
選挙ドットコム・鈴木邦和編集長
わが党が316議席を獲得する歴史的大勝利に終わった衆院総選挙。高市早苗総裁率いるわが党に強い支持を与えた一因が「ネット地盤」と呼ばれる、インターネット上の高い支持とされている。SNSや動画投稿サイトが選挙にもたらす影響等について、選挙・政治家データベースを取りまとめ、多様な情報動画をインターネット番組として発信している「選挙ドットコム」の鈴木邦和編集長に聞いた。(グラフは選挙ドットコム提供)
ポジティブな反響が無党派層支持に
――今回の衆院総選挙は当初の予想を上回る自民党の勝利に終わりましたが、その要因と考えられることは。
鈴木邦和編集長 さまざまな要因があると思いますが、大きかったのは高市総裁、自民党に対するポジティブな反応がYouTube上で非常に強く出たことです。高市総理が解散を表明した1月19日前後に調査したところ、YouTubeに投稿された動画のうち、ポジティブな内容が8割以上を占め、自民党に対しても同様の傾向が出ていました。野党第一党の中道改革連合に対してはネガティブな内容が多く、「これは無党派層に相当強く、自民党支持が広がっていくのではないか」と感じました。

選挙期間中の政党別動画再生数分析
――無党派層の支持は長年、わが党の課題でした。
鈴木 これまで自民党は無党派層の支持で野党を下回り、自民党支持を固めることで競り勝ってきましたが、今回は結果として各社の出口調査でも自民党が無党派層でダブルスコアに近い支持を得ました。
――最終盤でさらに伸びた印象を受けました。
鈴木 投票日直前でも「まだ決めていない」という層は、若い女性の無党派層というのが一般的な傾向です。高市内閣の影響でこの層からの自民支持が厚かった一方で、選挙期間中に起こった事象がほとんど投票行動に影響を与えなかったと考えられます。高市総裁を支持する層のうち、7割近くが「敵対的メディア認知」と呼んでいますが、マスメディアがネガティブに高市総裁や自民党を報じても、受け入れない傾向があります。従ってネット上でのネガティブキャンペーンが広がりにくい支持構造になっていると分析しています。
――「投票者の入れ替え」という現象もあったのでしょうか。
鈴木 これは確実にあります。一つは物理的な入れ替えです。毎年150万人前後の有権者がお亡くなりになっているということは事実です。比較的、高齢の方がお亡くなりになって、若い有権者が新しく選挙権を得るということです。
もう一つは若い世代の投票者の相対的な増加です。昨年の参院選では30代以下の投票率が10パーセント以上増加しましたが、今回の衆院選でもSNSの影響で若い世代の投票率は全体よりも上がったと推測しています。そして、高市内閣以降に若い世代の自民支持が回復した結果、相当数の「投票者の入れ替え」が起こりました。
――自民党の政策に対する支持も広がったのでしょうか。
鈴木 今回の選挙の特徴として、物価高対策や経済政策を重視した層が自民党を投票先に選んでいたことが挙げられます。これは世界的に見ると珍しい現象で、インフレ下の選挙では政権与党が経済政策において厳しい評価を受けて、代わりに野党に支持が向かうことが常識です。しかし、高市政権が、まずは物価高対策に取り組んだことに一定の評価がされ、今回は物価高や経済政策を重視する層から自民党が支持されていました。
また、外交・安全保障を重視する層が増えました。このテーマを重視する層から自民党は一貫して支持が高いのですが、それも勝因の一つだと言えます。外国人政策についても、自民党の取り組みが支持回復につながっています。
ネット広告はポスティングより費用対効果大

過去3回の国政選挙におけるYouTube動画再生数グラフ
――YouTubeが選挙に与える影響は。
鈴木 私たちが実施した世論調査によると、YouTubeという媒体で政治・選挙を日常的に好んで視聴する人はおおよそ400万人前後いらっしゃる推計されます。その層と、高市さんの政治姿勢が非常にマッチしました。そして、この400万人が熱心に高市さんの動画を視聴することで、おおよそ3千万人ぐらいにその動画が「アルゴリズム」によって、効果的に届けられます。
今回の衆院選では約28億回、選挙関係の動画が視聴されました。これは1年3カ月前の衆院選と比べると約10倍の再生回数で、しかもその多くが、第三者が制作するいわゆる「切り抜き動画」でした。こうした傾向が実際の選挙結果に大きく影響していることは見過ごすべきではありません。
――「ネット地盤」構築は容易ではないと感じます。
鈴木 ある程度時間がかかることは事実ですが、「どうせ誰も見ていない」と捉えるのではなく、動画等の素材を地道に提供することが重要です。地方選挙で調査しても「ネットで情報を見て投票する」という人が有権者の4割から5割です。国政選挙の場合はもう5割を超えています。こうした傾向から考えると「ネットを捨てる」ということは基本的にないと言えます。まずは、始めてみることが、現在の選挙戦では必要です。
また、ネットでの情報発信を日常的にするのが難しくても、例えばYouTubeは短期間に広告として動画を出稿することもできます。地域や属性等ターゲットを絞った出稿も可能です。チラシをポスティングするよりも費用対効果は高いと考えます。