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安倍元総理国葬、新型コロナの拡大、物価高対策等についての岸田内閣総理大臣記者会見(全文)

岸田内閣総理大臣

【岸田総理冒頭発言】

日曜日の参議院選挙において、与党は安定した政治基盤を確保することができました。新型コロナ、ウクライナ侵略、世界的な物価高騰、世界にも、日本にも、数十年に一度しか起こらないような事態が重なり合って起こり、突きつけられています。私は、今回の選挙の結果は、こうした戦後最大級の難局から日本を守り、未来を切り拓けとの国民の皆さんからの叱咤激励であると厳粛に受け止め、重大な責任を感じています。

今回の選挙では、遊説中の安倍元総理が卑劣な暴力により命を落とされるという衝撃的な事件が起こりました。改めて、安倍元総理に哀悼の誠をささげます。
安倍元総理におかれては、憲政史上最長の8年8か月にわたり、卓越したリーダーシップと実行力をもって、厳しい内外情勢に直面する我が国のために内閣総理大臣の重責を担ったこと、東日本大震災からの復興、日本経済の再生、日米関係を基軸とした外交の展開等の大きな実績を様々な分野で残されたことなど、その御功績は誠にすばらしいものであります。
外国首脳を含む国際社会から極めて高い評価を受けており、また、民主主義の根幹たる選挙が行われている中、突然の蛮行により逝去されたものであり、国の内外から幅広い哀悼、追悼の意が寄せられています。
こうした点を勘案し、この秋に国葬儀の形式で安倍元総理の葬儀を行うことといたします。国葬儀を執り行うことで、安倍元総理を追悼するとともに、我が国は、暴力に屈せず民主主義を断固として守り抜くという決意を示してまいります。あわせて、活力にあふれた日本を受け継ぎ、未来を切り拓いていくという気持ちを世界に示していきたいと考えています。

政権運営や憲法改正、拉致問題などについては、先日の自民党総裁会見の中で基本姿勢を申し上げました。本日は、国民の生命や暮らしに直結する足元の喫緊の課題について、今後の政策展開を説明いたします。

第1に、新型コロナ対応です。
今週伺った専門家の御意見も踏まえ、お話しいたします。
新型コロナの感染が全国的に拡大しており、若者を中心に、全ての年代で感染者が増えています。新たな変異種BA.5への置き換わりが進む中で、更なる感染拡大に最大限の警戒が必要です。
他方、政府、自治体では、こうした状況が起こり得ることを想定し、強化してきた医療体制を維持しています。感染者数は増えていますが、今のところ重症者数や死亡者数は低い水準にあります。病床使用率も、上昇傾向にあるものの、総じて低い水準にあります。
政府としては、病床の確保、高齢者施設における療養体制の支援、検査体制の強化、治療薬の確保など医療体制を維持・強化しながら、引き続き最大限の警戒を保ちつつ、社会経済活動の回復に向けた取組を段階的に進めてまいります。

私たちは、これまで6回の感染の波を乗り越えてきました。その中で、日常生活、経済活動における感染防止への取組、科学的な知見の積み重ね、そして医療体制を始めとする政府、自治体の取組など、我が国全体として対応力が強化されています。まずは強化された対応力を全面的に展開することで、新たな行動制限は現時点では考えていません。
その一方で、社会経済活動と感染拡大防止の両立を維持するためには、世代ごとにめりはりの効いた感染対策を更に徹底していくことが必要です。

特に、重症化リスクのある高齢者を守ることが重要です。鍵となるワクチン接種は、現在、4回目の接種が着々と進んでいます。4回目接種には5か月の接種間隔が必要であることから、7月から8月にかけて多くの方々が接種時期を迎えることとなります。高齢者施設での接種促進など、対象の方々にできるだけ早く接種いただくための取組を進めます。

また、その間、高齢者などリスクの高い方々を守り、医療提供体制の人員を確保するため、関係審議会に諮った上で、全ての医療従事者及び高齢者施設の従事者約800万人を対象とし、4回目接種を行うことといたします。自治体と連携して明日から準備を始め、来週以降、速やかに接種を進めます。
若い世代の皆さんには、ワクチン3回目の接種を重ねてお願いいたします。現在お住まいの場所でも、帰省先でも接種できますので、積極的に御検討ください。

現在、10代から30代など若い世代を中心に感染者が急増しています。若い世代の約8割の皆さんが2回目接種を終えていますが、3回目の接種率は3割から5割台にとどまっています。若い方であっても重症化したり、倦怠(けんたい)感などの症状が長引いたりする可能性があります。3回目のワクチン接種は、皆さん自身を守るだけではなく、家族、友人、高齢者など大切な方を守ることにもつながります。御理解と御協力をお願いいたします。

これから夏休みを迎え、世代間での交流も増えます。帰省前などには、全国約1万3,000か所の無料検査拠点で検査を受けていただけるほか、主要な駅や空港等で100か所以上の臨時の無料検査拠点を整備いたします。

国民の皆さんには、手指消毒、また、室内で話すときのマスク着用などの基本的な感染対策への御協力に感謝を申し上げます。重ねてお願いになりますが、特にこの夏は冷房で籠もりがちになる室内、飲食店内での十分な換気をお願いいたします。
こうした足元の感染拡大への対応策について、明日、政府対策本部で決定いたします。国民の皆さんの御協力を頂き、感染防止と社会経済活動の両立に心を砕きながら、しっかり対応していきます。

