デジタル社会推進本部
次世代AI・オンチェーン金融構想PT提言
令和8年5月19日
自由民主党 政務調査会
デジタル社会推進本部
次世代AI・オンチェーン金融構想PT
1.はじめに~自動化・連結化・24/365化が進む新たな未来~
(1)来るべきAI×オンチェーンの未来像
現在、我々は、AI技術の進展とブロックチェーンの活用促進を通じた「経済・金融・決済の大変革時代」の入り口に立っている。今後10年で、今とは全く違う社会・経済に身を置くことになることに疑いはない。
例えば、家庭の冷蔵庫は、家族の食のバランスや病歴、当日の体調データ等を踏まえ、AIによって常に足りない栄養素を補える素材が自動で注文され、自動で支払いもされ、デリバリーにも連動される。
昼行きつけのコンビニに入れば、AIエージェントが当日の体調と業務負荷に応じて最適なランチを推奨し、生体認証技術も利用したバックグラウンドでの決済によりレジに並ばず買い物が終了し外に出られる。店舗側は在庫管理や発注、レジ業務から解放され、接客や商品開発といった人にしかできない仕事に専念できるようになる。
夜、ドジャースの大谷選手がホームランを打ったニュースを見る。現地で売っている大谷選手の限定ユニフォームが欲しくなり、その購入をAIに依頼する。AIは、価格・運送日数など様々な要素を勘案しつつ、米国の公認小売店から直接購入し、輸送・税関手続きも自動で行う。支払いも同じく自動で行われる。小売業者も、商品の引き渡しと同時に代金が確実に支払われる仕組みを構築でき、輸入代金の未回収といったリスクを低減しつつ、人的負担を抑えた効率的な国際取引を行っている。
そして、この人が働く製造業の現場では、部品供給業者が納品した瞬間、検収データと連動してAIが品質・数量・契約条件を即時に検証し、円建ステーブルコインによりオンチェーンで自動決済され、長期間にわたる支払サイトはなくなり、中小の下請企業は受注と同時にキャッシュフローを得ることが可能となる。それだけではなく、納品済みの売掛債権はオンチェーン上で即時に流動化され、世界中の投資家から低コストで運転資金を調達することも可能となる。企業の信用は、決算書という年一度の静止画ではなく、日々のオンチェーン取引履歴、キャッシュフロー、納品実績をAIがリアルタイムに分析し、与信枠が動的に更新され、融資はオンチェーン金融で瞬時に実行され、返済もまた売上の入金と同時に自動で行われる。
(2)自動化、連結化、24時間365日化
こうした新たな経済・社会時代の特徴は、選択する、買う、支払う、届ける、契約する、融資を受ける等の従来別々に捉えられ、分断された経済的行為が、「連結化」、「自動化」、「24時間365日化」し、更には多くの場合人間の手も介さない「AIエージェント化」することである。そして、それを担保するのが、AIでありブロックチェーンである。
実際、ブロックチェーンについては、既に貿易に携わる事業者の間で、貨物の輸送・通関の状況等をブロックチェーン上で管理・共有する取組みが進行中である。これを更にブロックチェーンを用いたステーブルコイン(SC)やトークン化預金(TD)などの決済手段と組み合わせて、貨物の発送・受渡しにあわせて代金決済を連動させる仕組みを構築すれば、貿易取引に係る業務プロセス全体の効率化・高度化が可能となる。ブロックチェーン技術により、リテールであってもホールセールであっても、大半の取引は、24時間365日、代金決済と連動して行われるようになる。
AIについても、エージェントAIの有用性が更に高まっていけば、言語や時差など人間間の取引においては障壁となっている要素が克服され、人の意思決定を代替・補完する形でAIが経済活動を自律的に実行し、商取引が迅速、高頻度、グローバルに行われる「エージェンティック・コマース」が近い将来到来する。
(3)AIに選ばれる日本
そして、この新たな環境下では、様々な製品・サービスが、「人」ではなく「AI」によって選ばれる場面が増え、AIに選ばれることが重要となってくる。この点、上述のブロックチェーンは、その特徴(対改ざん性、参照可能性、プログラマビリティ、取引可能時間の拡大、特定の一主体に依存しないシステム運営(単一障害点の解消)等)に鑑みて、AIとの相性が良い。とりわけ、AIにとって「正しいデータ」が何よりも大切であることを踏まえれば、ブロックチェーンの高い「耐改ざん性」が有益であり、我が国において、ブロックチェーン利用の拡大が「AIに選ばれる」環境整備の一環として重要となってくる。
