デジタル・ニッポン2026

~責任あるアジャイル・ガバナンス~

2026年5月19日
自由民主党 政務調査会
デジタル社会推進本部

はじめに

「責任あるアジャイル・ガバナンス-デジタル時代における日本型統治モデル-」

デジタル技術の急速な進展は、社会のあらゆる領域に変革をもたらしている。AI、データ、ロボティクス、量子技術、次世代通信などの革新は、産業構造や行政のあり方のみならず、人々の生活、価値創造の方法、さらには国家の統治のあり方そのものを変えつつある。このような時代においては、従来型の制度設計、すなわち「完成された制度を前提として長期に固定する統治モデル」では、急速な社会変化に十分対応することが困難である。技術の進化が加速する社会においては、制度もまた変化を前提とし、実証と学習を通じて継続的に更新される仕組みを備える必要がある。

自由民主党デジタル社会推進本部は、この新しい統治のあり方を「責任あるアジャイル・ガバナンス(Responsible Agile Governance)」として位置付ける。ここでいうアジャイルとは、単なるソフトウェア開発の手法を指すものではない。それは、社会の変化を前提とし、

実証を通じて課題を把握し

リスクを可視化し

得られた知見を制度に反映させ

ルールを継続的に更新していく

という、進化する統治の原則である。日本社会には、現場の知恵を尊重し、改善を重ねながら制度や組織を発展させてきた歴史がある。この経験は、急速な技術革新の時代において、社会の安定とイノベーションを両立させるための重要な基盤となる。その実現にあたっては、ハードローとソフトローの適切な組み合わせが不可欠である。法律や規制といったハードローは、社会の安全性と信頼性を担保する基盤である。一方、ガイドライン、標準、ベストプラクティス、産業界との協働によるルール形成などのソフトローは、技術進化の速度に柔軟に対応するための重要な政策手段となる。

これらを戦略的に組み合わせることにより、

規制のサンドボックス制度の活用

官民連携による実証の推進

分野別の社会実装ロードマップの策定

実証結果に基づく制度改善

などを通じて、制度そのものが学習し進化する統治基盤を構築していく。重要なのは、リスクを理由として挑戦を抑制することではない。同時に、無秩序な技術導入を許容することでもない。必要なのは、リスクを適切に管理しながら、社会の実証と学習を可能とする制度設計である。

現在、世界では、技術革新を重視するモデルと、規制によるリスク管理を重視するモデルの間で模索が続いている。しかし、デジタル時代に求められるのは、そのいずれかに偏るものではなく、自由・安全・倫理を調和させながら社会を進化させていく統治モデルである。日本は、秩序を重んじつつ変化に適応し、現場の知恵を制度に反映させながら社会を発展させてきた国である。この経験を基盤として、デジタル時代にふさわしい新たな統治モデルを提示することができる。

自由民主党デジタル社会推進本部は、この責任あるアジャイル・ガバナンスを基軸として、AI、データ、ロボット、自動運転、遠隔医療、次世代インフラなどの分野における社会実装を加速し、制度改革を推進する。技術が進化するならば、制度もまた進化し続けなければならない。日本は、変化を学習に変え、社会を持続的に発展させる統治モデルを構築し、デジタル時代の新しい国家像を世界に示していく。

デジタル社会推進本部

本部長 平井卓也

1.DX by AI-デジタル化のためにAIを使い倒す-

AIが登場するまでの世界において、DXというのは、人間が行っている作業を人間が一つ一つ書き出し、人間が要件を定義し、人間がプログラムを書いてようやく定型的な作業を自動的にできるようにするというものであった。自動化すること自体に莫大なコストがかかり、コストパフォーマンスが合わない領域が官民でも残っていた。

AIが登場した後の世界では、人間が理解できる人間向けマニュアルを対話型AIに読ませるだけで、AIが自ら業務フローを定義し、必要に応じてAIがプログラムを書き、さらには、エージェンティックAIが自律的に業務を行うことさえできるようになった。

エージェンティックAIが広く浸透する可能性が高まっている局面においては、AI対応、AIの活用を前提としないDXの取組は、むしろ遠回りになりかねないので抜本的に見直されるべきであり、従来の意味でのDXを経由せずにそれを実現できるのであれば、遠慮なくリープフロッグを行うべきである。

AIの活動領域は画面の中だけに留まらない。いまや、フィジカルAIとして、我々の現実世界の中にも腕を伸ばしてきて、我々と触れ合い始めている。我々がかつて漫画やアニメで憧れた、親しみをもてるロボットと一緒に遊んだり、仕事をしたりできる日も遠くないだろう。特に、介護・福祉といった領域にもこうした対話型AI、エージェンティックAI、バーティカルAI、フィジカルAIが導入され、サービスの担い手はアドバンスド・エッセンシャルワーカーとして、生身の人間ではないとできない領域に、より集中できるようになるだろう。

このように、人間がAIを駆使してDXを進め、その果実として、様々なジャンルのAIが活動できる領域が広がっていき、人間は、人間ではないとできない領域にさらに注力できるようになる。このサイクルをアジャイルに回せることこそが、我が国の新たな強みとなる。

2025までのデジタル・ニッポンにおいては、数年後に目指すべき社会を想定し、そこからバックキャストして取り組むべき具体的内容を定め、いつまでに何を実施し、どのような効果を得るのかを明確にするべきと提言してきたところであるが、AIをはじめとするデジタル技術の急速な進展・普及を鑑みると、日本・世界の政治・経済・社会の変化のテンポはますます加速することは容易に想定される。このような状況下で、日本が世界の中で生き残るためには、やるべきこと・やらなければならないことである政策目標やロードマップを明確にすることは当然であるが、その実施に当たっては、旧来型の政策手法自体を改革し、アジャイルに制度改正や財政政策を実施すべきである。

2.「デジタル」を前提にした社会へ

2.1マイナンバー・マイナンバーカードの更なる利活用の推進を通じた「新たな景色」の創出

マイナンバー制度の開始以降、マイナンバーの利用範囲は着実に拡大しており、情報連携による添付書類の省略などが進んでいる。

また、マイナンバーカードの国民保有枚数は1億枚を突破し、オンラインで確実な本人確認ができる安全・安心で利便性の高い「デジタル社会のパスポート」として国民に広く普及している。今後、マイナンバーカードを保有することによる利便性を国民一人一人がさらに深く実感できるようにするためには、これまでの前提を打ち破る「新たな景色」の創出に向けた取組が不可欠である。

  • (1)マイナンバーカードの罰則なしの取得義務化へ

    マイナンバーカードが国民に広く普及してきた中、これからは、マイナンバーカードを使うことが当たり前になり、デジタルの恩恵を全ての国民が感じることができる社会を目指すべきである。そのためには、これまでとは次元が異なるレベルでマイナンバーカードによって「できること」を増やすとともに、国民が実感できる利便性を高めていくことが必要である。その際、マイナンバーカードが単に行政で使えるものではなく、民間も含めた社会全体で使えるものとなることが国民の利益に繋がるところ、社会全体の取組にしていくためには、国民全員がマイナンバーカードを取得しているという前提が必要である。このため、デジタル庁及び総務省は、マイナンバーカードを活用したサービスの拡充、民間利用の促進、デジタルに不慣れな方々への支援、広報の強化を進めるとともに、マイナンバーカード取得の義務化に向け、その社会実装の進展状況を踏まえ、法的に義務付ける必要性や実効性について検討すべきである。

  • (2)マイナンバーカードにより認証された情報の横断的連携による申込手続の抜本的効率化

    現在、マイナポータル経由で確定申告等を行う際、例えばe-Taxの利用だけでなく、保険料の控除証明書を発行する保険会社ごとにも都度マイナンバーカードをかざして申し込みを行う手間が生じている。これは、マイナンバーカードのシリアル情報を事業者や国の機関を横断して連携することが、現在の法律によって制限されていることに起因する。国民の利便性を高め、ストレスのないデジタル社会を実現するためには、この法的な前提を見直す必要がある。本人の同意を前提として、シリアル情報を始め、マイナポータル等で一度かざしたマイナンバーカードにより認証された情報を、特定の事業者(民間送達サービス等)にシームレスに連携可能とする法整備・制度見直しを実施することで、反復的な認証作業が不要となり、一度のアクションで複数の手続きが完了するワンストップサービスが実現する。

