強靭な海事産業群の実現に向けた施策の充実・強化に関する決議
令和八年六月十八日
自由民主党政務調査会
海運・造船対策特別委員会
我が国の海事産業は、安定的な海上輸送と優れた技術力により、国民生活や経済活動を支えるとともに、経済安全保障の観点からも重要な役割を担い、地域経済や雇用を支える不可欠な存在である。そして、我が国では、海事産業の中核をなす海運や造船・舶用、海事人材に加え、船員養成機関、銀行・保険業など幅広い関連分野が有機的な循環を有しながら集積し、世界でも有数の海事産業群を形成してきた。
一方で、近年、中東情勢の緊迫化をはじめとする地政学的リスクの顕在化によるシーレーンやサプライチェーンの混乱の影響は我が国の国民生活や経済活動にも波及しつつあり、自由で安全なホルムズ海峡の通航確保の重要性も高まっている。
また、国際競争の激化していく中、造船分野では生産能力や人材の制約に起因する供給上の制約が課題となっている。海運分野では運賃市況や需要動向の変動に耐えうる競争力の維持・強化が求められているほか、内航海運については船舶更新に伴う負担の増大等を背景に、安定的な輸送の確保が課題となっている。
加えて、人材の確保・育成や技能の承継は海事産業全体に共通する重要な課題となっているほか、脱炭素化に向けた社会的要請の高まりを背景に、次世代燃料や新技術への対応も重要な課題となっている。
こうした状況の下、我が国の海事産業が直面する諸課題に的確に対応し、国民生活と経済を支えつつ持続的な発展を実現していくためには、民間企業の取組と相まって、政府による総合的かつ戦略的に施策を推進し、強靭な海事産業群を実現することが重要である。
以上の認識に立ち、政府に対し、次の事項に取り組むことを求める。
一.「造船業再生基金」の活用等を通じた船舶建造体制の強靭化や、船舶修繕能力の向上などの取組によって、我が国造船の自律性を確保するとともに、次世代船舶の建造需要を確実に取り込み我が国の造船分野における優位性を確保すること。その際には、造船事業者の大胆な投資を促す環境整備について検討するとともに、造船・船舶修繕を支えるサプライチェーンの能力増強にも留意して取り組むこと。また、国際的な造船市場における公正な競争環境の整備や艦艇や巡視船等の官公庁船の建造促進等を図ること。さらに、これらを支える造船人材について、産学官連携による人材確保・育成の推進、育成就労制度への円滑な移行及び特定技能制度による外国人材の適切な活用と併せて、AI・ロボット等を活用した抜本的な生産性向上に取り組むこと。加えて、LNG運搬船の国内建造体制の構築がエネルギー安全保障の観点から不可欠であることを明確に位置付けるとともに、国際的な価格競争に対応出来るよう、初期需要の獲得に向けた取組も含め、政府が一体となって建造再開のための必要かつ大胆な対策を講じること。
一.ゼロエミッション船等の建造体制整備・導入支援や制度整備等、海運分野のGX推進に資する船舶の普及に向けて、国際的な価格競争の観点も踏まえ、必要な措置を講じること。併せて、船舶による新燃料の大規模輸送技術の確立に向けた安全基準の策定や、洋上風力発電設備の適切な整備・維持管理に必要な船舶の確保に向けた支援に取り組むこと。さらに、自動運航船の2030年頃までの本格的な商用運航の実現に向けた環境整備等を図ること。
一.海運へのモーダルシフトを強力に促進すること。また、適正な運賃・用船料等の収受、価格転嫁の徹底に向けた環境整備や、船員確保にも資する生産性向上等に取り組むこと。なお、高速道路料金に係る対策については、特定の輸送サービスの基盤を損なわず、陸海空でバランスの取れたものとすること。旅客船事業については、離島航路に係る補助金の増額等、十分な所要額の確実な確保や旅客需要の喚起に取り組むこと。また、フェリー・ジェットフォイルの更新等を促進する大胆な対策を講じること。
一.次世代船舶への対応も含む幅広い視点から、船員等の海技人材の確保・育成に取り組むこと。また、独立行政法人海技教育機構について、養成規模や質は維持しつつも、学校運営等のあり方を見直すとともに、養成に係る負担については官民連携して対応すること。
一.旅客船の安全・安心対策に万全を期すとともに、「海事行政DX」を着実に実行し、申請手続のオンライン化による事業者・船員の手続の合理化等を図ること。
一.国際船舶に係る登録免許税及び固定資産税の特例措置をはじめとする海運税制の充実強化を図り、本年度末に期限が到来する軽油引取税の課税免除の特例措置及び中小企業投資促進税制等についても、それぞれ延長すること。併せて、我が国船主・外航海運事業者が日本籍船を「持ちたくなる、持てる」よう日本籍船保有に係る制度を見直し、日本船主等の競争力強化に取り組むこと。
一.海事産業の重要性や魅力、その強化に向けた国・民間の取組について、官民一体で周知に努めること。
以上