2.金融を起点に官民連携で新たな時代を切り拓く
(1)金融から未来のオンチェーン・プラットフォーマを創造する
それでは、この「AI×オンチェーン」を通じた「自動化」、「連結化」そして「24時間365日化」に向けた我が国の推進力はどこに見出せるのか。それは、送金や決済、預金や貸出等の金融側のオンチェーン化すなわちオンチェーン金融の推進である。何故なら、
- ① 第一に、コマース側、すなわち人や企業更にはAIエージェントによるあらゆる活動・行動・取引等のバックグラウンドには決済や資金調達といった金融が関係する、
- ② 第二に、コマース側からすると、決済インフラ自体は所与のものとしてビジネスやプログラムを構築するため、AI×オンチェーン金融時代に対応した決済インフラの拡張性は必ずしも生まれない、
- ③ 第三に、日本経済の成長のためには、デット・エクィティ問わず十分な成長資金供給が不可欠であるが、プログラマビリティを通じて、金融と各産業・企業が連結することで情報の共有が一層進展するとともに、トークン化された売掛債権や不動産等の実態資産を担保として融資実行できれば、顧客企業の経済活動に即したファイナンスニーズ(ABLやSCF等)への対応余地が拡大し、その貸出をTDやSCで行うことで、資産の検証から担保化、資金供給までがオンチェーンにより一気通貫でつながる、
からである。そして、こうした金融側からの新たなアプローチにより、顧客の法人等は、必ずしも自社のオンチェーン化を図らずとも、証跡を金融機関側に残す事によりスマートコントラクトの便益を一定程度活用可能ともなる。
なお、こうした金融機関側からのアプローチは、現在、海外の大規模プラットフォーマーに握られている様々な情報等を開放するとともに、マイクロソフトやオラクル等の海外企業に寡占されているソフトウェア業界において日本勢巻き返しの橋頭保を作ることにも資するものである。その意味では、現在金融界で議論がなされている銀行グループの一般持株会社方式への移行の可否も、こうした点を含めて議論がなされるべきである。
いずれにしても、国際貿易や国際的サプライチェーンの維持管理などの場面においては、オンチェーンであれオフチェーンであれ、相応の流動性確保等が必要であり、金融側からのアプローチは有益である。
(2)官民連携によるオンチェーン金融主権確保の重要性
世界では、こうした未来を見据えた動きが既に進んでいる。ステーブルコインについては、米ドル建てのUSDT及びUSDCを中心にその発行残高を大きく伸ばしており、足元45兆円規模に拡大。TDについては、米系銀行(JPモルガン)が従来から投資を続けての取組みが先行している。
こうした世界的な動きに対して、日本が、オンチェーン金融インフラ、とりわけ決済インフラを構築できずに乗り遅れることとなれば、日本が外国の決済システムに依存することによる経済安全保障上のリスク、さらには通貨代替リスクに晒されることとなる。したがって、上述のとおり、金融・決済インフラ側から、プログラマビリティを備えた金融・決済インフラのアーキテクチャーを提案し、構築する必要がある。
他方で、全銀ネットを含めた我が国の既存の金融システムは世界的にも信頼性が高く、足元で我が国の経済活動の根幹をなしており、その維持・運営も同時に不可欠である。結果として、金融業界においては、既存システムとプログラマビリティを備えた新たな金融インフラという、共に公共性の高い社会的インフラへの膨大な二重投資が必要となるが、その投資判断は決して容易ではない。
そこで、国家として来るべき未来像を提示し、AI×オンチェーン金融時代に対応した金融・決済インフラの高度化に向け、金融業界への支援も含め官民連携での投資を促していくことが何よりも重要である。
そうした取り組みの積み重ねが、我が国のオンチェーン金融主権を確保し、通貨主権を守り抜くことにつながっていく。
3.検討にあたっての6原則