  • (3)多様な給付手段の提供と住民起点での選択肢の確保

    物価高等への対応のための家計支援、災害時の迅速な給付等において、公金受取口座をフル活用した今までにないスピードでのプッシュ型の財政支援(現金給付)の重要性が高まっている。このため、公金受取口座の登録義務化を検討すべきである。今後はこれに加え、給付付き税額控除にも対応が可能なように、住民の多様なニーズやライフスタイルに寄り添う柔軟な給付体制の構築が必要である。 具体的には、民間での先進的な取り組み事例も踏まえ、「ポイント」「現金(公金受取口座への振込)」「ATMでの受け取り」といった多様な手段を用意し、住民自身が最適な受け取り方法を選択できる仕組みを整備することが重要である。住民側が選べる選択肢を確保することで、確実で迅速な支援の提供のみならず、例えばポイント給付を選択した場合の地域経済における消費喚起など、政策効果の最大化と利便性向上の双方を実現する「新たな景色」を描くことができる。

  • (4)マイナンバーカード利活用の推進

    マイナンバーカードの円滑な取得環境の整備やカード機能のスマートフォン搭載、マイナポータルアプリにマイナンバーカードによる本人確認を身近で簡単にするためのデジタル認証アプリの機能を統合したマイナアプリの新規リリース、マイナポータルの改善に加え、スマートフォンから様々な行政手続ができる「オンライン行政サービス」、より質の高い様々なサービスを一枚で受けられる「行政カード化」により、利便性の向上を推進するべきである。国家資格のオンライン・デジタル化、マイナ保険証と医療費助成の受給者証等との一体化、マイナ免許証のモバイル化など、様々な領域での利活用シーンの拡大に取り組むべきである。特にマイナポータルは、国民のタッチポイントとなる個人向け行政サービスのオンライン窓口であり、実際の利用を増やしていくことが重要であるため、サービスの拡充を進めるとともに、手続のオンライン利用率向上に向けた利用促進に取り組むべきである。また、昨年度、マイナ保険証を基本とする仕組みに移行し、2026年2月現在で、医療機関を受診した人の65.50%がマイナ保険証を利用しているが、デジタル庁及び厚生労働省は、引き続き、利用法やメリット等の周知広報を行い、更なる利用率向上を進めるべきである。

    加えて、2027年4月の対面での本人確認におけるマイナンバーカード等ICチップ読取義務化等を踏まえ、デジタル認証サービスと対面確認アプリを用いてマイナンバーカードの民間分野における利活用を加速させ、デジタル公共インフラとして更なる定着を目指すべきである。

  • (5)「「公正」「公平」「迅速」な給付を実行するための給付システムの構築に向けた緊急提言」への対応

    デジタル庁の創設には、菅義偉総理(当時)の「新型コロナ感染症への対応の中、行政サービスや民間におけるデジタル化の遅れが浮き彫りになりました。思い切ってデジタル化を進めなければ、日本を変えることはできない。これを強力にリードする司令塔が必要である、こうした思いで、デジタル庁の創設を決断いたしました。」という強い思いがあった。そうした経緯を踏まえれば、新型コロナウイルス感染症で浮き彫りになった「デジタル敗戦」を我が国は決して繰り返してはならず、災害やパンデミックなどの緊急事態の発生も念頭に、国が直接「困っている方に困っているタイミングで必要な手を迅速に差し伸べる給付」を行うことを可能にする給付インフラの構築が急務であり、あらためて昨年12月の「「公正」「公平」「迅速」な給付を実行するための給付システムの構築に向けた緊急提言」において述べたように、高市政権が掲げる給付付き税額控除の実現に向けた議論は、あるべき給付インフラを構築する絶好かつラストチャンスであると認識の上、国主導でしっかりと対応することを求める。

    特に、具体的な給付に係るシステム等に関しては、国が主導し、企画・立案・設計は当然ながら、整備・運用までデジタル庁が担うべきである。また、その際は、必要に応じた法令改正も決して躊躇することなく行うとともに、平時から必要な備えを行っていくというデジタルガバメントのあるべき姿の実現に向けて、必要な経費を確保するべきである。

2.2事業者関係のデジタル化

  • (1)国が主体的に整備するサービス
    • ①GビズID

      GビズIDは、当該法人が日本法人として登記されていることを電子的に証明できる国の基盤であるが、法人の設立や、役員の交代等の情報が直ちにGビズIDシステムに反映されるようにはなっていない。法人の設立や、役員の交代等が法務局に届け出られ、受理された場合、法人ベース・レジストリを経由して、GビズIDシステム上も直ちに最新の情報に更新されるようにすべきである。現時点では、行政サービスを行うシステムのみと接続しているが、できる限り早期に民間サービスとも連携すべきである。

      また、EU等で電子的な法人・個人事業主に関する官民のウェブサービスにおける本人確認手段として相互運用が可能になるよう、平素から相互の規格について情報交換や、ハーモナイズを行う等の取組を政務レベルにおいても定期的に積み重ねるべきである。

    • ②Jグランツ

      国が予算を確保し、交付金の形で自治体に配布し、自治体が補助金を執行するタイプの補助金があるが、国費が1円でも入っている補助金については、Jグランツの活用を義務化すべきである。これにより、活用が可能な補助金を探している事業者は、自らの手元にあるAIに対し、Jグランツ上で検索を行うように指示するだけで済むようになる。また、そのためには、Jグランツ自体を周知し、さらなる利用促進を図るべきである。

    • ③Gビズポータル

      Gビズポータルは行政手続/補助金横断検索、電子ロッカー、手続ジャーニーからなる。Jグランツ上に掲載された情報は、Gビズポータルの補助金横断検索にも反映されている。

      デジタル庁は、各府省庁及び各地方公共団体の協力を得つつ、全ての府省庁及び地方公共団体の行政手続及び補助金をGビズポータル上で検索を可能にすべきである。そこには各手続きの概要や申請様式が、官民のAIからも読み取りが可能なように並べられ、手続きが簡素化されているか、アナログ部分が残っていないか等を検証可能なようにされているべきである。

      電子ロッカーは、GビズIDでログインができ、事業者、士業等、行政機関が共同で活用できるWEB共有フォルダであり、チャット欄も具備されている。官民の関係機関は、自らが所管する手続きを電子ロッカー経由で、事前相談、受理、証明書等の交付が可能な状態にすべきである。電子ロッカーにおいては、もはやフォームを作成する必要はなく、従前のワードやエクセルの申請様式をそのまま用いることができ、操作感も既存のファイルアップローダーとほぼ同じであり、かつ、行政機関側の費用負担もない。よって、BPRができていない、標準化ができていない、予算がない等の理由で電子ロッカーに対応ができないという理由は成立しえない。

      また、電子ロッカーを対話型AIアプリ経由でアクセスしやすくし、経営者がスマホ内の対話型APIアプリに日本語で指示を出すだけでロッカーに格納された情報を分析したり、申請書の草案を作成させたりができるようにするべきである。

      手続ジャーニーは、複数の国・地方公共団体の行政機関にまたがる、一連の手続きを並べるものであり、現時点で、創業、カフェの開業、フードバンクの認定手続きが掲載されている。行政手続きには、異なる行政機関で、別の行政手続きを先に行い、その証明書類の提出が必要なものがあるが、先行する行政手続の証明書類が紙でしか交付されない等の理由で、後続の手続きも紙でやらざるを得ない場合が存在している。また、特定の業界団体から「この手続きが煩雑である」との批判があり、政治がヒアリングを行っても、複数の府省庁間で見合いが発生し、結局何がボトルネックになっているのかを発見することが困難であることがあった。このような場合に、関係する行政機関が集まって、事業者が実施する一連の手続きを書き下すことで、どの行政機関のどのプロセスが阻害要因になっているのかが「見える化」される。現に多くの批判が発生している行政分野においては、直ちに手続きジャーニーの作成に取り組むべきである。

