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国会

第198回国会における岡田直樹参議院幹事長代行代表質問

2019年2月1日

岡田直樹参議院幹事長代行

自由民主党の岡田直樹です。自由民主党・国民の声を代表して、安倍内閣総理大臣の施政方針演説について質問いたします。とりわけ本日、私は日本国憲法をめぐる現状をどう認識し、その課題にどう対処すべきかという観点でお尋ねしたいと思います。

第一のテーマとして安全保障環境について質問します。平成元年は、天安門事件、ベルリンの壁崩壊、そして米ソ冷戦終結宣言という大事件が相次ぎ、「冷戦」から「ポスト冷戦」へと転換した歴史的な年でありました。平成の時代、日本を取り巻く安全保障環境が改善するという期待もありましたが、現実はそうではありませんでした。
北朝鮮は平成三年の朝鮮半島非核化に関する南北共同宣言を無視して、核実験の強行、弾道ミサイル発射を繰り返し、アジア・太平洋地域の緊張をかつてないレベルにまで高めてきました。
昨年六月、史上初の米朝首脳会談が行われたこと自体には少なからぬ意義があったと思います。しかし、そこで再確認された朝鮮半島の完全な非核化に至る道筋はまだ不透明と言わざるを得ません。北朝鮮は使えなくなった一部の核実験場の廃棄に着手したかもしれませんが、主要な核施設などは査察もさせていないのではないでしょうか。核実験やミサイル発射は一時中断していますが、すでにその開発が一定水準に達したため、小休止しているに過ぎないようにも見えます。
そこで、北朝鮮の核の脅威を現時点でどう捉えているのか。また二月末にも二度目の米朝首脳会談がある見通しですが、朝鮮半島の非核化は具体的に進むのか。あるいは米国が経済制裁を緩和して、なおかつ北朝鮮が核を持ち続ける恐れが相当あるのではないか。政府の認識と日本の対応について、総理の答弁を願います。

北朝鮮の憲法についても一言お尋ねします。2016年6月に改められた「朝鮮民主主義人民共和国社会主義憲法」の前文は、先代の金正日総書記を称賛して曰く、「わが祖国を不敗の政治・思想強国、核保有国、無敵の軍事強国、と変貌させ、社会主義強国建設の明るい大通路を切り開いた」と明記しています。
こうした北朝鮮憲法の根幹をなす軍国主義は、日本国憲法の平和主義と到底相容れません。とりわけ問題なのは、自らを「核保有国」と宣言し、日本をはじめ周辺諸国を脅かしていることです。北朝鮮がその憲法においてまで「核保有国」を自任することについて、日本政府の立場、見解はいかがでしょうか。総理に伺います。

一方、韓国はどうでしょう。分断された民族の心情を察するとしても、文在寅政権の南北融和一辺倒とも言える政策を見れば、かえって周辺地域の安全保障を危うくするのではないかという懸念を覚えます。中韓関係においても同様のことが感じられます。
日米同盟と米韓同盟はその目的・性格を異にしてはいますが、相互に補完してアジア・太平洋地域の要石となってきました。しかし、いま米韓同盟に亀裂が生じていると指摘する論者は少なくありません。
そのうえに、旧朝鮮半島出身労働者の請求に対する韓国大法院判決の問題、韓国駆逐艦が海上自衛隊哨戒機に火器管制レーダーを照射した事件があり、一衣帯水の大切な隣国であるはずの韓国の、日本に対する姿勢は全くもって不可解と言うほかありません。韓国政府に断固たる態度で臨むことが必要ですが、特にレーダー照射問題は、本来、日米韓の協力関係を支える柱として重要な日韓の防衛協力を困難にするものであり、デリケートな対応を迫られると感じます。日韓の諸問題に対する政府の見解、また打開策をどう考えているのか、総理にお尋ねします。

なお、レーダー照射を行った韓国駆逐艦は北朝鮮の小型船舶に寄り添うようにしており、「人道主義的な救助活動中」であったと主張していますが、その海域は石川県能登半島沖の我が国排他的経済水域(EEZ)の内側にあります。北朝鮮船舶の目的が密漁か、いわゆる「瀬取り」かはさておき、以前も私は代表質問で日本海大和堆周辺における北朝鮮漁船の大規模な違法操業によって、日本の漁業者が身体の危険まで感じ、怒りの声を上げていることを伝えました。より強力で実効性ある手段で北朝鮮などの違法操業を取り締まっていただくよう総理の決意を伺います。また、他国の違法操業から日本の排他的経済水域や漁業者を守ることは、本来、海上保安庁や水産庁の任務でしょうが、今回のような自衛隊機の哨戒活動を厳重にし、海保や水産庁と情報を共有し、連携して日本の海を守ることはあってしかるべきと考えますが、総理の見解をお聞かせください。

