日本成長戦略本部 提言
― 「5つの基本原則」の下、官民の力を結集し「新たな成長」を切り拓く―
令和8年5月28日
自由民主党 日本成長戦略本部
提言
Ⅰ.徹底した投資による「強い経済」の構築と物価上昇に負けない賃金上昇の実現
世界を見渡せば、政府が一歩前に出て、官民が手を取り合って重要な社会課題の解決を目指す新たな産業政策が大きな潮流となっている。各国政府が、大規模かつ長期的な財政支出を伴う産業政策を展開する中、我が国としても、「責任ある積極財政」という考え方の下、これまでにない大胆かつ柔軟な発想で、内外一体の思い切った政策を打ち出すことによって、足元の経済状況に的確に対応しつつ、経済成長を実現する必要がある。
我が国の潜在成長率は、主要先進国と比べて低迷しているが、技術革新力や労働の効率性などを表す数値は他国と遜色がなく、圧倒的に足りないのは国内投資である。優先して取り組むべき17の戦略分野を中心に、様々なリスクを最小化する「危機管理投資」、先端技術を花開かせる「成長投資」の促進に徹底的なてこ入れをしなければならない。そして、この「危機管理投資」・「成長投資」を、「強い経済」の実現と新たな成長につなげるためには、17の戦略分野を統合した総合的展開が不可欠である。
この官民が手を携えた「危機管理投資」・「成長投資」を直接担い、日本経済の原動力となるのは企業である。企業が積極的な投資を行い、中長期的な企業価値を向上させ、その成果を従業員や投資家に広く還元していくという役割を果たすことがこれまで以上に重要になっている。
企業のこうした前向きな行動変容を促すには、政府自身も行動を変えていかなければならない。民間企業の投資判断に先立って、政府が需給両面で予見可能性を高めるべく、複数年度にわたる予算・税制措置へのコミットメントや、投資やイノベーションを促進する需要の創出・拡大に取り組んでいくことが重要となる。
また、官民連携の投資を支える人材・資金の確保も必要となる。日本経済が直面する労働供給制約を乗り越えるため、労働者一人ひとりがその意欲や能力を最大限に発揮して活躍できる環境を整備しつつ、企業の稼ぐ力を高め、物価上昇を上回る継続的な賃上げを実現するとともに、企業の自律的な成長投資を支える金融の力を飛躍的に高めることで、日本の経済成長を牽引していくことが求められている。
その上で、官民連携の投資を大きな成果につなげるためには、国内だけをそのターゲットとするのではなく、グローバルサプライチェーンの強靱化や同盟国・同志国等との連携強化を図ることで、グローバルサウス諸国を含む海外需要を開拓していくことが不可欠である。投資の徹底したてこ入れにより、世界共通の課題解決に資する高付加価値な製品・サービス・インフラの供給力を強化するとともに、重要分野や国際的なアジェンダごとに真に信頼できる有志国等との間で具体的なアクションを積み重ね、新たな国際経済秩序・ルールの構築につなげていくことで、投資と輸出促進を含めた海外需要の確保の好循環を実現し、日本の成長につなげることが可能となる。こうした日本の財・サービスが選択される「信頼できる経済圏」を構築することで、国際秩序が大きく揺らぎ、我が国が、戦後最も厳しく複雑な安全保障環境に直面する中でも、「強い経済」を実現していかなければならない。
こうした考え方について、この日本成長戦略本部は、昨年11月に「日本成長戦略における17の戦略分野に関する5つの基本原則」として取りまとめ、この5つの基本原則に沿って必要となる政策を検討するため、幅広い分野の実務家・有識者から見識を集め、課題の把握とその対応策について議論を重ねてきた。
本提言は、こうした我が党における検討の結果を踏まえて、5つの基本原則に沿って必要な政策を整理したものであり、政府においては、本提言を、政府が今後取りまとめる「日本成長戦略」、「経済財政運営と改革の基本方針(骨太方針)」等に一体的に反映し、態勢を整えるとともに実行に移されたい。当本部も、必要なフォローアップを行っていく。
Ⅱ.成長の契機となる複数年度の視点・取組
国内の設備投資・研究開発投資は実質横ばいで、資本の生産性も低く、主要産業の国際競争力は低迷している。高市内閣が掲げる「危機管理投資」・「成長投資」を始めとする投資の拡大に向けたボトルネックを解消し、投資収益に対する企業の予見可能性を高める必要がある。
(1)供給力の強化に向けた複数年度にわたるコミットメント
「責任ある積極財政」という政府の行動変容と、企業の経営改革という行動変容により、「危機管理投資」・「成長投資」の拡大を進めるため、「危機管理投資」・「成長投資」について、通常の歳出とは別に、予見可能性を持って実施できるよう「新たな投資枠」を創設するべきである。このうち、経済安全保障上、特に重要な分野の投資などについては、複数年度で財源を確保した上で、別枠で管理する政策スキームを検討する必要がある。
なお、償還財源の裏付けのある「つなぎ国債」の発行によって先行的な資金調達を可能としたものについては、債務残高対GDP比やPB等の指標において、経費及び財源の金額を除いて別枠で管理するべきである。
また、高市内閣が示した国内投資をてこ入れするための8つの分野横断的な課題に対応していく取組のうち、スタートアップや中堅・中小企業の稼ぐ力の強化、人材育成、労働市場改革、金融(オンチェーン決済システムに関するものを含む)などを含め、特に「民間企業の投資を引き出す取組」について、「成長投資」として「新たな投資枠」の対象とするべきである。
(2)投資やイノベーションを促進する需要の創出・拡大のための継続的・制度的な取組
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①官公庁や事業会社による調達・購入を通じた需要の創出・拡大
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ⅰ)スタートアップへの需要を創出するアンカーテナンシー型の調達制度の創設等
防衛調達を始めとする官公庁による調達を加速し、需要を創出していく。
そのためには、スタートアップの製品・サービスを、政府がアンカーテナント(民間企業の製品やサービスについて、長期契約で購入・利用することを約束する安定的な大口顧客)となって本格調達につなげることを促さなければならない。スタートアップに集中・連続的な資金を投入すべく、SBIR制度を抜本強化し、スタートアップにとって売上げ計上となる委託契約の形で研究開発段階から一貫して支援[1]しつつ、さらに、本格調達につなげるための「試験導入の新たな枠組み」を創設するべきである。
また、民間企業の調達ニーズにつなげるため、既存の大規模技術実証支援についても見直し・拡充するべきである。あわせて、スタートアップが政府調達に参入しやすくするための契約指針等を策定し、各行政機関による着実な運用を図るべきである。
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ⅱ)積極的な防衛調達による需要の創出・拡大
特に、防衛力強化とスタートアップによるイノベーション創出の好循環を生み出すため、防衛省において、スタートアップに期待する技術分野の定期公表、防衛省版SBIR制度の創設、アジャイル型の調達、柔軟な契約に基づく研究試作の推進、スタートアップとプライム企業とのマッチングや伴走支援、民間資金の呼び水施策、機動的に支出可能な予算措置を含む積極的な防衛調達のための方策について検討するべきである。あわせて、国立研究開発法人(国研)・大学等との連携強化にも取り組むべきである。
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ⅲ)国研等・大企業による需要の創出・拡大の促進
国研等については、研究開発に係る調達手続の運用柔軟化を検討するほか、老朽化した施設・設備の戦略的整備・更新により研究基盤を更に強化するべきである。
大企業については、スタートアップ製品等の本格調達・購買の実現可能性を検証するための実証や研究開発を支援する事業を強化するべきである。
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ⅰ)スタートアップへの需要を創出するアンカーテナンシー型の調達制度の創設等
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②規制改革・規格の導入による需要の創出・拡大
新しい技術やビジネスモデルについて適切に評価し、規制や規格を整備し、見直していくことによって、新たな需要を創出し、拡大していくことが可能となる。
そのため、規制改革関連制度の活用に向けた法律や技術等の専門家による伴走支援の充実、官民の司令塔であるハイレベルフォーラムの機能強化や国際標準活動への助成等の支援を通じた17の戦略分野等におけるビジネスに資する国際標準化への取組推進、戦略的標準化に向けた専門機関等による「伴走機能」の強化とその活用等を通じた取組の「型」(先行分野の取組から得られた知見を整理したもの)の横展開、公共調達におけるJIS規格の更なる活用、国内認証機関の強化に取り組むべきである。
(3)「官民投資ロードマップ」による官民双方のコミットメント
17の戦略分野に係る「官民投資ロードマップ」については、今後の我が国の成長力強化、国内投資の拡大、地域経済の活性化、産業競争力の向上に直結する極めて重要な内容を含んでいる。そのため、政調会長の指示の下、各部会等において、総点検を実施し、必要な提言等を行うとともに、当本部でも「日本成長戦略における17の戦略分野に関する5つの基本原則」に沿った内容となっているか、聴取を行ってきた。今後、政府において「官民投資ロードマップ」を策定し、またそれを実行していくに当たっては、こうした提言等を踏まえたものとすることを求める。
Ⅲ.成長を支える人材の結集
日本経済が直面する労働供給制約を乗り越え、高市内閣が目指す「強い経済」を実現するためには、労働者一人ひとりがその意欲や能力を最大限に発揮して活躍できる社会を目指すことが大前提である。人材なくして投資は実現しないという観点から、人材の結集を図るべく、官民連携の投資を担う人への持続的な賃上げを含む投資、産業人材の育成、そして、それらを支える、労働市場改革を進めていくべきである。