  • (2)事業者自身のDX推進

    中小企業をはじめとする事業者の経営改善・生産性向上に着実に結びつけるべく、決済や、請求書・納品書のやりとりなど、取引先との接点となる領域において、重点的にDXを推進するべきである。具体的には、納品から金銭の移動までの支払いスパン、請求書の消し込み処理、納品書と現物の間の検品等で、数日から数か月単位のタイムラグが発生している領域においては、運転資金の確保、迅速な需給対応、産業自体の競争力の維持といった観点から各業界としても一定の取組がなされることが期待される。

  • (3)事業者がDXを推進するための環境整備
    • ①あらゆるチャネルを活用した、事業者のDX支援

      中小企業庁及び業所管省庁は、本省、地方出先機関、独立行政法人、関係団体、各種事業等のあらゆるチャネルを総動員し、事業者が、行政機関への手続きや、日常の定型的な業務をデジタルで行えるよう、デジタルデバイドを解消するべきである。また、「先ず隗より始めよ」という通り、事業者に日常的に接する官民の職員が普段から対話型AIアプリ等のデジタルツールを普段使いし、その便利さを自ら事業者に伝えることができるようになるべきである。

    • ②事業者のDXを阻害する要因の排除

      事業者が、行政手続きや各種の規制によりDXが阻害されていると感じた際、「アナログ規制見直し」や、「規制改革・行政改革ホットライン(縦割り110番)」といった改善要望の仕組みがあるが、現行の仕組みにおいては、議論の抽象度が高すぎたり、回答内容が巨大な「ネ申(かみ)エクセル」であったり等、依然として課題が残っている。このため、事業者がDXを阻害する要因を発見した際は、Gビズポータル上で改善を求める手続き・規制を特定し、Gビズポータル上で改善提案を行えるようにし、優先的に対処すべき手続き・規制については、デジタル庁が司令塔機能を発揮し、各府省庁に現状の姿をGビズポータル上の「手続きジャーニー」の形で整理させ、そのバージョンアップの形で、改善の過程を公開するべきである。

    • ③事業者のDXを推進するための責任分界の設定

      各業所管省庁は、それぞれが所管する業種において、いつまでに、DXをどの水準まで推進させ、生産性をどの程度向上させるのかの目標を設定し、その推進に対して一定の責任を担うべきである。また、その目標に対してどの程度まで到達しているかを、日本標準産業分類のコードに紐づけてダッシュボード化し、公開するべきである。また、各業所管省庁の地方出先機関においては、当該業種の地域別目標に対して同様に責任を担うべきである。また、目標の設定においては、基本的なDX、対話型AIの導入、エージェンティックAIの導入、フィジカルAIの導入において、分野別×レベル別に分け、業種を跨いでの比較が可能なように標準化された指標を用いるべきである。

2.3行政関係のデジタル化

  • (1)国のDXの推進
    • ①ガバメントクラウド、ガバメントソリューションサービス(GSS)の徹底活用

      ガバメントクラウドについて、各府省庁、地方公共団体、独立行政法人等、公共SaaSによる利用を拡大するため、新規利用の支援を実施するとともに、ガバメントクラウドの利用が増加したことを踏まえ、大規模なクラウド環境の効率的な管理の仕組みを実施するとともに、普段から安定した運用を行い、災害時であっても事業継続が可能となるような仕組みを整えるべきである。また、ガバメントクラウドに関する我が国の自律性を強化するため、日本企業の提供するクラウド(国産クラウド)上での公共向けSaaS開発を促進するとともに、データの暗号鍵の生成・管理を国産クラウド上で行える機能など、国・地方公共団体等の情報システム向けに国産クラウドの利用環境を充実させ、公共分野で率先して利用を進めるべきである。

      ガバメントソリューションサービス(GSS)について、府省間ネットワーク、ガバメントクラウド等への接続、LAN環境等において、利用機関やユーザー数の増大や高度化するセキュリティ脅威、首都直下型地震等の激甚災害のリスク等に適切に対応し安定的なサービス提供を行うため、各機関の協力を得つつ、技術進展を見据えた検討を行い、機能強化及び運用保守体制強化を進めるべきである。

      また、ネットワークは、「国・地方を通じたデジタル基盤」として欠くことのできないものである。2030年頃には、GSSやLGWANの次期更改時期を踏まえ、国・地方のネットワーク基盤の共用化が行われ、ネットワークの効率性が向上し、国民・住民に、国・地方の行政サービスを、柔軟かつセキュア、安定的に提供可能な国・地方の新たなネットワークに移行できることが必要である。このため、国のGSS環境を地方公共団体で活用することも含めて、国・地方・事業者の負担やリソース不足等も考慮したスケジュールを基にバックキャスティングで必要な検討等を行うべきである。

      なお、パブリッククラウドやAI接続に関するネットワーク要件の検証が自治体ごとに個別に行われており、検証プロセスの重複が生じていることから、検証・承認されたセキュリティ構成や接続手法を「リファレンスアーキテクチャ」として公表し、実績ベースで横展開できる仕組みを構築するべきである。

    • ②ガバメントAIの推進

      行政分野におけるAI利活用は、国家競争力を左右する中核的な取組であり、サービスの質の向上、業務の効率化に資することに加え、人口減少に伴う担い手不足への対応や、地方自治体・民間事業者による実装を後押しすることで、国内AI市場の形成・拡大にも繋がる。

      このため、デジタル庁及び総務省を始めとした関係府省庁は、「AIホワイトペーパー2.0」に基づき、必要な措置を講じるべきである。

      デジタル庁が開発・整備した生成AI利用環境「ガバメントAI源内」の2026年度以降の各府省庁における本格運用に向けては、国会対応、旅費業務など職員が負担感を感じるものやニーズに沿った行政実務に特化したアプリを充実させ、職員が自然と普段使いするようになることが重要である。

      また、各府省庁の業務・働き方のデジタル化がAI活用によって加速していく中、国会のデジタル化の遅れがその流れを阻むようなことがあれば、国家公務員の忌避に拍車をかける可能性が高いことに加え、もはや各府省庁に対してデジタル化や業務効率化を求める説得力が無くなってしまうことから、国会議員である私たち自身への自戒も込めて、国会のデジタル化を加速していくことが必要である。

    • ③外国人政策

      外国人政策については、JESTA導入による出入国管理DX・マイナンバーを活用した関係機関による情報連携の更なる促進を含む在留管理DXの推進を行うべき等の党提言を踏まえ、本年1月に取りまとめられた 「外国人の受入れ・秩序ある共生のための総合的対応策」において、令和10年度中のJESTA導入、令和9年3月以降のマイナンバー等による情報連携を実施するなどとされた。入国・在留する外国人の実態把握、分析、関係機関との情報連携のための情報の電子化の徹底等のDXに取り組み、出入国在留管理の一体的な高度化を実現すべきである。

      また、国民に対して適切に公開すべき土地所有等情報を集約したデータベースとして不動産ベース・レジストリを整備し、行政機関等や国民が適切にアクセスできる仕組みを構築するべき等の党提言を踏まえ、前記総合的対応策において、令和9年度以降の仕組みの構築を検討することとされた。国民の不安の解消、国民生活や経済活動の基盤の安全を図ることが可能となるよう、不動産ベース・レジストリを土地所有等情報の一元的データベースとして機能させることが重要であるため、令和9年度以降、できる限り早期に提供できるよう、バックキャスティングで、工程表に基づき取組を実施すべきである。

  • (2)地方公共団体のDXの推進

    急速に人口減少社会に突入する中、自治体や事業者が個別に情報システムを維持管理し、更にセキュリティの確保・高度化や大規模災害に備えた対策を実現することは人材面・財政面からも限界であることを踏まえ、自治体の人的・財政的負担を軽減し、自治体が地域の実情に即した住民サービスの向上に注力できるようにするとともに、新たなサービスの迅速な展開を可能にすることが重要である。