また、中国の軍備増強にも歯止めがかかりません。尖閣列島周辺や沖ノ鳥島周辺の接続水域などで、中国海警局の船や海洋調査船が何度も確認されています。我が国の主権を脅かす行為であり、断じて看過できません。中国は人工の島を建設し、領土領海をめぐってフィリピンやベトナムとも対立しています。総理にお伺いします。中国の太平洋進出の意図、及びそのパワーとなる海軍力、空軍力の増強をどのように認識しているのでしょうか。尖閣列島や沖ノ鳥島の周辺での中国の行動についての認識、対応もお聞かせください。

わが国は戦後一貫して日本国憲法の平和主義のもと、日米同盟を基軸に、国の平和と独立を守り、国及び国民の安全を保ってきました。しかし、今日の安全保障環境は冷戦時代と同等か、それ以上に緊迫し複雑化しています。私たちは、ここにこそ自衛隊の存在を憲法上ゆるぎのないものとし、もって日本に対する侵害を未然に抑止する必要性があると考えています。
わが党の憲法改正推進本部では、現行の九条一項及び二項を堅持した上で自衛隊を明記することの意義を認める意見が多数を占め、新たに九条の二を追加する条文イメージ・たたき台素案を取りまとめました。
すなわち九条の二では、
前条の規定は、我が国の平和と独立、国と国民の安全の確保のために必要な自衛の措置をとることを妨げないとして九条一項・二項及びその解釈を維持することを明確にした上で、そのための実力組織として自衛隊の保持について規定するとともに、内閣総理大臣を最高の指揮監督者とし、自衛隊の行動は国会の承認などの統制に服する旨を定め、シビリアンコントロールを明記することとしております。
党内の議論の中でも、九条をめぐっては様々な意見が交わされました。いま申し上げたものは、あくまでも条文イメージとして両院の憲法審査会などで議論され、各党から十分なご意見もいただくためのたたき台と考えております。

第二のテーマとして、緊急事態対応に関連して質問します。
わが国は常に大地震や津波の脅威にさらされており、特に南海トラフ地震や首都直下型地震などについて憂慮すべき予測がされております。
万一の大規模な自然災害に備えて、思い切った国土強靭化を進めるとともに、地方創生の観点からも人口の地方分散や都市機能の移転などを政策的、重点的に図ることが求められます。総理のご所見ならびに対応策を伺います。

次に、東日本大震災の教訓を踏まえた対応についてお聞きします。
災害対策基本法では「非常災害が発生し、その災害が国の経済や公共の福祉に重大な影響を及ぼすような場合」に「災害緊急事態」を布告できると定めていますが、当時の政権のもとでは、その布告は行われませんでした。
そして、大震災の経験や反省を踏まえ、大規模な自然災害が発生した際、実質的・機動的に対処するため、災害対策基本法などを改正し、災害緊急事態への対応の拡充が図られてきたことは一定の評価ができます。
しかしながら、例えば、首都直下型地震などにより、国会の会期中であっても物理的に国会が開けず、立法機能が確保できない場合などに、現行の災害対策基本法では災害緊急事態を布告して、緊急政令を定めることはできないのではありませんか。この点について山本防災担当大臣に伺います。そしてより一層、災害緊急事態法制の整備を図るべきではないかと考えますが、その必要性についても山本大臣、お聞かせください。

他方、大規模災害による緊急事態においても、国会の機能ができるだけ維持されるようにしておくことが重要です。しかし、衆議院が解散されているとき、また参議院通常選挙の前や最中に大災害が発生し、国政選挙が執行できない場合はどうでしょうか。国民の命や生活を守り、復旧復興を急ぐためには、迅速果敢な立法措置が必要ですが、そのためには国会が十分に機能せねばなりません。現行憲法にも唯一の緊急事態条項として、五十四条に参議院の緊急集会の定めはありますが、最も厳しい想定をすれば、参議院の半数のみで緊急の立法を行わねばならない事態も考えられます。
東日本大震災の際は、地方議員の任期は法律による延長で対処しました。しかし、国会議員の任期は憲法に明記されており法律改正で変えることはできません。そして大災害時の憲法改正など、およそ非現実的であります。あらかじめ憲法に選挙実施が困難な場合における国会議員の任期延長等を規定しておくことが必要と考えます。この論点は国会における憲法論議の中で、いくつもの党派から指摘されたところであります。

