ、日米が自由と民主主義の基本理念を共有する同盟国であり、日本にとり最重要の二国間関係であることに変化はありません。 同じく選挙結果がどうあれ、今後米中両大国の軋轢はますます強まることが想定されます。 米国は日本にとって唯一の同盟国であり、米国抜きの日本の安全保障は考えられません。また急速に成長する大国であり最大の貿易相手国である中国との関係も軽視できるものではありません。 米中対立の狭間で日本が米国と連携を強めながら、中国とどう向き合っていくのか?菅外交の真髄が問われます。 日本は日米同盟の強化を最優先に、価値観を共有する国々との連携を強める一方で、中国に対しては、我が国固有の領土領海に関しては一歩も譲らない断固たる姿勢を示しながら、中国を排除するのではなく、中国が国際社会のルールを守った上で、日米EUなどが構築する枠組みに参加するよう促すという、戦略で臨んできました。サプライチェーンについても、日中はその距離感からも一体不可分な関係ですが、中国への過度な依存とならないよう再構築を進めていかなくてはなりません。中国が進める一帯一路についても、過剰債務で相手国を縛り付ける行為や軍事利用については厳しく対応する一方で、途上国が真に裨益するプロジェクトについては、第三国における日中企業間協力などを通じて、日本も参画していく必要があります。このように高度な戦略性と絶妙なバランスが求められるのが対中外交です。 今後、中国に対してどのように向き合っていくのか?総理が描かれる総合的戦略をお伺いします。 一方で政治や安全保障問題と経済を分けて考えるという現実的対応は難しくなってきています。すでに米国は通信網に中国製機器を使用するリスクを訴え、5Gネットワークなどから中国製品を排除することを目的とした「クリーンネットワーク」計画に参加することを同盟国に求めています。日米の信頼関係と円滑な情報共有を維持するためには、真剣に受け止めざるを得ません。しかし中国製通信機器排除はサプライチェーンで繋がる日本の製造業に深刻な打撃を与えかねません。日本として今後、この呼びかけにどのように応えていくおつもりでしょうか。また政治・安全保障と経済問題が一体不可分な中、経済・技術面も含めた国家安全保障体制、情報収集体制の強化が重要ですが、具体的にどう対応されるのでしょうか?

外交問題の最後に日露関係について伺います。 安倍前総理とプーチン大統領は幾度となく首脳会談を繰り返し、8項目の経済分野協力や北方領土における共同経済活動を前進させ、一昨年のシンガポールでの首脳会談では、「平和条約締結後にソ連は歯舞群島と色丹島を日本に引き渡す」とした日ソ共同宣言に基づいて平和条約交渉を加速するという両首脳の合意に漕ぎ着けました。残念ながらその後具体的進展を見ることは出来ませんでしたが、9月29日の菅総理とプーチン大統領の電話会談で、相手側からこのシンガポール合意の確認を提起されたとの報道がありました。このことはプーチン大統領が平和条約締結と領土問題解決に向け、菅総理と交渉を継続、加速したいとの意思を示したと考えられます。菅総理は今後日露交渉をどのように進めていくご決意でしょうか?

総理は所信表明演説で「2050年温室効果ガス排出ゼロ」を高らかに宣言されました。野心的宣言であり、強く支持いたします。気候変動への対応として重要なことはもちろんですが、海外機関投資家の間でESG投資、すなわち環境・社会・企業統治を重視した投資の動きが急速に進んでおり、この分野での取り組みの遅れは日本への投資回避につながりかねません。また諸外国での排出量に応じた課税や排出権取引の動きが日本企業の競争力を削ぐ可能性もあります。 問題はどうやってこの野心的な目標を推進していくかです。将来的にはカーボンリサイクルや水素が問題解決の鍵になることは間違いありませんが、ここ10年程度での実用化は難しいのが現状です。再生可能エネルギーの比率を高めていくことも重要ですが、それだけで世界第3位の経済活動を維持することは困難です。 やはり当面は、CO2を排出せず、安定的に大量の電力を供給できる原子力を、安全を最優先に、さらに安全な最新技術の導入も含め使いこなしていくことが不可欠だと考えますが、2050年カーボンニュートラルへ向けての総理の原子力政策に対するお考えをお伺いします。

新型コロナウイルスとの戦いは未曾有の危機ですが、ワクチンが実用化されれば終息するという明確な希望の灯があります。そして我々にはもう一つの希望の灯があります。開催が来年に延期となった東京オリンピック・パラリンピック。今日もアテネから運ばれた人類の希望の灯とも言うべき聖火が日本国内で灯り続けています。開催までの9か月間、引き続き政府・国民が一体となって智恵を絞り、大会の簡素化と感染防止策を徹底し、何としてでも大会開催を実現しようではありませんか。そして、「コロナとの戦い」を克服した証として、人類の団結と希望の象徴として聖火台に大きな炎を灯そうではありませんか。 そして、その先に控えるのが、2025年大阪・関西万博です。新たなウイルスに対する人類の英知と勇気を人々の記憶に留める歴史的な万博となるでしょう。新型コロナウイルス感染症の流行は、人々の価値観の変化を生み、個々人の幸福や健康への意識を高めることになりました。立候補の時から打ち出している大阪・関西万博のメインテーマは、「いのち輝く未来社会のデザイン」であり、サブテーマは「多様で心身とも健康な生き方」、「持続可能な社会・経済システム」です。まさに、ポストコロナ時代の価値観を先取りして我が国は万博の準備を進めてきたのです。 この2つのビッグイベントを通じ、日本は世界に「希望」を発信すべきです。東京オリンピック・パラリンピック、そして大阪・関西万博を菅総理のリーダーシップで意義あるものにしていただくことを強く要請して、質問を終わらせていただきます。