    • ①地方公共団体情報システムの統一・標準化

      地方公共団体情報システムの統一・標準化については、2025年度までの標準準拠システムへの移行を原則としてきたが、期限までの移行ができず、2026年度以降の移行とならざるを得ない特定移行支援システムが2025年末時点で25.9%、特定移行支援システムを1つでも有する地方公共団体が52.3%に上り、自治体情報システムの標準化・ガバメントクラウド移行後のシステム運用経費についても、地方団体から大幅に増加するという懸念の声が上がっている。このため、デジタル庁及び総務省は、引き続き、自治体情報システムの標準化・ガバメントクラウド移行後の運用経費に係る総合的な対策に基づく支援や地方公共団体情報システム運用最適化支援事業費補助金等の必要な措置を講じるべきである。

      一方で、地方公共団体情報システムの統一・標準化は不可避の取組であり、各地方公共団体において標準準拠システムの運用が本格的に始まる中、円滑な運用が行われるとともに、目指してきた効果が発揮されるかが重要である。このため、デジタル庁及び総務省は、特定移行支援システムの速やかな移行を目指して必要な対応を行うとともに、円滑な運用に向けた必要な支援と目指してきた効果が発揮されているか把握を行うべきである。

    • ②国と地方の役割分担

      地方公共団体情報システムの統一・標準化に取り組んできた背景には、住民サービスの向上や行政の効率化、持続可能な行政サービスの確保を目指す考え方がある。こうした考え方は、今後の国・地方公共団体が推進するDXにおいても引き続き共通的な方針とし、各地方公共団体で個別のシステムを調達するのではなく、共通化や標準化を基本としつつ、共同調達・共同利用や相互運用性の確保を推進していくべきである。なお、共通化や標準化は、国・地方公共団体双方にとって、真に必要性が高く、効果が大きいものであるかが重要である。

      このため、内閣官房、デジタル庁及び総務省は、関係府省庁と連携して、共通化対象候補の選定に当たり、地方公共団体の運用実態を踏まえたニーズや導入後の効果を踏まえるとともに、共通化方針の策定においても地方公共団体の規模を問わず導入可能なものであるかも含めて検討し、そのシステムについて、各地方公共団体において計画的な整備・運用を推進することができる具体的な方針を示すべきである。その際、総務省は、地方支分部局を活用して国・地方を通じたBPR上の課題を調査し、共通化対象候補を国側からも提案すべきである。

      なお、共通化を進めるに当たっては、非効率な既存業務の単なるデジタル化で終わることなく、DXとして真価を発揮するためのBPR(業務プロセス改革)を不可欠の要素として位置付け、今後はAI活用も視野に入れた業務・制度の見直しを行うべきである。総務省は、各府省庁の共通化の推進に当たり、業務・制度の見直しを積極的に支援すべきである。

      さらに、デジタル庁及び総務省は、各地方公共団体において主体的に整備を検討すべきシステムやサービスについて、共同調達・共同利用や相互運用性の確保を推進すべきである。

    • ③地方公共団体のDXを推進するための体制

      各地方公共団体が団体内で十分なデジタル人材の確保を目指すことは、いわゆる「一人情シス」問題として顕在化している小規模団体のみならず、今後はより多くの団体において現実的な選択肢たり得なくなることが見込まれる。加えて、社会全体としてデジタル人材が限られる中、その効率的な活用を図ることが不可欠である。こうした状況を踏まえれば、システム整備において共通化や共同調達を基本的な方向とすることと同様に、デジタル人材の確保・活用についても、個別団体による確保を前提とするのではなく、都道府県単位あるいはさらに広域での連携を具体的に検討すべきである。このため、デジタル庁及び総務省は、都道府県及び広域連携の枠組みを通じた各地方公共団体へのデジタル人材支援について具体的に検討し、必要な体制を整備するべきである。

    • ④各府省庁の役割分担

      内閣官房、デジタル庁及び総務省を中心に各府省庁において、地方公共団体のDXを支援する取組が行われており、その支援に当たっては、「地域DX」「自治体DX」「地域社会DX」など様々な表現が使われているため、地方公共団体の立場からは支援施策の全体像が把握しにくく、活用しづらい状況となっている。このため、内閣官房、デジタル庁及び総務省は、まずは3省庁の取組を整理し、施策間の関係性及び役割分担を明確化するとともに、地方公共団体がDXを推進するに当たって必要な情報や支援の取組に一元的にアクセスできるポータルサイト等を整備するべきである。

      その際、デジタルマーケットプレイス及びデジタル地方創生サービスカタログ等のサービスカタログサイトが乱立し、地方公共団体や事業者にとって分かりづらい状況となっていることを踏まえ、デジタル庁は、各サービスの関係性及び役割分担をあらためて整理するとともに分かりやすく広報する等、地方公共団体が優れたクラウドソフトウェア等の民間サービスを迅速かつ簡易に一気通貫で調達できる環境を整備するための必要な措置を講じるべきである。

    • ⑤地方公共団体に対するDX支援措置

      地域未来交付金デジタル実装型について、デジタル田園都市国家構想交付金以来、他の地域等で既に確立されている優良なモデル・サービスを活用して迅速に横展開するものや先進的な取組を支援するものとして、毎年、多くの地方公共団体で活用されており、地方公共団体の地方創生及びデジタル化やDXにおいて重要な役割を果たしてきている。特に、人口減少が進む地方において、地域未来戦略本部が掲げる地方が持つ伸び代を活かし、国民の暮らしと安全を守るためにデジタル化やDXは不可欠なものであるという現実を踏まえれば、引き続き大きな役割を果たす必要がある。このため、内閣官房は、地域未来交付金による地域及び地方公共団体のデジタル化・DX支援を引き続き行うべきである。

    • ⑥地方発サービス・モジュールの展開

      東京都/GovTech東京において、生成AIを活用し、職員が業務アプリを作成したように、生成AI活用の本格化とともに、各地方公共団体において現場ニーズに即した優れた業務アプリが生み出されていく可能性が十分にあり、全国で活用することができれば、地方公共団体のDXの推進にも寄与する。このため、デジタル庁及び総務省は、業務アプリを作成した団体へのインセンティブ設計やアプリをOSS化した場合のメンテナンス主体やそれを前提とした契約の在り方なども含めて、地方公共団体により生み出された業務アプリを他の地方公共団体でも活用できる仕組みを検討すべきである。

      また、新規の公共SaaS調達・開発においては、API公開やOSS化も積極的に推奨するべきである。

      併せて、日本が誇る質の高い行政実務を、特定のシステムに依存しない転用可能な業務部品(モジュール)として整理し、ASEAN等の海外展開も視野に置きつつ、DMP等での国内流通を推進するべきである。

  • (3)地方公共団体のDX推進のためのアナログ規制見直しの推進強化

    非効率な既存業務の単なるデジタル化で終わることなく、DXとして真価を発揮するためにはBPRが重要である。地方公共団体におけるDX推進のために、デジタル化阻害の一因となっているアナログ規制を見直し、テクノロジーの進展に適応したレギュレーション環境、利用者の視点に立った環境の整備が重要である。2025年度末時点で、アナログ規制の点検・見直しを「実施済」又は「実施中」の団体は34%、「未定」の団体は約半数となっているため、デジタル庁は、地方公共団体に生成AI活用のためのプロンプト例を提供したように、作業プロセスを可能な限り効率化・自動化する方策を引き続き提供するとともに、「未定」団体が町村に多い実態を踏まえ、現地に赴き、各団体の事情に寄り添って支援を行う伴走支援を強化し、取組を加速させるべきである。

2.4個別分野関係(準公共分野と民間への波及効果が大きい重要分野)

