日本成長戦略本部提言(労働市場改革・人材育成関係)

日本成長戦略本部
令和8年4月9日

日本経済が直面する労働供給制約を乗り越え、高市内閣が目指す「強い経済」を実現するためには、労働者一人ひとりがその意欲や能力を最大限に発揮して活躍できる社会を目指すことが大前提である。

こうした観点から、日本成長戦略本部では、「日本成長戦略における17の戦略分野に関する5つの基本原則」において、「成長を支える人材の結集(ヒト)」を掲げ、戦略分野をはじめとした官民連携の投資を担う人材の確保に向けた議論を重ねてきた。

これらの議論を通じて、政府による「働き方改革関連法施行後5年の総点検」調査により「もっと働きたい」と希望する層が約1割存在する一方、時間外労働の実態と上限規制との間に「隙間」があり、現行の労働時間制度が必ずしも十分に活用されていない実態も明らかになった。

こうした運用面の課題は、中小企業の現場も含め多くの方々の働き方に直結する横断的課題であり、制度改正の議論に先立って優先的に解決すべきものである。

さらに、強い経済の実現に向けて戦略17分野における投資を加速し、持続的成長に繋げるためには、戦略17分野に留まらず、これらを支えるエッセンシャルワーカーをはじめとした分野を含め、現場人材から高度人材に至る幅広い人材の育成・確保を戦略的に進めることが重要である。

そのためには、産学で連携して、各分野における必要なスキル及び処遇を明確化し、これらのスキルを身につけるためのリ・スキリング機会を拡充しつつ、企業でのさらなる処遇確保に繋がる好循環を形成する労働市場改革とともに、次世代育成においても、産業界との連携の下で高専・専門高校等の機能強化、普通高校の特色化を始めとした教育改革を一体的に進めることが不可欠である。

戦略17分野の投資を加速するためには工場建設等を担う人材の育成・確保が不可欠であることから、まずは、建設分野においてこうした取組を具体化するとともに、今後、戦略17分野及び医療・介護分野を含めその他のエッセンシャルサービス分野にも横展開するべきである。

 

こうした考え方に基づき、優先的に取り組むべき事項について以下のとおり提言する。

Ⅰ.労働時間制度の活用促進・運用改善

1.36協定締結や制度・助成の活用支援・周知広報の充実

  • 中小企業・小規模事業者等において、36協定や特別条項が適切に締結されるよう、
    • 「働き方改革推進支援センター」において、36協定や特別条項の締結や柔軟な労働時間制度の活用を支援する専門相談窓口を設けること。
    • 労働基準監督署(労働時間相談・支援班)と働き方改革推進支援センターとのチームにより36協定や特別条項の未締結の企業に対して幅広くアウトリーチ型の訪問支援を行うこと。
  • 上記支援にあたり、よろず支援拠点をはじめ中小企業経営支援機関との連携を強化するとともに、必要な体制整備については令和9年度以降も着実に実施すること。
  • こうした支援の実効性を上げるために、労使双方への制度の広報・周知活動を強化すること。その際、本省と地方支分部局、地域における自治体、商工会議所等の関係機関、社会保険労務士等の専門家との連携強化により、戦略的な広報活動を充実させること。

2. 労働基準監督署における対応の見直し

  • 労働基準監督署において、労働者の健康確保を重視した指導を行うこととし、時間外労働を月45時間以内に削減することを求める一律の指導を見直す。その上で、違法な時間外労働とならないように36協定や特別条項の締結に向けた指導・助言を行うこと。
  • 企業自ら時間外労働の削減のための支援を希望する場合は、その内容に応じ、働き方改革推進支援センターにつなぐこと。

Ⅱ.戦略17分野を支える人材育成の推進に向けて

1.戦略17分野を支える人材(ex.建設人材等)に必要なスキルの取得促進、人材の育成

  • 戦略17分野を支える人材に必要なスキル取得に向けて、政府として新たな教育訓練体系の整備、雇用保険による教育訓練給付金の対象講座拡大等によるリ・スキリング機会の充実、個人・企業双方に対するリ・スキリング受講費用等の負担軽減支援の拡充等を一体的に実施し、戦略17分野を支える人材のリ・スキリングへのインセンティブを強化すること。
  • あらゆる方々にリ・スキリング機会を提供するべく、各省の支援措置の中から、利用者にとって最適なものを選択できるよう、各省の連携を行うとともに、関連する情報を一元的に提供する機能を不断に強化し、利用者にとって利便性の高いものとすること。
  • その際、職業訓練をはじめとしたリ・スキリング支援の運用について、現場の実態やニーズを踏まえたものとなるよう不断の見直しを行うこと。
  • 小中学校段階からの興味関心の醸成に加え、高等学校教育改革促進基金や高等学校教育改革交付金(仮称)を活用した工業高校等の機能強化、普通高校の特色化等を産業界と連携しつつ進めること。

2.建設現場における処遇改善等を通じた担い手の確保、職場環境の整備

  • 公共工事に加えて民間工事における発注者・元請・下請間の取引適正化を通じた現場の処遇改善や担い手の確保・育成について、官民で連携して取組を強化すること。
  • 建設現場における処遇や職場環境の改善状況の見える化を進めるとともに、例えば建設に関連する資格を有しながら必ずしも建設業に従事されていない方をターゲットにした周知を行うなど戦略的な魅力の発信・広報を進めること。
  • 民間工事も含めてICT機器導入等の省力化投資を調査設計から工事施工まで幅広く進めるとともに、建設分野におけるAI・ロボット導入等による生産性向上を行い、現場の魅力向上を図ること。

Ⅲ.施策効果のモニタリング・フォローアップ

いずれの施策においても、実施後の政策効果を検証し確認できるよう、予めモニタリングとデータ収集を行うためのフォーマットを作成し、本省と地方支分部局において確実にフォローアップを行うこと。