(1)リ・スキリング・産業人材育成施策の充実・強化
我が国では、人口減少と少子高齢化が一層進行しており、これに伴う構造的な労働力不足が一段と深刻化している。また、産業構造の変化により人材需要にも大きな変化が生じている。こうした人材供給制約の中で生産性を向上させ、持続的な経済成長を実現するためには、人への投資を進めていくことが不可欠である。
とりわけ、高市政権が掲げる「危機管理投資」・「成長投資」を実現していくためには、産業界と教育機関の連携強化などにより、17の戦略分野に留まらず、これらを支える建設や医療・介護・障害福祉を始めとした社会インフラ関連分野等を含め、現場人材から高度人材に至る幅広い人材を育成、確保していくことが極めて重要である。そのため、以下のような人材育成の取組を進めるとともに、建設や医療・介護・障害福祉等の分野において、持続的な賃上げを図り、必要な担い手の確保を進めていく必要がある。
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①17の戦略分野を支える人材育成の推進
17の戦略分野や、建設や医療・介護・障害福祉を始めとした社会インフラ関連分野等の業所管省庁と厚生労働省、経済産業省、文部科学省が、業界団体や大学等と連携して、スキルの標準化・可視化から、教育訓練体系の整備、教育訓練プログラムの開発も含めたリ・スキリング支援を一気通貫で行うべきである。人材開発支援助成金も含め、効果的にプログラムの開発が進むような支援の充実について検討するとともに、各分野の所管大臣がプログラムの認定制度を創設した場合、その適切性を所管省庁と厚生労働省が連携して精査した上で、専門実践・特定一般教育訓練給付金の対象とするべきである。あわせて、社会人向け教育プログラムの開発や全学的な体制整備・収益化推進等に取り組む大学等への重点的な支援、社会人による奨学金の活用の更なる向上に向けた検討、スキル・学習歴のデジタル化の基盤構築等に取り組むべきである。各種リ・スキリング・職業関連情報サイトについては、厚生労働省を始め、経済産業省、文部科学省、デジタル庁等の関係省庁で連携し、最終的な一本化を目指し、早期に一体的な提供を実現すべきである。
本格的に投資を実行していく際には、まず、多数のプロジェクトや工事が行われることになるが、人が足りないという理由で前に進まなくなることは許されない。まずは、17の戦略分野の投資促進により需要の高まる工場建設等を担う人材の育成・確保を図り、建設産業の供給力を向上させるため、建設分野において上記取組を進めるとともに、労務費の行き渡りの徹底や入職促進、DX推進に向けた支援を実施するほか、キャリアに応じた技能の向上等につながる資格取得の支援、建設キャリアアップシステムの普及促進を図る建設事業主等への助成等の支援を行うべきである。
さらに、医療・介護・障害福祉分野の現場においても、テクノロジー等を活用して生産性向上を担う人材を育成するため、上記の一連のリ・スキリングに係る取組を推進するべきである。あわせて、これら分野での生産性向上に向け、関係省庁で連携して好事例や支援ツールの収集・整理を行い、ハローワーク等の労働関係機関や中小企業団体などにおける活用を図るべきである。
加えて、医療分野では、本国会で成立した健康保険法等の一部改正法に基づく地域医療介護総合確保基金による業務効率化等への支援や国・都道府県による伴走支援を通じた省力化の着実な実行に取り組むとともに、働く環境の基盤整備等を推進するべきである。介護分野では、AI技術の活用も含め、複数年度にわたる介護テクノロジー等の継続的な導入支援を実施するべきである。障害福祉分野においても、介護分野の取組を踏まえつつ、生産性向上の取組支援を実施するべきである。
その他、建設・物流・交通・宿泊等の社会インフラ関連分野等の現場においても、現場人材の確保は重要であるため、人材育成・担い手確保に向けた取組を行うほか、生産性向上に資する取組を推進するべきである。
また、あらゆる分野においてニーズが見込まれるデジタル人材の育成については、2027年度以降に向けて、政府として目標を掲げて取り組むべきである。
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②人材ニーズ等を踏まえた戦略的な職業能力開発の推進
上記のほか、産業界等と連携した、訓練の中期的な方針の策定や、地域の人材ニーズを踏まえた職業訓練機会の創出など、国及び都道府県における効果的な公的職業訓練の在り方を検討するべきである。
あわせて、エネルギー等の戦略分野等におけるものづくり人材育成のため、産業界と高齢・障害・求職者雇用支援機構が協働した人材育成プロジェクトを実施するほか、全国的なリ・スキリングの機運醸成及び支援策などの情報発信の充実のため、「全世代型リ・スキリング国民運動」を展開するべきである。
さらに、職業能力開発を効果的に推進するため、教育訓練給付金の指定講座の効果把握や申請・審査プロセス等の合理化や、実績・成果の検証を踏まえた教育訓練給付金及び人材開発支援助成金の見直しや支援の重点化について検討するべきである。
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③企業の職業能力開発への支援の充実
企業の職業能力開発を支援するため、生産性向上人材育成支援センター等における人材育成プランの策定支援から訓練の実施まで一貫した企業への伴走支援を強化し、その効果把握も含む支援の方策の検討を進めるほか、産業・地域単位で複数企業が共同で行う訓練を促進するべきである。
こうしたリ・スキリング支援に加え、円滑な労働移動や多様な人材の労働参加を進める上では、企業における人材マネジメントへの支援が重要である。働き方改革推進支援センターを中心として、労働基準監督署やよろず支援拠点等との連携を強化することにより、労務関係のみならず、生産性向上に向けた様々な経営課題の相談にも対応できる新たなネットワークを構築し、中小企業・小規模事業者に対して総合的な支援を実施するべきである。
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④多様な労働者の能力発揮に向けた職業能力開発の推進
非正規雇用労働者等が働きながら学びやすいオンライン職業訓練の推進や、ミドルシニア層を含め、OJTとOFF-JTを効果的に組み合わせた職業訓練機会の確保を進めるとともに、雇用保険を受給できない非正規雇用労働者等に対するリ・スキリングの促進に向け、職業訓練受講への支援の方策を検討すべきである。
(2)大学等における理工農・デジタル系人材育成の強化、文理分断からの脱却
国力の基盤となるのは人材力である。人口減少やAX(AIトランスフォーメーション)の進展の中、不確実で非連続な変化が起こり得る未来に対応できる人材の育成が求められている。特に、AX時代の産業構造の変化に伴い、2040年にかけて、理工農・デジタル系人材や現場人材の不足など人材需要の大きな変化が見込まれる中、文理が分断され理系が少ない現在の学びの構造のままでは、将来の人材需要とのミスマッチが生じる懸念がある。
こうした中で、一人ひとりの意思に基づき能力やスキルを最大限伸ばし、予測困難な時代においても変化を構想し、機動的に対応できる人材を育成することが重要である。
そのため、「高校から大学・大学院等を通した人材育成システム改革ビジョン」を踏まえ、関係省庁で連携し、教育機関が産業界とも協働しつつ「イノベーション」を興すことのできる人材や「現場」を支える人材を戦略的に育成する取組を強力に推進していくべきである。
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①AX時代の産業基盤を支える人材育成に向けた高校教育と高等教育の一体改革
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ⅰ)社会の変化に応じた高校教育改革
「高校教育改革に関する基本方針」として示された「N-E.X.T.ハイスクール構想」を踏まえて各都道府県が策定する高校教育改革実行計画の実現のため、三党合意を踏まえて安定財源を確保した上で、「高等学校教育改革交付金(仮称)」等の新たな財政支援の仕組みを構築するべきである。また、これに先立ち、高等学校教育改革促進基金を各都道府県に造成し、パイロットケースとして先導的な学びの在り方を構築する高校を支援するべきである。
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ⅱ)高校教育改革と連動した高等教育改革
社会・地域のニーズを踏まえた高等教育の実現に向け、大都市の私立大学を含め理工農・デジタル系人材育成の強化等を図るため、これらの成長分野への学部再編の支援や、私学助成の着実な確保を行った上で理工農・デジタル系人材の育成を行う大学等への支援の重点化等に取り組むべきである。また、人文・社会科学系学部のダウンサイジングにより教員1人当たりの学生数を改善することに加え、理数分野併修の促進を通じて教育の質の向上を図るほか、海外留学など国内外の多様性の中で価値を創造する人材育成プログラムを強化するべきである。
また、地域の産官学金の関係者が連携して取り組む、産業、インフラ、医療・福祉等の人材需要を踏まえた高等教育における人材育成やアクセス確保策を支援するべきである。
現在3校に留まる公立の高専の設置を促進するとともに、国立高等専門学校機構運営費交付金を着実に確保し、地域のインフラを支える人材を育成するべきである。
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ⅰ)社会の変化に応じた高校教育改革
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②「成長分野」を牽引する科学技術人材・クリエイティブ人材の育成
