AIロボティクス社会実装に向けた提言【概要】

~課題先進国・日本の勝ち筋を、官民の総力で具現化する~

令和8年6月4日  自由民主党 政務調査会 経済産業部会
ロボティクス戦略プロジェクトチーム

■基本認識

本年3月に『AIロボティクス戦略』が策定され、AIロボティクスにおける我が国の勝ち筋を示すための戦略が示された。また、特に社会実装が重要な16分野が設定され、各分野別の『実装ロードマップ』も作成されている。さらに、日本成長戦略会議では「米中に並ぶ第三極として世界シェア3割超の獲得を通じて、2040年に20兆円の市場獲得」との数値目標が掲げられ、AIロボティクスは高市政権の最重要政策となっている。今後は、早期の成功実績を築き、ロボットの社会実装促進と供給能力強化のための推進力を獲得することが重要である。

■本提言の位置付け

ロボットの社会実装促進と供給能力強化こそが日本の産業競争力を高め経済安全保障にも資するとの認識に基づき、骨太方針2026及び令和9年度予算編成への確実な反映を求め、政府に対し以下を提言する。

■目標とコミットメント

  • 2026〜2030年 実装ロードマップの先行導入6分野(製造業、物流、建設・土木、建築、小売り、警備業)において年平均6万台以上、累計30万台以上のAIロボティクスを導入
  • 2027〜2028年 サービスロボット更新期における段階的国産化を本格始動、国産ロボット基盤モデルのベータ版オープンソースを公開(2027年6月予定)
  • 2030年 実装ロードマップ18分野における「見廻る」「モノを動かす」レベルの実装を完了
  • 2040年 ロボット世界市場(60兆円規模)において日本がシェア3割超(20兆円)を獲得(累計1,000万台)

提言1 AIロボティクスによる人手不足対策

現状認識

少子高齢化により労働力人口の減少が続くなか、AIロボティクスを人手不足対策の中核手段として位置付け、政府として明確な政策意思を示し、直ちに具体的施策を立案する必要がある。

政府に求める具体的施策

(1-1) 人手不足代替率の台数定量目標設定 … 政府において分野別・年次別の定量目標を設定
(1-2) 優先実装7分野の指定 … 製造業/物流/建設・土木/建築/小売り/警備業/介護を優先実装分野と指定し、関係府省庁と民間が一体となって実装を推進
(1-3) 優先実装分野への複数年度予算と補助金の徹底活用 … 基金化を含む複数年度予算により着実な予算措置を行い、補助金を徹底活用
(1-4) 介護報酬による適切な評価、人員配置基準の緩和等 … 介護分野でのAIロボティクスの導入支援に向けて、複数年度にわたる導入支援、介護報酬による適切な評価、人員配置基準の緩和などの施策を推進

提言2 AIロボティクスの大規模導入とロボット基盤モデルの実用化

現状認識

VLAモデル実用化には大量の実環境データが不可欠だが、実装が進まなければデータが得られず、データがなければ実装も進まない「データのジレンマ」がある。世界の競争軸は計算資源から実世界の運用データへ移行しつつあり、これを好機として日本の勝ち筋を実現する必要がある。

政府に求める具体的施策

(2-1) 2030年度末まで30万台以上導入(累計5,000億円) … 2026年から2030年度までの5年間で、先行導入7分野において年平均6万台以上、累計30万台以上のAIロボティクスを導入。2035・2040年の中長期目標も設定
(2-2) 国産ロボット基盤モデルの開発および官民共同データファウンドリの構築(1兆円) … 国産ロボット基盤モデルの実用化に向けた官民共同のデータファウンドリを構築するとともに、量産によるAIロボティクスの低コスト化を推進
(2-3) RaaS型事業形態への補助制度整備 … 月額利用料への補助、運用設計費等の補助対象化
(2-4) 国産ロボット基盤モデル開発予算の拡充 … 2027年6月のベータ版オープンソース公開を確実に実現

提言3 官需活用の徹底

現状認識

国及び自治体は大口調達主体として社会実装の起爆剤となり得る。『第7期科学技術・イノベーション基本計画』で政府計画に初めてデュアルユース技術の社会実装に取り組む等の記載がなされたことも踏まえ、官需を戦略的に活用する必要がある。