そこで、わが党の議論の中では、
七十三条の二として、
大地震など大規模災害により、国会による法律の制定を待つ時間的余裕がない特別の事情がある場合に限り、内閣が、国民の生命・身体・財産の保護のため、その制定後速やかに国会の承認を求めることを条件に、政令を制定できるとする案、
さらに、六十四条の二として、
大規模災害により、衆議院総選挙や参議院通常選挙の適正な実施が困難な場合、国会は、各議院の出席議員の三分の二以上の特別多数でその任期の特例を定めることができるとする案を、
条文イメージとしてまとめているところです。
党内議論では、海外の憲法を参考に、外部からの武力攻撃や大規模テロ等の緊急事態も対象にすべきという意見もありました。しかし、緊急政令による内閣の立法権限の代替は一時的とはいえ極めて抑制的でなければならないという意見などもあり、災害列島といわれる国情に照らして、大規模災害に対象を絞ったところであります。

第三のテーマとして、人口減少社会における選挙制度や地方自治体のあり方を質問します。
ある新聞の新年の連載記事の中で、人口減少を指して「静かに進む有事」と表現した言葉が胸に響きました。まさに有事とも国難とも言うべき人口減少であるとともに、人口の偏在、かたよりが更に大きな問題をもたらしています。東京圏の一都三県だけで全国の四分の一以上の人口を占める現状です。推計によれば、二〇四五年には日本の総人口は現在の八割程度まで減少しますが、大都市圏と地方との格差はさらに拡大します。
かつての「国土の均衡ある発展」という言葉は、一時期ほとんど使われなくなりました。確かに、このスローガンは人口も経済も量的に拡大していった時代の象徴かもしれませんが、人口の減少や偏在が進む中、近年の政府の骨太の方針などで再び用いられるようになったこの言葉を再評価し、「これからの時代にふさわしい国土の均衡ある発展」を目指すべきであると考えます。
先ほど国土強靭化や地方創生についてもお尋ねしましたが、大都市と過疎地のバランスをどう考え、いかなる政策を講じていくのか、総理から是非ぬくもりのある答弁をいただきたいと思います。

人口の減少と偏在は、民主主義の根幹をなす選挙制度にも大きな影響を及ぼします。衆議院選挙では、衆議院議員選挙区画定審議会設置法により、直近の国勢調査に基づき小選挙区の改定が行われますが、人口比例が追求されてきたことで、大都市では自治体が細分化され、住民が戸惑うような複雑で変形した小選挙区が生じたり、逆に地方では多数の自治体にまたがる広大な小選挙区が出来るなど、有権者の意思の適切な集約や反映が困難となりかねないところが数多く見受けられます。
そこで、行政区画が切り分けられて人工的な選挙区ができたり、政治に対するアクセスの機会が減少したりすることにより、有権者の国政参加意欲が損なわれかねない状況などを、どのように認識しているのか。小選挙区の区割り法は内閣提出の法律でありますので、あえて総理の認識を伺いたいと思います。

平成二十九年九月に出された参議院選挙での一票の較差についての最高裁判決では、二十七年改正公職選挙法に基づき行われた参議院選挙は合憲とされました。その中で、特に注目すべきは最高裁が、選挙制度の仕組みとして「政治的に一つのまとまりを有する単位である都道府県の意義や実体等を一つの要素として考慮すること自体は否定されない」としたことであります。
わが国の地方自治制度は、基礎的地方公共団体である市町村とそれを包括する広域的地方公共団体である都道府県の二層制を採っております。しかし、人口減少と人口偏在が著しいところ、小規模な市町村独自の力によっては、あるいは市町村間の広域連携によってもなお、行政事務を処理することが困難なケースも増えています。このため、都道府県が市町村の行政事務を代行できるように地方自治法も改正されました。地方自治を守るためにも、現実的な分権改革を進めていくためにも、都道府県の持つ意義は、従来にも増して重要になっていると考えます。
そこで、これまでの都道府県制度をどのように評価するか。さらに広域的地方公共団体としての都道府県が今後果たすべき役割をどのように考えているのか、総理の認識をお聞かせください。

