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記者会見新型コロナウイルス

緊急事態宣言の対象拡大等についての菅内閣総理大臣記者会見(全文)

菅内閣総理大臣

先ほど新型コロナ対策本部を開催し、北海道、宮城県、岐阜県、愛知県、三重県、滋賀県、岡山県、広島県に緊急事態宣言を発出するとともに、高知県、佐賀県、長崎県、宮崎県にまん延防止等重点措置を適用し、期間は、それぞれ8月27日から9月12日までとすることを決定いたしました。

新規感染者数は過去最大の水準を更新し続けています。特に中部圏などにおいて高い増加を示しています。全国的にほぼ全ての地域でこれまでに経験のない感染拡大が継続いたしております。保健所の体制や医療提供体制も厳しい状況が続いています。こうした中で、各地域の病床の状況などを踏まえ、対象を追加する判断をいたしました。

先週、私は、こうした地域において、医療体制の構築、感染防止、そしてワクチン接種という3つの柱から成る対策を徹底していくと申し上げました。国民の皆様の御協力を頂きながら、この危機を何としても乗り越えていく、そうした決意に変わりはありません。

感染拡大が急速に広がる中で、多くの方々が不安な気持ちで過ごされていると思います。確実に医療を受けることができるよう、緊急的な医療対策を速やかに進めてまいります。国民の命と暮らしを守るため、必要なことを一つ一つやり遂げてまいります。

医療体制の確保ですが、まず第1に自宅療養者への対策です。自宅で療養されている方は、大変心細い気持ちで過ごされていると思います。患者さんが最初に受診した診療所などにおいても健康観察や相談、電話診療などを行っていただける体制を地域の実情に応じて、医師会の協力も得て、速やかに構築してまいります。

先日、自宅療養中の妊婦さんが、受入病院の調整に困難をきたし、赤ちゃんを亡くされるという大変痛ましいことがありました。新型コロナに感染した妊婦に対応できる高度な医療体制についても、地域での確保を進め、緊急時でも迅速な搬送を行えるよう、病院、都道府県と消防機関の情報共有と連携の強化を徹底してまいります。

第2に病床の確保であります。一昨日、都内の医療機関に対して、最大限の入院患者の受入れなどについて、感染症法に基づく要請を国と東京都で共同で行いました。また、今回の緊急事態宣言の発出に当たり、国からそれぞれの都道府県に対し、最大限の病床を確保し、医療体制を速やかに強化するよう、お願いいたしました。

国としても、自治体の医療強化の取組には、全面的な支援を行ってまいります。そして、国立病院機構においては、新型コロナ対応の病床を東京全体で200床まで拡大し、全国の新型コロナ対策センターとしての役割を果たしてまいります。

今回の感染拡大に際し、いわゆる野戦病院をつくるべきだ、こうした多くの指摘を頂いております。病院の空きベッドや、それ以外の施設も活用し、酸素の投与を可能とする緊急の施設は、これまでに全国14か所に設けられてきました。こうした一時的な療養施設を緊急事態宣言地域を中心に更に増やしてまいります。

第3に新薬による重症化防止です。新たに中和抗体薬は既に1,400の医療機関で1万人に投与され、重症化を防ぐ、極めて高い効果が出ているとの声が現場から寄せられております。これまでその対象は入院患者のみとされてきましたが、入院せずとも使うことができるよう、外来で使うことも可能とします。必要な数量はしっかりと確保しております。今後とも50代以上の方や、基礎疾患のある方を対象として集中的に使用し、重症化を防いでまいります。

残念ながら、子供たちの感染も増えています。9月の新学期を控え、できる限り教育の機会が損なわれることのないよう、子供たちの対策を進めていきます。

まず、学校での感染が大きく広がることのないよう、チェックリストの周知を進め、発熱等の症状がある場合は登校しないことなど、基本的な感染対策を徹底してまいります。

次に、幼稚園、小中学校に約80万回分の検査キットを配布し、早期の発見、対応に努めてまいります。

さらに、教職員のワクチン接種を進めていきます。これまでも自治体の大規模接種会場や、700を超える大学の接種会場では、学校教職員の接種が行われておりますが、そうした機会をさらに活用し、希望する教職員へのワクチン接種を行ってまいります。