政府に求める具体的施策

(3-1) 国・自治体の原則優先導入 … 特段の理由がない限りAIロボティクスを優先導入し、永田町・霞ヶ関を筆頭に国・自治体による率先した社会実装を推進
(3-2) 国産ロボット優先調達制度の創設 … 安全保障・データ主権・サプライチェーン要件を含む調達基準を新設。安全性認証制度の整備
(3-3) 防災・インフラ点検・防衛・土木・警察活動・学術等の分野で重点官需創出 … 関係府省庁による継続的・大規模な官需を創出
(3-4) アンカーテナンシーによる継続調達コミットメント … 官需を起点とした技術成熟と民間市場展開サイクルを構築
(3-5) 性能発注への転換と積算基準の変更 … 公共調達において、AIロボティクスによる省人化や継続的な学習・改善が評価されない仕様発注から性能発注へ転換、人件費の積算を前提とする基準を変更
(3-6) トリプルユース実装の具体的制度設計 … 平時・有事の社会インフラの一体化とトリプルユース(産業・防災・防衛)実装
(3-7) 安全保障予算を活用したデュアルユース研究開発・社会実装 … K Program等を積極活用、国産化が進むほどインセンティブが厚くなる設計

提言4 段階的国産化の推進

現状認識

配膳・清掃ロボット等は流通機体の多くが外国製で、ソフトウェア制御やクラウド管理主体が国外に依存。これら機体の更新時期を好機として国産化の流れをつくる必要がある。

政府に求める具体的施策

(4-1) 段階的国産化を図るためのロードマップの策定 … 国産ロボットメーカーの育成や、外国製ロボットの段階的国産化を図るためのロードマップの策定
(4-2) 「国産」の再定義 … 仕様決定・機能設計・改良等の主体、データ管理・ソフトウェア制御・クラウド管理・アップデート権限の主体等に基づいて「国産」を再定義
(4-3) 既存機体更新支援による国産品への更新促進 … 段階的国産化の推進に基づき、流通機体の大部分を占める外国製の配膳・清掃ロボット等を国産AIロボティクスへの更新を促進

提言5 AIロボティクス戦略及び実装ロードマップの着実な推進(5本柱)

現状認識

ハードウェア・ソフトウェア・人材・拠点・標準化・予算・推進体制を横断する包括的取組を一体的に推進する必要がある。

政府に求める具体的施策(5つの柱)

柱① ハードウェア開発の支援 (5-1) モジュール化と開発効率向上/(5-2) 生活密着型ロボットの国産化/(5-3) ヒト型ロボット(ヒューマノイド)・動物型ロボット双方の開発支援/(5-4) スタートアップ育成と政府系ファンドによるレイトステージ投資/(5-5) キーコンポーネント国内サプライチェーン構築と量産化支援
柱② フィジカルAIの開発支援 (5-6) 国産ロボット基盤モデル開発Phase2の確実な実施と海外トップ機関連携/(5-7) VLA開発支援/(5-8) GPUクラスタ・計算資源インフラ整備/(5-9) 産業ドメイン特化型モデル開発/(5-10) フィジカルAI人材・SIer・ディストリビュータの体系的育成
柱③ 拠点・標準化・知財・実装環境の整備 (5-11) 世界的中核拠点(CoE)基本設計と整備着手/(5-12) ロボット時代対応の規制改革/(5-13) ロボットフレンドリー環境の標準化・認定/(5-14) 国際標準化と知財戦略の一体運用/(5-15) ロボットインフラ標準化の日本の主導と通信・電波利用ルール整備/(5-16) 建築BIM国際基準への日本提案反映/(5-17) SIer・ディストリビュータの支援・育成
柱④ 政府一体での取組・骨太方針2026・予算の確保 (5-18) 政府一体での取組強化/(5-19) 骨太方針2026への施策確実盛り込み/(5-20) 政府一体となった一元的予算要求と複数年度予算化/(5-21) GENIACとは別枠のロボティクス独自予算確保とGENIAC既存施策の活用拡充
柱⑤ 戦略の機動的見直し (5-22) AIロボティクス戦略の適時適切な見直しの制度化(年次評価、2年ごとの戦略本体見直し、緊急時の臨機応変な戦略追補)

本提言は、「経済財政運営と改革の基本方針2026」(骨太の方針)及び「日本成長戦略」、ならびに令和8年度補正予算・令和9年度当初予算編成に確実に反映されるべきものである。

以 上