平成二十八年参議院選挙では一票の格差の縮小のため四県二合区が導入されました。しかしながら、ひとたび合区による選挙が執行されるや、地域住民の不平等感はことのほか大きく、合区対象県では投票率が低下するなど国政参加や民意集約の面で問題点が浮き彫りになりました。全国知事会など地方六団体においても早急な合区解消を求める決議が再三行われております。
以上述べてきた衆参両院の選挙区をめぐる問題は、代表民主制のあり方として、人口のみを尺度としてよいのか、地域の持つ意味に目を向ける必要はないのか、あるいは絶対的な条件不利地域からは一人の代表も出せなくてもよいのかという、根源的かつ現代的な問題が我々立法府、国会に突き付けられているのです。
そこで、わが党がまとめた条文イメージでは、
四十七条において、
両議院議員の選挙区は、人口を基本とし、行政区画、地域的な一体性、地勢等を総合的に勘案して定めるとした上で、さらに参議院議員の選挙について広域的地方公共団体である都道府県を選挙区とする場合には、改選ごとに各選挙区で少なくとも一人を選挙できるように規定しております。
他方、選挙区の基盤ともなる市町村と都道府県については、分権型社会のあり方も念頭に置きながら、憲法に明記して、地方自治の強化につなげるため、九十二条に、
地方公共団体は、基礎的地方公共団体とこれを包括する広域的地方公共団体を基本とする旨を追加しております。

第四のテーマとして、教育の充実について質問します。
教育は国民の一人ひとりの自己実現に向けた大切な権利です。そして今日、世界規模で経済構造や社会構造が変化し複雑化していることに伴い、身に着けるべき知識や技術も高度化・複雑化し、国民の知の基盤となる高等教育の重要性はますます大きくなっています。しかも、高等教育を受けたことと所得の間に相関が見られることから、教育による格差の固定化も指摘されています。格差が固定化され、ダイナミズムを失った社会に未来はないと思います。この点について総理はどのようにお考えでしょうか。

併せて幼児教育についても、近年その重要性から諸外国では様々な無償化の取り組みが進められています。総理は施政方針演説で幼児教育の無償化という七十年ぶりの大改革を進める決意を示されたが、改めて現代において幼児教育が果たすべき役割、重要性についても伺います。
私ども自民党では、情報化やグローバル化などの急速な進展に対応するためにも、「国家百年の計」である教育の重要性については国の理念として国民の共通理解を図ることが重要と考えました。また、憲法二十六条には、教育を受ける権利が規定されているものの、教育の理念や、義務教育の無償化以外には国の責務に関する記述がないことから、条文イメージでは、
二十六条三項として、
教育が国民一人一人の人格の完成を目指し、その幸福追求に欠くことができず、国の未来を切り拓く上で極めて重要な役割を担うものであることに鑑み、経済的理由にかかわらず教育を受ける機会の確保を含め、国が教育環境の整備に努めるべき旨の規定を追加しております。
あわせて、憲法八十九条にある「公の支配が及ばない慈善、教育」という文言について、私学助成を禁じるものではないという憲法解釈が定着しているとはいえ、「公の支配」という文言は適当でなく、私立学校の建学の精神と相容れないことから、「公の監督」と改めることも提案したところです。

最後に憲法論議の在り方について申し上げます。
日本国憲法は前文及び第一条で、国民主権の原理を宣言しておりますが、憲法を制定する権利は国民にあり、そしてこの権利は憲法制定後には「憲法改正権」へと転化して主権者国民が持ち続けます。
最高法規である憲法を自らの意思で定め、また改める。これが国民主権の根本的な意義であり、憲法改正の主人公はもちろん国民であります。その手続法である憲法改正国民投票法が憲法制定から六十年もの間、存在すらしなかったことは、長年にわたって国民の最大の権利を損なってきたと申して過言ではないでしょう。
アメリカ独立宣言を起草した第三代合衆国大統領トマス・ジェファソンは「いかなる社会といえども不朽不滅の憲法を定めることはできない」という言葉を残しました。彼の石碑には「私は法律や憲法を頻繁に変えることを提唱しているわけではない。けれども、法律や制度は人間の精神の進歩と手を携えて変わらねばならないのだ」という自らの文章が刻まれています。
日本国憲法の制定から七十年余が経ちました。制定の経緯については様々な意見や批判があるのも事実ですが、国民主権、基本的人権の尊重、平和主義、こうした日本国憲法の原則は深く定着しています。憲法の原則を尊重し、擁護していくことは当然です。しかしながら、時代は変化し、現代的なあるいは将来的な要請が様々に現れて参ります。近代立憲主義を尊重すると同時に、憲法の現代的発展というものも視野に入れて間断なく憲法論議を重ね、国民の生命、自由、幸福追求といった価値を実現するため、状況に応じて改めるべきものは改め、加えるべきものは加える必要があると信じます。
憲法それ自体によって憲法改正の発議機関と定められた国会の使命は誠に重大であります。各党がそれぞれの憲法に関する考え方を述べ合い、国会の両院に常設された憲法審査会で充実した憲法論議が行われることを望み、質問を終えたいと思います。

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