  • (1)子育て

    こどもDX分野においては、こどもまんなか社会実現のためのDX化の入り口として、保育分野でのワンストップ実現に向けた保活情報連携基盤やワンスオンリー実現に向けた保育業務施設管理プラットフォームの本格稼働を迎える。保育施設のデジタル化は、地域や施設規模などによって導入格差が生じている状況もあることから、リテラシー向上やデバイス配置支援等、現場実態に応じた更なる環境整備が求められる。また、質の高い民間事業者が積極的に連携基盤に接続するためのインセンティブの設計や、自治体ごとに異なる給付・監査に係る業務負担の軽減など、政府システムの全国展開段階に向けて、民間事業者の円滑な接続を促し、また、一部の地域や施設が取り残されることのないよう、自治体・施設・民間が足並みを揃えて連携を推進していく必要がある。将来的には、保育データを含むこどもに関わる様々なデータの連携を通じて、施設や自治体の業務負担軽減にとどまらず、デジタルの恩恵をこども・保護者に直接還元する「こどもまんなか社会」実現のためのDXに昇華させていくことが求められる。

  • (2)建設

    建設分野においては、引き続き、i-Construction 2.0の取組を加速し、新技術やデータの活用により調査・設計・施工・維持管理といった建設生産プロセス全体の高度化・効率化を進め、建設現場の抜本的な省人化対策に取り組むとともに、機器・システムのAPI連携を可能とする共通データ連携基盤を国土交通省主導で開発するべきである。その際、既存の「使える」データではなく、実際の現場で必要なデータを有効活用していくことが重要である。また、取得されたデータを国が一元管理し、公共利用・災害対応・老朽化対策・民間活用など多目的に二次利用する仕組みを整備するとともに、現場の民間企業への支援や技術者派遣等、地方自治体への支援を行うべきである。

  • (3)物流

    デジタルサービスは、バーチャルの世界だけでは完結せず、アナログの世界とのタッチポイント、国民といかにフィジカルで繋がるかが重要であり、全国に張り巡らされた郵便局のネットワークは行政サービスや拠点の維持が困難なサービスを補完する役割(例えばオンライン診療等)のほか、デジタルに不慣れな方々の支援など、様々な機能を果たす地域の拠点として大きな可能性を持っている。このような可能性を踏まえれば、これまでも物流業界の人手不足対応に向けて郵便局のデジタル化は窓口業務などを中心に行われてきているが、今後、さらに各種AI技術を活用した集配業務も含む業務全体のDXを拡大し、デジタルとアナログの両世界のタッチポイントとしての体制整備に努めるべきである。特に、地方公共団体の支所や出張所等が閉鎖される中、郵便局のネットワークの行政サービスを補完する役割は拡大しつつあり、地方公共団体からのマイナンバーカードの交付手続を始めとする受託業務の更なる拡大が期待される。このため、総務省は、郵便局と連携して、国民の利便性を維持・向上していくために必要な措置を講じるべきである。

  • (4)金融全般

    金融分野におけるデータ利活用を推進することにより、家計の収支管理やライフプランの設計・点検を容易にするとともに、一人ひとりのニーズに合ったサービスを選ぶことができ、多様な幸せが実現できる社会を実現する。このため、関係省庁において、次の対応を行う。内閣官房は、その状況について適切にフォローアップするとともに、デジタル庁と連携し、適切な対応を行うべきである。

    金融庁は、個々人がライフプランの設計・点検を容易に行えるよう、本年2月に金融経済教育推進機構(J-FLEC)に設置した「家計の見える化検討会議」において、金融資産や年金の情報の集約・可視化するため、可視化が必要なデータとその取得の方法について整理を行うべきである。

    経済産業省は、クレジットカード分野におけるAPI連携を推進するため、政府目標として、「2028年度末までに取扱高9割程度を占めるクレジットカード会社がシステム初期投資を完了し、少なくとも自社以外の1社以上とAPI接続すること」を設定し、目標達成に向け大胆な投資促進税制や中堅等大規模成長投資補助金、新事業進出・ものづくり商業サービス補助金等の活用をインセンティブとして、関係団体や協議会での議論を進め、必要に応じAPIガイドラインや契約書雛形の改定も含め、官民での取組を推進するべきである。

  • (5)その他

    上記のほか、医療分野、教育分野及び農業分野については、デジタル・ニッポン2025の提言を踏まえ、引き続き、必要な対応を進めるべきである。

    また、モビリティ分野及び防衛分野については、「AIホワイトペーパー2.0」に基づき、必要な措置を講じるべきである。

2.5データ戦略

デジタル・ニッポン2025では、「データ利活用を軸とした「データ政策の司令塔」としての抜本的な強化」として、

  • 〇データ利活用に向けた包括的かつ体系的な法制度の整備(官民データ活用推進基本法抜本改正・新法の次期通常国会提出を目指す、個人情報保護法は同時並行でアップデート)、
  • 〇基本理念策定、重点分野指定、国際的なルール形成や国際標準化
  • 〇各府省のデータマネジメント体制の統括
  • 〇データ活用のための環境をガバメントクラウド上に整備

といった点を提言したところであり、これを受けて、今国会に「個人情報の保護に関する法律等の一部を改正する法律案」及び「情報通信技術を活用した行政の推進等に関する法律及び情報処理の促進に関する法律の一部を改正する法律案」(データ利活用法)が提出されている。個人情報保護法の改正については以下に述べるとおりであるが、データ利活用法については、上記体制整備等にも関わるが、デジタル庁における事業者認定の役割が非常に重要であり、データ・オーソリティとしての責任を認識して対応を図るべきである。

また、法案提出以外の事項については、今後も更なる対応を求めるものである。

  • (1)個人情報保護法の改正

    今般の個人情報保護法及びデータ利活用法の改正案において、事業者が「国等データ活用事業」の計画を申請し、国の行政機関等の保有するデータの提供を求めることができる制度が創設され、また、AI開発等を含む統計情報等の作成にのみ利用する場合に個人情報の取り扱いについて、本人同意取得の要件緩和等がなされる。その一方で、子供(16歳未満)の個人情報の取り扱いについて法定代理人の関与を求めること、個人情報ではないが特定の個人に働きかけが可能になる情報について不適正利用等を禁止すること、速やかに違反行為の是正を求められるよう勧告・命令の要件を見直し、さらに、重大な違反行為により個人の権利利益が侵害された場合について、当該違反行為によって得られた財産的利益に相当する額の課徴金の納付を命じることができるようになる。

    法律改正によってこれらの施策が運用されることとなるが、運用に際しての法解釈等については、政令・省令、また、ガイドラインなどの規定によって具体化される。その検討・整備の過程においては、自由民主党デジタル社会推進本部においても、個人の権利・利益を守ることと、情報の有用性・利活用の両立を目的とする個人情報保護法の趣旨に沿ったものであるか、その内容を精査していくものとする。

  • (2)ベース・レジストリの整備推進

    デジタル社会形成基本法第31条において「公的基礎情報データベース」の整備が位置付けられ、これに基づき「公的基礎情報データベース整備改善計画」が定められている。当該計画の中には、商業・法人登記関係データベース、不動産登記関係データベース、住所・所在地関係データベースが掲げられている。特に、早期から整備がすすめられた商業・法人登記関係データベースにおいては、法務省の既存システムから定期的にデジタル庁のシステムにデータが更新され、国や自治体の職員が必要に応じて参照することを可能にすることで、事業者が行政手続きのたびに紙の登記簿謄本を提出しなくても済むようになり、今後、行政機関側と事業者側の双方での効果発現が期待される。

    ベース・レジストリは、各公的機関が有する情報を統合し、必要な機関がその情報を参照・更新できるようにすることで、ワンストップ・ワンスオンリーの実現にも資するとして大変に期待されているが、その実現に当たっては、データを現に保有する官民の機関とのデータの更新費用面も含む交渉、個人情報の取り扱いの整理、既存のレガシーシステムからのデータの抽出、コード類や凡例のハーモナイズ、オントロジーの作成等で大きな負荷が発生している。最新のAI技術も活用し、それぞれのボトルネックを解消していくことで、さらなるベース・レジストリの発展に期待したい。