今後、政府・中央銀行・全銀システム・民間金融機関が一体となって、新たなAI×オンチェーン金融時代におけるプログラマブルな金融を活用できる環境を構築すべく、以下の「6原則」に沿って、投資の呼び込みを含めた戦略的な対応を進めていく必要がある。
①サプライサイド(技術革新)とデマンドサイド(実経済)一体での検討
オンチェーン金融のアーキテクチャーは、技術革新により可能となることについての供給サイドの進化(テクノロジー・ドリブン)と貿易や証券分野におけるユースケースの進展による需要サイドのニーズ(ユースケース・ドリブン)によって構成されていくことを踏まえ、技術的発展と実取引での活用を両輪として一体的な検討を進める。
②産業競争力強化と資産運用立国推進を一体的に検討
様々にプログラマビリティを実装したオンチェーン金融の提供による産業競争力の強化と現実世界に存在する各種資産(RWA: Real World Assets)のオンチェーントークン化を通じた資産運用立国の一層の推進を同時並行的に進めるとともに、トークン化されたRWAを担保としたオンチェーン融資など、両者を連結させることで、アセットとカレンシーの連結性を高めていく。
③金融システムの安定性と金融仲介機能の維持
金融システムの安定性、金融仲介機能の維持、高度なセキュリティとAML/CFTなどの清廉性の確保等は、新たなオンチェーン金融・決済の下でも前提とすべきものである。とりわけ、今後の成長資金確保を考えれば、オンチェーン金融のもとでも、預金のもつ信用創造機能は維持されなければならず、また、SCの下での流動性危機といった事態にどう対処するかといった点も重要になる。こうした点を踏まえて官民連携での検討を進めていく。
④アジアでの主導権確保
世界に先駆けての新たなオンチェーン金融・決済基盤の整備は、国内に閉じるものではなく、国際市場、特にアジア諸国においても活用してもらうことを視野に開発を進め、AZEC等と同様に、日本とアジアの連結性、協力関係強化に繋げていく。
⑤一点集中でなく正面突破全面展開での検討
特定の決済手段に断定的に将来を委ねるのではなく、各種の決済手段について、技術進歩の状況、世界の潮流、普及・活用の可能性等を見ながら推進していく。ただし、国内決済とクロスボーダー決済、個人決済と法人決済、更には、資産運用での決済と実体経済取引での決済、によって、利用者のニーズや決済手段毎の親和性等も異なることから、各決済手段のメリット・デメリットを勘案した緻密な戦略策定を進める。
⑥国際的整合性を踏まえた検討
TDであれSCであれオンチェーン金融を進めるにあたっては、日本独自の基準等で進めることによりガラパゴス化することがないよう、他国の決済システムやグローバルな共通基盤との相互運用性を確保すべく、常に国際金融コミュニティにおける議論や実証の動向を踏まえて取り組む。
4.現時点での概念図
以上を踏まえた、AI・オンチェーン金融の現時点での概念図は7頁のとおりである。金融におけるプログラマビリティと即時決済をフル活用することで、AIが最も駆動しやすく、国民が本業に集中できる24時間365日の自立型自動金融インフラを構築するとともに、売掛債権等の各種アセットのオンチェーン化により直接・間接金融両面で成長資金の十分な供給につなげていく。
具体的には、
①産業(カレンシー)サイドと資産運用(アセット)サイドの両面でのオンチェーン化
産業(カレンシー)サイドにおいては、プログラマビリティと即時決済をベースに、財務経理DXの推進、資金使途把握や資金使途効率化が推進される。アセットサイドでは、証券会社やアセット・マネージャー等により、様々な債権のトークン化とT+0決済化により、運用ハードルを低減させる等により、投資の活性化により「資産運用立国」を一層強力に推進する。
②カレンシーが繋ぐオンチェーン化
産業サイドにおいては、法人決済として国内において1200兆円のBtoB取引や220兆円の輸出入取引があり、Elasticity(大口決済が止まらないこと)が重要であるとともに、日本の強みである間接金融による信用創造を通じた成長資金供給が引き続き求められており、TDの役割が大きい。他方、ステーブルコインについては、個人・法人等の小規模・中規模決済を支えるインフラとして、また、1600兆円の年間売買高を誇る東証での証券決済等を筆頭にアセットサイドにおけるT+0を支える決済主体として機能を発揮する。
