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立党70年 自民党の歩みと未来への使命
~自由と民主主義を次世代につなぐ自民党新ビジョン~
令和8年4月12日
まえがき
わが党は令和7年11月15日に立党70年を迎えた。日本政治の大道を歩み、一貫して「自由民主党」という党名の下に、多様な民意を結び合わせて、政治を前に進める国民政党として歩んできた。
70年の歴史の中では政権を失う等、危機的な状況に陥ることもあったが、令和8年2月の衆院総選挙では過去最多となる316議席を獲得した。一貫してわが党を支え、支持していただいたこれまでの党員、支援者、さらには多くの国民の支持があって、戦後の政治史上に新たな1ページを加える選挙結果を得ることができたことに、改めて感謝したい。
ここに示すわが党の新ビジョンは「自由民主党」という政党の「自画像」である。立党から受け継がれてきた理念はいささかも古びることなく、自由と民主主義を次世代につなぐ使命を持ち続けている。自由と民主主義に基づく政治体制こそが、国民の活力や創意工夫が最大限発揮され、国力を高めていくことにつながる。そうした確信の下にわが党は成り立ってきた。
日本社会の秩序を保ち、自由な意思表明ができる現代の政治・社会を未来へとつなぐために、わが党が歩むべき道筋を、新ビジョンによって示す。その道しるべとなるのは「政治は国民のもの」という立党宣言に示された理念である。
1.自民党の原点と立党以来受け継いできた価値
昭和30年11月15日に自由民主党は産声を上げた。「保守合同」と呼ばれた新党を結成し、わが党は一貫して保守政党としての歩みを続けてきた。
保守主義の定義とは何であろうか。昭和35年に党基本問題調査会がまとめた「保守主義の政治哲学要綱」によると、
「保守主義の精神は、良き伝統と秩序は、これを保持し、悪を除去するに積極的であり、且つ、伝統の上に創造を、秩序の中に進歩を達成するにある。
このことは、保守主義の世界観が、破壊的急進主義を排するとともに、過去と現状のみを守旧する反動的保守主義とも異なる道であることを意味する」
とある。
わが党は、立党以来一貫して、皇室を戴き、自由と民主主義を守り、国民生活の安定と国家の自主独立を両立させることを使命としてきた。原点は明確である。政治は国民のものであり、議会制民主主義のもとで、多様な意見を尊重しながら国の進路を定める。暴力や全体主義を排し、秩序の中で進歩を実現する。これが党の揺るがぬ背骨である。
わが党が維持してきた保守とは、一つの「態度」である。昨今、声高に急進的な変革を求めたり、異なる意見を排除したりする言説の傾向が見られるが、こうした態度をわれわれは保守とは考えない。立党時に定めた党の性格にある「反対党の存在を否定して一国一党の永久政治体制を目ざす極左、極右の全体主義と対決する」との姿勢は、今後も堅持し、断固として極左、極右の全体主義、権威主義的な国家の姿を追求する勢力とは対決しなければならない。
一体性を保つ「逆説的」な事実
わが党は立党以来、ほぼ全ての期間で第一党を維持している。多くの政治家が参画し、時に党内を二分する大激論を交わしながらも、内部分裂を繰り返すことなく多数派を形成してきたことは、戦後の議会制民主主義の維持・発展に大きく貢献してきた。党としての一体性が維持されてきたのは、逆説的ではあるが、党に所属する政治家が自由に自らの意見を表明できる多様性にある。わが党に所属する政治家は、過度に党に依存することなく、わが党の理念を積極的に広めることで自ら支持基盤を形成し、選挙に勝ち抜いて国政・地方政治の現場に進出してきた。特定の支持基盤に立脚することなく、幅広い民意を捉える正真正銘の「国民の代表」であるわが党の政治家は、それ故、党内で自由な立場を維持し、自由闊達な議論の場が保障されている。多様な民意がもたらすさまざまな意見に耳を傾け、現実的な結論に向かって意見集約を図る。結論が出たならば、議会制民主主義の根本的な原則に従い、党として静かにその結論を受け入れて一致結束し、実現を図ってきた。わが党はこうした態度を保ってきたからこそ、多様な民意を代表する国民政党として存続することができたのである。
自民党が護り続けてきた「自由」とは
