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G7広島サミットについて岸田内閣総理大臣記者会見(全文)

岸田内閣総理大臣

先ほど、G7広島サミットは、全てのセッションを終了し閉幕いたしました。G7首脳、8つの招待国の首脳と7つの国際機関の長、そして、全ての参加者・関係者の皆様に心から感謝を申し上げます。今回の歴史的なサミットの成果について総括させていただきますが、その前に少しお時間を頂戴して、まず、ここ広島の地でサミットを開催した私の想いを述べさせていただきます。

1945年の夏、広島は原爆によって破壊されました。平和記念公園が位置するこの場所も、一瞬で焦土と化したのです。その後、被爆者を始め、広島の人々のたゆまぬ努力によって、広島がこのような美しい街として再建され、平和都市として生まれ変わることを誰が想像したでしょうか。

7年前の春、私は外務大臣として、ここ広島でG7外相会合を開催しました。さらに、その翌月には米国のオバマ大統領を広島に迎え、激しい戦火を交えた日米両国が、寛容と和解の精神の下、広島の地から「核兵器のない世界」への誓いを新たにしたのです。

平和記念公園を設計した丹下健三氏は、平和を創り出すとの願いを込め、原爆ドームから伸びる一本の軸線上に、慰霊碑や平和記念資料館を配置しました。平和の願いを象徴するこの軸線は、まさに戦後の日本の歩みを貫く理念であり、国際社会が進むべき方向を示すものです。

今、我々は、ロシアによるウクライナ侵略という国際秩序を揺るがす課題に直面しています。今のような厳しい安全保障環境だからこそ、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序を堅持し、平和と繁栄を守り抜く決意を世界に示す、それが本年のG7議長国である日本に課された使命と言えます。

そのような決意を発信する上で、平和の誓いを象徴する広島の地ほどふさわしい場所はありません。このような想いから、今回、G7及び招待国の首脳、国際機関の長に広島に集まっていただきました。

そして今回、G7首脳と胸襟(きょうきん)を開いて議論を行い、「核兵器のない世界」に向けて取り組んでいく決意を改めて共有し、G7として初めての、核軍縮に焦点を当てた「核軍縮に関するG7首脳広島ビジョン」を発出することができました。この中で、77年間の核兵器不使用の重要性について一致するとともに、「核戦争に勝者はなく、核戦争は決して戦ってはならないこと」を確認いたしました。被爆地を訪れ、被爆者の声を聞き、被爆の実相や平和を願う人々の想いに直接触れたG7首脳が、このような声明を発出することに、歴史的な意義を感じます。

また、今朝、招待国の首脳や国際機関の長とも、ここ広島記念公園を訪れ、平和の誓いを共有することができました。

我々首脳は、「2つの責任」を負っています。一つは、現下の厳しい安全保障環境の下、国民の安全を守り抜くという厳然たる責任です。同時に、「核兵器のない世界」という理想を見失うことなく、それを追い求め続けるという崇高な責任です。

将来の世代が、核の恐怖に怯(おび)えることなく平和と繁栄を享受できるようにすること、これは我々の信念であり責務です。だからこそ、核兵器の使用が筆舌に尽くしがたい惨状を現にもたらしたこと、そして、核戦争が我々人類そのものを破壊しかねないものであることを、被爆地広島から、我々の世代は訴え続けていかなければなりません。こうした悲惨な結末を何としても避けるため、「核兵器のない世界」という未来への道を着実に歩んでいく必要があります。

今日こうして、人類の生存を信じ、平和を希求し、広島に集う、各国のリーダーたち、世界のメディア、明日を担う若者や子供たち、そして先の大戦を知る皆さん、我々は皆、『広島の市民』です。世界80億の民が全員、そうして『広島の市民』となった時、この地球上から、核兵器はなくなるでしょう。私はそれを信じています。今回、私は、そうした想いで、ここ広島で世界の首脳たちに集まっていただきました。夢想と理想は違います。理想には手が届くのです。我々の子供たち、孫たち、子孫たちが、核兵器のない地球に暮らす理想に向かって、ここ広島から、今日から、一人一人が広島の市民として、一歩一歩、現実的な歩みを進めていきましょう。

1945年8月6日午前8時15分。77年と9か月の月日を経て、我々G7の首脳はこの地に集いました。時を隔てた広島の声と祈りを我々は今、共に聴いています。力による現状変更のための核兵器による威嚇ましてやその使用はあってはなりません。「核兵器を使わない、核兵器で脅さない。」人類の生存に関わるこの根源的な命題を、我々は今こそ問わなければなりません。

国際社会は今、力により一方的に国境線を変更しようとするロシアの暴挙を目の当たりにし、歴史の転換期に立っています。主権や領土一体性の尊重といった、先人が築き上げ、長年にわたり擁護してきた、誰しも疑いようのない原則が挑戦を受ける真っ只(ただ)中で、広島サミットは開催されました。ゼレンスキー大統領を日本にお招きして、G7とウクライナの揺るぎない連帯を示すとともに、G7として、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序の重要性を確認し、これを守り抜く決意を新たにするとのメッセージを世界に向けて力強く示せたことは意義深いことであると感じています。