③顧客目線で業態をまたいだ金融
様々なアセットがオンチェーン化され、決済も自動化、24時間365日化されることにより、国民から見れば、銀行・証券・保険等の区別は低減されることとなり、将来的には一つのマルチアセットウォレットの中で複数の商品を同時並行的に扱う時代が想定される。現在ウォレット事業者について一体的な規制やルールは存在しないところであるが、将来を見据えると、顧客保護、金融リテラシー向上等の観点から対応が必要となることも視野にいれる必要があり、暗号資産も含めたマルチアセットウォレットの取り組みが進む各国の動向も踏まえながら、検討を進めていくべきである。
5.具体的な施策
以上を踏まえ、当面は以下の取組みを進めていくべきである。
(1)18番目の成長投資分野としての確立
直接・間接を問わず産業に成長資金を供給する金融は経済成長を支える重要なインフラである。しかし、今後は、産業横断的な重要インフラとしての役割に加えて、オンチェーンと新たなプログラマビリティの提供を通じて、金融そのものが新たな成長産業となり、成長セクターにならなければならない。また、日本の取組みが遅れることは、経済安全保障上のリスク・通貨代替リスクに直結することから国家として新たな金融インフラに投資を促す必要もある。
こうしたことを踏まえ、今後、金融分野を18番目の成長投資分野として位置づけるべきであり、金融庁を中心に、政府において、5年間のロードマップを作成し、金融業界への支援を含めて官民連携での大胆な投資促進・普及促進を進めていくべきである。その際、例えばオンチェーン化した場合は国内のマネロン対策を各金融機関ではなくオンチェーン上に機能集約をして負担軽減をする等、投資促進に向けたインセンティブ設計も検討すべきである。
(2)公的主体によるユースケース作り
18番目の成長投資分野とすることの意味は、アンカテナンシーとしての公的主体の関与を求めることであり、公的主体によるブロックチェーン活用のユースケースを積み上げることも重要である。
- ① 海外においては、ブロックチェーンの機能を活用して、例えば子育てや食料品といった特定の目的のみのために費消可能なトークンの給付に向けたパイロット実験が既に実施中。ターゲットをより明確にした給付金等の支給を政府・自治体が行えるようにするためにも、デジタル庁において、年度内を目途に、給付システムのオンチェーン化について検討すべきである。
- ② オンチェーン資本市場の育成に向けては、例えば、国債のトークン化対応、JBIC等の財投機関によるトークン債発行を起点とすることやGPIF等に一定のトークン債投資枠を設定することも有益であり、年度内を目途に、内閣官房において財務省・厚労省・金融庁とも連携して検討を進めるべきである。
(3)トークン化預金(TD)及びステーブルコイン(SC)拡大に向けた検討及び施策
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①TDの拡大
(イ)日銀当座預金のトークン化対応(含むホールセールCBDC)
TDを実装・普及させていくためには、TD発行銀行をまたいだTD移転のファイナリティを確保する観点から、日銀当座預金のトークン化対応(含むホールセールCBDC)が必須である。この点については、現状、日本銀行内部において検討を進めているが、これも緒に就いたばかりの状況。日本銀行においては、この実装に向
けた論点整理及び実現に向けた道筋を含めて、速やかに検討を行い、取組を着実
に進めるべきである。まずは、年内に実装に向けた論点整理と実現に向けた道筋
に関する検討状況について取りまとめ、公表すべきである。
なお、全銀システムについては、銀行間の資金決済における振込指図等を送受信する仕組みであるとともに、毎日850万件にも及ぶ大量処理を要するなかパブリックチェーンでの大量処理における迅速性の限界も併せ考えると、現時点においては、ブロックチェーンへの置き換えが必須とまでは必ずしも言えない。
(ロ)プログラマビリティ活用を内包したトークン化預金の推進