平成22年の野党時代にまとめられた新綱領では、現状認識を「立党以来護り続けてきた自由と民主の旗の下に、時代に適さぬもののみを改め、維持すべきものを護り、秩序のなかに進歩を求め、国際的責務を果たす日本らしい日本の保守主義を政治理念として再出発したい」と記述し、党として明確に「保守主義を政治理念とする」ことを謳った。
同時に、現状認識では「我々が護り続けてきた自由(リベラリズム)とは、市場原理主義でもなく、無原則な政府介入是認主義でもない。ましてや利己主義を放任する文化でもない。自立した個人の義務と創意工夫、自由な選択、他への尊重と寛容、共助の精神からなる自由であることを再確認したい」とも記述している。
ここで言う「自由(リベラリズム)」と、一般的に保守の対義語として扱われる「リベラル」との違いは何か。元来、保守の対義語は革新であり、リベラルは決して保守の対義語ではなかった。立党時の政治理念は「ひたすら議会民主政治の大道を歩むにある。従ってわれらは、暴力と破壊、革命と独裁を政治手段とするすべての勢力又は思想をあくまで排撃する。第二に、個人の自由と人格の尊厳を社会秩序の基本的条件となす。故に、権力による専制と階級主義に反対する」としている。
個人の自由と人格の尊厳を社会秩序の基本的条件となすことが、わが党が標榜する「自由(リベラリズム)」であり、それ故、党名にある「自由」は英語で「リベラル」と訳されている。これは決して自由放任的な無制限の自由ではない。本来の自由は、あくまで社会的な秩序やわが国が独自に紡いできた歴史や伝統や慣習に対する敬意の上に成り立つ。その上で、個人の人格や経済活動その他あらゆる活動の自由を最大限追求する。
地域に根差した国民政党の源泉
また、わが党を表す性格として「地域に根差した国民政党」というものがある。この源流は明治期の自由民権運動に見ることができる。明治維新によって国民国家が形成される過程で、士族以外の国民各界各層に政治参加が広がった。豪農層や都市商工業者層などが支持基盤を形成し、板垣退助による自由党と、大隈重信による立憲改進党が結成された。こうした「民党」の結成が後の、立憲政友会、憲政会・立憲民政党に発展し、大正時代の政党内閣制へとつながる。
立憲君主制による議会制民主主義は、その後の政軍関係の混乱や大政翼賛会の成立によって大きく損なわれるが、終戦後に政友会系が日本自由党、民政党系が日本進歩党として再出発し、10年後の昭和30年に保守合同として自由民主党の立党に至る。わが党は自由民権運動によって形成された「民党」、すなわち地域社会の絆と暮らしに立脚した「民」の立場から政治を行ってきた。「政治は国民のもの」との立党宣言の思いは、こうした近代憲政史を踏まえたわが党の成り立ちから生まれたものだ。
2.自民党政治の歴史 ~成長と安定の70年~
わが党は、自由主義経済を基盤としながらも、公共の福祉を重んじ、福祉国家の完成を目指し歩み続けてきた。高度経済成長、皆保険・皆年金制度の確立、社会保障の拡充、社会資本の整備と国土の均衡ある発展など、戦後日本の歩みは、成長と安定の両立に挑戦してきたわが党の歴史でもある。
戦後の高度成長期へと向かう中で生まれたわが党は立党時の綱領に「公共の福祉を規範とし、個人の創意と企業の自由を基底とする経済の総合計画を策定実施し、民生の安定と福祉国家の完成を期する」と謳い、「党の性格」では「福祉国家の実現をはかる政党」と位置付けた。
70年前の先人は、自由主義経済の下に経済発展を図り、経済成長によってもたらされた豊かさを、全ての国民が享受できる福祉国家の実現を目指した。昭和32年に発足した岸信介内閣は新長期経済計画を閣議決定し、極大成長、生活水準向上、完全雇用を目標に掲げた。岸内閣は国民健康保険法、国民年金法の成立で一つの起点をつくった。現在の「世界に冠たる国民皆保険・皆年金」の基礎となるもので、最低賃金法を成立させたのも岸内閣の実績だ。岸政権は安保改定といった安全保障面では一部の情緒的な国民世論におもねることなく、毅然とした態度で着実に実行し、同時に、進歩的な政策も行い、現在に続く福祉国家の礎を築いた点は特筆に値する。
続く池田勇人内閣は貿易自由化と輸出拡大、金融緩和・減税による設備投資促進、科学技術振興などを柱とする所得倍増計画を発表し、経済成長と生活水準のさらなる向上を図る。わが国のGDPは昭和41年にフランス、同42年には英国を上回り、昭和43年にはついに当時の西ドイツを抜いて世界第2位の経済大国となった。