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ⅰ)新技術の研究及び社会実装を担う科学技術人材育成のための施策の強化
先端技術領域での競争力を強化するため、産学協働の研究開発を通じた研究者・技術者の育成支援や若手研究者を中心とした新興・融合研究の促進、博士課程学生・高度専門人材の処遇向上・活躍促進、優れた科学技術人材の育成に向けた小中高段階からの先進的な理数系教育に取り組むべきである。また、国立大学法人運営費交付金・科研費の大幅拡充等、基盤的経費と多様な競争的研究費の充実・強化を図るほか、産学官金が活躍する共創拠点としての国立大学法人等の機能を強化するべきである。
国際共同研究の加速を含め、世界トップ人材の受入れや日本人研究者の海外派遣等による国際頭脳循環の強化を図るとともに、先端・戦略分野における国際的な枠組み等により、専門人材やビジネスを担う人材の育成に取り組むべきである。
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ⅱ)産業イノベーションを牽引する研究大学群の形成や国研の機能強化
17の戦略分野を中心とする産業競争力強化に貢献する、新技術立国の核となる新たな大学群の形成に向け、特定分野において特に高い研究力を有し高度な経営を行う大学を認定し、当該分野での研究開発及び社会実装(研究環境の整備を含む)を中長期的に支援する新たな制度を創設するべきである。
国研の国家的課題に向けたミッションを明確化するべきである。また、国家安全保障に資するデュアルユース技術等の研究開発のためのセキュアなオフキャンパス拠点を整備するなど、大学や国研のプラットフォーム機能を強化するとともに、産業技術総合研究所のベンチャーキャピタル(VC)への出資機能の追加、それも活用した国研の技術シーズの普及に取り組むべきである。
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ⅲ)コンテンツの振興を担う人材の育成や裾野拡大
マンガ・アニメ・ゲーム等のコンテンツ分野とともに、我が国のコンテンツの多様性を生み出す歴史や伝統、地域性等に根差した舞台芸術・美術、文化財等の分野における人材育成や裾野拡大に取り組むべきである。
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ⅰ)新技術の研究及び社会実装を担う科学技術人材育成のための施策の強化
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③「人材力」の基盤となる環境整備
固定的なキャリア観の刷新やアンコンシャス・バイアスの払拭に向け、キャリア教育の推進や女子中高生の理系進路選択支援の強化等に取り組むべきである。
次期学習指導要領が目指す主体的・対話的で深い学びの実装や「初等中等教育段階における生成AIの利活用に関するガイドライン」の早期改訂と先進事例の創出・横展開等、AX時代に向けた教育・研究環境の整備を進めることに加え、特定分野に特異な才能のある児童生徒の資質・能力を最大限伸ばす教育の充実に向けた相談支援体制の構築を図るなど多様性の包摂の実現に向けて取り組むべきである。
また、「AI for Science」の推進やそれを支える研究インフラの構築を進めるほか、物価上昇下においても経済的な理由で学生が学びを諦めることがないよう、修学支援に係る制度の着実な実施に向けた検討をすることや、成長を支える人材が心身の健康を維持し、高い生産性を発揮できる状態を維持できるよう、運動・スポーツを活用した健康インフラの構築に取り組むべきである。
(3)労働市場改革の推進
働き方改革関連法の施行から7年が経過した。この間、裁量労働制の見直し、高度プロフェッショナル制度の導入、副業・兼業の広がり等を受けて、働く方々の意識・企業の行動ともに変化が生まれている。例えば、政府による「働き方改革関連法施行後5年の総点検」調査により、「もっと働きたい」と希望する層が約1割存在する一方、時間外労働の実態と上限規制との間に「隙間」があり、現行の労働時間制度が必ずしも十分に活用されていない実態も明らかになった。
こうした状況を踏まえ、労働供給制約下にある中、労働生産性の向上を図るとともに、労働者の希望に応じて、労働移動の円滑化や、心身の健康の維持を前提とした労働参加の拡大を図る労働市場改革を、新たな付加価値を生む投資や事業再編、イノベーションの促進等の産業構造改革と一体で進めていくべきである。
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①円滑な労働移動の促進
生産性の高い成長産業・企業への円滑な労働移動を実現することで、人手不足により成長が阻害されることを防がなければならない。特に、17の戦略分野等の成長分野への労働移動を円滑化するため、スキルの情報や、スキルに紐付いた教育訓練プログラム、職業情報といったデータ連携を強化するべきである。
また、外部労働市場の機能を強化するため、厚生労働省が運営する総合的データプラットフォーム「みんなの労働ナビ」について、各支援制度の申請画面への遷移やAI機能装備等、利便性向上の具体策について本年度内を目途に検討するとともに、経済産業省、デジタル庁を含む関係省庁における情報連携を推進するべきである。あわせて、リ・スキリングの支援等を行う事業主が必要な支援策を活用しやすいよう、雇用関係助成金のDXを進めるべきである。
医療機関や介護施設等への訪問による求人条件の見直しに係る助言や、就職面接会の開催等のアウトリーチ支援を、全ハローワークの最重点事項として実施するとともに、「課題解決チーム」による求人者・求職者双方への一体的な支援の拡充や、AIを含むデジタル技術の更なる活用等によるマッチングなど、ハローワークの機能強化を図るべきである。あわせて、民間職業紹介事業者について、適正な事業者の「見える化」に取り組むべきである。
労働移動を希望する労働者のニーズを踏まえ、失業中の生活保障など労働者の生活と雇用の安定といった制度の役割を維持した上で、労働力がより希少になる中での雇用保険制度における対応について、本年内を目途に結論が得られるよう検討するべきである。
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②多様な人材の労働参加の促進
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ⅰ)柔軟で多様な働き方の実現に向けた労働時間法制等
心身の健康維持と従業者の選択を前提に、柔軟で多様な働き方を実現するため、労働時間法制等に係る政策対応について、夏以降の労働政策審議会において議論を行うべきである。
裁量労働制については、現場の実態や労使双方の立場を十分に踏まえて、健康確保、長時間労働防止、適切な処遇確保などの濫用防止措置を前提に裁量労働制の対象の在り方について、見直しの検討を行うべきである。また、変形労働時間制については、他律的な要因に十分対応できていない現場の実態や、労働者の生活時間や予見可能性の確保にも留意しつつ検討を進めるべきである。また、連続勤務規制や勤務間インターバル制度の法的位置付け、「つながらない権利」の在り方、副業・兼業に当たっての健康確保、テレワークの活用促進などについて、現場の実態や労使双方の立場を十分に踏まえて、検討を進めるべきである。
また、労働時間制度の運用については、「もっと働きたい」と希望する層が約1割存在する一方、時間外労働の実態と上限規制との間に「隙間」があり、現行の労働時間制度が必ずしも十分に活用されていない実態を踏まえて、36協定の締結や柔軟な労働時間制度の活用について、よろず支援拠点等との連携を強化しつつ、「働き方改革推進支援センター」や労働基準監督署による相談支援の充実を速やかに実施することとし、そのために必要な体制整備については2027年度以降も着実に実施するべきである。あわせて、労働基準監督署において、労働者の健康確保を重視した指導を行うこととし、時間外労働を月45時間以内に削減することを求める一律の指導を速やかに見直すべきである。その上で、違法な時間外労働とならないように36協定や特別条項の締結に向けた指導・助言を行うべきである。
これらの施策について、実施後の政策効果を検証し確認できるよう、予めモニタリングとデータ収集を行うためのフォーマットを作成し、厚生労働省と地方支分部局において確実にフォローアップを行うべきである。
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ⅱ)更なる労働参加の促進やスキルと能力を十分に発揮できる環境の整備
働き方にかかわらず、全ての労働者が最大のパフォーマンスを発揮できるよう、メンタルヘルス対策を含む労働者の健康確保を推進していくべきである。
高齢者については、70歳までの就業確保措置や高齢期の処遇改善、労働災害を防止するための安全衛生対策を更に推進する。また、ハローワークの生涯現役支援窓口の専門性向上や、シルバー人材センターでの職務の切出し支援(フルタイムの職務を事務補助といった仕事単位や、時間単位に切り分けて提供し、マッチングを促すこと)に取り組む。さらに、自治体や年金事務所等の関係機関の連携等により、引退した高齢者の労働参加の促進・活躍機会の創出に取り組む。
障害者雇用の「質」の向上に向け、就労意欲のある障害者の能力発揮の促進や、正当な評価・処遇反映等を重視していく旨のガイドラインの策定、優良事業主認定制度の大企業への拡大や認定基準の見直し、手帳を所持しない難病患者の就労促進を含め、雇用率制度等について検討を行う。
外国人については、適切かつ円滑な受入れや秩序ある地域社会の実現に向け、出入国在留管理行政を担う職員の増員や地方出入国在留管理局の組織の拡充を含めた体制強化を行うべきである。また、入国・在留する外国人の実態把握、分析、関係機関との情報連携のため、2028年度中の電子渡航認証制度(JESTA)の導入、2027年3月以降のマイナンバー等による情報連携の実施など、情報の電子化の徹底等のDXに取り組み、在留許可手数料の見直しやJESTA導入による手数料収入により確保した財源を継続的かつ安定的に活用しながら、出入国在留管理の一体的な高度化を実現すべきである。
