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ウクライナ情勢、新型コロナウイルス感染症等についての岸田内閣総理大臣記者会見(全文)

岸田内閣総理大臣

本日は、戦争が続くウクライナ情勢への対応と、新型コロナ対応について、お話をいたします。

まず、ロシアのウクライナへの侵略について申し上げます。

ロシアの今回の暴挙は、歴史に刻むべき非道な行為です。自由、人権、法の支配といった普遍的価値を守り抜くため、我が国は、断固としてこれを糾弾いたします。そして、米国や欧州など、G7と連携して、事態の展開にあわせて、機動的に厳しい対露制裁措置を講じてまいります。

こうした我が国を含めた国際社会の一致団結した怒りの声・制裁措置に対し、ロシアは対抗措置を採り始めました。原油やガスの国際市場は急騰し、世界中の消費者や経済を直撃しています。穀物市場を始め、食料関連市場もひっ迫するとの見方が広がっています。エネルギーと食料の純輸入国である我が国の経済と生活への打撃が懸念されます。

しかし、ウクライナ国民と共にあることを示すためにも、そして、国際社会の平和と秩序を守り抜くためにも、ロシアの揺さぶりや脅しに屈することは決して許されません。

我々は、侵略と戦い、祖国を守るため懸命に行動するウクライナの人々を、断固たる決意で支援いたします。今こそ、省エネやウクライナからの避難民の受入れを始め、国民の皆さんの御協力が不可欠です。政府としても、そうした国民の皆さんの御協力に応えるべく、そして、国民の皆さんへの経済的打撃をできる限り小さくするため、ありとあらゆる政策を思い切って講じてまいります。

以下、具体策を3点申し上げます。

1点目は、ロシアに対する制裁の更なる強化です。先般、G7首脳で発出した声明を踏まえ、ロシアに対して外交的、経済的圧力を一層強めます。このため、法令上の措置を含め、必要な対応を行います。

具体的には、次の5項目に取り組みます。

第1に、ロシアに対する貿易優遇措置である「最恵国待遇」を撤回いたします。

第2に、輸出入管理を更に強化いたします。ロシア向けのぜいたく品の輸出禁止を行うとともに、ロシアからの一部物品の輸入を禁止します。今後速やかに、対象品目を特定いたします。

第3に、IMF(国際通貨基金)、世界銀行、欧州復興開発銀行を含む主要な多国間金融機関からロシアが融資を受けることを防ぐよう、G7で連携して取り組んでまいります。

第4に、プーチン大統領に近いエリート層や財閥オリガルヒなどに対する、資産凍結の対象の範囲を更に拡大いたします。

第5に、デジタル資産などを用いたロシアによる制裁回避に対応するため、暗号資産交換業者などの協力を得て、金融面での制裁を更に強化いたします。

2点目は、ウクライナの方々への支援です。ウクライナ及び周辺国に対し、1億ドルの緊急人道支援を行います。国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)などの国際機関と連携して、侵略に負けず、懸命に生きるウクライナの方々へ、食料、医療品など必要な支援をお届けいたします。難民を助ける会を始めとする日本のNGO(非政府組織)とも連携して、支援を進めてまいります。

ウクライナ側からの新たな要請を踏まえ、医療用資材、双眼鏡などの装備品を追加で供与いたします。本日、ウクライナへの輸送を開始しました。さらに、防弾チョッキ等を米軍機が輸送しています。ウクライナ国民との更なる連帯を示してまいります。

3点目は、ウクライナから避難された方々の我が国での受入体制の整備です。320万人を超えるウクライナの人々が避難を強いられていることに心を痛めた、多くの自治体や企業、そして民間団体の方々から避難民の受入れに協力したいとの心強い声が上がっています。

私が先週訪れた東北の被災地では、被災自治体の首長の方から、「東日本大震災のときにはウクライナの方々から温かい支援を頂いた。今度は私たちがその恩をお返ししたい」といった声を直接頂きました。日本には「困ったときはお互いさま」という言葉があります。政府としてもこの精神で、ウクライナからの避難民を積極的に受け入れてまいります。