経済成長と社会保障の充実とともに、わが党は国家を統治する上で財政の持続可能性も重視した。高度成長から安定成長へと推移していく中で、責任政党として国民に一定の負担を求め、平成12年には高齢化社会を見据え、介護を社会全体で支え合う介護保険制度を創設した。
立党時の先人が「国家百年の大計」と見据えた福祉国家の完成。それは、経済の豊かさを実現し、その豊かさを安定した財政運営の下に国民全体で享受すること、そして持続可能な社会保障により将来の安心を約束することで実現された。
時代の変化に柔軟に対応する
わが党の歩みを振り返ると、あらゆる社会構造の変化や国民からの新しいニーズも柔軟かつ的確に捉え、時代の変化に適応してきた。戦後の食糧難を克服した頃に誕生したわが党は、農山漁村の生活向上や、食料の安定的な供給に取り組んできた。農林水産物の貿易自由化といった国際化の波を乗り越え、「国の基」となる農山漁村の発展に力を尽くし、農山漁村との連携は「地域に根差した国民政党」を形成する根幹となってきた。高度成長期の公害問題は社会に大きな影響を与え、昭和42年に公害対策基本法を制定。同法は平成5年に発展し、環境基本法となった。環境問題は今や基本的な政策の一つである。また、平成7年の阪神淡路大震災や平成23年の東日本大震災をはじめとする国民に深い衝撃を与える災害に見舞われた際も、わが党は被災地に寄り添い、その復興の歩みを支え続けている。
平和国家・日本の一貫した歩み
安定的な経済成長を基盤とする社会を形成するとともに、わが党が保ってきたのは「平和国家・日本」である。戦後、わが国は他国と一度も戦火を交えていない稀有な存在だ。わが国は先の大戦から復興し、立党直後の日ソ国交回復から始まり、東南アジア諸国や韓国、中国との間で国交を回復し、自由主義陣営の一員としての立場を築いてきた。昭和47年には佐藤栄作内閣の下で「沖縄の祖国復帰」を果たした。米ソ冷戦終結後も、国際紛争やテロに国際社会が結束して立ち向かう中で、わが国も責任を果たしてきた。観念的な一国平和主義を排し、実際の国際社会で自衛力を保有し、国際協調の中で平和を保つ現実主義に基づく努力により保たれてきた。現在に至るまでにわが党は自分の国は自分で守る体制を強化しながら、日米同盟と国際協調の両立を図るために必要な法制度を整え、国際社会の中で平和国家としての信頼を構築してきた。立党以来、北方領土、竹島というわが国固有の領土の問題も、平和的に解決する道を模索してきた。この姿勢は今後も堅持し、領土問題解決に向けたたゆまぬ努力を続けていく。
北朝鮮による拉致問題もわが党として直視すべき事態だ。昭和50年前後の集中的期間に日本国民が北朝鮮によって連れ去られ、被害者の初帰国まで約30年の歳月を要したことは痛恨の極みである。拉致は今なお続く現在進行形の重大な人権侵害であり、主権国家に対する断じて許されない国家的犯罪である。わが党はこのことを真摯に受け止め、その解決に向けて引き続き全力を傾けていく。
3.立党70年を迎えた国内外の現状と、わが党が取り組むべき課題
国際社会は今、社会の分断によって民主主義陣営は危機に瀕する一方、自国第一主義や権威主義国家が台頭し、国際情勢は歴史的な転換期のただ中にある。力による威圧や一方的な現状変更への試みが相次ぎ、世界の各地で戦火が交わる現実をわれわれは目の当たりにしている。冷戦終結後の国際秩序は大きな変容期を迎えている。
わが国は自由主義、自由貿易体制という価値観で経済の成長と、国家の平和を守ってきた。しかし、自由主義国家である米国や欧州はいずれも深刻な国内分断によって、民主主義が危機的状況にある。自由貿易体制も米国による関税措置や、国際社会のルールに基づかない経済的威圧などにより不透明感が高まり、「反グローバリズム」を掲げる政党が世界各国で台頭。急激な経済発展をもたらした国際経済は大きな曲がり角に来ている。
現下の国際情勢は、わが党がこれまで守ってきた価値観に揺さぶりをかけている。こうした「歴史の転換点」にふさわしいわが国の「立ち位置」を、国際社会で堂々と示していく必要がある。日本独自の主体性を発揮し、戦略的な外交を展開することで、わが国の国益を守り、平和と秩序を国際社会の中で維持していくことが求められる。
わが党は「自由で開かれたインド太平洋」「法の支配」といった国際社会における普遍的な価値を示してきた。今こそその価値を再認識し、分断と対立が進む国際社会を開放と協調に導き、世界平和を希求する存在として日本外交の道筋を示す必要がある。大国による戦闘や紛争が頻発している現下の国際情勢に即して日本外交の道筋を示す上で、その基盤となるのは国家の安全保障である。
