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お知らせ「自由民主」先出し新型コロナウイルス

「ワクチン接種は危険」誤解招く情報にご注意を

「ワクチン接種は危険」誤解招く情報にご注意を
Question
SNSで「英国政府の発表で新型コロナによる死者の10人中9人がワクチン接種者、死亡したワクチン接種者の5人中4人が3回接種者だった」という情報を目にしました。これが本当なら、3回目接種は受けない方がいいのではないですか。
Answer
実際に致死率を計算すると、全年代で未接種者の死亡リスクの方が3回接種者および1~3回接種者より高いことが分かります。「ワクチンは危険だ」と主張する人の示すデータは、考慮されるべき要素・条件(接種・未接種の人数比や年齢層等)を意図的に欠落させ、誤解させるように作られていることが多々あります。

この件が指す「英国政府の発表」とは、英国健康安全保障庁(UKHSA)が毎週発表する新型コロナワクチンについての報告書「COVID-19 vaccine surveillance report」です。「ワクチンは危険だ」と主張する人々が「根拠」として使う号はさまざまですが、手法は同じです。今回は第9週の報告書を基に計算してみます。
今年1月31日~2月27日のワクチン接種の有無が明らかな新型コロナによる死者3939人(陽性判明から28日以内に死亡した3957人から、接種歴が追えない18人を除外)のうち、接種経験のある死者は3542人、3回接種した死者は2704人なので、計算すると、3542÷3939=0.899...(死者のうち接種経験ありが約90%)と2704÷3542=0.763...(接種経験がある死者のうち3回接種者は約76%)です。確かに「死者の10人中9人がワクチン接種者、そのうち5人中4人が3回目接種者」という結論を導くことができました。一見、死者はワクチン接種者の方が未接種者より多そうですね。
ところが、死者数を同じ期間の感染者数で割って致死率を出してみると次の表のような結果になります。

「ワクチン接種は危険」誤解招く情報にご注意を

※表ではワクチン接種者の方が感染しやすいように見えるが、ワクチンの感染・発症予防効果が100%ではないことに加え、(1)英国ではワクチン接種者の母数が未接種者よりはるかに多いため、未接種者より感染率が低くても感染者数は多くなる可能性がある(2)職業(医療現場等)や年齢、基礎疾患といった影響で感染リスクが高い人ほどワクチン接種が進んでいる(3)予防意識の差による検査への積極性の差――といった要因がある。この表の感染者数はこれらによるデータの偏りが考慮されていない。
例えば、(1)について。70~79歳は1回以上接種した人が約95%であり、未接種者はわずか5%程度しかいない。仮に全体を1000人とした場合、接種者950人と未接種者50人で、接種者の30%、未接種者の100%がそれぞれ感染しても、接種した感染者285人、未接種の感染者50人となり、この数字だけを抜き出せば「未接種の感染者の方が数が少ない」「感染者全体のうち、接種者は約85%を占める」ことになる。

「ワクチン接種は危険」誤解招く情報にご注意を

全年代で未接種者の方が3回接種者より致死率が高く、50代では14倍です。接種回数を1~3回に広げて比較しても、未接種者の方が致死率が高いことは変わりません。つまり、未接種者の方が死亡リスクは高いのです。ちなみにこれは別の号でも同様の結果が出ています。

「ワクチン接種は危険」誤解招く情報にご注意を

また、入院リスクについても次のような結果となり、やはり全年代で未接種者の方がリスクは高いことになります。

「ワクチン接種は危険」誤解招く情報にご注意を

今回の件では、重要な要素が意図的に省かれています。例えば(1)接種者と未接種者それぞれの母数を考慮していない(2)高齢者は若年層に比べ新型コロナを含めて致死率が高い(3)接種率は重症化・死亡しやすい高齢者の方が高く、重症化・死亡しにくい若年層では低い――等です。
この点、原典となっている表の下の脚注にも「住民のワクチン接種率が非常に高い状況では、接種者が感染、入院、死亡の大部分を占めることが予想される」「ワクチン接種は、より感染・重症化リスクの高い個人へ優先的に行われている」「高リスク者は新型コロナ以外の原因による入院や死亡のリスクも高い」といった旨が記載されています。
なお、報告書にはワクチン接種歴別に死者数を100万人当たりに換算した表が掲載されており、その数値でも、全年代で未接種者の方が3回接種者より死亡リスクが高くなっています。
ちなみに感染者数はワクチン接種者の方が多くなっていますが、これには、人口に占めるワクチン未接種者の割合が少ない(特に高リスク者)ことなどが影響しています。報告書でも「統計的な偏りを考慮しない未調整の値であり、ワクチンの有効性を推定するために比較するべきではない」と指摘しています。
他方、ワクチンを3回接種したとしても、その予防効果は100%ではなく、「打てば絶対に感染や重症化しない」というものでもありません。手洗い等の基本的な対策を怠れば感染しますので、3回接種後もきちんとした対策をとることが大切です。
いずれにしても、「ワクチンは危険だ」といたずらに不安を煽る人々は、あの手この手を使って「それらしい」データを示してきます。情報を調べる際は、十分にご注意ください。

こちらの記事は「自由民主」インターネット版に掲載されています。
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