今国会で成立を目指す年金制度改革法案には、遺族年金制度の見直しが含まれています。遺族厚生年金の男女差を解消することを目的とした今回の見直しに際して、さまざまな指摘があることから、制度見直しの目的や影響についてQ&A形式で取り上げます。

遺族年金見直しのイメージ
- 制度の男女差とはどのようなものですか
- 現行制度では女性は30歳以上、男性は55歳以上で無期給付
遺族年金とは亡くなった方が保険料納付等の要件を満たしていれば、その遺族が受け取ることができる年金です。現役会社員が死亡した場合や、一定の要件を満たせば、受け取ることができますが、現行制度は妻の場合は30歳未満で死別した場合は5年間の有期給付、30歳以上で無期限の給付を受け取れるのに対して、夫は55歳まで受給権がありません。女性の就業の進展、共働き世帯の増加といった社会経済状況の変化を踏まえ、制度上の違いを解消し、男女共に同じ制度にすることが見直しの主眼です。
- 遺族厚生年金の見直しの影響を受けるのはどのような方ですか
- 一定の要件を満たす方で、子供がいる方等は該当しません
今回の遺族厚生年金の見直しの対象は、施行予定の令和10年4月時点において18歳以下(年度末時点)の子がいない40歳未満の女性と60歳未満の男性になります。新たに対象となる30代の女性は厚生労働省の推計で年間約250人です。一方で施行直後から妻を亡くした18歳以下の子供がいない男性(20代から50代)は新たに5年の有期給付の対象となり、対象者は推計で約1万6千人と見込まれています。
(1)施行時点で既に遺族厚生年金を受給している方(2)60歳以降に遺族厚生年金の受給権が発生する方(3)年度末時点で18歳以下の子がいる方(4)令和10年度に40歳以上になる女性――のいずれかに該当する方は現在と変更はありません。
- 有期給付の遺族厚生年金は5年間で支給が終わるのですか
- 配慮が必要な場合は5年目以降も支給は継続されます
5年間の有期給付終了後も、障害年金受給権者や収入が十分でない方は、引き続き、遺族厚生年金を継続して受給することができます。例えば、単身の場合は就労収入で月額約10万円(年間122万円)以下の方は、引き続き年金が全額支給されます。
その収入を超える場合は、収入が増加するにつれて収入と年金の合計額が緩やかに増加するよう年金額が調整される仕組みです。 なお、この場合の遺族厚生年金は、有期給付加算によって年金額は現行の約1.3倍になります。
- 子供がいる場合の見直しの内容は
- 加算額を増額。18歳になった後も5年間は増額された給付の対象に
年度末の時点で18歳までの子供がいる場合、現行制度と同じであり見直しの影響はありません。子供が18歳になった後、さらに5年間は増額された有期給付と継続給付の対象になります。
また、年金には子供を養育している年金受給者に対して、年金額を加算する仕組みがあります。遺族基礎年金の子供がいる場合の加算額は、1人につき年間約23.5万円から約28万円に増額されます。3人目からは1人につき約7.8千円に減額されていましたが、改正後は3人目以降も年額約28万円となります。これは現在受給している方も対象になります。