死活的に求められる憲法改正
まず、日本国憲法の前文には「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した」とあるが、現実では国連の安全保障理事国であるロシアが侵略行為を行っていることからも、公正と信義に十分な信頼を置ける状況にはないことは明白である。
戦後の国際秩序が大きな転換を迎えた今、自分の国を自らの手で守り、真に自立する国家としての意思を明確に示し、戦争や混乱といった恐怖から国家国民を守り抜く。国家存亡の危機に備えるための必要な能力を整える必要がある。立党以来の党是である憲法改正の実現に向けた取り組みを進めていくことが今後30年のわが国の安全保障を考える上でも、これまでになく死活的に求められている。
わが党は立党時に「党の使命」として「現行憲法の自主的改正」を掲げ、一貫した党是として憲法改正の実現を目指してきた。憲法とはわが国が培ってきた独自の歴史・文化・伝統を基に、国の理想を物語り、国家の新たな「背骨」となるものである。戦後80年、立党70年が経過し、わが国を取り巻く国際情勢が激動する今こそ、憲法を自らの手で、国民とともにつくり上げ、自らが目指す国家の形を内外に示さなければならない。憲法改正は、単に国際社会の変容に対応するということにとどまらない。自らの意思で時代にふさわしい国の姿を形作るという高い理想を掲げて、その実現に向けて党の総力を結集せねばならない。
経済成長を起点に「福祉国家」を守る
諸外国では国内の経済格差が拡大し、民主主義が大きく揺らぐ一因となっており、国家の秩序をも揺るがしかねない。わが国の国民皆保険・皆年金は格差の拡大を防ぐことにつながり、今後も維持されるべきものである。一方で、制度の維持が目的化することで、国民負担が過大になり、可処分所得の減少と国内消費の低迷、そして経済成長の減速をもたらすようなことになれば、国民生活に悪影響を与えることになる。経済成長あっての社会保障であり、自助・自立を基礎としながら、共助・公助を組み合わせていくことがわが党の政策の基本である。
全ての起点となるのは経済成長である。わが党は現在、「責任ある積極財政」にかじを切って強い経済を再構築することで、低成長型経済から脱却し、国民生活にさらなる豊かさと確かさをもたらす経済政策を展開している。国家として稼げる経済政策への意思を示すと同時に、わが国がエネルギー資源や食料をはじめとする経済面で自律性、不可欠性を確保する経済安全保障政策に重点的に取り組んでいる。国民生活の確かさを守る上では、頻発する災害から国民の生命と財産を守ることも重要な課題だ。
経済の成長を実現させ、持続可能な社会保障を維持することこそ、主権者たる国民から託された議会制民主主義の最も基本的な役割である。人口減少が進む中で、豊かな国民生活を実現し、持続可能な社会保障制度によって国民の安心と社会の秩序を確保していく。経済成長と社会保障の安心の両立を図ることが「福祉国家の完成」を目指し生まれたわが党が70年つないできた大事な「未来への松明」である。
この松明を絶やすことなく、次の時代に受け継いでいく。そのために、国家の形を保つ政治の役割を再認識し、「経済的豊かさ」だけでなく、一定の負担を国民で分かち合うことで、制度の持続可能性が保障された不安なき「真の豊かさ」を実現していく。この必要性についても、勇気を持って説明する努力を重ねなければならない。同時に、新たな時代にふさわしい社会保障の在り方を創造し、実現を図ることも、秩序の中に進歩を求める保守政党であるわが党の使命である。これまでわが党が日本社会にもたらしてきた豊かさに加え、持続可能な経済社会の確かさを国民に保障する。与党として政権を担い続けてきた矜持を持って、わが党は国家百年の難事業に挑み続ける。
国づくりの根幹を受け継ぐ~国づくりは人づくり~
持続可能な経済社会を保つ上で、大きな課題は本格的な人口減少への対応である。次の時代を担う子供たちを育む少子化対策や、地域の多様な文化・伝統を次世代に受け継ぐために、豊かな地域社会の未来を描く戦略を打ち出すことは、地域に根差した国民政党であるわが党に託されている大切な使命である。
