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記者会見新型コロナウイルス安全保障

新型コロナウイルス感染症等についての岸田内閣総理大臣記者会見(全文)

新型コロナウイルス感染症等についての岸田内閣総理大臣記者会見(全文)

まず、新型コロナに感染し、苦しんでおられる皆様方に、心よりお見舞いを申し上げます。

我が国は、感染者数の増加はなお大きいものの、これまでのところ、諸外国に比べ、感染状況を低いレベルに抑えることができています。これも、国民の皆さんの御協力、医療従事者、介護従事者、保健所や検疫所の職員の皆さんを始めとしたエッセンシャルワーカーの皆さんの必死の御尽力のおかげです。改めて、心から敬意と感謝を申し上げたいと思います。

私は、総理大臣に就任以来、常に危機管理の要諦である最悪の事態を想定してコロナ対応に当たってまいりました。特に、オミクロン株については、発生当初から慎重の上にも慎重を期すという考えの下で対応を行ってまいりました。オミクロン株の科学的な性質が明らかとなっていない状況においては、そうでなければ国民の皆さんの命を守ることができないと判断したからであります。

そのオミクロン株については、WHO(世界保健機関)が懸念すべき変異株に指定してから約3か月がたち、諸外国での知見の蓄積も含め、科学的性質が大分明らかになってきました。また、国民の皆様の御協力により、足元では全国的にオミクロン株の感染拡大のペースが落ち着き始めています。
現在、36の都道府県で先週と今週の比較において、数字が1を下回り、すなわち、感染者の数が減少に転じています。東京都でも9日連続で感染者の数が先週比で減少に転じているという変化が見え始めています。もちろん専門家から指摘されているように、遅れて重症者数が増加するリスクがあり、今後とも警戒感を緩めることなく、最大限の緊張感を持って対応してまいります。

その上で、私は、コロナ対策の基本姿勢、慎重さは堅持しながら、同時に、第6波の出口に向かって徐々に歩み始める。すなわち、次のフェーズへと段階的に準備を進めていくべきであると考えています。 本日は、こうした考え方について国民の皆さんに御説明をさせていただきたいと思います。

まず、慎重さを維持する点についてです。私は、オミクロン株対応の要諦は3点。第1に、何よりも国民の命を守ること。第2に、軽症で自宅療養される多くの方々の不安に応えること。第3に、社会経済活動をできる限り止めないことであると申し上げてきました。この考えに基づき、自治体、医療関係者、専門家等と緊密に意思疎通を図りながら、様々な対応を講じてきました。

国民の命を守るという観点からは、特に重症化リスクの高い高齢者や基礎疾患のある方に医療を提供し続けられるよう、昨年11月に「全体像」を取りまとめ、その後も医療提供体制の強化に取り組んできました。前回のピーク時の1.3倍の受入病床を全国で確保し、東京では臨時の医療施設を含め、更にベッドを増やし、1.8倍の受入余力を確保しています。その結果、感染者数は昨年夏の約4倍ですが、入院待ち患者があふれた昨年夏と違い、重症病床は十分に余力があり、必要な医療を提供しています。

第2の軽症の方の不安に応えるという観点からは、2万5,000の医療機関や1万8,000の薬局の御協力を頂いて、地域の医療体制強化とともに、ゲームチェンジャーと言われる飲み薬の確保に全力を挙げてきました。メルク社のモルヌピラビルは、全国の医療機関、薬局に13万回分をお届けしています。これまでに5万8,000人の方々に投与され、重症化を防いできました。ゼビュディなどの中和抗体薬は、年明け以降、6万6,000人に投与されてきました。広く流通するレムデシビルも軽症者治療の選択肢に加わり、先週にはファイザーの抗ウイルス薬も承認されるなど、多様な治療方法が確立しつつあります。国産の経口薬についても国が治験を全面的に支援しており、安全性、有効性が確認されれば、速やかに承認し、国内に必要量を供給いたします。

第3の経済社会活動をできる限り止めないという観点からは、専門家の科学的な知見を踏まえながら、濃厚接触者の待機期間の短縮、入退院基準の見直し、めりはりの効いた行動制限などに取り組んできました。
こうした基本的な方向性は、今後の対応においても極めて重要な視点であり、このまま順調に新規感染者数が減少していったとしても、遅れて重症者数が増えるリスクがあることも考え、今後も堅持していきます。

また、感染状況や病床使用率がいまだ明確な減少傾向にない地域については、引き続きまん延防止等重点措置を継続し、気を緩めず、感染拡大の抑制に取り組みます。そのため、明日、専門家に諮問し、国会報告の上、正式に決定いたしますが、20日に期限を迎える21道府県のうち、16道府県及び27日に期限を迎える和歌山県について、まん延防止等重点措置を3月6日まで延長いたします。このように、慎重になるべきところでは引き続き慎重さを堅持していきますが、同時に、第6波の出口に向かって歩みを開始するため、次の3点について取り組んでまいります。