    いち早く整備が完了した法人ベース・レジストリについて、行政機関の利用だけでなく、民間利活用についても検討すべきである。金融機関の取引時確認、AML/CFT及び与信審査業務における活用を可能とする制度整備を2026年度中に完了すべきである。これにより犯罪による収益の移転防止に関する法律の2027年4月改正との整合性を確保すべきである。GビズIDの金融機関向けAPI連携、不動産ベース・レジストリの運用開始と民間開放に向けた検討、実質的支配者リスト制度の電子的検証基盤化について本年度内に工程表を策定すべきである。中小企業金融の効率化に資するため、国税・地方税の納税履歴情報及び社会保険料の支払履歴情報を、法人の同意を起点に与信目的で連携可能とする制度整備について、関係省庁において検討を2027年度より開始すべきである。金融庁・法務省・デジタル庁・国税庁・総務省・厚生労働省等による府省横断タスクフォースを設置し、官民双方の便益を定量化したKPIを設定の上、2027年度予算編成に反映すべきである。

  • (3)官民連携による産業データ連携の環境整備

    これまでデータ連携に係る相互運用性や信頼性確保の方法が整理されてこなかったことが課題であることを踏まえ、技術仕様の標準化及び信頼性確保に資する技術等の整理により、産業データ連携を支える環境の整備を進めるべきである。

  • (4)DFFTの推進

    DFFTを深化させ、本格的な国際データ連携を実現するためには、国内完結だけでなく、国際的に通用するトラスト基盤の構築が必要となる。この点、現在、我が国のトラスト要素(公的個人認証(JPKI)、法人認証基盤(商業登記)、民間トラストサービス等)が政府・個人・産業界で体系化されておらず、国際的な相互利用を検討できる状態に無い。

    国際的には、トラストリスト(信頼できるトラストサービス提供者を第三者が確認可能とする仕組み)を用いた基盤が主流であるが、我が国においても電子署名、eシール、タイムスタンプについては政府の認定制度もあるため、こうした仕組みも活用しながら、デジタルトラスト基盤の体系化を進め、国内のみならず、国際的にも対応できる形で整理していくべきである。これにより、欧州とは制度・トラストリストの相互参照により公的トラスト基盤を接続可能とし、制度的整合を整備していく一方、米国とはウォレット・VC・プロトコル等の実装レイヤーで連携し、欧米との実装互換性を確保するべきである。

    また、我が国がトラスト基盤を体系化できれば、日・ASEANデジタル大臣会合にて、DFFTの具体化、越境データ流通の重要性等が議論されてきたことを踏まえ、まだトラスト基盤の未整備な国が多いASEAN地域に展開し、アジア地域内での経済発展に貢献できる。欧米との接続実装ツールを基に、トラスト基盤が未整備なアジア(特にASEAN)へ展開を図り、DFFTのTrustを実現し、欧米とも接続が可能な実装圏を形成するべきである。このアジア展開においては、産業界の実ニーズがあるユースケースで、我が国が強みを有するPETs(プライバシー強化技術)等を用いて実装を進め、普及を加速するべきである。

    一方、我が国のトラスト基盤の体系化、アジア展開を同時に進めるためには、現在の政府の体制では不十分であり、デジタル庁、総務省、経済産業省等の省庁横断の連携体制を強化し、制度・実装・国際展開を一体的に推進するべきである。

3.「デジタル」を前提にした社会を支える取組

3.1「誰一人取り残されない、人に優しいデジタル化」実現に向けた取組

社会全体のDXとして目指すべき姿は、「誰一人取り残されない、人に優しいデジタル化」である。デジタル化がAI活用によって加速する中、デジタル機器やサービスに不慣れな方々に対する支援の重要性はかつてなく高まっており、こうした支援はもはや「重要」なものではなく、「必須」なものと位置付けを抜本的に見直す必要があるとともに、支援の役割が「導入支援」から「活用支援」へと変化していることを踏まえ、継続的な支援体制の構築を図る必要がある。

急速な人口減少が進展する中、デジタル化により利便性向上・業務効率化を図ることにもはや選択の余地など無い。特に人口減少が深刻な地方公共団体ほど、その必要性は切実である。しかしながら、デジタルに不慣れな方々が多い地方公共団体では、デジタル化そのものが躊躇されてしまうという悪循環が生じており、国全体で考えれば、大きな非効率と損失をもたらすものである。

こうした状況にあって、国においては、デジタルに不慣れな方々に対する支援として大きな役割を果たしてきた総務省のデジタル活用支援推進事業は2025年度で終了し、デジタル庁のデジタル推進委員はボランタリーな取組であるため、デジタルに不慣れな方々の支援策の全てを委ねることは荷が重い。地方においても、各地方公共団体がそれぞれの必要性・重要性に基づき自主的に取り組むものとなっている。

しかしながら、東京都が東京都アプリのリリースの際にコンタクトセンターを用意したように、デジタルに不慣れな方々が多いことを理由にデジタル化を断念するのではなく、デジタル化とデジタルに不慣れな方々に対する支援をセットで進め、利便性向上・業務効率化と費用対効果の高いワイズスペンディングを実現すべきであり、こうした支援をコストではなく、デジタル社会を推進するための投資として捉え直すべきであり、十分な予算措置を強く求める

社会全体のDXの司令塔であるデジタル庁は、総務省及び関係府省庁と緊密に連携し、デジタル推進委員制度の議論として矮小化するのではなく、デジタルに不慣れな方々に対する支援体制の全体設計を主導するとともに、予算面での支援も含めた必要な措置を講じることを強く求める。その際、地域社会全体のデジタル活用を底上げする観点から、自治体や地域に密着した公共サービスを担う郵便局等の関係団体の果たす支援機能の重要性について念頭に置く必要がある。加えて、デジタル推進委員制度は、当初の人数目標の達成や支援の役割変化も踏まえ、人数の拡大に拘泥することなく、実質的な活動の充実に主眼を置き、より高度な支援能力を有する推進委員の類型の検討も含め、制度のアップデートを図るべきである

なお、これらの取組の基盤となるデジタル人材については、後述の「デジタル人材に関する提言2026」を参照されたい。

3.2成長戦略・危機管理投資

国・地方公共団体のDX基盤(ガバメントソリューションサービス、ネットワーク、ガバメントクラウド、データ連携基盤・認証基盤、外国人政策のDX基盤等)は行政運営や国民生活に不可欠であり、複数年度に渡る計画的な危機管理投資によって高度化・強靱化(セキュリティ、耐災害性、自律性の向上)していくとともに生成AI・エージェンティックAIの利用を円滑化することが重要である。その際、公共分野での率先導入によって、国産のクラウド、SaaSや生成AI等に初期需要を提供し、事業者の技術力向上の機会を作り、民間投資や市場の拡大に繋がる好循環の実現を目指すべきである。

また、巧妙化・多様化するサイバー攻撃や大規模災害発生に対応するため、セキュリティの確保された政府共通の業務実施環境(GSS)について、ユーザー数を2027年度に倍増させるとともに、新たに、セキュリティ対策へのAI導入、災害時などの衛星通信の利用環境の整備、データのバックアップ及び代替システムの整備・拡充を行うべきである。

併せて、開発環境の提供や官民の人材交流を通じて、地方公共団体・ベンダー双方のデジタル人材や中小ベンダー等の育成を図る。特に小規模な地方公共団体でもDXを推進でき、また、中小の地方公共団体やベンダーであっても、クラウド環境を活用した最適化、標準化を前提とした地方全体のDXを推進できるようなエコシステムを官民連携して確立するとともに、新規参入者のためのマッチング、実証、運営の広域連携等の地方発SaaSの全国展開を促進すべきである。

医療DX基盤について、医療の高品質なデータの連携や利活用で、質の高い効率的な医療の提供を実現し、創薬や医療機器の開発等にもつなげていくため、その基盤となるクラウドの医療データの連携基盤の構築に向け、医療機関の情報システムのクラウドネイティブ型への刷新を集中的に実施するとともに、サイバーセキュリティ対策の強化及び全国的なデータ連携基盤の整備を実施すべきである。