あらゆる国づくりの根幹となるものが人材育成だ。次世代を形作る若者たちの教育・人づくりこそが、資源に乏しいわが国にとって重要であることは論をまたない。わが党は日本の将来に責任を持つ政党として、新たな時代にふさわしい教育の在り方を国民に示し、その実現を図っていく。
4.「国民政党」として歴史を引き継ぐ覚悟
わが党は一貫して国民政党としての理想を体現し、日本の秩序と統治を担う責任政党として歩んできた。その原点は長く続く日本の歴史の中から見いだすことができるだろう。
日本国民は、伝統や文化を大切にし、日々の暮らしの中で勤勉に働き、富を生み出し、地域で支え合って次世代を育んできた。その日々の営みに寄り添い、多様な声を代弁し、都市と地方、若者と高齢者といった多様な価値観を結び合わせて一つの政策として、文字通り結実させてきた。だからこそ、わが党は全国津々浦々に組織を張り巡らす、地域に根差した政党として成り立ってきた。特定の階級やイデオロギーを代弁する政党ではないことも、広範な支持を得ることができた一因である。
日本の原風景から民主主義を見いだす
わが国の文化的な特異性は定住の歴史からも見て取ることができる。日本列島における定住の歴史はおよそ1万6千年前の縄文期から始まったとされる。四方を海に囲まれ、森林からも多様な食物を得ることができた日本列島では、原初から人々が定住し、社会を形成してきた。人々が助け合い、水や食料を分け合う暮らしから調和と、自然に対して畏敬の念を持つ共存が図られてきた。共同体で支え合いながら、自然の循環と協調する「和と絆の暮らし」が現代まで受け継がれている。
世界的に見ても稀なこうした特性は、飛鳥時代の十七条憲法にある「和をもって貴しとなす」や、明治維新の際の五箇条の御誓文にある「万機公論に決すべし」といった、民主的な意思決定を重んじる姿勢として歴史に表出した。わが国の民主主義は敗戦後、米国による占領下において与えられたものと誤解する人もいるが、前述のように悠久のわが国の歴史には独自の民主主義の在り方があった。戦後、一貫して自由と民主主義を維持しながら、経済成長を実現してきた事実は、こうした「日本型」民主主義の歴史的な一貫性を証明している。
皇統を受け継ぐ基本的使命~政治は文化に奉仕する~
先人から受け継がれてきた日本の「国柄」を体する存在が、2600年以上続く日本の皇統である。わが国の皇統は国民との信頼と敬愛によって結ばれ、国民生活の安寧を願う祈りとともに連綿と続く日本の歴史そのものである。この歴史と伝統を受け継ぐことは保守思想を体する政党として、果たしていかなければならない基本的使命であり、また多くの国民の希望でもある。
こうした日本の伝統的な文化の中で育まれてきた特色ある日本の製品は、世界での愛着を生み出している。事実、若者たちの生き生きとした発想が世界を席巻する「新・日本文化」を生み出している。アニメ・ゲーム・音楽といったコンテンツがそれである。「政治は文化に奉仕する」という言葉の通り、わが党は言論・表現の自由を損なう不当な規制には断固反対し、地域の伝統文化や、古代から続く日本の特異性ある歴史や風習を守り、伝えていくことで若い世代がその歴史や文化から新たな創造のアイディアを見出す機会を増やしていく。保守政党として守るべき価値は、政治体制にとどまらず、文化や社会といった「日本」の国の形そのものと結論付けることができる。
まさに「政治は国民のもの」という立党の原点に立った政治。これこそが、自由と民主主義を基調とした「日本」を過去から未来へと託すことにつながるのである。
5.自民党が未来に果たすべき使命 自由と民主主義を守る
前述の保守主義の政治哲学要綱は、先の大戦が国民に大きな犠牲をもたらした一方で、「唯一つ得た良き宝」として「自由」と「民主主義」を挙げている。今や世界は自由と民主主義が自明のものではなくなっている中で、60年以上前の先人が残した言葉を改めて噛み締めたい。
わが国は戦中に、言論の自由や、集会・結社の自由が著しく制限され、議会制民主主義の機能も発揮されない時代を経験した。敗戦によってもたらされた惨禍や、国民が味わった屈辱や喪失感の中で、戦後の民主主義は産声を上げた。その「良き宝」である自由と民主主義を次世代に引き継ぐことこそが、わが党に課せられている使命の根幹である。
人類史上例を見ない速度で情報が国境を越えて飛び交う現代社会では、自由と民主主義はさまざまなリスクにさらされている。無秩序や単純さを求めるといった知識の解体、社会の中で人や地域、企業や団体とのつながりが失われることで生まれる疎外感などは、未来において自由や民主主義のリスクになり得る。こうしたリスクをより際立たせ、全てを単純化する動向が大衆迎合政治(ポピュリズム)である