第1に、病床使用率などを総合的に勘案し、感染状況が落ち着いてきた地域については、まん延防止等重点措置を解除していきます。まずは20日を期限とする21道府県のうち、山形県、島根県、山口県、大分県、沖縄県の措置を同日で解除します。

第2に、ワクチンの3回目の接種です。関係者の御尽力により、15日以降、VRS(ワクチン接種記録システム)の入力ベースで、1日100万回程度までペースが上がってきました。手綱を緩めることなく、安定的に100万回以上が達成されるよう、引き続き全力を尽くしてまいります。全国の都道府県、市町村で3回目の接種が進み、今週から前倒しで職域接種も始まりました。御自身や御家族を守るため、そして社会全体として感染対策を進めていくため、できるだけ多くの方に接種していただきたいと思っています。

そして第3に、水際対策の見直しです。これまで厳しい水際対策を講じて稼いだ時間を活用し、病床確保やワクチン接種の推進など、国内の対応、体制を整備することができました。3月1日からは検査、行動把握、そして感染拡大リスクの高い場合の待機期間の設定といった基本的な条件を守ることにより、引き続きG7で最も厳しい水準は維持しつつ、水際対策の骨格を段階的に緩和していきます。

具体的には、入国者の待機期間については、これまでのオミクロン株との闘いの中で蓄積された知見に基づき、入国前検査と入国時検査に加え、さらに3日目検査の陰性を条件に、原則7日間の待機期間を3日にいたします。なおこの際、リスクの高い方々は引き続き施設待機とさせていただきます。また、ワクチンの3回目追加接種者で、感染が落ち着いている非指定国からの入国者は、待機期間をゼロといたします。これらにより、主要先進国並みの待機措置としていきます。外国人の新規入国については、受入責任者の管理の下、観光目的以外の新規入国者に限って認めることといたします。受入企業、団体の申請手続は一元的にオンラインで完結するように簡素化してまいります。1日当たりの入国人数については、3,500人から5,000人へと戻し、今後、日本人の帰国需要を踏まえながら、段階的に国際的な人の往来を増やしていきます。

以上、第6波の出口を見据えて準備を進めていく観点から、3点申し上げました。

繰り返しになりますが、第6波の出口を見据えた準備の大前提は、感染状況を落ち着かせていくことであり、政府として病床や経口薬の確保などを徹底するとともに、皆様には、引き続きマスク着用、手洗い、消毒、換気など、基本的感染対策への御協力をお願いいたします。

また、今後、既存のオミクロン株が亜種であるBA.2に置き換わることなどにより、再度感染状況が悪化する可能性には十分に注意しなければなりません。感染状況に悪化の兆しがあった場合には、即座に対応を見直していきます。他方、第6波の出口がよりはっきり見えてくれば、経済社会活動の回復に向けて更なる取組を進めてまいります。

まだまだ油断できる状況ではありませんし、苦しく不安な状況が続いていると思いますが、少しずつ元に近い日常を取り戻していけるよう、皆さんと共に進んでいきたいと思います。今が一番厳しいときだと思います。この困難を共に乗り越えていけるよう、もうしばらく御協力いただきますよう、心よりお願いを申し上げます。

そして、最後にウクライナ情勢について申し上げます。重大な懸念を持って情勢を注視していますが、状況は予断を許しません。11日には、ウクライナの危険情報をレベル4に引き上げました。ウクライナ在留の邦人の皆さんには、一刻も早く退避するよう強く呼び掛けております。近隣国においてチャーター機の手配を行うなど、引き続き邦人保護に全力を挙げてまいります。

14日、NSC(国家安全保障会議)4大臣会合を開催して、邦人保護など政府の対応について議論を行うとともに、15日、16日には、私自身、ウクライナのゼレンスキー大統領、EU(欧州連合)のフォン・デア・ライエン欧州委員会委員長、英国のジョンソン首相と電話会談を行いました。私から、ウクライナの主権と領土一体性への支持を表明し、力による現状変更は認められない旨、述べるとともに、ウクライナに対し少なくとも1億ドル規模の支援を表明し、各首脳との間で緊張緩和に向けた外交努力を粘り強く続けていくことで一致をいたしました。フォン・デア・ライエン委員長からは、先般、我が国がLNG(液化天然ガス)の融通を行ったことに対し、深い感謝の意が示され、日欧でエネルギー安全保障でも連携していくことで一致をいたしました。

我が国としては、緊張緩和に向けた粘り強い外交努力を続けていく考えであり、G7を始めとする国際社会と連携し、実際の状況に応じて適切に対応してまいります。
私からは以上です。