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ⅰ)柔軟で多様な働き方の実現に向けた労働時間法制等
(4)企業の稼ぐ力の強化による好循環の実現
高市内閣が目指す「強い経済」の実現には、供給力を強化するために国内投資を大胆に促進するとともに、「人への投資」を進めていくことが不可欠である。
春季労使交渉での賃上げ率は3年連続で5%台の高水準となっているが、物価高騰による不確実性が続く中、賃上げの流れを日本社会に「定着」させる重要な局面である。特に、中小企業は、雇用の7割、付加価値の5割を占める日本経済の屋台骨であり、中小企業の成長こそ日本の成長である。賃上げと成長投資の好循環を生み出すことで地域の消費を喚起し、そして次の投資へとつながるメカニズムを早急に構築する必要がある。また、中小企業は、地域経済を牽引し、17の戦略分野を始めとした成長産業のサプライチェーンを支える基盤的な存在でもあり、地域未来戦略で形成される産業クラスターにおいても中小企業が連携していくことが必要である。こうした視点を踏まえ、政策スキームは、中小企業経営者の目線に立ったものとするべきである。一方で、今般の中東情勢やそれによる原油価格高騰などにより、中小企業の賃上げへの影響が懸念される中、不確実性への不安を払拭し、賃上げを持続させるため、全国の中小企業の「稼ぐ力」の強化が不可欠である。
そのため、17の戦略分野への投資やサプライチェーンへの参入、地方を出発点としたAXに取り組み、変化に挑む中堅・中小企業の稼ぐ力を強化していく必要がある。こうした中堅・中小企業の経営者が予見可能性を確保し、賃上げと投資の好循環を実現できるよう、「労働供給制約社会における中堅・中小企業の「稼ぐ力」強化戦略」を策定するとともに、政府として、必要な予算を確保し、従来よりも力強い支援を安定的かつ切れ目なく行う用意がある姿勢を示すべきである。
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①労働供給制約社会における中堅・中小企業の「稼ぐ力」強化戦略
労働供給制約社会では、人も中小企業も数より質であり、日本経済の供給力強化のため、「強い中小企業」を作る必要がある。現状維持ではなく、事業再構築・生産性向上・事業再編等に取り組む中堅・中小企業を徹底的に支援し、必要な連携と再編を促すことで、「稼ぐ力」の強化と賃上げの好循環を目指すべきである。
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ⅰ)価格転嫁・取引適正化の更なる徹底
本年1月より施行された中小受託取引適正化法(取適法)・受託中小企業振興法を着実に執行するため、公正取引委員会・中小企業庁・事業所管省庁の連携や「取引Gメン」の拡充等を通じた執行体制強化と、現場への浸透に向けた一層の周知徹底を行い、あわせて、地方組織を含めた公正取引委員会の体制面の抜本的な強化を図るべきである。また、取適法対象外の取引への規制強化に向け、独占禁止法上の告示の策定等と周知・遵守徹底を図るべきである。
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ⅱ)成長志向の企業や生産性向上への支援強化
成長志向の強い中小企業への支援策を強化するとともに、より多くの地域企業を成長志向に向かわせるメカニズムを構築する必要がある。現場現業型でスピード感があり、AI活用による成長余地の大きい地域の中小企業が抜本的な意識改革によりAXを実現するため、補助事業や伴走支援に加え、地域ごとの支援者等のネットワーク作りを行うべきである。
(日本経済を担う成長志向企業創出のエコシステム構築)
売上高100億円の中小企業の創出メカニズム強化のため、成長投資支援の強化や経営者ネットワークの全国展開等のソフトインフラ整備を行うとともに、成長志向の中小企業の裾野を広げる新たなメカニズム(売上高1~10億円の企業と小規模事業者が対象)の構築や、「ローカル・ゼブラ企業」を育成するための地域のステークホルダーとの連携体制の構築などに取り組むべきである。
創業後の事業成長に向けて、創業時からのAI活用等の経営力向上、政策金融等による成長支援、これらを支える地域ごとの支援者ネットワークの構築に取り組むべきである。
中小企業において特に深刻化する人手不足に対応するため、働き手が事情に応じた多様な働き方を選択できる働き方改革を前提として、今こそ、「働くことの価値」の重要性を再認識すべきである。そのため、前述の労働時間法制等への政策対応を進めるとともに、経営者においても、人材マネジメントに関する取組が各地で拡がっていくための仕組みを検討し、各事業者が実践できるようにすべきである。
特に17の戦略分野について、イノベーションへの投資や、新事業進出、新製品・サービス開発等に向けた支援の中で重点的に支援するほか、輸出に挑戦する事業者への支援を強化するべきである。
さらに、中小企業の成長局面での資金需要に対応するため、民間金融機関と信用保証協会の責任共有割合や保証限度額に係る新たな仕組みの設計や、日本政策金融公庫等と民間金融機関との協調による成長資金の供給を推進するべきである。
(持続的発展を目指す小規模事業者の支援)
商工会・商工会議所等において、プッシュ型の働きかけや経営計画等の策定支援を通じて小規模事業者の経営リテラシーの向上を図り、地域のエッセンシャルサービスを支えるための体制強化を図るべきである。
(AX・デジタル化・省力化の推進)
自治体・金融機関・高専等と連携し、AIの導入意欲のある中小企業とAIサービス提供者、支援者の地域ネットワーク作りを行うべきである。また、デジタル化・省力化・賃上げ等の手法を指南し、中小企業の自主的な変革を後押しする生成AIツールの作成と社会実装に取り組むべきである。
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ⅲ)事業承継・M&A等の事業再編の推進
経営者交代や経営資源の集約等による経営革新を通じて成長を実現するためには、事業承継・M&A、成長型再生を促進する事業環境整備を行う必要がある。
中小M&Aを支援する個人・機関双方での規律向上を図るべく、個人に対する資格制度の創設と、M&A支援機関登録制度の信頼性向上に向けた法制化を行うべきである。また、地域金融機関を始めとする支援機関や自治体等と連携し、事業承継・引継ぎ支援センターを中心とした各地の持続可能な事業承継の支援体制を構築するべきである。加えて、事業承継を契機に「稼ぐ力」強化に取り組む中小企業に対する税制も含めた措置を検討するとともに、後継者の経営能力を高めるための実践的な育成プログラムを開発するべきである。また、今後新たにM&Aに挑戦する経営者に対してはM&Aの検討に資する情報発信やM&A前後の事業統合(PMI)に関する普及啓発を行うべきである。
また、モニタリング強化型特別保証の活用促進や、「地域未来金融アクションプラン(仮称)」の策定・運用等を通じて地域金融機関等による予兆管理や事業再編等に向けた伴走支援を行う体制の強化を図るとともに、再生M&Aの実務を円滑に進めるためのガイドラインの作成を行うべきである。
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ⅳ)伴走支援体制の強化等
賃上げ等に向けた自治体・地域の支援機関・金融機関等によるプッシュ型の働きかけ・伴走支援体制の強化と、自治体向け補助金・交付金を活用した伴走支援モデル事業の創出・横展開に取り組むべきである。
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ⅰ)価格転嫁・取引適正化の更なる徹底
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②「官公需における価格転嫁・取引適正化加速化プラン」の実行等
「中小企業者に関する国等の契約の基本方針」で定められている低入札価格調査制度又は最低制限価格制度の導入・適用などの措置について着実に取り組むとともに、このうち、特に取り組むべき措置が国等(地方支分部局、独立行政法人、国立大学法人を含む)・地方公共団体において2027年度末までに100%実施されるよう、フォローアップを徹底するほか、労務費や原材料費、エネルギーコスト等の上昇を踏まえて官公需の単価・予算を見直すべきである。
また、低入札価格調査制度等の基準については、業種ごとに各種法令を遵守できる適正な率に見直すべきである。同制度の調査対象となる契約は、おおむね予定価格の60%未満の極めて低い入札率であり、原則的に失格とするべきである。そうした運用見直しを実施しても、現状が改善されない場合、最低制限価格制度の導入も含めた抜本的改革も検討するべきである。
ビルメンテナンス業、警備業等に関する契約については、適切な価格転嫁を推進するため、見直し後の調査・価格基準の適用の徹底を図るほか、地方支分部局等を含めて、総合評価落札方式の適用拡大等を推進するべきである。印刷業については、費用の積算等の作成時に活用可能な基準を定め、各省庁及び地方公共団体に周知徹底し、その実行を確保するべきである。
地方公共団体が官公需の価格転嫁を進められるよう、物価上昇等を踏まえて地方財政計画の歳出を増額するとともに、地方公共団体の価格転嫁に関する取組状況について、普通交付税の算定に反映するべきである。また、予算の積算及び執行における物価上昇等の反映状況を含めた価格転嫁の取組状況について、地方公共団体からの報告・情報共有等により継続的に把握するモニタリングの仕組みを構築するべきである。その上で、その状況が芳しくない地方公共団体に対し個別に改善指導を実施し、改善が具体的に確認されるまでフォローアップを行うほか、改善事例の横展開を図るべきである。