大衆迎合政治と対峙する
主権者に分かりやすく政策や政治的主張を訴え掛け、支持を得ていくことは政党にとっては必要なことである。しかし、そこに節度ある態度や、最低限の秩序を維持する責任感、自らと異なる主張も受け入れる包容力を伴わないものであれば、危険な大衆迎合政治と言わざるを得ない。現代社会の秩序とは、一見自明のものと感じても、実は脆く儚いバランスの上に成り立っている。こうした秩序の破壊は世界におけるこれまでの戦争によって現出し、わが国も先の大戦時に、自由の瓦解という形で経験した。
根拠なく社会不安や政治不信をあおる無責任な言動によって日本社会が混乱することを防ぐ役割がわが党にはある。そのためには、国民との距離を縮め、わが党が国民の代表である国民政党であることを、主権者に対して理解を得ていかなければならない。わが党が特定の階層や階級を代表する政党だと、国民から見なされれば、現在の地位を驚くほど早く失うことにつながるだろう。無責任な大衆迎合政治と対峙することは、実は謙虚に自らの足元を見つめなおし、国民政党、責任政党としての立ち位置を常に自問していくことにほかならない。
AIの進化と向き合い「人間の営み」を守る
自由と民主主義を次世代につなぐ上で、もう一つ留意すべきことが人工知能(AI)の発展である。AIは経済・社会の構造に大きな変化を与えるだけではなく、人類の文明史に大きな転換をもたらしかねない。これまでも、科学の発展は大幅な生産性向上をもたらし、資本主義や市場経済におけるテクノロジーやアイディアの自由化をもたらしてきた。同時に、科学技術の進歩は人類史に大きな危機をもたらしかねないことも経験してきた。広島・長崎における核兵器の使用は人類史上、未曾有の惨禍をもたらした。一方で現在も国際秩序を維持する上で、核による抑止力が一定の効果を発揮している側面も否定できない。
AIは今後、数年以内に人間の知能を上回る能力を獲得するとの予想もある。わが党はAIを社会課題の解決に導くツールとして活用して、若年層や高齢者、都市と地方の双方の暮らしの利便性を高めることに主体的・積極的に取り組む。AIの進化と実装に対して決して悲観することなく、その能力を使いこなす社会づくりを主導していくことは、わが党に期待される未来に向けた重要な役割の一つである。
AIやデジタルは民主主義にも新たな可能性をもたらす一方で、AIを用いた外国勢力による介入、悪質な偽情報・誤情報の流布によって民主主義の正当性を毀損しようとする試みも現実化している。それらの影響から健全な民主主義を守り抜くことは必要不可欠である。また、高度に進化したAIによって、管理・統制され、個人の自由が抑圧される権威主義的な政治体制がわが国においても形成される可能性もある。自由と民主主義を基盤とする日本社会を守るためには、政治への信頼を保ち、高めていく地道な営みを積み重ねることが求められる。政治権力の行使とは、複雑な利害を調整し、社会の秩序を維持する「人間の営み」である。そこには社会的弱者への目線や、少数意見にも耳を傾ける謙虚さ、結果に責任を取る覚悟が必要不可欠だ。わが党が培ってきた地域の草の根の声を集めて合意形成につなげる政治という「人間の営み」よりも、AIの方が信頼できると国民から見なされないためには、現に政権を担うわが党自身がより一層謙虚かつ細やかに国民の目線に立ち、丁寧な合意形成によってもたらされる結論への信頼を得ていくことが重要だ。時代が変化する中でも政党政治への信頼を高め続ける不断の努力が現在の政治には不可欠である。わが党はかつて政治の信頼を損なう事態を招いたことについて、謙虚な反省の上に立ち、こうした事態を招かない誓いを新たに、政治の信頼を高めていく。
丁寧な合意形成で権力を適切に行使
自由と民主主義は一種の緊張状態の関係にある。個人の自由のみが優先されれば社会の秩序は崩壊する。民主主義を万能として無批判に肯定すれば、多数決によって個人の自由も制限されかねない。わが党は多様な価値観が織りなす、緩やかで多元的な日本社会を代表する政党である。その多元性を最大限発揮し、自由で活力ある社会を形成するためには、過度に権力を行使することは適切ではなく、過度に権力を分散させることもまた適切ではない。過去・現在・未来を見据えた時間軸を持ちながら、複雑な利害関係を調整し、幅のある民意を集約した丁寧な合意形成を通じて、権力を適切に行使していく。こうした困難を引き受け、権力を謙虚に行使できる政党は、自立する多様な人材によって構成し、保守政治を体現してきたわが党をおいて他にないのではないか。
