法定養育費に関する省令案 取りまとめ
法務省は養育費の不払い対策として新設する「法定養育費」の省令案を発表しました。「法定養育費」とは離婚の際に父母間での取り決めがなくても一定の養育費を請求できる制度です。さらに支払いを怠った場合に財産を差し押さえて一定の額まで優先的に弁済を受けることのできる「先取特権」が養育費債権に付与されます。

月額2万円制定は暫定的な措置
これまでの制度では離婚した際、父母間での協議や裁判所の手続きによる金額等の取り決めがなければ養育費を請求することができませんでした。その一方、さまざまな事情により養育費の取り決めをしないまま離婚に至り、手続きをハードルに感じたり、相手が協議に応じなかったり等の理由で請求を断念するケースがありました。その結果、養育費を受け取っていない家庭が少なくありません。厚生労働省によると令和3年時点では、母子世帯で養育費の取り決めをしている割合は46.7パーセントにとどまり、受領率は28.1パーセントとさらに低い割合でした。
今回の法定養育費制度はこうした養育費の未払い問題を解決することを目的として導入されました。同制度では子の最低限度の生活維持に必要な費用として、法定養育費を子供一人あたり月額2万円と定めていますが、この金額はあくまでも親同士が養育費を正式に取り決めるまでの暫定的なものであり、「月額2万円が標準」という意味ではありません。
また、今回の改正では養育費債権のうち、一定額に「先取特権」と呼ばれる優先権が付与されます。「先取特権」が付与されると、支払いが滞った場合、これまで財産の差し押えに必要であった公正証書や調停調書等がなくても財産差押えの手続きを行うことが可能になり、かつ、他の債権に優先して弁済を受けることができます。一定額については子供一人あたり月額8万円と定められます。
法定養育費制度の導入はあくまでも暫定的・補充的なものであり、子供の健やかな成長を支えるためには社会経済情勢等の変化も勘案した適正な養育費が支払われることが重要です。法務省は今後、パブリックコメント(意見公募)を行い、結果を踏まえて令和8年5月までに施行する予定です。