また、国の補助事業について、物価上昇下において事業の執行主体が必要なコストを適切に確保できず、事業の質の確保に支障が生じることのないよう、単価の見直しを図るべきである。加えて、事業や事業主体は様々であることから、補助事業の設計においても、一律・硬直的なものではなく、事業の管理面にも配慮しつつ、実施の難易度や質に応じた柔軟な設計を検討すべきである。
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③「省力化投資促進プラン」の着実な実行
「省力化投資促進プラン」において定めた業種ごとのKPIの達成状況についてフォローアップを行って進捗を見える化し、実績に応じて更なる対応策を検討するべきである。
また、省力化投資補助金、デジタル化・AI導入補助金、業務改善助成金等の各種補助金・助成金や、省力化ナビ、各都道府県の生産性向上支援センター等の業種横断的なサポート体制の充実及び活用促進に取り組むべきである。
特に、生活衛生関係営業(飲食業、宿泊業、理美容業、クリーニング業等)については、賃上げ及び生産性向上に向けた都道府県指導センター等による伴走支援や業種ごとの自主的な取組を推進するべきである。
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④同一労働同一賃金の更なる徹底
正社員と非正規雇用労働者との間の不合理な待遇差の解消等を図るため、新たに、家族手当、住宅手当等に関する考え方を明確化する改正を行った「同一労働同一賃金ガイドライン」を本年10月から適用し、都道府県労働局による報告徴収等を通じ、現場における同一労働同一賃金の履行確保に取り組むべきである。
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⑤医療・介護・保育・福祉等における人材確保と賃上げの対応
令和7年度補正予算による医療・介護等支援パッケージや、令和8年度診療報酬改定、介護・障害福祉サービス等報酬改定による賃上げ措置、保育士・幼稚園教諭等の処遇改善を着実に実施するとともに、今後の経済・物価動向等も踏まえつつ、来年度以降も医療・介護・保育・福祉分野の現場職員の他職種と遜色のない処遇改善を推進するべきである。あわせて、必要なエッセンシャルワーカーの確保を含めたサービス提供体制の全国的維持を図るための制度改革に速やかに着手すべきである。
(5)女性活躍の推進
女性活躍は、「人材の結集」の重要な要素である。「強い経済」の実現に向けたイノベーションの創出は、多様な人材の視点があってこそ可能となるものであり、とりわけ女性の活躍が鍵を握っている。
また、戦略分野における女性活躍は総じて進んでいない状況にあり、「のびしろ」が大きい。特定の産業分野や職種が男性のものという思い込み(アンコンシャス・バイアス)が女性の活躍を狭める要因ともなっており、地域を含めて社会全体の意識を変え、インセンティブの付与を含め、企業の行動を変えていくことが重要である。そのためにも、企業の意思決定層や管理職における女性の増加にも取り組んでいかなければならない。
まず、戦略分野における女性活躍の重要性について、官民が明確に共有するとともに、女性、女子学生等にメッセージを発信していくことが重要である。また、意欲ある女性が能力をいかんなく発揮できるエコシステムの構築に向けて、女性活躍推進特別委員会の議論も踏まえ、官民が連携して取組を強力に進める必要がある。
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①「文理の壁」打破と各領域での女性活躍に向けた人材育成
「文理の壁」を超えてイノベーション等を担う女性人材を育成するべく、「理工系女子人材の倍増」に向け、省庁横断で計画を持って取り組むこととし、とりわけ大学の工学系学部の女子学生数の割合について、直近の状況(2025年、18%)から2040年に36%への倍増を目指すべきである。そのため、大学等における学部転換や女子小中高生の理工系進路選択支援の強化等に取り組むべきである。
固定的な女性のキャリア観の刷新やアンコンシャス・バイアスの払拭に向け、キャリア教育等を推進する必要がある。女子児童・生徒、保護者及び教員を対象とした、理工系分野に対する興味・関心を産学官・地域一体で喚起することによる女子小中高生の理系進路選択支援を強化すべきである。また、女子を始め児童・生徒の意欲・能力を伸ばすため、高等教育機関と初等中等教育機関による組織対組織での取組等を推進するべきである。
さらに、入学者選抜において、理工系分野の女性など入学者の多様性の確保に積極的に取り組む大学・高専に対し支援を行うとともに、理工農・デジタル系における女性人材育成を強化するため、女子大学における学部等の新設・拡充を推進するべきである。
戦略分野等への転換を希望する女性の人材育成・就業促進のため、17の戦略分野のニーズに対応したリ・スキリングを強化するべきである。
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②産業分野、業種、職種の壁を越えて女性が全方位で活躍できる環境整備
分野の特性・実情等に応じて、戦略分野の女性の若手研究者・技術者向けの研修会等の開催やネットワークづくりなど、人材育成、新規参入、就業継続等に資する取組の推進や、ロボットの開発や遠隔操作の導入、女性用トイレ・更衣室、事業所内託児所の整備など、体力・性別の壁を越えて活躍できる環境整備の取組を促進すべきである。また、企業からも女性の採用に向けた情報を積極的に発信することも必要である。
地域において、産業クラスターの形成や17の戦略分野に必要となる女性人材の育成・就業・登用等の取組を、目標設定を含めて計画的に行うことが重要である。こうした取組や、地域によっては色濃く残っているアンコンシャス・バイアスの解消に、経済団体、企業、大学等と連携して主体的に取り組む自治体を強力に支援するべきである。
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③女性活躍・就業継続のための環境整備と企業等の行動変容
全ての分野における女性活躍の環境整備を底上げし、ライフイベントによりキャリアを諦めることなく、さらに活躍できる社会を実現することが不可欠である。企業が女性活躍の重要性を認識し、就業継続、待遇改善、キャリアアップなど女性活躍を加速するため、企業向けアウトリーチ・伴走型支援の方策や、女性の就業環境の改善に資するハラスメント対策・健康支援の取組の更なる周知・啓発の方策について今夏までに検討するべきである。また、家事・子育て支援の強化や、男性の育児休業取得促進に取り組む事業主への支援、多様で柔軟な働き方の実現など、仕事と子育て・介護等の両立支援や共働き・共育てを推進するべきである。
Ⅳ.成長を支える資金の供給・確保
17の戦略分野を始めとした成長投資を促進するには、官民が連携して、必要な資金が供給される環境を整備していくことが重要である。これまで取り組んできた「資産運用立国」の取組を更に発展させ、我が国の資金循環をより高い視点から捉えた上で、金融機関の資金供給・成長支援機能の強化など、資金供給の質・量の両面の充実を通じて、金融の力で成長戦略を加速させることが求められている。「強い経済」の実現に向け、以下の施策を始め、日本経済を牽引する骨太な施策を盛り込んだ「新しい金融戦略」を夏までに策定するべきである。
(1)銀行等の資金供給機能・成長支援機能の強化
我が国において企業の成長を促し、支える上で中心的役割を担うことが期待されるのが、銀行を始めとする預金取扱金融機関(銀行等)である。政府・与党は、家計金融資産(約2,350兆円)の約5割が現預金である中、経済成長の成果を国民が享受・実感し、国民の豊かさの向上につなげていくため、個々人の状況に応じた安定的な資産形成を促しているが、これは銀行等の役割低下を企図するものではない。むしろ、銀行等の積極的な貢献なくして資金の好循環は実現しない。
銀行等(資産:約2,400兆円)は、家計や企業の預金等を企業への投融資といったリスクマネーに変換する最大の金融仲介プレイヤーである。また、上場企業のほか、日本企業の99%超を占める中堅・中小企業にも、成長と従業員等への還元といった形で資産運用立国の理念を浸透させていくことが重要であり、こうした企業の大部分は市場との接点を持たず銀行等が支えている。こうした中、我が国で資金の好循環を創出していくためには、銀行等の資金供給機能や成長支援機能をより一層高めていくことが不可欠である。
17の戦略分野等への成長投資や日本企業の事業再構築・再編を金融面から支えるため、大規模化するM&Aや新規事業への対応を含め、以下の施策等により銀行等の資金供給・成長支援機能の強化を後押しするべきである。
- ① 17の戦略分野への投融資について、官民で意見交換を行う場の設置、DBJ(特定投資業務)やJICによる当該分野への投融資方針の策定・整理など、官民連携により成長資金の供給拡大を図るための方策を検討する。
- ② 大口信用供与等規制(同一グループへの融資等を自己資本の25%以下に制限)に関し、大型M&A融資などについて一定の要件下で特例承認の対象とすることを明確化する。
- ③ 株式非公開化やカーブアウト案件への銀行子会社による100%出資を可能とする(現在は事業再生・承継・ベンチャービジネス・地域活性化事業の4類型のみ可能)。他人資本を活用してファンドを運用する際の資本規制を合理化する。
- ④ 銀証ファイアーウォール規制等の見直し(金融機関グループにおける適切な顧客情報管理・利益相反管理・優越的地位の濫用防止、不適切行為に対する厳格なペナルティが前提)や、銀行における一般持株会社の仕組みの活用の是非(預金を原資としないなどのリスク遮断の徹底が前提)等について研究・検討を開始する。
(2)厚みのある金融市場の実現
我が国の資金循環を見ると、欧米と比して銀行等を中心とした間接金融の比重が大きいが、今後、成長投資がより一層活発になっていく中で、近い将来、銀行等のバランスシートのみでは支えられなくなる可能性もある。金融市場全体で資金需要に応えていくため、同時に銀行以外の資金供給経路を多様化・強化していくことが急務である。
