まず冒頭、これを機に改めて、今回の感染症によってお亡くなりになられた方、お一人お一人の御冥福をお祈りします。感染された全ての皆様にお見舞いを申し上げます。
本日、緊急事態宣言を全国において解除いたします。
足元では、全国で新規の感染者は50人を下回り、一時は1万人近くおられた入院患者も2,000人を切りました。先般、世界的にも極めて厳しいレベルで定めた解除基準を、全国的にこの基準をクリアしたと判断いたしました。諮問委員会で御了承いただき、この後の政府対策本部において決定いたします。
3月以降、欧米では、爆発的な感染拡大が発生しました。世界では、今なお、日々10万人を超える新規の感染者が確認され、2か月以上にわたり、ロックダウンなど、強制措置が講じられている国もあります。
我が国では、緊急事態を宣言しても、罰則を伴う強制的な外出規制などを実施することはできません。それでも、そうした日本ならではのやり方で、わずか1か月半で、今回の流行をほぼ収束させることができました。正に、日本モデルの力を示したと思います。
全ての国民の皆様の御協力、ここまで根気よく辛抱してくださった皆様に、心より感謝申し上げます。
感染リスクと背中合わせの過酷な環境の下で、強い使命感を持って全力を尽くしてくださった医師、看護師、看護助手の皆さん、臨床工学技士の皆さん、そして保健所や臨床検査技師の皆さん、全ての医療従事者の皆様に、心からの敬意を表します。
日本の感染症への対応は、世界において卓越した模範である。先週金曜日、グテーレス国連事務総長は、我が国の取組について、こう評価してくださいました。
我が国では、人口当たりの感染者数や死亡者数を、G7、主要先進国の中でも、圧倒的に少なく抑え込むことができています。これまでの私たちの取組は確実に成果を挙げており、世界の期待と注目を集めています。
そして本日、ここから緊急事態宣言全面解除後の次なるステージへ、国民の皆様とともに力強い一歩を踏み出します。目指すは、新たな日常をつくり上げることです。ここから先は発想を変えていきましょう。
社会経済活動を厳しく制限するこれまでのやり方では、私たちの仕事や暮らし、そのものが立ち行かなくなります。命を守るためにこそ、今、求められているのは、新しいやり方で日常の社会経済活動を取り戻していくことだと思います。
コンサートや演劇など、文化芸術イベントは、私たちの心を豊かにし、癒やしをもたらしてくれます。トップアスリートたちが活躍する姿は、私たちに夢や感動を与えます。日本各地へ観光旅行に再び出かける日を心待ちにしている皆さんも多いと思います。感染状況に目を凝らしながら、来月、再来月と、そうした日常を少しずつ段階的に取り戻していく。そのための具体的な道筋についても、本日、お示しいたしました。
プロ野球なども来月、まずは無観客から再開していただき、段階的に観客を増やしていく。コンサートや各種のイベントについても、100人程度のものから始め、感染状況を見ながら、1,000人規模、5,000人規模、さらには収容率50パーセントへと順次、拡大していく考えです。あらゆる活動について感染防止対策を講じることを大前提に、本格的に再開していく。感染リスクがあるから実施しないのではなく、これからは、感染リスクをコントロールしながら、どうすれば実施できるかという発想が重要であると考えます。
学校については、文部科学省が分散登校など、再開に向けた指針を既にお示ししています。
100を超える業種別の感染防止対策ガイドラインは、事業活動を本格的に再開し、新たな日常をつくり上げていくための道しるべであります。事業者の皆さんには、これを参考に事業活動を本格化していただきたい。政府も、ガイドラインに沿った感染防止の取組に100パーセント補助を行うなど、最大150万円の補助金で、町の飲食店を始め、中小・小規模事業者の皆さんの事業再開を応援します。
ガイドラインを完全に守って行動したとしても、感染リスクをゼロにはできない。試行錯誤も覚悟しなければなりません。感染を抑えながら完全なる日常を取り戻していくための道のりは、かなりの時間を要することになります。
