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記者会見新型コロナウイルス

緊急事態宣言の発出についての菅内閣総理大臣記者会見(全文)

菅内閣総理大臣

先ほど新型コロナ対策本部を開催し、埼玉県、千葉県、神奈川県、大阪府に緊急事態宣言を発出するとともに、北海道、石川県、京都府、兵庫県、福岡県にまん延防止等重点措置を実施し、期間はそれぞれ8月2日から8月31日までとすること、東京都、沖縄県の緊急事態宣言を8月31日まで延長することを決定いたしました。

全国の新規感染者数は増加を続けています。昨日の全国の感染者は1万人を超え、本日の東京の感染者数は3,300人に上っております。
首都圏、関西圏を始め、多くの地域で増加傾向が続き、これまでに経験したことのないスピードで感染が拡大をいたしております。

大きな要因として指摘されるのが、変異株の中でも世界的に猛威を振るっているデルタ株です。
4月の感染拡大の要因となったアルファ株よりも1.5倍ほど感染力が高く、東京では感染者に占める割合は7割を超えている、このように言われております。全国的にデルタ株への置き換わりが急速に進むにつれ、更に感染の拡大が進むことが懸念されます。

一方で、足元の感染者の状況を見ますと、既に高齢者の73パーセントが2回の接種を完了する中で、これまでの感染拡大期とは明らかに異なる特徴が見られております。東京における65歳以上の新規感染者の数は、感染が急拡大する中にあっても、本日も82人にとどまり、その割合は4月までの20パーセント台から、今では2パーセント台に低下しております。

これに伴い、重症者の数の増加にも一定の抑制が見られて、東京では人工呼吸器が必要な重症者の数は、1月と比較しても半分程度にとどまり、そのための病床の利用率も2割程度に抑えられております。また、死亡者の数も1月の水準と比較し、大幅に低い水準にとどまっています。

このように、ワクチン接種の効果が顕著に表れておりますが、それでもなお強く憂慮すべきことがあります。
1つは、若い世代での感染が急拡大をいたしていることであります。東京では30代以下の感染者の割合が7割に達し、中でも20代の感染者が連日1,000人を超えています。そして40代、50代の重症者が増加傾向にあり、1月と比較しても1.5倍という水準となっております。
このまま感染者の増加が止まらなければ、重症者数も更に増加し、病床がひっ迫するおそれがあります。
また、新規感染者数の急増に伴い、保健所による入院の調整に大きな負担が掛かり、自宅で待機する方も増えているのが現状です。

こうした状況を勘案し、私は、ワクチン接種を進めながら、各地域でしっかりした対策を講じ、病床のひっ迫を招かないように、緊急事態宣言、まん延防止等重点措置のそれぞれの地域を拡大し、期限を延長する判断をいたしました。

これまでに経験のない、新しい感染症との闘いのため、国民の皆さんには1年半にわたり対策に御協力いただいておりますことに、心より感謝を申し上げます。

一方で、自粛の期間が長期化する中で、自粛疲れの広がりが懸念されております。特に若い世代の方々からは、コロナは怖い病気ではない、こうした声も聞かれます。感染対策よりも通常の生活や楽しみを優先させたいという気持ちもあると思います。
しかし、御理解いただきたいのは、デルタ株の出現によってこれまでとは変わり、若い世代の方々であっても重症化リスクが高まっており、感染後の重い後遺症に苦しんでいらっしゃる方がいるということであります。

再三にわたる皆様へのお願いですが、大変に心苦しい思いで、ワクチン接種が更なる効果を発揮するまでの今しばらくの間、お一人お一人が高い警戒感を持って、感染予防を徹底し、慎重な行動を採るようにお願いいたします。

デルタ株であっても感染対策の肝は、マスクを外した会話の機会が多くなる飲食です。
そして飲食の場における感染が職場や家庭などにおいて広がっているという現実があります。
マスクの着用、手洗い、3密の回避という基本的な防止対策を徹底して、とりわけ会話をするときにマスクの着用を改めてお願いいたします。