第2に、国民生活に大きな影響があるエネルギー対策と物価高対策です。
まず、エネルギーの安定供給確保です。この夏の電力供給については、政府からの要請も踏まえ、関係の皆さんの御努力により、全国で10以上の火力発電所の運転が次々と再開し、電力の安定供給を確保する見通しが立ちました。
熱中症も懸念されるこの夏は、無理な節電をせず、クーラーを上手に使いながら乗り越えていただきたいと思います。

しかしながら、この冬については再度需給逼迫が起こることが懸念されています。何としてもそうした事態を防いでいかなければなりません。私から経済産業大臣に対し、できる限り多くの原発、この冬で言えば、最大9基の稼働を進め、日本全体の電力消費量の約1割に相当する分を確保するとともに、ピーク時に余裕を持って安定供給を実現できる水準を目指し、火力発電の供給能力を追加的に10基を目指して確保するよう指示をいたしました。
これらが実現されれば、過去3年間と比べ、最大の供給力確保を実現できます。政府の責任においてあらゆる方策を講じ、この冬のみならず、将来にわたって電力の安定供給が確保できるよう全力で取り組みます。

次に、物価高騰です。
今回の物価高騰は、ロシアのウクライナ侵略がもたらした世界的な問題であり、各国とも大幅な物価高に直面しています。
そうした中で、先般のG7サミットにおいては、G7が団結してこの困難を乗り越えていく決意を共有し、ロシア産原油を一定の上限価格以上では買わない、買わせないための仕組みをつくることや、「世界の食糧庫」と言われるウクライナの小麦輸出を再開させる様々な支援措置などについて一致いたしました。
こうした国際社会の動きは、例えば、足元、小麦の先物価格がウクライナ侵略後のピーク時より約4割下落するなど、国際商品市場に好影響をもたらしつつあります。

国内においても、物価上昇が国民生活に大きな影響を与えていることを重く受け止め、地域の実情に応じたきめ細やかな支援や、物価上昇のほとんどを占めるエネルギーや食料について、集中して対策を講じています。
引き続き世界レベルから地域レベルの取組まで、切れ目なく、しっかりとした対策を実施し、国民生活を守り抜きます。明日、第2回物価・賃金・生活総合対策本部を開催し、経済・物価の現状と対応策について議論を行います。

まず、地域の実情に応じたきめ細やかな支援を行っていくことが重要です。1兆円の地方創生臨時交付金を活用し、個人向けに、低所得者への給付金の上乗せ、給食費支援、ヤングケアラーに対する配給支援、また、事業者向けに、電気料金等の高騰に対応するための地場産業支援金や水産、施設園芸、畜産の経営支援など様々な対策を講じていきます。政府として、引き続きこうした様々な取組をフォローし、効果的な対応を全国に横展開してまいります。その上で、自治体の実施状況を踏まえつつ、必要に応じて地方創生臨時交付金を更に増額し、対策を一層強化していきます。

また、エネルギー、食料品に関して、前回の本部で具体化を指示した対策を早急に実行に移します。まず電力需給逼迫の緩和と実質的な電気代負担の軽減の両方に対応する新たな枠組みを設けます。そして、食料品価格の上昇抑制策です。肥料コスト上昇分の7割を補填する新しい支援金の仕組みを設けます。秋に使う肥料への影響に対応できるよう6月に遡って支援いたします。これらについて今月中に予備費を措置し、迅速に支援をお届けいたします。

今年の春闘では、賃上げは過去20年間で2番目に高い引上げ率となりました。今年の最低賃金の引上げをめぐる議論も始まっています。物価上昇が続く中において、賃上げを持続させていくことが重要です。賃上げの流れがよりしっかりとした、そして継続的なものとなるよう総合的な取組を進めてまいります。

今後とも私が本部長を務める本部において物価、景気の状況を把握し、5.5兆円の予備費を機動的に活用しながら、状況に応じた迅速かつ総合的な対応に切れ目なく取り組んでまいります。
以上、喫緊の課題に絞って申し上げました。

もちろん激変する国際情勢の中での外交・安全保障、日本経済の再生を目指した新しい資本主義の実現に向けた動きの本格化、全世代型社会保障の構築など、ほかにも待ったなしで取り組んでいかなければならない課題は山積しています。
外交・安全保障については、8月以降も1日から始まる核兵器不拡散条約(NPT)運用検討会議、そしてチュニジアでのアフリカ開発会議(TICAD)を始め、外交日程は目白押しです。こうした機会を積極的に活用し、私が先頭に立って首脳外交を進め、「新時代リアリズム外交」を推進していきます。

また、新たな安全保障戦略等の策定に向けた議論を加速し、5年以内の防衛力の抜本的強化の具体化を行います。明日、来年我が国で開催するG7広島サミットの事務局を立ち上げます。G7議長国としての重責を果たすべく、着実に準備を進めてまいります。

新しい資本主義については、例えばスタートアップ5年10倍増を視野に入れた5か年計画の策定、官民の持続的な投資を引き出し、GX(グリーントランスフォーメーション)を進めていくための今後10年間のロードマップ策定など、具体策の検討を加速いたします。

日本は内政も外交も幾重にも重なり合う多くの課題に直面しています。今回の選挙で国民の皆さんから頂いた力は、政治の安定を実現し、大胆に政策を決断、実行し、これらの課題に立ち向かっていくための力です。この力を最大限にいかし、一つ一つの課題に正面から向き合っていきます。この難局を乗り越えていくためには、国民の皆さんの信頼と共感こそが何よりも大切と肝に銘じて仕事を進めてまいります。引き続き国民の皆さんの御協力をお願いいたします。