このため、官房長官の下に「ウクライナ避難民対策連絡調整会議」を設置いたしました。この会議を司令塔として、関係省庁が連携して、ウクライナ避難民と受入先のマッチングなど、ウクライナ避難民の円滑な受入れと生活支援を行ってまいります。既に出入国在留管理庁にウクライナ避難民への支援の申出を受け付ける窓口を設けました。多くの皆さんの力を集め、ウクライナ避難民の皆さんの助けになりたいと思います。

ロシアによるウクライナ侵略の影響による我が国経済・暮らしへの影響を緩和する対策については、既にガソリン価格を172円程度に抑える激変緩和措置など、当面の対応を決定し、国民の皆さんにお届けしています。今後も、原油価格、原材料価格、食材価格などへの波及の状況を注視し、事態が長引く場合には、更に機動的に対応してまいります。

次に、新型コロナ対応について申し上げます。

国民一人一人の感染防止への取組、自治体、医療・福祉関係者の御努力により、全国的な感染者数はピーク時の半分程度まで落ち着いてきました。病床利用率や在宅療養者数についても、地域差はあるものの、明確な低下傾向が確認されています。

こうした状況を受けた各知事の要請を踏まえ、21日に期限を迎える18都道府県のまん延防止等重点措置については、同日をもって全て解除することといたします。明日、専門家に諮問し、国会に報告の上、正式に決定いたします。

第6波の出口ははっきり見えてきました。その上で、今後の新型コロナ対策についての基本的な考え方を申し上げます。

私は、昨年の総裁選において、コロナとの闘いの当面のゴールとして、季節性インフルエンザと同様、従来の医療提供体制の中で対応可能なものとし、通常に近い経済社会活動を一日も早く取り戻すことだと申し上げてきました。しかしながら、新型コロナウイルスについては、オミクロン株であっても、致死率や重症化率がインフルエンザよりも高く、汎用性の高い経口治療薬もいまだ存在していません。また、更なる変異の可能性も残ります。

こうした状況を踏まえますと、今後しばらくは、平時への移行期間、すなわち、最大限の警戒をしつつ、安全・安心を確保しながら、可能な限り日常の生活を取り戻す期間としてまいります。

具体的に申し上げます。まず、最大限の警戒についてですが、第6波への対応として準備した「全体像」の体制を堅持しながら、オミクロン株の特徴にあわせて強化してまいります。

第1に、オミクロン株に対応した医療体制の維持・強化です。1床当たり450万円の支援や、看護職員の派遣単価の引上げを4月以降も延長し、転院や救急搬送受入れ、高齢者施設における療養体制を引き続き支援いたします。自宅療養者に対応する医療機関は、1月の1万6,000から2万2,000機関へと更に増やしています。

第2に、熱があるときの外来診療の強化です。まん延防止等重点措置解除後においても、少し熱があるなと感じたときに、すぐに地域の医療機関で診てもらえることが大事です。いわゆる発熱外来については、更なる対応の強化を自治体に依頼し、合計3万6,000の発熱外来を引き続き確保いたします。また、医師会の協力も得て、診療報酬の加算措置を延長した上で、一部の地域で非公表となっていた実施機関名を東京都、大阪府等において、一律に公表することとしました。

第3に、治療薬の確保です。感染した場合には、素早く飲み薬をもらって、重症化を防ぎ、治療できることが大事です。これまでメルク社、ファイザー社の飲み薬、さらに、各種の中和抗体薬、合計650万回分を確保してきましたが、更に300万回分を確保いたします。国産治療薬についても、引き続き、申請に基づいて承認審査を進めるとともに、治験に対する支援を倍増いたします。

第4に、身近な検査体制の強化です。再度の感染拡大や経済活動のニーズにも対応できるよう、国が必要な買上げ保証を行って、向こう6か月間で計3億5,000万回分の抗原検査キットを確保いたします。