TDは、SCと同様、スマートコントラクトを活用することにより、商流・物流と連関させ、決済を自動化させるのに資するものである。預金取扱金融機関は先頭に立って、スマートコントラクトの活用による商流・物流との連関まで見据えたTDプロダクトの開発・提供を進めていくべきであるが、そのためには、必要に応じて、預金取扱金融機関の業務範囲規制や資本構造の在り方の見直し等も含めた検討が重要である。このため、業界において具体的な検討の場を立ち上げるとともに、年内を目途に一定の結論を得て、公表すべきである。その際に、自ら投資を行うことが容易ではない中小企業のオンチェーン対応にも配慮することが望ましい。
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②ステーブルコイン
(イ)諸法令におけるSCの取扱いについての整理
既にSC発行に実績のある意欲ある資金移動業者等からは、SCの利用促進の障害として、諸法令におけるSCの取扱いが不明確であるとの指摘がある。ステーブルコインを用いて給与支払いができるか、納税ができるか、金銭と同等のものとみなして会社に出資できるか、といった点を明らかにすることは、ステーブルコイン利用に係る利用者の萎縮を取り除くことにもつながるものであり、内閣官房において年度内を目途に省庁横断的に検討していくべきである。
(ロ)SCの普及に伴うリスクへの対応
SCの普及を進めるだけではなく、リスクにも対応すべく課題の洗い出し・検討が必要である。AI・オンチェーン決済の浸透により、送金可能時間の拡大、取引・決済の自動化が進むと、金融システムの安定性に不測の影響を与える可能性があるほか、金融仲介機能に配意し裏付け資産に預金を活用する取組みはあるものの、裏付け資産次第では、金融仲介機能に影響を与えるとの指摘がある。また、本人確認した者のみに利用を認めるような枠組みも提案されているが、必ずしも本人確認されていない者の間でSCが転々流通する中マネーロンダリングがなされうることへの対応も必要。その他、SCを用いた送金により、外為規制が事実上潜脱される懸念の他、円建てSCが広く国外でも用いられるためには、各国との間の相互承認について議論を進める必要がある。
さらには、ブロックチェーン技術についての量子コンピュータによる危殆化リスクにも目を向ける必要。これらについて海外の事例も踏まえつつ、早急に整理・検討を実施していくべきである。
(ハ)銀行発行SCの検討加速
資金決済法上、銀行がSCを発行することは禁止されていないものの、金融審議会(資金決済制度等に関するワーキング・グループ)報告書においては、銀行の健全性や金融システムに与える影響等、多角的な観点からの「慎重な検討」が求められるとされている。
他方、国際的には銀行によるSC発行事例も出てきているなどの情勢の変化もみられることから、バーゼル規制上の取扱いや国際的な議論の動向、預金保険における取扱いなど、銀行発行SCを解禁することのメリット・デメリットを含めて、年内をめどに諸論点を検討・整理すべきである。
なお、預金トークンについても、本人確認や預金保険の観点も含め、併せて検討を深めていくべきである。
(ニ)国際的な互換性確保に向けた取り組み
今後円建てSCの利用領域を国外にも拡大しクロスボーダー決済における円のプレゼンスを高めていくに際しては、他の通貨建てSCとの互換性確保・向上が課題である。例えば円SCとドルSCをシームレスに交換でき、かつ受け取ったSCを交換元のSCと同様に使えることが不可欠となる。このためには、価値の保全や償還ルール、発行体破綻時の取扱い等について、各国間の規制・監督におけるイコールフッティングの確立が重要である。また、事故・組戻対応等におけるクロスボーダーでの運用手続きの標準化等も必要となる。
まずは、「グローバルSCコリドー構想(仮称)」として、各国当局間による対話から始めてはどうか。
(4)決済高度化プロジェクト(PIP)を通じたユースケースの拡大
来るべき未来像を見据えて、現在3つのプロジェクトが進む決済高度化プロジェクト(PIP)においては、①国内決済に加えて、グローバル企業のアジアを含む海外のキャッシュマネイジメント等での利用を見据えた、来年3月までの実運用開始を念頭に置いた3メガバンク共同でのステーブルコイン発行に向けた検討、②証券決済の効率化及び24時間365日対応を見据えた、ブロックチェーン上での証券決済推進に係る検討、③トークン化預金を複数の銀行間で移転する仕組みの構築に向けた検討が進められているが、今後、例えば、(イ)貿易決済を含むその他の分野への拡大や(ロ)トークン化された売掛債権に対しTD及びSCによるレンディングの実証など、新たなプロジェクトを追加すべきである。