自由と民主主義が大きく揺らぎ、複雑化する国際社会の中でも日本型民主主義を発展させてきたわが党が果たすべき役割は大きい。各国が自国の利益を最大化することに貪欲な現代にあって、わが国は一貫して自由で開かれた国際秩序を求めてきた。海洋国家である日本にとって、自由で開かれた国際秩序の維持は国益の生命線である。領土・主権を守り抜くと同時に、法の支配によって国際秩序を維持する。その道義を説き、各国の利害を調整していく日本外交を進めることは、これまでになく重要性が増している。ポスト冷戦の国際社会において多元化が進む中で、わが党は日本の特性を生かした平和主義と現実主義によって、国家の平和と共存を体現する政党として、日本の国益と平和を追求し続ける。
結語 ~変えるべきを変え、守るべきを守る「常若」への挑戦~
わが党の「保守政治」とは単なる懐古主義ではない。20年に一度、式年遷宮を繰り返し、1300年以上にわたって続いてきた伊勢神宮。その理念は「常若(とこわか)」と表現され、古くから続く長い伝統を守るため、常に新しい姿に作り替えることで、みずみずしい生命力を今日まで伝えてきた。これこそが、わが党が示すべき保守政治である。わが党はこれまで、先人から受け継がれてきた日本への誇りと自信を持って国民とともに歩んできた。成熟した日本という国家において、幾多の困難を乗り越えてきた先人の知恵と教訓に謙虚に耳を傾けつつ、新しい理想を常に描き続ける。そのたゆまぬ自己研鑽と、多様な民意を結束させる包容力こそが、わが党の伝統と言えるだろう。
今後も良き伝統を受け継ぐのは、国民とともにあるわが党の多様な人材だ。多様な声を吸収し、全体の利益へと結実させてきたわが党は、時代の変化に即して輩出されてきた多様な人材が結束することによって保たれてきた。個人のさまざまな考え方を包摂しながらも、極論に走ることなく、責任ある政治を目指す。常に国民に根を張り、国民の目線に立つ。その基本姿勢を揺るがせにせず、社会の変容の中でバランスを保ち、常に国民の真ん中に位置する地域に根差した国民政党であるからこそ、国民から安心して任せられる政党としての地位を確立してきた。
今を生きる子供たちはやがて22世紀を迎えることになる。わが党は自由と民主主義に基づく政治体制を堅持し、自由で開かれた、世界の中でかけがえのない「日本」という価値をつくり続けるための挑戦を重ねていく。未来の日本の確かさと豊かさをともに保ち、将来を担う若者たちにその未来を引き継いでいく。立党70年に当たってこの決意を全ての党員、国民と共有し、70年受け継がれてきた使命を果たし続けていくことを、ここに誓う。
日本成長戦略本部提言(労働市場改革・人材育成関係)
日本成長戦略本部 令和8年4月9日
日本経済が直面する労働供給制約を乗り越え、高市内閣が目指す「強い経済」を実現するためには、労働者一人ひとりがその意欲や能力を最大限に発揮して活躍できる社会を目指すことが大前提である。
こうした観点から、日本成長戦略本部では、「日本成長戦略における17の戦略分野に関する5つの基本原則」において、「成長を支える人材の結集(ヒト)」を掲げ、戦略分野をはじめとした官民連携の投資を担う人材の確保に向けた議論を重ねてきた。
これらの議論を通じて、政府による「働き方改革関連法施行後5年の総点検」調査により「もっと働きたい」と希望する層が約1割存在する一方、時間外労働の実態と上限規制との間に「隙間」があり、現行の労働時間制度が必ずしも十分に活用されていない実態も明らかになった。
こうした運用面の課題は、中小企業の現場も含め多くの方々の働き方に直結する横断的課題であり、制度改正の議論に先立って優先的に解決すべきものである。
さらに、強い経済の実現に向けて戦略17分野における投資を加速し、持続的成長に繋げるためには、戦略17分野に留まらず、これらを支えるエッセンシャルワーカーをはじめとした分野を含め、現場人材から高度人材に至る幅広い人材の育成・確保を戦略的に進めることが重要である。