そして、第5に、更なるワクチンの確保です。4回目の接種のありようについては、専門家の知見を踏まえ検討しますが、いかなる結論にも対応できるよう、ファイザー社、モデルナ社との交渉を進め、4回目接種の必要量を確保できる見通しが立ちました。具体的には、ファイザー7,500万回分、モデルナ7,000万回分を追加購入することとし、今後の最新の科学的知見を踏まえて、最も適切な時期に接種できるよう、必要量を確保します。

以上、申し上げてきた政策を進めるため、治療薬、検査キット、ワクチンの確保などについて、今年度のコロナ予備費から計1兆3,500億円を使用いたします。これらの備えは、今後、コロナの再拡大がなければ、結果として無駄に終わることもあるかもしれません。しかし、安全・安心を確保しながら社会経済活動を回復することの意義、また、引き続き最悪の事態にも備えておくことの重要性について、国民の皆さんの理解を賜れればと思っています。

次に、可能な限り日常の生活を取り戻すための方策について、申し上げます。

第1に、ワクチン接種歴や検査キットの活用です。今後、イベント、旅行、大人数の会合などの場面において、安全・安心を高める取組として、ワクチン接種歴や抗原検査キットの活用を推奨いたします。

第2に、濃厚接触者の範囲の重点化と待機期間の短縮です。オミクロンの感染拡大にあっては、濃厚接触者となったために、無症状でも仕事を休まざるを得ない方々が増えて、業務に支障を来しているとの声が多く聞かれます。専門家の整理を踏まえ、地域の感染状況などに応じて、濃厚接触者の特定を、医療機関や高齢者施設等、そして、家庭内に限定し、感染防止対策がなされていた一般の事業所は濃厚接触者の特定をしないことといたします。また、エッセンシャルワーカー以外の一般の方々についても、広く検査キットを活用することで、待機期間を短縮可能といたします。

第3に、ワクチン接種です。自衛隊、自治体、そして医療関係者を始めとする皆さんの御協力により、2月中旬に1日100万回の接種を実現し、接種率は既にアメリカを上回りました。今月末には、合計8,100万人の方々に接種券が送付され、また、高齢者の約8割が接種を完了する見込みです。4月から、12歳から17歳の方々への3回目接種も開始できるよう準備を進めます。引き続き、若い方々にも、一日も早く希望する方にできるだけ多く接種を受けていただけるよう、全力を尽くしていきます。

なお、観光需要喚起策については、まん延防止等重点措置の終了に伴い、「県民割」について関係団体の合意を前提に、4月1日から地域ブロックへと拡大いたします。その際にもワクチン接種歴や検査キットを活用した取組を条件に盛り込んで、安心して県境をまたいだ旅行を楽しんでいただけるようにいたします。全国的GoToについては、引き続き注意深く検討していきます。

以上、今後のコロナ対策の基本的考え方を申し上げさせていただきましたが、私自身が最も心を痛めているのが子供たちのことです。2年間に及ぶコロナの影響で、「子供の学びが遅れているのではないか」、「いつもマスクをしているので感情表現ができなくなっているのではないか」など、多くの心配の声を各地で聞いてきました。コロナの悪影響をできるだけ小さくするために、何をするべきなのか、引き続き、幅広い専門家の御意見を伺いながら、感染防止と子供の健やかな学びが両立できるよう、子供たちにとって何が最善かを第一に考えて、検討・取組を進めてまいります。

そして、これから年度末や新年度を迎え、多くの人が集まり、出会う季節となります。最大限の警戒をしながら、可能な限り日常の生活を取り戻す移行期間においても、感染リスクの高い行動を控え、改めて、マスクの着用、手洗い、3密の回避や換気などの基本的感染防止策の徹底を心掛けていただきますようお願いをいたします。

ロシアによるウクライナ侵略、新型コロナ対応、いずれも一朝一夕に答えを見いだすことができる問題ではありません。万能な解決策はありませんが、何としてもこの困難を乗り越えるという強い覚悟で、国民の皆さんのためにできることを着実に一つ一つ積み上げ、前に進んでまいります。