データプラットフォームについて、AI利活用等に不可欠なデータの精製(AI-Ready化)・連携(データスペース)技術の研究開発・実証を通じ、これらを中核的に担う安価な国内プラットフォームサービスを育成するとともに、産業界の実ニーズに基づいたデータ連携のユースケース創出を支援するべきである。

サイバーセキュリティ製品・サービスについて、先進的サイバー防御機能・分析能力強化等に係る研究開発支援の拡張等の国産セキュリティ製品・サービスの開発加速とともに、政府機関等における先進的・有望なセキュリティ製品・サービスの積極的な活用及び検証環境の構築等の市場参入支援・需要創出や、高度セキュリティ人材の育成・確保を進めるべきである。

また、日本のGovTech政策を「経済安全保障」の根幹としての国家戦略として再定義し、サプライチェーンの透明性を確保し、リスクを最小化する戦略的自律性の確保と、デジタル化における戦略的に代替不可能なパートナーとして日本の確立を図るべきである。

行政調達におけるデジタルサービスのサプライチェーンの透明性を評価項目に加える枠組みの整備を検討する。ただし、スタートアップの参入障壁やイノベーションの阻害要因とならないように、業務のリスクレベルに応じた段階的な基準設計とし、開発エンジニアの背景や出身国の法制度に伴うリスクなど、高度な専門性を要する評価については国が主導してガイドライン等の指針を示すことで、優れた国産製品が正当に評価される環境を確立するべきである。

4.「デジタル」を前提にした社会を実現する体制・予算の更なる強化=「デジタル庁2.5」

デジタル・ニッポン2025において、デジタル庁の役割の創設時の「原点」である「社会全体のDX」を実現する「真の司令塔」として、「デジタル庁2.0」を実現するための提言を行ったが、デジタルを前提とした社会の実現を目指していくため、エージェンティックAI時代の到来とも言うべき、この1年のAIの更なる進展の状況も反映して、「デジタル庁2.0」から「デジタル庁2.5」へと一気に大きなアップデートを行い、核となる部分は引き続き実現に取り組むとともに、責任あるアジャイル・ガバナンスを基軸として、技術の進化と制度の進化を両立させるという新たな役割・機能を果たすことを求める。

4.1デジタル庁の司令塔機能

  • (1)デジタル庁の司令塔体制

    責任あるアジャイル・ガバナンスを実現するべく、デジタル庁の役割・ミッションについて再確認するとともに、デジタル庁の業務遂行の責任者たるデジタル監、デジタル審議官などデジタル庁幹部にも、迅速かつ明確、的確な判断・決断を促しつつ、政府全体としても、強い危機感と真摯な反省を踏まえ、デジタル庁への人的・財政的リソース配分を、「世界と戦える」「我が国の経済成長の新しいモデルをみせつける」「日本をつくり変える」ものにふさわしいものとする決断を強く求める。

    デジタル・AIを最大限活用した社会変革の推進を担うという自負の下、2026年度中に予定されているデジタル行財政改革会議事務局機能を円滑・着実に移管するとともに、AI推進法に基づくAI戦略本部の事務局機能を含むAI戦略関係機能について、業務面に加え、人的・財政的資源も含めて、現在の内閣府科学技術・イノベーション推進事務局(AI政策推進室)につき、速やかに定員・実員を現行の2倍以上にし、AI戦略本部の事務局体制を強化し、AI推進法の施行機能を強化すること。また今後、当該事務局とデジタル庁の間で機能を段階的に集約・統合することを検討し、その実現に向けて必要となる法制度上の措置についても、あわせて検討を進めることが必要である

    また、独立行政法人情報処理推進機構(IPA)、独立行政法人国立印刷局、地方公共団体情報システム機構(J-LIS)、一般社団法人行政情報システム研究所(AIS)などの外部関係機関や民間機関・団体がデジタル基盤の開発・運用等を担うなどの連携強化を行うため、組織体制、制度等の検討を進めるとともに、必要な予算もあわせて確保すべきである。

    あわせて、デジタル大臣については、一元的かつ体系的な対応を迅速かつ強力に行うため、行政改革、国家公務員制度、サイバー安全保障について引き続き担当することはもとより、規制改革についても担当するべきであることも強く要望する。なお、AI戦略関係についても、デジタル庁との機能統合までの間は、デジタル大臣がしっかりと関与するべきである。

    これらの取組を着実に推進するため、量的な面だけでなく、質的な面においても、デジタル庁の体制を更に充実するべきである。

  • (2)司令塔機能の発揮へ

    社会全体のDXを実現する司令塔たるデジタル庁が果たすべき重要な役割の一つは、地方公共団体や事業者等が予見性をもってDXに取り組めるよう、国としての取組の全体像を明確に示すことである。このため、デジタル社会の実現に向けた重点計画を始めとして、国が実施する取組とその時期を工程表として明示し、関係者間の共通認識を醸成することによって、地方公共団体・事業者等の積極的な取組を促すとともに、国も含めた関係者間の連携が生まれる環境を整えることである。さらに、こうした取組の進捗と成果を広く国民に対して「見える化」することで、社会全体のDX推進に対する理解と信頼を確保していくべきである。その際、デジタル庁が示す取組やその全体像が絵空事にならずに、地に足が付いた実効的なものとなるには、地方公共団体や事業者等が現場で直面する課題への深い理解が不可欠である。このため、地方支分部局を持たないデジタル庁において、地方の実情を継続的かつ的確に把握していく仕組みや体制を早急に整備すべきである。また、将来的な地方拠点の整備の必要性や在り方について具体的に検討を行うこと。同様に、官民連携についても、実態が伴っていない事例も散見されることから、真の連携体制を早急に整備すべきである。

    また、国民の出生、子育て、就職、転居、結婚、年金、介護、相続等のライフイベントを起点に、必要な行政手続を一体的に案内・申請・処理できる「行政ワンストップサービス」の実現を加速する必要がある。そのため、デジタル庁を中心に、各府省庁・自治体・関係機関が連携し、「国民の体験向上に向けた行政サービスの導入計画」のロードマップを活用して、重点サービスの実装時期、担当機関、成果指標を明確化するべきである。あわせて、進捗状況や国民にもたらされる効果を継続的に公開し、利用者視点に立った行政サービス改革を着実に推進するべきである。

4.2デジタル関係予算と調達の抜本改革

デジタル庁における政策立案に係る予算は、引き続き極めて不十分な状況となっている。洗練された個人向けや事業者向けの行政サービスの提供に加え、AI実装、データ戦略、人材育成の強化、サイバーセキュリティ対策など社会全体のDXを実現するための「デジタル庁2.5」を推進・加速化するためのデジタル関係予算の拡充は必須であり、政府内の縦割りを打破し、予算と調達の在り方を抜本的に見直すべきである。

政府情報システム予算については、デジタル庁に一括計上されているところである。そのうち、システムの新規整備や大規模改修等の経費についてはそのほとんどが、補正予算によって確保されている。システム整備は、その規模によって違いはあるが、本来、複数年に渡って実施されるものである。単年度原則の補正予算依存になっていることによって、システム整備が歪な形で分割されることになり、整備に支障をきたし、かえって非効率になっていることも事実である。併せて、整備されたシステムの運用経費は、概算要求において追加が繰り返され、要求枠をオーバーし、概算要求においては新規事項の組み込みが難しい状況ともなっている。デジタル化によって各府省の業務改革・業務効率化が進んでいることを鑑みると、政策推進とデジタル化は一体的なものとして、予算についても縦割りを打破し、必要な対応を図るべきであり、概算要求によって、整備・運用を問わず必要な予算を確保し、複数年契約が可能となるよう対応を図るべきである。