世界のどこであれ、力による一方的な現状変更の試みは決して認められません。G7として、1日も早くウクライナに公正かつ永続的な平和をもたらすべく努力していきます。また、ウクライナの復旧・復興には民間セクターの参画が不可欠であること、そして、対ロシア制裁を維持・強化し、その効果を確かなものとするために、制裁の回避・迂回(うかい)防止に向け取組を強化していくことで一致いたしました。

世界は今、ウクライナ侵略に加え、気候危機やパンデミックなど複合的な危機に直面しており、それにより、「グローバル・サウス」と呼ばれる新興国・途上国や脆弱(ぜいじゃく)な立場の人々が甚大な影響を受けていることも事実です。こうした国や人の声に耳を傾け、「人」を中心に据えたアプローチを通じて人間の尊厳や人間の安全保障を大切にしつつ、喫緊の幅広い課題に協力する姿勢を示さないことには、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序を守り抜くとの訴えも空虚なものとなりかねません。こうした国々とG7を橋渡しすべく、世界各地で積極的に行ってきた外交を礎とし、広島サミットでは、G7に加え、国際的なパートナーも交え、我々が対応しなければならない様々な課題について真剣な議論を行いました。

食料危機は、人々の暮らしに関わる喫緊の課題です。今回、G7と招待国が連帯してこの課題に取り組んでいくことを行動声明として確認しました。また、グローバルなインフラ支援で協働することを確認するとともに、その際、透明で公正な開発金融を促進していくことで一致しました。

人類共通の待ったなしの課題である気候危機についても率直な議論を行い、気候変動、生物多様性、汚染といった課題に一体的に取り組む必要があることを確認しました。また、エネルギー安全保障、気候危機、地政学的リスクを一体的に捉え、各国の事情に応じた多様な道筋の下でネット・ゼロという共通のゴールを目指すという認識を共有しました。日本は、「アジア・ゼロエミッション共同体」構想の実現を通じ、地域のパートナー国のエネルギー移行を支援していきます。

さらに、新型コロナが収束する中、「次なる危機」に備えるための国際保健、ジェンダー主流化の推進といった課題についても議論を深め、連帯を確認しました。国際保健については、G7全体として資金貢献を行っていく中で、日本は、グローバルヘルス技術振興基金への2億ドルのプレッジを含め、官民合わせて75億ドル規模の貢献を行う考えです。

世界の諸課題の解決に向けた貢献は、常にG7の中核的な使命であり続けてきました。世界が複合的な危機に直面する今こそ、G7として、様々な課題に直面する国際的なパートナーの声を聞き、彼らと連携しつつ、そうした課題に、きめ細やかに対応していく決意です。

世界経済に目を向ければ、ロシアのウクライナ侵略が長期化する中、インフレ圧力、食料・エネルギー不安を始め、深刻な困難が存在しています。G7として、世界経済を力強く牽引(けんいん)し、持続的な成長の実現のための取組を主導することを確認しました。

持続的な経済成長のためには、供給サイドに働きかけ、民間投資を喚起する取組の促進が重要であるとの考えをG7として議論する中で、私からは、日本が掲げる新しい資本主義について触れ、官民連携の下、「人への投資」や社会課題の解決などを通じ、成長と分配の好循環の推進に尽力していることを説明しました。

また、今回、G7サミットでは初めて経済的強靱(きょうじん)性・経済安全保障を独立したセッションで扱いました。多角的貿易体制の重要性は変わらない一方で、「グローバル・サウス」を含む国際社会全体の経済的強靭性と経済安全保障を強化していくことも必要です。そのために、G7として、サプライチェーンや基幹インフラの強靱化、経済的威圧に関するプラットフォームの立上げなど、取組を強化し、また世界全体のクリーンエネルギー経済への移行をリードしていきます。

今回のサミットは、7年ぶりにアジア唯一のG7メンバーである日本で開催されたこともあり、インド太平洋についても、しっかり議論を行いました。私からは「自由で開かれたインド太平洋」(FOIP)のための新たなプランを説明し、引き続き、G7としてFOIPの実現のために協力していくことで一致しました。

中国については、率直な対話を行って懸念を直接伝える重要性やグローバルな課題等について協働する必要性について一致するとともに、中国は国際社会において責任ある一員として行動すべきこと、そして、対話を通じて中国と建設的かつ安定的な関係を構築する用意があることなどについて、G7で認識を共有しました。東シナ海・南シナ海情勢については、深刻な懸念を表明し、力や威圧による一方的な現状変更の試みへの反対で一致しました。また、台湾海峡の平和と安定の重要性を再確認し、両岸問題の平和的解決を促しました。

北朝鮮については、核・ミサイル問題や拉致問題について引き続き連携していくことを確認し、G7として拉致問題の即時解決を強く求めました。

本日、広島サミットは閉幕となりますが、日本のG7議長年は続きます。法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序を守り抜く、そして、国際的なパートナーとの関与を強化する。こうした観点からG7の議論を主導し、議長年の務めをしっかりと果たしていきます。

G20ニューデリー・サミットやSDGsサミット、日ASEAN特別首脳会議など、「グローバル・サウス」を含む国際的なパートナーと連携する機会も続きます。こうした機会に、ここ広島での充実した議論を引き継ぎ、様々な課題を共に解決するべく、これらの国々との連携の強化を主導していきます。

最後になりますが、3日間にわたるサミット開催に御協力いただきました広島の皆さんと関係各位に心から感謝申し上げます。誠にありがとうございました。