わが国で初めてとなる人工知能(AI)に特化した人工知能技術研究開発・活用推進法案(AI法案)が2月28日、通常国会に提出された。同法案を通じて適正性が確保されたAIの開発と活用を進め、国民生活の向上と経済成長を両立するのが狙い。政府与党一体で同法案の成立を図る。

AI法案の意義とポイントを述べた平井卓也党デジタル社会推進本部長
技術革新とリスク対応を両立
令和4年に米OpenAI社が「ChatGPT」の提供を開始して以降、生成AIの性能は飛躍的に向上。今後、産業や国民生活のさまざまな分野において効率性や利便性を大きく向上させることが期待されている。
他方、AIを悪用した偽サイトや合成音声による詐欺等の犯罪、偽・誤情報の作成といったリスクも顕在化している。
欧米ではAIに関する法制度の議論や検討が進んできた一方、わが国ではAI技術の急激な変化やリスクの多様性を踏まえ、事業者の自主性に委ねるガイドライン等の法律によらない対応を中心に行ってきた。しかし諸外国と比較すると、生成AIを利用している個人や企業の割合、投資額が低い傾向にあり、AIの悪用や犯罪に対する法的対策の強化を求める声も多くある。
これらを踏まえ同法案では、AIの技術革新の加速とリスク対応の両立を図るための体制を整備する方針を示した。
世界のモデルとなるAI制度を示す
2月14日に同法案を審議・了承した党内閣第二部会(部会長・酒井庸行参院議員)、科学技術・イノベーション戦略調査会(会長・大野敬太郎衆院議員)、デジタル社会推進本部(本部長・平井卓也衆院議員)の合同会議では、AIの技術革新について大野会長が「ガバナンスがあってこそ初めて正しく推進できる」と指摘。同法案は「(規制強化に重点を置く)欧州連合(EU)ほど厳しくはないが、政府が調査権限を持つようになり、ちょうどいいあんばいになった」と強調した。同法案の方向性を示したデジタル本部の平井本部長は「AIを取り巻く開発環境や進歩の速さに対応できる法律でなければならない」と述べ「AI戦略本部が毎年計画を更新していくことが法案の重要なポイントだ」と語った。