その上で、国から全国一斉の休校を要請することは考えておりませんが、学校で感染者が出た場合には、学校や自治体が濃厚接触者の特定や、休校の判断を適切に行えるよう、速やかにガイドラインを示してまいります。

繰り返しになりますが、マスク、手洗い、3密の回避という基本的な予防策を徹底し、特に会話をするときのマスク着用を改めてお願いいたします。

飲食店の時間短縮、大規模商業施設の入場整理を行います。感染力の強いデルタ株に対処し、現場で分かりやすい感染対策を進めることができるように、百貨店など多くの利用者と接する職場を中心に、業種別ガイドラインを見直していきます。

テレワークについても、それぞれの職場で更なる工夫を重ねて、昨年春に多くの企業が達成した出勤者7割削減に向け、取組を進めていただきたいと思います。そして、お一人お一人がリスクの高い場所、リスクの高い行動を避けていただくようにお願いいたします。

ワクチン接種は8月の間も1日100万回以上のペースで進み、昨日まで全国民の54パーセントの方が少なくとも1回の接種を行い、43パーセントの方が2回の接種を完了し、総接種回数は1億2,000万回に達しております。企業や大学における接種は、当初の2,400の会場に加え、今月から新たに140の会場で行われ、来月半ばまでには、約1,500の会場で開始されます。そうした中で、8月末には全国民の半数近くの方が2回の接種を行い、9月末には6割近くの方が接種を終え、現在のイギリスやアメリカ並みに近づく見通しであります。

特に今回、目立って重症化の傾向が見られる50歳代については、これまでに約5割の方が1回の接種を行い、2回の接種を終えた方は3割となっていますが、そうした方々を含め、着実に接種を進めてまいります。

今週中に1兆4,000億円の予備費の使用を決定します。ワクチン接種の体制や、中和抗体薬の確保といった緊急の課題に対応し、雇用調整助成金や緊急小口資金などを続けていくため、万全の予算措置を講じていきます。

飲食店に対する協力金については、先月導入した早期給付への申請に対し、首都圏では、ほぼ全てが既に支給されております。今回追加された地域も含め、他の地域についても、都道府県と協力し、速やかな支給に努めてまいります。

緊迫した状況が続くアフガニスタンについてであります。昨晩もG7首脳テレビ会議に出席し、今後の対応や連携の在り方について、率直な議論を行いました。まずは在留邦人と大使館の現地職員などの安全な出国を最優先とし、既に現地に派遣した自衛隊機を活用しながら、しっかり対応してまいります。その上で、アフガニスタンが再びテロの温床になることを食い止め、現地で続く人道上の危機を回避し、女性などの権利を守っていくために、G7を含む関係国と緊密に連携してまいります。地政学上も要衝に位置するアフガニスタンの安定と復興は、我が国の国益にも深く関わっています。現地情勢とそれを取り巻く動向を見極めつつ、戦略的に取り組んでまいります。

感染力の強いデルタ株のまん延によって、感染者を押さえ込むことはこれまで以上に容易ではなくなっています。しかしながら、現在進めているワクチンの接種がデルタ株に対しても明らかな効果があり、新たな治療薬で広く重症化を防ぐことも可能です。明かりははっきりと見え始めています。

9月12日の宣言の期限については、ワクチンの接種状況、重症者の数や病床利用率などを分析し、判断を行ってまいります。その先にはワクチン接種証明書の積極的な活用の方法を含め、飲食店の利用、旅行、イベントなど、日常生活や社会経済活動の回復もしっかり検討いたします。全力でこの危機を乗り越えてまいります。国民の皆さんの御理解と御協力をお願い申し上げます。