本当に多くの事業者の皆さんが、この瞬間にも経営上ぎりぎりの困難に直面しておられる中で、更なる時間を要することは死活問題である。そのことは痛いほど分かっております。それでも、希望は見えてきた。出口は視野に入っています。その出口に向かって、この険しい道のりを皆さんと共に乗り越えていく。事業と雇用は何としても守り抜いていく。その決意の下に、明後日、2次補正予算を決定いたします。先般の補正予算と合わせ、事業規模は200兆円を超えるものとなります。GDPの4割に上る空前絶後の規模、世界最大の対策によって、この100年に一度の危機から日本経済を守り抜きます。
総額で130兆円を超える強力な資金繰り支援を実施します。経済全体を牽引(けんいん)する大企業、地域経済を支える中小企業、オンリーワンの技で成長の原動力となってきた中堅企業、規模の大小にかかわらず、政策投資銀行や公的ファンドを通じて、劣後ローンや出資など資本性の資金を供給します。身近な地銀、信金、信組などによる実質無利子、最大5年元本返済据置きの融資も進んでいます。必要な方に支援を一日も早くお届けできるよう、全力を尽くします。
こうした企業への資金繰り支援について、日本銀行が総額75兆円の新たな支援プログラムを先週決定しました。そして、今後とも政府と日本銀行が一体となって事態を収束させるために、あらゆる手段を講じていく。その決意を異例の共同談話として発表いたしました。正にオールジャパンで、圧倒的な量の資金を投入し、日本企業の資金繰りを全面的に支えてまいります。
事業を存続するために待ったなしの固定費負担も大胆に軽減していきます。人件費への助成を、世界で最も手厚いレベルの1万5,000円まで特例的に引き上げます。雇用をされている方が直接お金を受け取れる新しい制度も創設します。店舗の家賃負担を軽減するため、最大600万円の給付金を新たに創設します。使い道が全く自由な最大200万円の持続化給付金についても対象を拡充し、本年創業したばかりのベンチャー企業の皆さんにも御活用いただけるようにいたします。地方の実情に応じた事業者へのきめ細かな支援も可能となるよう、地方創生臨時交付金も2兆円増額いたします。
コロナの時代の新たな日常、その的に向かって、これまでになく強力な3本の矢を放ち、日本経済を立て直してまいります。経済再生こそがこれからも安倍政権の一丁目一番地であります。
ただ一点、強調しておかなければならないことがあります。それは、緊急事態が解除された後でも私たちの身の回りにウイルスは確実に存在しているということであります。ひとたび気を緩め、ウイルスへの警戒、感染予防を怠った途端、一気に感染が広がっていく。これがこのウイルスの最も怖いところです。
感染防止を徹底しながら、同時に社会経済活動を回復させていく。この両立は極めて難しいチャレンジであり、次なる流行のおそれは常にあります。それでも、この1か月余りで国民の皆様はこのウイルスを正しく恐れ、必要な行動変容に協力してくださいました。こまめな手洗い、今や外出するときはほとんどの方がマスクを着けておられます。店のレジは、人と人との距離を取って列をつくるなど、3つの密を避ける取組を実践してくださっています。こうした新しい生活様式をこれからも続けてくだされば、最悪の事態は回避できると私は信じます。
3つの密が濃厚な形で重なり、これまでも集団感染が確認された夜の繁華街の接待を伴う飲食店、バーやナイトクラブ、ライブハウスなどについては、御協力を頂いていることに感謝申し上げます。こうした施設も、専門家の皆さんに御協力いただきながら、来月中旬をめどにガイドラインを策定し、上限200万円の補助金により、有効な感染防止対策が講じられるよう支援する考えです。それまでの間、どうか身を守る行動を続けていただきますようにお願いいたします。
こうした取組を重ねてもなお、感染者の増加スピードが再び高まり、最悪の場合には、残念ながら2度目の緊急事態宣言発出の可能性もあります。しかし、私は、外出自粛のような社会経済活動を制限するようなやり方はできる限り避けたいと考えています。市中感染のリスクを大きく引き下げていけば、それが可能となります。