このため、資金供給経路の多様化を図るべく、小口・低格付社債の発行を促す規制緩和や社債引受を行う金融機関を支援する制度整備により社債市場を活性化することに加え、貸出債権のうち売買目的のものは、市場リスクによる管理を可能とする制度整備によりローン・セカンダリー市場の活性化を図るべきである。
資金供給主体の多様化を図るため、貸金業の規制を見直し、日本で銀行免許がない外国銀行の協調融資への参加や、適切なモニタリングを前提とした健全なプライベートデットファンドの参入を促すべきである。また、民間ファンドへのJIC等の出資機能等の強化や、金融機関の出資規制・資本規制の合理化を行うべきである。
投資商品の多様化やスタートアップ企業等への成長資金の供給促進を図るため、顧客保護に留意しつつ、プライベート資産に特化した投資信託の枠組みを整備するべきである。
国民に安全・安心なセーフティネットを持続的に提供するため、生命保険契約者保護機構による資金援助等の規模が同機構の補償財源を超えるなどの不測の事態に備えた政府補助の在り方を検討するべきである。
(3)資産運用を通じた国民の豊かさの向上
家計金融資産の約2割を占める保険受給権に係る資金を運用する保険会社(資産:約515兆円)、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)や共済組合等の公的機関(資産:約400兆円)、企業年金(資産:約84兆円)、大学(資産:約11兆円)といったアセットオーナーにおいて受益者の最善の利益を追求した資産運用が行われることで、結果として企業の成長や市場の活性化、良質な金融商品の組成など金融機関における資産運用サービスの高度化につながっていくことが期待される。
経済成長の成果をアセットオーナーの受益者や家計が最大限享受できるよう、公的アセットオーナー・企業年金・大学等の機能向上に向け、以下の施策等により受益者の最善の利益を追求した資産運用を促すべきである。
- ① GPIFにおいて、オルタナティブ投資の上限(資産全体の5%)に向けた取組を進める。具体的には、リスク管理や運用の高度化を進めるほか、毎年度の自己評価を多角的な観点から行う。また、今後のポートフォリオの在り方を検討する。他の公的アセットオーナーにおいても、自らの状況等を踏まえつつ、上記の高度化・評価・検討を進める。
- ② 厚生年金に係る積立金の運用主体の状況の比較や定期的な検証を実施する。
- ③ 企業年金について、運用状況等を比較可能とするシステムを整備する。アセットオーナー・プリンシプルの受入状況に関する実態調査を実施する。
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④ 大学における資産運用の促進・高度化に向けたガイドブックの策定・周知や、好事例の横展開、共同運用の促進等を実施する。
また、これらの取組を支える資産運用サービスの高度化を図るため、金融グループによる外国の資産運用会社の買収を容易にする規制緩和を行うほか、本年4月に発足した資産運用業協会の政策対応力の強化等を後押しするとともに、関係業界と連携して資産運用会社や信託銀行の業務効率化・合理化に向けた検討を行うべきである。
加えて、家計の安定的な資産形成を促進するため、企業型DC・iDeCoの加入者目線に立った制度改善と制度内容に関する広報の充実化、個人向け国債の商品性の見直しや新たな商品の設計を含む更なる環境整備、NISAの継続的な利便性向上と更なる普及・定着に向けた広報を実施していくべきである。また、家計における資産形成・管理の重要性が高まる中で、次期学習指導要領における金融経済教育の記載の充実を含め、各世代・地域に即した金融経済教育を推進するべきである。
さらに、外為特会を始めとする公的部門が保有する資産について、その保有目的等も踏まえつつ、運用改善や有効活用の有用性を検討するべきである。
(4)金融システムを支えるインフラへの投資
金融システムを支える決済基盤について、サイバーセキュリティを確保しつつ、物流・商流・決済の一体化を志向する技術革新に対応した高度化を推進する必要がある。
具体的には、AI・オンチェーン時代の金融の在り方について検討を進め、オンチェーンの決済手段(ステーブルコイン・トークン化預金)の実装・普及に向けた環境整備や、決済のリアルタイム化を図りつつ、デジタル決済との連携等も視野に入れた新たな決済システムの構築を促進するべきである。
また、AI脅威に対する金融分野でのサイバーセキュリティ対策強化に官民で連携して取り組むべきである。
Ⅴ.成長を牽引する企業の経営力の向上
日本企業の株価は10年で3倍を超え、直近は日経平均が6万円を超える中、自社株買いは過去最高水準の約20兆円に達する見込みとなるなど、直近10年間で株主還元が約4倍に拡大している。一方で、人的投資を含めた国内の成長投資はそれほど伸びておらず、企業が稼ぐ力を高めてそれを国内の成長投資や賃上げにつなげる、成長と分配の好循環をさらに加速していくことが求められる。
戦略分野における官民連携の投資を直接担うのは企業である。企業が、その収益を、現預金の増加ではなく、将来の成長に向けた人的投資や設備・研究開発投資、知財・無形資産投資の資金として積極的に活用するための政策対応を強化すべきである。
(1)成長志向型のガバナンス改革を通じた成長投資の促進
日本経済の原動力たる企業が積極的な成長投資を行い、中長期的な企業価値を向上させ、その成果を従業員や投資家に広く還元していくという役割を果たすことをこれまで以上に促していく必要がある。
企業が果断に、そして継続的に成長投資を行っていくために、企業経営はどうあるべきかという視点の下、金融庁、経済産業省、法務省の3省庁が足並みをそろえ、「日本として、成長志向型のコーポレートガバナンスへ転換する」という明確な方向性を示し、政策全体を整合的に進めていくべきである。
具体的には、企業・機関投資家の双方が、短期主義に陥らず、中長期的な企業価値向上を強く意識し、必要な成長投資が実施されていくよう、コーポレートガバナンス・コードを改訂し、経営資源の適切な配分に係る説明や検証の充実を図った上で、企業や投資家の取組をフォローするべきである。
これと併せて、中長期的な企業価値向上のための実務指針として、コーポレートガバナンス・コードの改訂と一体的に「成長投資ガイダンス」を策定し、企業の成長投資の質・量の向上や、成長ステージ等に応じた成長投資と株主還元の適切なバランスの確保、ベストオーナー原則に基づく事業ポートフォリオ転換といった取組を促すとともに、非事業用資産等の成長投資への活用、事業者間連携を促進する環境整備を進めるべきである。また、機関設計の見直し等の株式会社の選択肢拡大や、株主提案権の要件見直しを始め、諸外国とのイコールフッティングを図り、迅速果敢な企業経営に資する会社法の改正を行うべきである。
さらに、知財を戦略的に取得・活用する企業経営を推進し、知財訴訟における証拠収集手続の充実・強化を始め成長投資のボトルネックとなり得る権利侵害を抑制するための法制上の措置の検討や、17の戦略分野における国内外の特許等の知財情報を活用したIPランドスケープの検討、国等が支援する研究開発投資における権利侵害の有無等についての事前調査及び研究開発投資の成果の適切な知財取得、知財に関する集団的な権利行使を可能とする仕組みの検討を実施するとともに、有価証券報告書での知財・無形資産の開示を促進する制度の在り方について方針を示すべきである。
また、企業における役職員への株式報酬の充実に向けた環境整備を進めるほか、企業のリスクマネジメント高度化と投資余力の確保を後押しすべく、自グループのリスクのみを引き受ける保険会社の制度創設について検討するべきである。
(2)他国と比較して遜色ない投資環境の整備
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①あらゆる分野の産業競争力強化の鍵となるAXの推進
AIの価値創出の場がサイバー空間から各産業現場に広がり、世界で企業のビジネスモデル転換や研究開発等のスピードが加速する中、全ての分野の競争力強化の鍵となるのはAXであるが、日本はAIの活用と供給の両面で出遅れている。企業経営から産業構造・就業構造まで、AXを全レイヤーで実現することこそ、最優先の課題である。
世界市場を獲得するグローバル産業だけでなく、AXによるリープフロッグに勝機があるローカル産業も含め、AXによる経済社会構造の変革を後押しする必要がある。
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ⅰ)地方も出発点としたAXによる産業構造・就業構造の転換
生活基盤を支えるエッセンシャルサービスの生産性向上のため、本国会で成立した改正産業競争力強化法に基づく認定エッセンシャルサービス事業者の事業継続コストを軽減するための支援措置を検討するとともに、「AIロボティクス実装ロードマップ」の下でAIロボットの導入を促進するべきである。また、中堅・中小企業向け補助金においてAX投資を重点支援するとともに、自治体・金融機関・高専等と連携し、AIの導入意欲のある中小企業とAIサービス提供者、支援者の地域ネットワークの構築を支援するべきである。
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ⅱ)AX実現に向けたデジタル産業基盤の確保などグローバル立地競争力の強化
AX実現に向け、AIの学習・推論に不可欠な、先端半導体を中心とした計算基盤の整備を推進することに加え、日本が強みを持つ現場(製造業・物流・介護・災害・廃炉等)のデータを収集・加工・精製(AI-Ready化)したデータ基盤を構築するとともに、フィジカルAIの開発基盤となるマルチモーダル基盤モデル開発を推進するべきである。
国内の無形資産投資を促す制度について、その執行状況や効果を検証し、執行可能性、財源確保等の状況を踏まえて見直しを検討するとともに、利便性向上を図るべきである。加えて対日投資の促進を図るべきである。