そのためには、産学で連携して、各分野における必要なスキル及び処遇を明確化し、これらのスキルを身につけるためのリ・スキリング機会を拡充しつつ、企業でのさらなる処遇確保に繋がる好循環を形成する労働市場改革とともに、次世代育成においても、産業界との連携の下で高専・専門高校等の機能強化、普通高校の特色化を始めとした教育改革を一体的に進めることが不可欠である。
戦略17分野の投資を加速するためには工場建設等を担う人材の育成・確保が不可欠であることから、まずは、建設分野においてこうした取組を具体化するとともに、今後、戦略17分野及び医療・介護分野を含めその他のエッセンシャルサービス分野にも横展開するべきである。
こうした考え方に基づき、優先的に取り組むべき事項について以下のとおり提言する。
Ⅰ.労働時間制度の活用促進・運用改善
1.36協定締結や制度・助成の活用支援・周知広報の充実
- 中小企業・小規模事業者等において、36協定や特別条項が適切に締結されるよう、
- 「働き方改革推進支援センター」において、36協定や特別条項の締結や柔軟な労働時間制度の活用を支援する専門相談窓口を設けること。
- 労働基準監督署(労働時間相談・支援班)と働き方改革推進支援センターとのチームにより36協定や特別条項の未締結の企業に対して幅広くアウトリーチ型の訪問支援を行うこと。
- 上記支援にあたり、よろず支援拠点をはじめ中小企業経営支援機関との連携を強化するとともに、必要な体制整備については令和9年度以降も着実に実施すること。
- こうした支援の実効性を上げるために、労使双方への制度の広報・周知活動を強化すること。その際、本省と地方支分部局、地域における自治体、商工会議所等の関係機関、社会保険労務士等の専門家との連携強化により、戦略的な広報活動を充実させること。
2. 労働基準監督署における対応の見直し
- 労働基準監督署において、労働者の健康確保を重視した指導を行うこととし、時間外労働を月45時間以内に削減することを求める一律の指導を見直す。その上で、違法な時間外労働とならないように36協定や特別条項の締結に向けた指導・助言を行うこと。
- 企業自ら時間外労働の削減のための支援を希望する場合は、その内容に応じ、働き方改革推進支援センターにつなぐこと。
Ⅱ.戦略17分野を支える人材育成の推進に向けて
1.戦略17分野を支える人材(ex.建設人材等)に必要なスキルの取得促進、人材の育成
- 戦略17分野を支える人材に必要なスキル取得に向けて、政府として新たな教育訓練体系の整備、雇用保険による教育訓練給付金の対象講座拡大等によるリ・スキリング機会の充実、個人・企業双方に対するリ・スキリング受講費用等の負担軽減支援の拡充等を一体的に実施し、戦略17分野を支える人材のリ・スキリングへのインセンティブを強化すること。
- あらゆる方々にリ・スキリング機会を提供するべく、各省の支援措置の中から、利用者にとって最適なものを選択できるよう、各省の連携を行うとともに、関連する情報を一元的に提供する機能を不断に強化し、利用者にとって利便性の高いものとすること。
- その際、職業訓練をはじめとしたリ・スキリング支援の運用について、現場の実態やニーズを踏まえたものとなるよう不断の見直しを行うこと。
- 小中学校段階からの興味関心の醸成に加え、高等学校教育改革促進基金や高等学校教育改革交付金(仮称)を活用した工業高校等の機能強化、普通高校の特色化等を産業界と連携しつつ進めること。
2.建設現場における処遇改善等を通じた担い手の確保、職場環境の整備
- 公共工事に加えて民間工事における発注者・元請・下請間の取引適正化を通じた現場の処遇改善や担い手の確保・育成について、官民で連携して取組を強化すること。
- 建設現場における処遇や職場環境の改善状況の見える化を進めるとともに、例えば建設に関連する資格を有しながら必ずしも建設業に従事されていない方をターゲットにした周知を行うなど戦略的な魅力の発信・広報を進めること。
- 民間工事も含めてICT機器導入等の省力化投資を調査設計から工事施工まで幅広く進めるとともに、建設分野におけるAI・ロボット導入等による生産性向上を行い、現場の魅力向上を図ること。
Ⅲ.施策効果のモニタリング・フォローアップ
いずれの施策においても、実施後の政策効果を検証し確認できるよう、予めモニタリングとデータ収集を行うためのフォーマットを作成し、本省と地方支分部局において確実にフォローアップを行うこと。