(5)「AI・オンチェーン金融アジア政策対話枠組み(仮称)」の創設
前述の通り、オンチェーン決済への対応への後れにより、経済の土台を支える我が国の決済インフラを外国に委ねることになると、経済安全保障上のリスク・通貨代替リスクに直結するおそれがある。
他方、諸外国に先んじて、オンチェーン決済への対応において、安全で信頼される決済インフラを確立できれば、例えば、日本と経済的に結びつきが強いアジアの国々において、ノウハウやサービスその他の提供など、さまざまな形で連携を深めていくことも期待される。現時点においても、アジア諸国との間の輸出入の決済の4~5割は円建てで行われており、今後もこれを維持・拡大していくことにも繋がり得ると考えられる。
オンチェーン金融について、官民一体で日本とアジアの間の連携を深める観点から、アジア・オンチェーン金融プラットフォームの創設を目指す。その第一歩として、アジアにおけるオンチェーン金融についての官民対話の場として、早急に「AI・オンチェーン金融アジア政策対話枠組み(仮称)」を創設し、その中で、技術面・法令面等における課題及び対処の実例の共有により、RWAの定義や監査またKYC/AML/CFT等相互運用のためのルールメイキングを進め、相互理解・連携を深めていくべきである。その他、2027年に愛知・名古屋において開催されるアジア開発銀行(ADB)年次総会の機会にも、積極的に発信していく。
(6)その他
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①金融分野におけるAIに対するルールメイキング
今後、AIエージェントを通じた自立型の金融アーキテクチャーが出現した場合、資産運用での取引判断・取引指示におけるAIの活用やAIによる独立・自動的な判断・指示が進むことが予想される。AIが真に顧客の最上の利益を踏まえた判断をするのか、また、特定のAIに過度に依存することによって市場が一方向に動き不安定化するリスクなども想定される。また、銀行の融資判断におけるAI活用においても、特定の業種等が排除されることのないよう、金融包摂の観点からの検討も必要である。
このため、今後、金融におけるAI活用について、金融監督・市場監視の観点から、その在り方を金融庁において早急に検討・整理すべきである。
なお、金融庁FinTech実証実験ハブにおいては、従来のパスワードや物理的なカードの所有のような確認方法ではなく、公的個人認証サービス(マイナンバー)と生体認証(顔認証等)を組み合わせたVC(verifiable credential)の有用性が確認されている。今後、エージェンティックAIの利活用が進展する中、こうした取組は本人真正性を担保する基盤として重要な意義を有しており、将来的に属性情報・履歴情報等との連携が進めば、金融分野におけるAI活用の高度化、信頼性向上及び不正防止に資することが期待される。
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②量子耐性の確保
ブロックチェーンについては、量子コンピュータの登場により、その暗号技術の危殆化リスクなどのセキュリティ上の課題について様々な指摘がある。他方、この指摘については、①量子コンピュータによる危殆化のリスクはブロックチェーン固有のものでなく既存のインフラ全てにまたがるものである上に、②耐改ざん性や分散合意といったブロックチェーン固有の堅牢性を活かしつつ、耐量子署名方式への移行、レイヤー2技術等によるスケーラビリティ向上、更には合意形成プロトコルの改良により対応可能、との意見もある。
いずれにしても、デジタル庁において、ブロックチェーン業界やブロックチェーンを活用する金融業界とも連携しつつ、オンチェーン金融に用いられるブロックチェーン技術について、常時、量子コンピュータによる危殆化リスクの把握や代替手段の検討を進めるべきである。
(以 上)