処理水放出で中国から批判の声相次ぐ 日本の新聞各紙は一片の同情も示さず
「内憂外患」とは本来、国内の問題と外国とのあつれきが同時並行的に起きることを意味する。だが今は、内憂が高まると国民の目をそらすため、あえて対外的な摩擦や"脅威"を作り出し、内憂を外患に転化させることにも使われるようだ。権威国家で往々に見られる行動様式である。NATО(北大西洋条約機構)の脅威を過剰にあおってウクライナをけん制、侵略までしたロシア。米国や韓国の"危険性"を誇張し、核武装に走った北朝鮮。いずれも国内で統制の厳しさや経済不振で鬱憤(うっぷん)が溜まっている国民の関心を外に向けさせる動きであろう。
中国でも今、これまで右肩上がりだった経済が縮小し、景気低迷下にある。不動産デベロッパーが14億人口の2倍も3倍も住めるまで住宅を建て、「鬼城」という多くの空き家状態を作り出した。GDP(国内総生産)の3割を占めるという不動産業のバブル終焉(しゅうえん)となれば、鉄、セメント、木材を中心とした製造業の伸びは期待できない。また、共産党中央の規制でIT、エンタメ、教育等第3次産業も抑えられ、就職する場が狭まっている。若者(16-24歳)の失業率は7月時点で21.3%であり、それ以降はそのデータさえ発表されていない。
デフレによる景気の悪化で若者の反発が強まった。残念ながら、この機に重なったのが放射能処理水の放出問題であり、中国はこれを格好の"外患"ネタとした。IAEA(国際原子力機関)も「問題なし」として認めているにも関わらず、異常なほどに世論をあおり、中国から日本に文句のメールや電話が相次いだ。
日本の新聞各紙もこの問題を取り上げ、一律にこうした動きが意図的に仕組まれたものであると看破、一片の同情も示さないところは新鮮な驚きであり...