飲食店に対しては長きにわたり御迷惑をお掛けしてきております。協力金を早期に支払うこととし、併せてこれまでの協力金を簡素な審査で速やかに支給するなど、要請に協力していただける環境の整備に努めてまいります。
同時に、今後、各都道府県において飲食店への見回りを拡大し、対策の実効性を高めてまいります。

夏休みが続き、お盆の時期を迎えますが、不要不急の外出や、移動の自粛をお願いします。
外出が必要な場合にも、極力、家族やふだんの仲間と少人数で行うことや、帰省など避けられない都道府県の移動であっても、感染防止策の徹底や、必ず検査を受けるなど、極力慎重に対応していただきたいと思います。
また、路上の飲み会、ふだん会わない人との会食や、大人数や長時間での飲食は控えるようにお願いします。

オリンピックが始まっても、交通規制やテレワーク、さらには皆さんの御協力によって東京の歓楽街の人流は減少傾向にあります。
更に人流を減らすことができるよう、今後も御自宅でテレビなどを通じて声援を送っていただくことをお願いいたします。

新型コロナとの闘いのゴールは、国民の命と健康を守ることであり、そのために必要なことは、地域で機能する医療体制を維持していくことです。
そして切り札であるワクチンの接種と効果的な治療薬により、病院に大きな負荷を与える重症化を防ぐことです。
こうした考え方の下に、本年2月に医療従事者への接種を開始し、4月からは65歳以上の高齢者への接種を進めるなど、戦略的なスケジュールで接種を進めてきました。

幸いなことに、全国の多くの方々の協力を得て、自治体・医療機関での接種は1日130万回、企業・大学での接種は1日20万回と、予想を上回るペースで進んでいます。この結果、これまでの接種回数は、企業・大学での接種と合わせ9,000万回に近づき、今月末には高齢者の8割近くが2回の接種を終える見込みであります。
病院におけるクラスターの発生を防ぎ、高齢者への接種にめどがついた今、今後は重症化リスクが次に高い40代、50代の方々、そして感染が大きく広がっている若い世代へのワクチン接種に注力してまいります。

全国の自治体には、先々の配分量を速やかにお示しすることにより、計画的な接種を進めることができるように努めてまいります。
そして本日、40代以上の方に接種が可能となるアストラゼネカ製のワクチンが承認されました。
政府において200万回分が既に確保されており、希望する自治体などに速やかに提供してまいります。

こうした中で、8月下旬には、2回の接種を終えた方の割合が全ての国民の4割を超えるよう取り組み、新たな日常を取り戻すよう全力を尽くしてまいります。
さらに、ワクチンに関する正しい情報の発信に努めてまいります。若い世代の方々にも、自らの健康を守るため、そして、大切な家族や友人を守るため、是非ともワクチン接種に御協力いただけるようにお願い申し上げます。

治療薬についても、大きな進展があります。これまで軽症者や中等症者には効果的な治療薬がありませんでしたが、こうした方の重症化リスクを7割減らす画期的な治療薬が今月19日に承認されました。
既に使用を希望する全国の2,000を超える医療機関が登録されており、要請に応じて順次配送してまいります。
政府として、この中和抗体薬の十分な量を確保しており、50代以上の患者に加え、基礎疾患のある方に積極的に供給し、重症化を抑えてまいります。

また、様々な検査手法を活用し、具合が悪くなった方が身近な場所で気楽に検査ができる体制を整備してまいります。

宣言の出口については、ワクチンの接種状況と併せ、重症者や病床利用率など、医療提供体制への負荷に着目した具体的な分析を進め、適切に判断してまいります。その上で、社会経済活動の制限の緩和に向けた道筋を示してまいります。

8月末までの間、今回の宣言が最後となるような覚悟で、政府を挙げて全力で対策を講じてまいります。
国民の皆さんの御理解と御協力を心からお願い申し上げます。