そして、そのためには、感染者をできるだけ早期に発見するクラスター対策を一層強化することが必要です。その鍵は、接触確認アプリの導入です。スマートフォンの通信機能により、陽性が判明した人と一定時間近くにいたことが判明した方々、すなわち濃厚接触の可能性が高い皆さんに自動的に通知することで、早期の対策につなげるアプリです。
先月、オックスフォード大学が発表したシミュレーションによれば、このアプリが人口の6割近くに普及し、濃厚接触者の早期の隔離につなげることができれば、ロックダウンを避けることが可能となる大きな効果が期待できるという研究があります。我が国では、個人情報は全く取得しない、安心して使えるアプリを、来月中旬をめどに導入する予定です。どうか多くの皆さんに御活用いただきたいと思います。
同時に、医師が必要と判断した場合には直ちに検査を実施する、検査体制の強化にも引き続き取り組んでまいります。抗原検査の使用が既に始まりましたが、PCR検査についても、民間検査機関への支援に加え、大学にある検査機器を活用させていただくなど、検査機能の拡大を進めます。
検体を採取する体制も増強します。これまでの専用外来に加え、医師会の御協力を頂き、全国で既に100か所近いPCRセンターを設置しており、これを一層拡大していきます。2兆円を超える予算を積み増し、自治体と連携しながら、医療提供体制の充実にも取り組みます。
全国各地で新型コロナ重点医療機関を指定し、今後の流行のおそれに備え、十分な専用病床をしっかりと確保していきます。
ウイルスとの闘いの最前線で奮闘してくださっている医療従事者、病院スタッフの皆さん、介護事業所の皆さんに、心からの感謝の気持ちとともに、最大20万円の給付を行う考えです。
高機能マスクや医療用ガウンなどの防護具についても、ウェブを使って全国の8,000近い医療機関の状況を直接把握しながら、国による直接配布を強化していきます。
感染状況が落ち着いてきたこの機をいかし、様々な取組を加速し、次なる流行のおそれに万全の備えを固めてまいります。
世界に目を向ければ、感染は今なお拡大を続けています。そうした中で、本日の政府対策本部では、水際対策の更なる強化も決定いたします。入国拒否の対象国は、100か国を超えることとなります。経済のグローバル化が進んだ現代で、人の動きが止まることは、世界経済に致命的なダメージを与えます。欧米での厳しいロックダウンによって、生産などの経済活動も大きく停滞しました。世界経済の復活なくして、日本経済の力強い再生もありません。国内で感染が落ち着いたとしても、世界的な感染の拡大に歯止めがかからない限り、真の終息はないのです。
私たちは、自国のことのみに専念していてはならない。内向きな発想では、この世界的課題を根本的に解決することはできないと考えています。しかし、感染が拡大している国では、そうした余裕はありません。これまで世界の政治・経済をリードしてきた国々の多くは、今、国内の対応で手一杯になっている、そうした現実があります。そこに隙が生まれるような事態は、決してあってはならない。こうしたときだからこそ、私たちは、自由民主主義、基本的人権、法の支配といった普遍的な価値をしっかりと堅持していく。そして、こうした価値を共有する国々と手を携え、自由かつ開かれた形で、世界の感染症対策をリードしていかなければならないと考えます。
このウイルスに対する治療薬やワクチンを、透明性の高い国際的な枠組みの下で途上国も使えるようにしていく特許権プールの創設を、来月予定されているG7サミットで提案したいと考えています。
医療防護具については、ここ数か月、国内の増産に取り組んできました。特定の国に依存するのではなく、グローバルな世界で強靱なサプライチェーンを築き上げていくことも、極めて重要な課題です。我が国のこれまでの経験もいかしながら、世界の感染症対策、コロナの時代の国際秩序をつくり上げていく上で強いリーダーシップを発揮していく。それが国際社会における日本の責任であると考えます。
緊急事態が解除された後の次なるステージにおいても、国民の皆様の御理解と御協力をお願いいたします。
私からは以上であります。