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ⅰ)地方も出発点としたAXによる産業構造・就業構造の転換
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②経済安全保障上重要な分野への投資環境の整備
経済安全保障の観点から製造基盤を強化するため、汎用品も含む重要な基盤的物資や循環資源、製造基盤の強靱化を支える鋳造・鍛造等の技術要素群、ヒューマノイドなどの今後さらに重要性が高まる物資を支える部素材・技術への支援措置の具体化を図るとともに、製造基盤を支える「エコシステム」(データ、人材、技術、中堅・中小企業)に係る支援等に取り組むべきである。
また、デュアルユースの技術・生産基盤等や、経済安全保障上重要な技術を育成・強化するほか、技術流出対策の強化、貿易救済措置の執行強化を行うべきである。
あわせて、「経済安全保障経営ガイドライン」や「経済安全保障と独占禁止法に関する事例集」の普及により、地政学リスクを踏まえた企業の行動変容を促し、それが投資家や金融機関からも評価されるよう促すべきである。
その上で、経済合理性に委ねると安定供給確保が困難な領域については、国による更なる支援の方策について検討するべきである。
(3)経済の成長と社会課題の解決を同時に牽引するスタートアップの創出・育成
スタートアップは、日本経済のダイナミズムと成長を促し、社会課題を解決する鍵である。2022年の「スタートアップ創出元年」に策定された「スタートアップ育成5か年計画」の下で各種施策を総動員した結果、世界的に市況が厳しくなる中でもスタートアップの数はこの4年間で1.5倍の約25,000社に増加するなど、成果は着実に生まれつつあり、ここからが正念場である。引き続き、飛躍的に成長するスタートアップの数が限定的であるという課題は残っており、スタートアップが「強い経済」をリードしていくためのエコシステムの更なる強化という観点で、必要な政策対応を進めていく必要がある。
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①スタートアップのスケールアップ
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ⅰ)内外からの成長資金の供給拡大
政府系金融機関等による資金供給を強化するため、ディープテック・スタートアップの量産体制整備等のための資金調達に係る中小企業基盤整備機構による債務保証制度を拡充するほか、政府系金融機関等からの更なる資金供給強化の方策について本年度内に検討するべきである。
また、機関投資家からの資金供給拡大に向け、GPIF等の公的機関、企業年金、大学基金等においてVCファンドを含めオルタナティブ投資を促進するための投資環境整備等を進めるほか、国内VCへの資金供給を促進する観点から「ベンチャーキャピタルにおいて推奨・期待される事項」のフォローアップと見直しを行うべきである。
さらに、資金供給拡大に向けた規制改革として、東京証券取引所(東証)の上場ベンチャーファンド市場を活性化すべく、今夏までにポートフォリオ構築期間延長などの要件緩和を行い、NISAを含む個人からの資金流入を拡大するべきである。また、金融機関が有限責任組合員(LP)として出資する場合について、現行法上10年とされる議決権保有制限の例外となる期間を本年度内に見直すべきである。
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ⅱ)出口の多様化
スタートアップが早い段階から、「出口」としてM&Aを視野に入れて経営に取り組むことが重要である。スタートアップのM&A活性化に向け、「M&Aガイダンス」を普及させるとともに、オープンイノベーション促進税制の活用を促すべきである。また、会計上の「のれんの非償却の導入及びのれん償却費計上区分の変更」について、企業会計基準設定主体における検討プロセスが加速されるよう、フォローすべきである。
加えて、我が国において、スタートアップ・エコシステムを更に発展させていくためには、M&A・セカンダリー取引の活性化が重要である。そのため、今夏までにプロ投資家(特定投資家)への移行要件の緩和・明確化を図るべきである。また、特定投資家向け有価証券の譲渡に係る開示規制の緩和を図るべきである。
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ⅲ)グローバルネットワークの強化
起業初期段階から海外展開を志向するスタートアップの育成に向けて「J-StarX」を強化するべきである。また、国内の有望なスタートアップが海外市場に進出する際、国際協力銀行始め政府系機関の海外ネットワークを活用して、資金供給を含む金融・ビジネス両面からの支援を推進するとともに、在外公館においてデュアルユース等先端技術に精通した外部専門家による伴走支援やODAによる支援を実施するべきである。
政府系ファンドから海外VCファンドへのLP出資拡大や「Global Startup EXPO」開催を通じて海外VCからの投資拡大や日本進出を促進するべきである。あわせて、東証等と連携し、海外の有望なスタートアップの日本進出から東証上場までの支援を実施するべきである。
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ⅰ)内外からの成長資金の供給拡大
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②ディープテック・スタートアップの支援
ディープテック・スタートアップは17の戦略分野における技術革新や成長投資の先導的な担い手であり、飛躍的に成長するスタートアップとなる潜在力を有するが、収益化までに長期間と大規模資金を要するため、その壁を乗り越えるための支援の強化が必要である。研究開発から事業化・社会実装に至るまでを切れ目なく支援するため、特に重要となる初期需要創出に資する政府調達を強化する必要がある。また、17の戦略分野を中心に優れた技術を事業化につなげるエコシステムを強化するほか、それを支える経営力の強化と伴走支援体制の充実に取り組むべきである。
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ⅰ)政府・大企業による調達の強化
スタートアップに集中・連続的な資金を投入するべく、スタートアップの製品・サービスを、政府がアンカーテナントとなって本格調達につなげることを促進する必要がある。そのため、SBIR制度を抜本強化し、スタートアップにとって売上げ計上となる委託契約の形で研究開発段階から一貫して支援しつつ、さらに、本格調達につなげるための「試験導入の新たな枠組み」を創設するべきである。
また、民間企業の調達ニーズにつなげるため、既存の大規模技術実証支援についても見直し・拡充するべきである。あわせて、スタートアップが政府調達に参入しやすくするための契約指針等を策定し、各行政機関による着実な運用を図るべきである。
特に、防衛力強化とスタートアップによるイノベーション創出の好循環を生み出すため、防衛省版SBIR制度を創設するなど、政府による調達を強化するとともに、大企業によるスタートアップ製品等の本格調達・購買の実現可能性を検証するための実証や研究開発を支援する事業を強化するべきである。
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ⅱ)優れた技術の事業化
優れた研究成果に基づく大学発ディープテック・スタートアップの創出・育成に向け、科学技術振興機構による事業化支援や事業化人材の育成、出資の拡大、グローバル展開支援のための海外VC等との連携を加速するべきである。
新エネルギー・産業技術開発機構(NEDO)等による伴走支援体制を確立し、研究開発段階から事業化までの一気通貫の支援を17の戦略分野に重点化して強化するべきである。
グローバル・スタートアップ・キャンパス構想を推進するため、フラッグシップ拠点の開所に先立つ先行的活動を本格的に開始するとともに、先端技術研究成果活用推進機構の設立に向けた法制・予算上の措置を含めた具体化及びフラッグシップ拠点の整備を着実に進めるべきである。当該機構には世界トップクラスの研究者やVCの招聘が期待されることから、グローバルレベルの組織運営が可能な多国籍・多様性に富んだ運営体制・事務組織を確立すべきである。
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ⅲ)経営力の強化と伴走支援体制の充実
起業支援、知的財産戦略、事業戦略等の専門人材チームによるNEDOのワンストップ支援を強化し、有望技術の能動的な探索と事業化支援を行うことで、ディープテック・スタートアップの創出と高度化を行うべきである。
J-Startup制度について、選定基準の明確化や公募導入等の見直しを行うとともに、選定企業への伴走型支援や17の戦略分野での成長に向けた重点支援を推進するべきである。
競争優位性を実現するビジネスモデルとそれに連動した知財戦略の構築の支援、VC等への知財専門家の派遣を充実・強化するべきである。
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ⅰ)政府・大企業による調達の強化
(4)地域の成長を牽引する担い手の支援
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①立地競争力の強化
産業クラスター形成などのため、産業立地に必要な公共インフラ(工業用水、道路、鉄道、港湾施設等)等の整備・機能強化に加え、土地利用調整等と連動した分野特有の拠点整備、中堅・中小企業のサプライチェーン形成、産業人材育成を一体的に実施するとともに、産業を支える人材を集め、その活動・交流や生活を支えるまちづくりを推進することにより、「危機管理投資」・「成長投資」につなげていくべきである。また、企業版ふるさと納税の活用促進や利便性向上に取り組むとともに、産業用地整備のための、自治体向け長期低利融資などの支援を強化するべきである。