また、予算制度のSaaS対応として、スタートアップの参入環境を整備し、官民双方にとって持続可能な調達モデルを確立する観点から、初期費用等の「着手時前払い」の可能性を検討すること。併せて、アジャイル開発の手法が適しているAIやSaaS活用を前提とした調達においては、成果が出ない場合の「契約を終了(解約)する判断基準」とセットで、詳細な仕様ではなく「解決すべき課題と達成したい成果(アウトカム)」を提示する方式の可能性を検討するべきである。

さらには、昨今のAIやクラウド等の技術的進歩の状況を踏まえ、全体最適化されたデジタル実装を目指し、予算面においては、複数年度での予見可能性を確保する等の観点から、デジタル関係予算を一括管理し、柔軟な執行を可能とするため、新たな予算体系を創設すべきである。また、調達面においては、現状の分離・分割契約や委託契約などの慣習にとらわれることなく、アジャイルな整備・運用が可能なものとなるように抜本的に見直すべきである。

システム整備・運用に際しては、それぞれごとの状況をしっかりと把握した上で、内製、外注、民間技術の活用などの適否を判断した上で執行すべきである。民業圧迫との指摘を受けることが無いよう必要に応じ、ガイドライン等の見直しも実施すべきである。

5.重点分野(各小委員会、PTの取りまとめ)

5.1AI・web3小委員会

エージェントAI時代を見据えて、日本はAI駆動型国家への構造転換を掲げ国家戦略の座標軸を書き換えるべき。まず、ソブリンAIからAI主権への方針転換を図り、国産化至上主義でなく戦略的自律性の確保を目指す。現場知を資産化し、バーティカルAIやフィジカルAIにおいて戦略的不可欠性を高めるために強みがある領域を育成する。エージェントAI時代の国家基盤として電力と計算資源を位置付ける。次に、AIの用途の探求から、人間にしかできないことの追求を図り、社会全体でのAXを推進する。労働市場への影響に正面から向きあうと共に、AIによる社会課題解決の解を見出し世界に先行する。最後に、AI駆動型国家に不可欠な、AIの使用にあたっての信頼の設計を図るため、規制・技術・リテラシーの三位一体による信頼できるAIエコシステムの設計・実装を進める。政府はAIの利用者から制度設計者へと立ち位置を変えてガバメントAXを強力に進める。

5.2デジタル基盤小委員会(デジタル人材育成、法案)

我が国では、デジタル人材230万人育成を目標に各種施策が進められ、人材の裾野は拡大してきた。一方で、生成AIやAIエージェントの急速な進展により業務や付加価値創出の構造が大きく変化し、人とAIの協働を前提とした社会の中で、従来の職務定義やスキル区分は流動化している。現場業務とデジタル技術が融合した新たな職務領域であるアドバンストエッセンシャルワーカーの必要性が高まる中、「何人育成するか」といった量的指標や固定的な職種分類では実態を十分に捉えられない。このため、スキルを労働市場の共有言語として可視化・活用し、横断的に教育・認証・労働市場を接続する仕組みへの転換が不可欠であり、その中核として「デジタル人材スキルプラットフォーム」の整備・拡張が求められる。

あわせて、国民全体のデジタルリテラシー向上や多様な人材の活躍促進を図るとともに、労働市場の変化やスキル需給を把握するデータ基盤を整備し、政策への反映を強化する必要がある。

5.3防災DXPT

災害関連死ゼロと直接死最小化を目標に掲げ、徹底した防災DXを推進する。

今後設置予定の防災庁が司令塔となり、産官学民連携のもとフェーズフリーの(日常時と非常時の区切りがない)防災DX基盤の整備、「防災データスペース」の構築を進め、災害状況把握、避難行動援助、被災者支援、復旧・復興を迅速化・最適化し、災害対応の更なる高度化を実現する。

防災を特別な取り組みではなく、社会全体に共通する基盤的機能へと転換することを目指すとともに、防災・防衛一体の開発・運用と社会実装を促進する。

デジタルツインやAI災害シミュレーションによる災害対応機関の意思決定支援、地域企業との協定・協力によるサプライチェーン構造改革によって、平時から有事、有事から平時へのシームレスな接続を可能とする。

AIロボティクスの早期導入、ドローン・航空機・人工衛星・車載カメラ等の活用によって、災害対応の徹底した無人化・自動化・省人化を推進する。

5.4次世代AI・オンチェーン金融構想PT

AIとブロックチェーンが融合した、経済活動が「連結・自動・24時間365日化」する未来像

を提示する。AIエージェントが自律的に商取引や決済を行う「エージェンティック・コマース」

の到来を見据え、その基盤となるオンチェーン金融を確立させる。

金融を「18番目の成長投資分野」と位置づけ、政府による5年間のロードマップ策定や官民連

携での投資促進を求める。具体的には、トークン化預金(TD)やステーブルコイン(SC)の

普及、日銀当座預金のトークン化対応、公的主体によるユースケース作り、決済高度化プロジェ

クト(PIP)を通じたユースケースの拡大を検討・推進すべき。

また、アジア諸国との政策対話枠組みを創設し、国際的な相互運用性の確保やルールメイキン

グを主導することで、日本の産業競争力強化と経済安全保障の確保を目指していく。

デジタル社会推進本部 役員

令和8年2月27日

最高顧問 岸田 文雄
特別顧問 渡海紀三朗  河野 太郎  小林 鷹之
顧  問 石田 真敏  伊藤 達也  岩屋  毅  上川 陽子  後藤 茂之
柴山 昌彦  新藤 義孝  鈴木 馨祐  棚橋 泰文  谷  公一
宮下 一郎  山口 俊一  山下 貴司
鶴保 庸介  松山 政司
本 部 長 平井 卓也
本部長代行 平  将明
本部長代理 牧島かれん
副本部長 大野敬太郎  木原 誠二  島尻安伊子  関  芳弘  橘 慶一郎
中西 健治  橋本  岳  藤井比早之  村井 英樹
磯﨑 仁彦  西田 昌司  古川 俊治
幹事長 小林 史明
幹事長代理 大串 正樹  和田 義明
常任幹事 長谷川淳二(内閣第一部会長)
松川 るい(内閣第二部会長)(兼)
本田 太郎(国防部会長)
鈴木 英敬(総務部会長)  (兼)
藤原  崇(法務部会長)
高木  啓(外交部会長)
こやり隆史(財務金融部会長)
深澤 陽一(文部科学部会長)
鬼木  誠(厚生労働部会長)
野中  厚(農林部会長)
船橋 利実(水産部会長)(兼)
小林 史明(経済産業部会長)(兼)
加藤 鮎子(国土交通部会長)
山田 太郎(環境部会長)(兼)
幹  事 新谷 正義  中曽根康隆  穂坂  泰  古川  康  宮内 秀樹
宮路 拓馬
朝日健太郎  本田 顕子  松川 るい
事務局長 鈴木 英敬
事務局長代理 神田 潤一  岸 信千世  塩崎 彰久  土田  慎  平沼正二郎
中川 貴元  西野 太亮  山口  晋  山本 左近
船橋 利実  山田 太郎
事務局次長 大空 幸星  草間  剛  小池 正昭  坂本竜太郎  根本  拓
福原 淳嗣  山本 大地
赤松  健  いんどう周作 小林 一大  小林孝一郎  西田 英範
星  北斗  宮本 和宏  山本佐知子  脇  雅昭

各小委員会・PT役員と提言一覧

AI・web3小委員会 小委員長 平  将明
事務局長 塩崎 彰久
事務局次長 大空 幸星  草間  剛
赤松  健  宮本 和宏
デジタル基盤小委員会 小委員長 牧島かれん
事務局長 神田 潤一
事務局次長 平沼正二郎  山本佐知子
防災DXプロジェクトチーム 座  長 大野敬太郎
事務局長 山田 太郎
事務局次長 根本  拓
次世代AI・オンチェーン金融構想プロジェクトチーム 座  長 木原 誠二
座長代理 平  将明
事務局長 村井 英樹
デジタル・ニッポン起草プロジェクトチーム 土田 慎・岸 信千世・いんどう周作