GXを軸に、コンビナートや脱炭素電源等を核とする産業集積を実現するべく、「GX戦略地域制度」による支援と規制・制度改革を一体的に措置するべきである。
加えて、17の戦略分野における投資促進につながる新たな規制・制度改革措置に向けた国家戦略特区制度の効果的な活用を図るべきである。
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②地域金融力の強化
地域金融機関が、地域経済の「要」として地域企業の価値向上と地域課題の解決に貢献できるよう、投資銀行機能、地域への貢献力、メインバンク機能等からなる地域金融力を強化する必要がある。このため、「地域金融力強化プラン」も踏まえ、地域未来戦略とも連携しつつ、以下の施策を強力に推し進めるべきである。
- ⅰ)金融機関の経営改善支援や事業性融資等に関する専門性の向上を後押しする。
- ⅱ)金融機関によるまちづくりへの参画や「ローカル・ゼブラ企業」等への成長支援を推進する。
- ⅲ)金融機関によるM&Aや事業承継等の支援に係る態勢整備を促進するとともに、更なる環境整備を検討する。
- ⅳ)クラスターの中核企業への重点支援の枠組みとも連携し、中小企業支援の課題等を可視化した「地域未来金融アクションプラン(仮称)」を策定・運用する。
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ⅴ)中小企業支援に資する正確な会計情報等の企業・金融機関間での共有を促す。
あわせて、協同組織を含む地域金融機関に対する検査・監督機能を強化するため、財務局を含め、モニタリング手法の高度化等のために必要な人材育成や、外部人材の活用も含めた人員確保を図るべきである。
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③地域の経済社会を担うスタートアップの創出・育成
日本のスタートアップの資金調達の8割は東京に集中しており、地域からスタートアップを輩出していくエコシステムの強化が課題となっている。地域の経済社会を担うスタートアップを創出・育成するため、全国的に起業家教育を充実させるとともに、地域におけるスタートアップからの調達・実証環境の整備を行い、多様なプレイヤーの連携を通じたエコシステムの形成を図るべきである。
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ⅰ)次世代を担う起業家の育成
学校現場への起業家等の派遣等を通じて、あらゆる教育段階でのアントレプレナーシップ教育の受講機会の拡充を図るべきである。
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ⅱ)地域におけるスタートアップの更なる創出に向けた支援
国立高等専門学校機構本部にスタートアップ支援組織を設置するとともに、各高専への地域連携コーディネータの配置等を促進するべきである。また、地域における高専発スタートアップの支援を強化するべきである。
インパクト投資の手法や市場の確立、「ローカル・ゼブラ企業」等に対するファイナンスの仕組みの構築等により、地域におけるスタートアップへの資金供給を促進するべきである。
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ⅲ)社会課題解決を牽引するスタートアップの実証・調達
全国でスタートアップが持つ技術の社会実装を後押しするため、各自治体における「4号随契」(優れた製品・サービスを持つスタートアップ・中小企業等との随意契約を例外的に可能とする制度)に基づく調達の実態に関する調査を実施した上で、「4号随契」の積極的な活用を促すための助言等による支援とともに、優れた調達事例について他の自治体への横展開を推進するべきである。
また、地域未来戦略に基づく産業クラスターの形成に向けた取組との連携による自治体調達の促進を図るべきである。
国家戦略特区制度の更なる活用を促すため、情報発信を強化するとともに、スタートアップに係る規制・制度改革提案を募集し、その実現を後押しするべきである。
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ⅳ)地域における多様なプレイヤーの連携
「スタートアップ・エコシステム拠点都市」において、海外市場を見据えた事業戦略の具体化や収益性確保に係るハンズオン支援を新たに実施するべきである。
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ⅰ)次世代を担う起業家の育成
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④地域のニーズに応じた人材の育成
地域産業を支える人材育成に強みを有する教育機関である専門学校の教育の質向上を図る取組を支援するとともに、遠隔授業などを柔軟に行うための制度改正に取り組むべきである。また、地域人材育成構想会議の開催等による教育機関と産業界等の連携事例の創出や、地域の医療・福祉、産業、インフラの維持に不可欠な質の高い人材の安定的な養成体制等の確保、産学が協力して設置・運営し学位の授与を行う「契約学科」の取組の推進、企業版ふるさと納税等の活用を通じた産業界から地域の人材育成への投資拡大に取り組むべきである。
Ⅵ.成長を加速する国際連携
戦略分野における官民連携の投資は、国内だけをそのターゲットとしていては、大きな成果を挙げることは期待できない。日本が力強く成長していくためには、世界の成長活力を取り込んで行くことは必須である。国内投資や、グローバルな「危機管理投資」・「成長投資」を通じた供給力の強化と輸出促進を含めた海外需要の確保を循環させてこそ、物価上昇を上回る継続的な賃上げを実現し、日本経済の成長につなげることが可能である。貿易救済措置などの既存の通商ルールを最大限活用しつつ、真に信頼できる有志国等との具体的な連携を通じて、新たな国際秩序やルールを再構築していくことこそが、日本経済の勝ち筋であり、これを実現していく。
(1)グローバルサプライチェーンの強靱化やエコシステムの形成
政府は、企業に対し、それぞれの投資を、関連する内外のサプライチェーンの強靱化やエコシステムの形成、そして、同盟国・同志国等との連携の強化及び経済的な連結性の向上につなげるように促していく必要がある。「日米戦略的投資イニシアティブ」を含む同志国等との投資案件の具体化に加え、17の戦略分野での投資成果を最大化するグローバル市場の獲得のため、国・地域別戦略を構築すべきである。
また、国・地域別戦略の実現に向けて、米国関税対応として重要性を増すグローバルサウスを始めとする海外市場への展開支援、それを支える高度外国人材を受け入れ、育成する企業への支援や受入れ制度・基盤の戦略的整備に取り組むべきである。
さらに、我が国が優位性を持つ技術の海外展開や海外の知見の取込みを外交的に後押しすべく、外交機会の活用や国際連携を通じ、デュアルユース技術も含む信頼できる先端技術エコシステムの共創やスタートアップの海外展開支援、日本人のPI(Principal Investigator:大学等における研究主宰者・責任者)・在外公館を巻き込んだ産学官ネットワーク強化、世界トップ人材の受入れや日本人研究者の海外派遣等による国際頭脳循環、ODAの戦略的な活用に取り組むべきである。
(2)具体的なアクションの積み重ねを通じた国際経済秩序の構築
足下では、WTOを典型とする従来の新自由主義的な国際経済秩序は危機的な状況にある。このような世界情勢を踏まえれば、今後は、重要分野や国際的なアジェンダごとに、真に信頼できる有志国等との間で具体的なアクションを積み重ねていくことで、新たな国際経済秩序やルールの構築につなげていくことこそが重要である。
具体的には、エネルギーの分野におけるアジア・ゼロエミッション共同体(AZEC)などは、日本が牽引する国際経済秩序の形成における重要な要石になってきている。本年4月には、高市総理大臣から、アジア域内のエネルギー供給力強靱化を目的に、原油・石油製品等の調達などの緊急対応への協力と、エネルギー供給体制の強化やエネルギー源多様化等の中長期の構造的対応に両輪で取り組む新たな協力枠組みとして、「アジア・エネルギー・資源供給力強靱化パートナーシップ」(POWERR Asia)が発表された。こうした取組について、東アジア・アセアン経済研究センター(ERIA)や国際エネルギー機関等の国際機関と連携しながら具体化を進めるとともに、エネルギー安全保障、経済成長、脱炭素化の同時実現を目指すAZECにおいて、経済・エネルギー強靱化の視点を強化し、AZEC2.0を実現していくべきである。
また、コンテンツや農林水産物・食品、ファッション、J-Beautyなど日本が競争力を持つ分野における海外の成長市場獲得に向け、JETROや在外公館を含む支援機関の体制を強化していくほか、量子、AI、創薬・先端医療など17の戦略分野における国際展開については、「官民投資ロードマップ」において具体化していくべきである。
さらに、横浜グリーンエクスポを、グリーン技術の産業見本市とすべきである。
加えて、「インド洋・アフリカ経済圏イニシアティブ」の具現化、CPTPPの拡大、経済安全保障に貢献するものを含めたバイ・マルチODAの活用、ビジネス機会創出のための官民フォーラム開催やアカデミアのネットワーク形成を含むグローバルサウス諸国との連携の強化、OECD、G7・G20、国連関連機関等と連携した国際的なルール形成の推進を通じて、「信頼できる経済圏」の構築を図り、進化した「自由で開かれたインド太平洋(FOIP)」にも貢献するべきである。
[1]米国の国防総省やNASAでは研究開発プログラムであっても委託契約が主流、すなわちアンカーテナントとして新たな技術を調達している。受託するスタートアップはこの契約を営業収益(売上)に計上することができ、資金調達の促進につながっている(米国でも補助金は営業外収益となる)。